中二病がカッコつけてたら世界の敵になってしまった   作:刹那木ヤクモ

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第5話

円卓。古来アーサー王が円卓には上座下座がないことから、敵味方の立場や身分とは関係ない集まりの場として使ったものを指したりする。そんな円卓にズラリと並ぶ重鎮が、重々しい雰囲気をまとっていた。

 

「…ガンマ補給基地がやられた。」

 

「ありえん。補給基地は全て秘匿基地の筈だ。そう簡単には漏洩する筈がない。」

 

「これは放任できんな。内部調査を進める必要がある。」

 

「内通者の炙り出しが先決ですな。」

 

その後もあーだこーだと議論を進めていく。そんな中一人、相手の手腕に舌を巻く男がいた。

 

(すげーなぁ。この短期間でこちらに内通者を生むとは。ソードの9は一年前の定期内部調査では引っ掛からなかった。つまりは白だったってワケだ。そいつが急に、オセロみてぇに黒にひっくり返った。前回の内部調査は女教皇も立会人として参加していたすげー正確なモンだ。間違ってるとは言い難い。ならば何らかの外部要因による介入があったと考えるべきだな。)

 

その男は一人で思考を続ける。

 

(申告漏れの大アルカナ保持者の確保も出来た。《運命の輪》が防御特化に変質しているとは思わなかったがそれはそれだ。オレたちの戦力が増えることに問題はねぇ。取り敢えず目下の問題はあの邪教だな。)

 

トントン、と指で頬をつつきながら思案を止めない。謀略担当、それが彼の役割であった。

 

(浄化教はやべぇ。良くわからんが交戦履歴を見ると確実にこちらの被害が増えてきている。何か士気が爆増したとかそんなモンじゃあねぇ。もっと本質的に、兵士の能力か何かが変わってきている。増幅されてるのか?何らかの遺物によって。こりゃ、円卓計画を早期に実行に移さなければダメか…やむを得まい、暫くはオレが一人で進めることにしよう。)

 

「《皇帝》!君はどう思う?」

 

「ん?ああ、わりぃ、考え事してて良く聞いてなかった。なんて?」

 

「…ガンマ補給基地襲撃を受けて、他の補給基地の警備人員を増やすことにしたのだが、どれだけあれば仮想敵を食い止めるくらいになるのだろうかと言う話になっていてな。君の意見を仰ぎたい。」

 

「二個大隊。それだけあればウチの《星》やまだ見ぬ《戦車》、《魔術師》でもなければ多少は持つだろ。」

 

「…二個大隊か。分かった、ありがとう。では、次の議題に移るが──」

 

《皇帝》。それが彼の通り名。その知略と本人の範囲制圧特化の能力をもって世界の敵を食い止める大アルカナ持ち。そんな彼は、やはり浄化教の対応に手を焼いていた。

 

◆◆◆◆

 

「ぶえっくし!!」

 

冷えてきたのかくしゃみがとまんねぇべ。つらい。もう八月なのにおかしいな?

まだ春先だと思っていたのに数ヵ月も経っているなんて信じらんねぇぜ。

 

まあそれはそれとして、現在俺は邪教の地下通路を進んだ先、やはり地下を切り開いて作ったであろう大広間こと、修練場に来ている。いや、来させられている。ランバンから今日この時間にここに来るようにと呼ばれているのだ。

 

「来ましたね、代行者様。」

 

「正義でいい。その呼び方はなんと言うか…むず痒い。」

 

「…そうですか、では正義様。早速ですがお稽古と洒落こみましょう。まあ組手なんですが。…っと、その前に私の能力の説明がまだでしたね。『メインシステム起動。戦闘モードへと移行。接続確認。神経回路構築完了。システムオールグリーン。《戦車》、完全起動。』」

 

直後、フォンと言う音と共にランバンがメカメカしい鎧を全身に纏う。うわなにそれめっちゃかっこいい俺も欲しい。全身を黒色で染められたその機体は、肩のパーツからエネルギーを放出し、拡散するように翼のようなものを形成しており、馬鹿みたいな熱量を放っている。デ○ティニーガンダムかな?

手には大振りなブレードを一振と、大型のシールド。胸部にはキャノン砲っぽいのが左右に合計二門。

え?これより本来のスペック俺の方が高いの?んなまたご冗談を。ランバンよ誇れお前がナンバーワンだ。

 

「これが私の大アルカナ《戦車》。パワードスーツを身に纏う能力です。今回はこれの出力を1%まで落として組手を行わせていただきます。」

 

「…ほう、1%。」

 

「別になめているわけではありませんよ。なにせ私の《戦車》は本来単機で国家を相手するための能力。出力1%でも個人に向けるのはオーバーと言うものです。」

 

ヤベーもん持ってんなランバンお前な!!!単機で国家を相手するための能力とかどんな時想定してるの!?!?アホなの???

んでこれを越えるらしい《正義》の100%出力の場合の株がスッッッゴイ勢いで上がっていくぞ。最終的にどうなるんだお前。神とかになったりするの?

