【三次創作】ホロライブ ビルドライバーズ with リ・イマジネーションズ   作:波音四季

145 / 168
沙花叉が卒業してから「大切なお知らせ」が自分の中で滅茶苦茶トラウマとなっていることに気付いた。推しじゃないシオンちゃんの卒業発表がこんなにも辛く感じるとは…。

紫咲シオンさん、貴女は今まで本当によく頑張った。残り少ない時間を大切にしてください。本当にお疲れさまでした!

さて今回は、前回も告知した通り、『Fate/Grand Order』の2部6章に登場するキャラが登場します。プレイしてないと誰?って思うかもしれないので、調べながらみてください。……でも、ファフナーキャラ出てる時点で今更か。


CHAPTER15 妖精国へ

魔術世界『ペンタゴン』

ドゴオオオオオオオオオオン

 

魔法都市の一角に作られた庭園に何かが墜落した。

 

庭園にいた魔法使いや魔術師達は、各々杖や魔導書を手に墜落地点へ近づく。

 

「……」

 

土煙の中から姿を現したのは、くすんだ水色の髪に深い緑色の瞳をした女性、神羅族のスイセイだ。

 

魔術師「何者だ!?ここがシオン様の庭園と知っての狼藉か!?」

 

スイセイ「……」

 

魔術師「聞こえないのか!?答えないなら「ストップ」っ、シオン様?」

 

空中から聞こえた声に魔術師達が後退する。降りてきたのは、黒いローブに身を包み、黒と紫が混ざった髪の少女、神羅族のシオンであった。目元は仮面で隠されていて表情は読み取れないが、スイセイを歓迎していない事は声色で分かった。

 

シオン「流石元隕石の欠片、登場が派手だね」

 

スイセイ「……」

 

シオン「で、なんか用?」

 

スイセイ「用という程の事じゃない。ただの挨拶回りだ」

 

シオン「……あー、そういやアンタ投獄されてたんだっけ?知らんけど」

 

スイセイ「そうだ。最近仮釈放されてな」

 

シオン「あっそ」

 

どうでもいいと言うように適当な返事を返す。

 

スイセイ「…それと聞きたいことがある」

 

シオン「聞きたいこと?」

 

スイセイ「私の星鍵(せいけん)を知らないか?」

 

『星鍵』という言葉にシオンの肩が僅かにピクッと動いたのを、スイセイは見逃さなかった。

 

シオン「……なんだっけ、それ?」

 

スイセイ「Яに侵食された世界を滅ぼす時に使った鍵だ。とある星に隠しておいたのだが、無くなっていてな」

 

シオン「……」

 

スイセイ「生物の死に絶えた星だ。現地で奪われた可能性はない。となると、神羅族の誰かということになる」

 

シオン「別の星の誰かじゃない?」

 

スイセイ「他星から来訪者が来た痕跡はなかった。どうだ?何か知らないか?」

 

シオン「さぁ?アンタの物なんて興味ないし?」

 

その言葉を最後に静寂が庭園を支配する。重苦しい空気に魔術師達も動くことが出来ない。

 

スイセイ「そうか…。どうやら、ここには無いようだな。邪魔して悪かったな。おっと、最後に1つ」

 

シオン「?」

 

スイセイ「見え透いた小細工で私を欺けるとでも?」

 

シオン「っ!」

 

スイセイ「安心しろ。あの鍵が無い状態で、貴様の庭で一戦交える気はない。だが、戻ってきた時は覚悟しておけよ?

 

スイセイは自身を青い炎で包み込むと、落ちてきた時とは逆再生するように空の彼方へ登っていった。スイセイが完全に見えなくなったのを確認すると、傍に控えていた仮面をつけた金髪の魔術師がシオンに話しかけた。

 

「し、シオン様」

 

シオン「嘘を見破られない為の心理防壁(マインド・プロテクション)が仇になるとはねぇ」

 

そう。シオンは嘘をついていた。

 

スイセイが投獄前に隠した星鍵。星を、世界を破壊することが出来るその鍵は、スイセイが投獄された後にシオンによって回収されていた。

 

「もし、星鍵の在りかが判明し、奴が戻ってきたら…」

 

シオン「そう簡単には見つからないよ。それに、マーリンなら上手くやるでしょ。あ~、一応、ペンタゴンの魔法障壁(マジック・バリア)のレベル上げといて~」

 

