スペシウム光線しか使えないけどウルトラ兄弟に入れるよね? 作:Sashimi4lyfe
「やれやれ...なんだか騒がしくなったねェ」
面倒くさそうに体を起こしながらジーラがぼやく。
「兄ちゃん、なんて名だい?」
「僕はウルトラマンメビウス。この二人を連れ戻しに来た」
「メビウス...へェ。あんたが名高いウルトラ兄弟の...ってことはこの二人は宇宙警備隊員かい?」
「そういうことだ。無駄な戦闘は僕も避けたい。ここから立ち去らしてくれるなら君にもう被害は加えないと約束しよう」
「へっ。平気で人に向かって光線をぶちかますヤツのいうセリフかねェ」
「すまない。そうでもしなければ二人は死んでいた。」
「そこにへばっとる二人のケガを見ても同じことが言えるのか?」
岩にもたれかかり、かろうじて生きているゼルガとミーナに視線をずらす。
「君の惑星に無断で入った僕たちにも非はある。ここで君を倒してしまったら、僕は自分を許せなくなってしまう。それだけはしたくない」
「面白いことを言う男だねぇ。で、ワシがアンタらを見逃せば戦わんでもいいというんだな」
「約束しよう。ウルトラ兄弟の名に懸けて」
「そうかい......」
考え事をするようにジーラは頭をポリポリと掻くと、
「やっぱりやめた。アンタ、結構ホネがありそうだからねェ。せっかくだからちょっと楽しませてもらうよ」
「...!」
得意の瞬間移動でメビウスに近づくジーラ。しかしメビウスはそれを見切り、ハイキックを頭部めがけて繰り出す。
直撃したかと思ったその一撃をジーラは体を後ろにそらして間一髪でかわす。メビウスはハイキックの回転を活かし、そのままバックキックを繰り出すが、それもジーラにさばかれる。
お互いに不利な体勢にあると悟った二人はさっと後ろに下がり、距離を取ったが――
「何が起きてんだよ....」
ゼルガにはこの二人の応戦が全く目に捕らえられなかった。全く別次元の戦いに、自分の非力をことごとく痛感させられるのだった。
「やるねェ」
「もうやめにしないか。ここままではどちらかが死ぬ羽目になる!」
「ってことは死なない自信があるんだろう?」
ジーラの両手に電気エネルギーが四方から集まり始めた。それに反応し、メビウスは不本意ながらも右手のメビウムブレスからメビウムブレードを出現させる。
「そこまで自身があるなら...ちょっとこっちも本気だそうかぁ」
あまりの電気エネルギーの量に磁場が生成され、ジーラの身体が宙に浮く。
そして素早く両腕を前に突き出し、
「
蓄積された膨大なエネルギーがメビウスを襲う。
メビウスは顔色一つ変えず、メビウムブレードを構える。その構えを崩さぬまま、ギリギリまで電撃が近づくまで待ち、もう次の瞬間にメビウスに直撃すると思った時――
一振り。たったの一振りだった。
だがそのたったの一振りでメビウスは
「驚いたねェ....ワシと対等に
メビウムブレードを解除させ、再びメビウスは説得を試みる。
「もう一度言う。ここから立ち去らしてくれさえすれば、君に被害は加えない。」
「ふふっ、これほどの腕を持つ男がこんなことを言うのかい。まだ少し遊び足りないが....これ以上やるとこの惑星がぶっ壊れかねんならなァ」
くるりと三人に背を向けると、すたすたとジーラは歩き始めた。
「メビウスとやら。今度会った時は本気で相手してもらうぞィ」
いつメビウスが後ろから奇襲をしかけてもおかしくないのに、ジーラは能天気に歩き続ける。たとえそのような事態になっても返り討ちにできるという自信が彼にはあるのだろう。
「大丈夫かい、二人とも」
負傷したゼルガとミーナを気遣い、メビウスが声を掛けながら歩み寄る。