 

「…では早速組手といきましょう。死ぬ気でやってくださいね。出力1%も出せていなければ大ケガですよ。《戦車》の真髄、お見せしましょう!!」

 

そして翼を広げて空へと飛ぶランバン。俺も慌てて聖銃を展開し撃ち落とすべく祈りをこめて引き金を引く。

3発撃ち込んだ銃弾は案の定盾に防がれる──が、簡単に貫通しそのまま外装も貫通。ランバンから血が飛び散る。

 

「…っと、忘れていました。あなたはご存じないかもしれませんが、聖銃の効果は《ありとあらゆる防御の貫通》。概念防御も、あの忌まわしき《夢幻》の保護結界もいとも容易く貫く、その全てが必殺の弾丸です。うっかりすると今ので私も死んでいましたが、今後当たるつもりはございませんのでご了承下さい。」

 

しれっと衝撃の事実が告げられたなおい。聖銃さん!?!?あんたそんなに有能だったんですかおい。しかもなにそのおあつらえ向きの主人公的な能力。どおりで弓華を──うーーーーーーーん!!!ずーーーーーっと引き摺るなマジで。この業界に身を置く以上仕方のないことなんだろうけどね!!割り切れないよねそう簡単には!!つい最近も補給基地の何人か殺したと思うんだけどな。やっぱ知り合いの死因になったって吐きそうになるくらいつれぇわ。

んでまた俺は殺しかけてんのか。まあ今回はランバンの不手際だから知らね。俺のせいじゃない。死んだとしてもこの邪教の戦力が減るだけや!!むしろかまへん事故れ死ね!!

 

まあ置いておくとして、ランバンは剣を構えて上空から地上のこっちに突撃してきた。進路を塞ぐように銃弾を一発、もう一発を回避先に撃ち込むべく銃を構えて待機しておく。

 

「詰めが甘いですね。」

 

グニャリと姿が揺れたかと思えば消え、その気配は俺の背後へと移っていた。そして頭をカチ割られそのまま体を真っ二つに切断される。殺すか普通?訓練で?なんて考えながら意識が途切れる刹那に神に祈りを捧げ肉体の修復を行う。万が一間に合わなかったりしていれば俺はここまでだった。死因がダサすぎて笑えない。死なねぇ体って言うのはよ、便利なんだけどリスクがありすぎてそう簡単に死亡前提の作戦は立てれないってのが俺の欠点だな。

ちなみに今のでもう油断も隙も晒せば死ぬことの恐怖を刷り込まれたので足が少しだけ震えてきたがグッと抑える。俺は代行者。象徴。だからこそ、みっともない姿を見せた瞬間使い捨てにされる気がする。

 

「…すいません、勢い余ってしまいました。組手がここまで難しいとは。正義様は再生能力があったからよかったものの。」

 

「ミスは誰にでもある。今のは少し咎めたかったがな。まあいい、続けるぞ。」

 

「…寛大なお心。まさに貴方こそ主神の代行者だ。ええ、ええ、続けましょうとも!」

 

なんかスイッチ入ってないか?不味くね?え、何回死ぬかなこれ。

あーもう、なんとでもなれ。

 

◆◆◆◆

 

「…今日はこんなところでしょうか。お疲れさまでした。」

 

「………そうだな。」

 

はい、と言うわけで。様々な手段で殺されまくり総回数が3桁に到達した辺りでやっと終わりました。周りには俺の腕だった肉塊とか俺の体内にあったであろう血液とかがばら蒔かれている。流石邪教。主神の代行者殺すのにも躊躇がない。まあ。なんと言うか。気が狂うかと思ったよね。でも死にたくなかったので死にました。なんか矛盾してんな?まあ置いといて、今回の訓練で得たものは!!ズバリ!!

 

ないです!!膨大な死亡経験くらい。もー本当につらかっただけじゃんどう責任とるんだよランバン。

 

「ああ…美しい…。」

 

俺の手だったものを抱き締めてるわキモ!!!…失礼、気持ち悪い変態がそこに居た。流石に引いたわ、ドン引きだよ。いやまて、宗教の信仰対象の代行者の腕ってそこそこ価値あるんじゃね?それ言ったら血液もだよな。俺ぶちまけたが?ドバドバだよ文字通り出血大サービス。

ん?あいつ血液とか肉塊とかを瓶に詰め始めたんだけど褒美とかに再利用しようとしてない??せめて許可はとって欲しいしなんの前兆もなくそんな事されるとちょっと困る。なんと言うか、扱いに。有能イケメンポジを自分から放棄するのやめろ!!なんでイカれポンチサイコパスポジに自ら転落していくのお前。俺からの評価急転直下だよ。

 

まあいいわ。イカれランバンくんの対応をすると疲れるので今後彼の扱いは雑でいいだろう。一応トップらしいが信仰対象の方が格上だろ、知らんけど。んで、俺はどうするの?暫く俺の残骸詰めに夢中のコイツと一緒に居なきゃいけないの?

…んー、さて、どうしよっかな!!助けて花音!!いやもう誰でもいいから助けてくれこの環境から連れ出してくれ頼む!!

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