それだけ言うと、興味を失くしたかのように頭の後ろで手を組み、空中歩行しながら自分の居城へ戻って行った。

 

 

ペンタゴン衛星『アルテミス』

地球で言うところの月に当たる衛星で、スイセイはペンタゴンの魔法障壁(マジック・バリア)のレベルが上昇するのを感じ取っていた。

 

スイセイ「私が去った途端にこれだ。やはり星鍵はシオンが持って行ったか。しかし、どうしたものか…」

 

下手に仕掛けようものなら、シオンを含めたペンタゴンの全戦力を相手にしなければならない。かと言って、放置は出来ない。あの鍵には星を壊すほどの力が秘められている。持っているだけなら害はないが、その力を無暗に振るおうものなら、世界1つが破壊されるだけでは済まないだろう。

 

スイセイ(持って行ったのが、シオンだったのは幸いだな。穏健派の中でも、他者との関わりを持とうとしない奴なら、ソラにも報告していないだろう。兎に角、あの鍵が発動してからでは遅い。その前に見つけなければ…)

 

スイセイは再び自身を青い火球で包むと、次の世界へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

ビルドライバーズ世界

ホテル『ユニバーサル・センチュリー』 新の部屋

GWDWC本戦トーナメントまで、あと3日に迫ったこの日の夜、新とサポーターの怜、真理愛が集まっていた。その中で唯一、新と接点のない人物がいる。

 

ソフィア「これが依頼された資料です」

 

ソフィア・ヴァレンタイン。にじさんじの女性ユニット『Idios(イディオス)』のメンバーの一人で、『情報屋ラビット』としても活動している人物だ。

 

新は手渡された分厚い資料を軽くパラパラと捲る。

 

新「凄い。これまでに使ったガンプラのデータに、得意な戦術や苦手な戦術、戦績、各バトルにおける立ち回りまで詳細に書かれている」

 

怜「それだけじゃない。QRコードで各バトルのリプレイに直接とべるようになっていて、依頼人への心遣いも感じられる」

 

ソフィア「私は依頼内容に関わらず、依頼人が一番満足してくれるように努めていますから」

 

GWDWC本戦に出場するにあたって、他のバトラーのデータを集める必要がった新だったが、怜と2人ではどうしても限界があった。特にリクやセカイ、キジマ・シアのような異世界から来たバトラーは情報が少なく、より詳細な情報を得るためにはその道のプロに頼らざるを得なかった。そこで、新は以前機体の相談を受けたアメリアに依頼することにした。

 

ところが「申し訳ないけど、この依頼は受けられない」と断られてしまった。理由は、元先輩であるフブキとそらがいたからだ。アメリアは既にホロライブから卒業しているとはいえ、かつての事務所の先輩のデータを新に渡した場合、新が勝とうが負けようが「ホロライブに対する裏切りだ」と騒ぐ者が必ず出るだろう。仮にフブキかそらに新が負けたら、「新が不利になるような情報を渡した」という根も葉もない憶測が流れることになる。それは彼らの望むところではなかった。なので、ホロライブとは無関係で、尚且つ佐々木ファミリーではないソフィアに依頼することとなったのだ。

 

新「アメリアさんの紹介で、依頼料も安くしてもらったのに、ホントにこれ貰っていいんですか?」

 

ソフィア「はい。ただ、ギリギリになってしまったのは本当にごめんなさい」

 

新「とんでもない!たった2日でこれだけ集めてもらったのに、文句なんか言いませんよ。大丈夫です。まだ3日もありますから、余裕で対策を練れます」

 

真理愛「本当に凄いですね。これだけの情報をどうやって集めたんです?」

 

ソフィア「そこは企業秘密です」

 

ドンドンドン!

 

その時、ドアが乱暴にノックされた。

 

ぽぷら『新君!優ちゃんが!』

 

切羽詰まったぽぷらの声に新は、資料を放り出して部屋から飛び出した。

 

 

同ホテル 優の部屋

新達が中に入ると、ベッドの上でリオナが優を抱きしめながら頭を優しく撫でていた。優はリオナの胸に顔をうずめて泣きじゃくっている。

 

リオナ「あー君…」

 

新「姉ちゃん、ありがとう。優、また夢を見たのか?」

 

優「グス…おにいちゃん…もうやだ…もうやだよぅ…」

 

ソフィア「何があったんですか?」

 