「私は大丈夫です。ただ、ゼルガが....」
「たしかにすごいケガだ....随分無理したみたいだね。立てるかい、ゼルガ?」
「......」
「どうしたんだ?そんな暗い顔して....」
今ゼルガの脳内に渦巻いていたのは敗北感だけではなかった。
自分がなろうとしていた存在——ウルトラ兄弟との実力の差を目の前に突き付けられ、行き場のない暗い感情が心を曇らせていたのだ。
夢の実現への距離を痛感し、悔しさだけが募っていく。
「んなことってあるのかよ....」
気づけば心にしまっておくつもりだった想いが口から漏れ出してしまっていた。
「手も足も出ないなんて....んなことってあんのかよ!!」
自らの強さだけを誇りにここまでやって来たゼルガ。そのプライドをずたずたに引き裂かれた彼の痛みは相当なものだった。
「いいかい、ゼルガ....君の先輩として、ウルトラ兄弟の一員として一つだけ言いたいことがある」
そう語り掛けるメビウスの声は、少しためらいが混じっていた。
本当は言いたいたくないことだったが、これを伝えなければ彼もまた破滅の道を歩んでしまう。
自分にそう言い聞かせ、メビウスは途切れ途切れに言った。
「君に今一番必要な物....それは、決して『力』なんかじゃないんだ。」
これまでメビウスは『力』を追い求めた者の末路を幾度となく見てきた。
力に溺れ、道を踏み外した者。開いていく力の差に、生きる活力すら失った者。どんな終わりを告げるにせよ、安らかな最後を迎えた例をメビウスは一度も見たこともなかった。
それ故に彼は誰よりも知っていたのだ。『力』を求めた先に安息は決してないことを。
ゼルガが同じような道を歩むのを、彼はどうしても避けたかった。
「そうしなければ....君は、君自身じゃなくなってしまうんだ。」
もうこんな理由で誰も失いたくない。それがメビウスの心からの願いだった。
「.....綺麗ごと言ってんじゃねーぞ、メビウス....」
ゼルガにはそれが絵空事にしか聞こえなかった。そんな非現実的な答えがこの世で通用するわけがないと逆に少しキレてしまったのだ。
「ちょ、アンタ、なんてこと言うの!せっかくアンタのためを思って言ってくれてんのに!」
メビウスの言葉をありがたく聞いていたミーナは思わずかっとなってしまったが、メビウスは全くそれを気にしてないようだった。
「いいんだ、ミーナ。でも僕は本気なんだぜ」
「何が『本気』だよ。だったら教えろよ。ヤツとの実力の差を埋めるのに『力』以外の何が必要だってんだ!??」
「それは....すまないがゼルガ、それは僕には答えられない」
「ハァ!?偉そーにしてたくせに答えられないってどーゆーことだよ!?」
「君自身がその答えを見つけるしかないからだ。」
『胡散くせぇな』と返そうとしたゼルガだったが、なぜか言葉が詰まってしまった。他のウルトラマンが言っても説得力がなかったであろうこのセリフも、メビウスの口から聞くとなぜかゼルガの心に響いてしまった。
「その答えは、自分で見つけて初めて価値がある物なんだ。そのために僕たち兄弟は悩み、苦しみ、考え続けてきた。君も兄弟に入りたいというのなら、その答えを見つける必要がある」
「......」
「そう落ち込むなよ。きっと見つかるさ。答えを見つけようとする意志が、君を『真理』へと導いてくれる。」
黙って下を向いたまま動かなくなってしまったゼルガを見かね、ミーナが声をかける。
「あーもう。反省会なら帰ってからしなよ!ここにいたんじゃまた何があるかわかんないよ!」
「そうだね、ミーナ。さっ、帰ろう」
ゼルガの腕を肩にかけ、よいしょとメビウスは立ち上がった。
「僕たちの星――ウルトラの星へ。」