新「真理愛、ぽぷら、一緒にいてくれ。怜、外でソフィアさんに説明を」

 

怜「分かった」

 

怜はソフィアと共に部屋から出ると、詳細を語り始めた

 

怜「予選の最終戦が終わった日の夜から、優が悪夢を見るようになったんです。戦争が起こって、逃げてる途中で攻撃に巻き込まれて……自分が死んでしまう夢を」

 

ソフィア「っ!」

 

怜「それだけじゃない。自分だけ助かって、他の家族が死んでしまう夢も同時に見てしまうらしいんです。毎夜眠るたびに同じ夢を繰り返し、何度も何度も……」

 

ソフィア「お医者さんに診てもらったんですか?」

 

怜「えぇ、さすがにおかしいと思って精神科に連れて行ったのですが、原因ははっきりせず。精神安定剤を処方してもらったはずなんですが、あれを見るに、効果はなかったようで」

 

そこへドアが開いて新と真理愛が出て来た。

 

ソフィア「新さん、優ちゃんは?」

 

新「泣き疲れて眠ったよ。姉ちゃんとぽぷらが添い寝してくれてるけど、多分また……」

 

真理愛「ねぇ、このままでいいの?」

 

新「いいわけないだろ!でも、どうすりゃいいんだよ?医者は解決してくれなかったし、薬は役に立たなかったし、悪夢を止める方法なんて…」

 

怜「だが、放置していいとはならない。これ以上は優のメンタルが心配だ。悪夢が原因で命を絶った事件もある。早急になんとかせねば」

 

新「分かってる!でも、どうすれば…」

 

ソフィア「……皆さん、ちょっといいですか?」

 

3人『?』

 

ソフィア「もしかしたら、何とかなるかもしれません」

 

新「ほ、本当ですか!?」

 

ソフィア「天界にある妖精国を知っていますか?そこに、優ちゃんの悪夢を治療してくれる人がいるはずです」

 

怜「『はず』?曖昧ですね?」

 

ソフィア「ごめんなさい。以前妖精国で仕事した時に小耳に挟んだ程度で、調べても噂レベルの情報しか出てこなかったんです。なんでも、妖精国『アヴァロン・ル・フェ』の最果てに『グランド・キャスター』なる魔術師が住んでいて、どんな悪夢からも救ってくれると」

 

新「なんだって!?じゃあ、すぐに妖精国に行かないと!」

 

怜「待て、新!ただの噂を鵜呑みにするな。それに、仮に本当だったとしても妖精国は地上界で言うブリテン島と同じ面積だと聞く。そこからどうやって見つけ出す?」

 

新「じゃあどうしろって言うんだよ!」

 

真理愛「ねぇ、ちょっといい?さっきの資料の『結城明日奈』のページにチラッと妖精国って見えたんだけど…」

 

ソフィア「はい。明日奈さんは結婚前は妖精国へ出稼ぎに出ていて、そこで功績を上げたことで女王陛下から『妖精騎士ギャラハッド』の称号を得ているんです」

 

新「妖精騎士?」

 

ソフィア「女王陛下直属の騎士に与えられる称号です。そっか!もしかしたら、明日奈さんなら何か知ってるかも?」

 

その言葉が言い終わらぬ内に新は走り出し、3人も遅れて走り出した。

 

夜分遅くの訪問にも関わらず、結城明日奈は嫌な顔一つせず4人を迎え入れてくれた。事情を話すと、少し考えこんだ後こう言った。

 

明日奈「グランド・キャスターは存在する。でも、その場所はモルガン陛下しか知らないの」

 

それを聞いた新は頭を下げて力を貸してほしいと頼み込んだ。放っておいたら土下座せんばかりの勢いだった為、明日奈は慌てて落ち着かせ、すぐに陛下に取り次ぐことを約束してくれた。

 

新「よし!すぐに妖精国に行く!」

 

怜「待て。ここから妖精国までは丸1日かかる。向こうでどれだけ滞在することになるか分からんのだぞ?もしかしたら、本戦に間に合わないかも」

 

新「バカ野郎!んなこと言ってる場合か!目の前で妹が苦しんでるんだぞ!なのに俺だけのうのうと大会に出ていられるか!」

 

怜「……そうだな。すまない。こっちは俺に任せろ。いつ戻ってきてもいいように準備しておく。間に合わないようなら、なんとか玲二さんに頼んでみる。だから必ず戻って来い」

 

新「あぁ!分かってる!」

 

明日奈「一緒に行ってあげたいけど…」

 

新「いいえ、これ以上明日奈さんに迷惑はかけません。取り次いでもらうだけで十分です」

 

真理愛「ちょっと、あなた1人で行く気?」

 

新「あぁ。父さんも母さんも本戦当日じゃないと来られない。真理愛は、優の傍にいてやってくれ」

 

ソフィア「それなら、私が同行します。向こうで仕事した時に、少しだけ陛下に謁見したことがありますし、何かの力になれるかも」

 

新「助かります!」

 

新は部屋に取って返ると、僅かな荷物とフェイトデスティニーを持つと、優の部屋に向かってリオナとぽぷらに事情を説明した後、エントランスへ向かい、待っていたソフィアと共にタクシーに飛び乗って船着き場へ向かった。

 

その道中、新は自身の彼女達一人一人に次のようなメッセージを送った。

 

「妹の優が悪夢にうなされている。俺は優を助けてくれる人がいる妖精国に行く。代わりに傍にいてやって欲しい」

 

船着き場についた2人は、フェリーの最終便に乗り込んで本土へ渡り、そこからバスで天界のヘルエスタ王国へ。さらにそこから馬車でお菓子の国を経由してコーヴァス帝国へ。さらに船で揺られること数時間、怜の言った通り丸1日掛かって漸く妖精国アヴァロン・ル・フェに辿り着いた。

 

新「や、やっと着いた…」

 

ソフィア「着きましたね…。でも、まだまだです」

 

彼らが辿り着いたのは、妖精国の港町ノリッジ。ここからさらに女王モルガンが住まうキャメロットまで馬車で移動しなければならない。

 

ソフィア「時間も遅いですし、明日朝一でお城へ向かいましょう」

 

道中は、資料に目を通したり、リプレイを見たり、ソフィアと話をしたりで観光は勿論、景色を楽しむ余裕もなかった。旅の疲れを癒すためにノリッジの宿屋に入るが…。

 

新「はい!?一部屋しか空いてない!?」

 

受付「申し訳ございません。明後日のGWDWCに妖精騎士ギャラハッド様が出場するでしょう?それでキャメロット城下でお祭りが開かれてるので、そのお客様がお泊りになられているんです」

 

新「通りで人が多いと思ったら…」

 

ソフィア「他に宿は…ないですよね」

 

受付「ノリッジで一番大きいうちでこれなので、他はもう空いていないかと…」

 

新「あの、俺野宿で」

 

ソフィア「ダメだよ!大会前なのに風邪引いたらどうするの!」

 

結局、空いていた部屋に泊まる事となったが、そこが所謂新婚さん御用達の部屋で、寝具は大きいサイズのダブルベッドしか置いてなかった。

 

新「俺、ソファーで」

 

ソフィア「ダメだってば!ソファーには私が」

 

新「女の子をそんな所に寝かせられないって!」

 

お互いに譲らず、明日も早いので、背中を向けて寝るという事で妥協となった。

 

ソフィア「新くん、眠れそう?」

 

新「どうだろう?女の子と一緒に寝た事なんてないし」

 

ベッドで背中合わせで横になる2人。だが、心臓が早鐘を打つほど緊張している為、中々寝付けない。

 

ソフィア「私も男の子と一緒に寝るなんて初めてだから、凄く緊張してる」

 

新「……ごめん、嘘ついた」

 

ソフィア「え?」

 

新「優と、一緒に寝た事、何度もあるんだ」

 

ソフィア「……」

 

新「アイツ、怖い夢見るといつも俺の布団に潜り込んできてさ。今回もそれだと思ってた…。今こうしてる間も、きっと優は苦しんでる。早く、早く楽にしてやらないと。俺、優のお兄ちゃんだから。俺が助けないと…」

 

そこまで言うと、肩に手が触れる感覚がした。寝返りを打って振り返ると、ソフィアがこちらを向いている。

 

ソフィア「気持ちは分かるけど、落ち着いて?」

 

そう言って優しく微笑むソフィアを見ていると、不思議と落ち着く。

 

ソフィア「新くんはちゃんとお兄ちゃん出来てるよ。だって、そうじゃなきゃ自分の状況も顧みないでこんな所に来ないよ。大丈夫、優ちゃんはきっと助かる。私も全力でサポートするから。ね?」

 

新「…‥ありがとう、ございます」

 

そして早朝、ぐっすり眠った2人はチェックアウトを済ませると、馬車でキャメロットへ向かった。時間が早かったことが幸いしたのか、祭りに向かう観光客の馬車の渋滞に巻き込まれることなくキャメロットの城下町へ到着。明日奈が話を通してくれたおかげで、開門時間と同時にキャメロット城内へ入ることが出来、そのまま待合室へ通された。1時間ほど待っただろうか、正午の鐘が鳴ると同時に2人は兵士に連れられて謁見の間へ向かった。

 

 

キャメロット 謁見の間

巨大な扉を通って謁見の間に入った新は、全身に寒気を感じた。謁見の間は床、壁、天井に至るまで氷のようなガラスで造られており、それが余計に寒さを感じさせた。

 

その最奥の玉座に座るのは、銀髪に青い瞳の女性は間違いなくこの妖精国を統べる女王モルガンであろう。

 

その左右には、金髪に白銀の鎧を纏った身長2m近くある女性の騎士と赤髪のロングヘアに赤いドレスを纏った少女が控えている。

 

モルガン「ようこそ。私が妖精国女王モルガン・ル・フェです」

 

ゆっくりとした口調だが、荘厳な声に思わずお辞儀をしてしまう2人。

 

ソフィア「お久しぶりです。女王陛下。私を覚えておりますでしょうか?」

 

モルガン「勿論です。ソフィア・ヴァレンタイン。その節は助かりました。それで、今日はどのような要件で、私に謁見を申し込んだのですか?ギャラハッドまで使ったからには、それ相応の理由があるのでしょう?」

 

感情の欠片も感じさせない表情で見つめられた新は、言葉を出すことが出来なかった。

 

新「お、お、おれ、じゃなくて自分は……あ、あの、その……」

 

漸く絞り出しても、その後が続かない。新の脳内に様々な言葉が浮かんでは消える。ここに来るまでに何度シミュレーションしたはずなのに、ソフィアにも手伝ってもらったのに、言葉が出てこない。

 

新(俺は…‥な、何しに来たんだっけ……そ、そうだ妹、妹を助けてもらって……ちが違う!人に会って、えっとえっと……)

 

次第に視界がぼやけてグラグラと揺れ始めた。

 

新(ダメだ怖い逃げようダメだ助けないと何か言え怖いどうしよう怖い怜誰か真理愛助けて何でこんな事に逃げろ動けない助けて怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)

 

ソフィア「新くん」

 

振るえる新の手をソフィアが優しく握りしめた。

 

ソフィア「大丈夫、大丈夫」

 

すると、体の震えが止まり頭の中がスーッとクリアになっていく。新はモルガンに向き直ると、真っ直ぐに見据えて言った。

 

新「自分は、飛鳥新と言います!妹の優が1週間悪夢にうなされて、心身ともに弱っています!陛下の国に、悪夢を治療してくれる魔術師がいると聞きました!どうか、その人の居場所を教えてください!お願いします!」

 

ソフィア「お願いします!」

 

新とソフィアは深々と頭を下げる。どれ程そうしていただろうか。モルガンが口を開いた。

 

モルガン「事情は分かりました。嘘は吐いていないようですね」

 

新「陛下、じゃあ!」

 

モルガン「ダメです」

 

新「な、何でですか!?」

 

モルガン「アレは危険な存在です。どのような理由であれ、他者と関わらせるわけにはいきません」

 

新「そ、そんな…」

 

モルガン「話は終わりです。下がりなさ「お願いします!!」……」

 

新がモルガンの言葉を遮り、土下座して懇願する。

 

新「医者でも薬でも優を助けることが出来なかった!今この時も!優は苦しんでる!俺は妹を助けたいんです!だから!力を貸してください!何でもします!お願いします!お願いします!!」

 

ソフィア「陛下、私からもお願いします!」

 

床に額をこすりつける2人を冷ややかな視線で見つめるモルガンは、金髪の女性騎士に目配せすると、声を掛けた。

 

モルガン「妹を救う為に何でもすると言いましたね?」

 

新「はい!」

 

モルガン「では…アナタの命を差し出しなさい」

 

新「…え?」

 

顔を上げるといつの間にか女性騎士が目の前に立ち大剣を振り上げている。

 

「ふん!」

 

振り下ろされる大剣。新は思わず、目を瞑って腕で頭を覆う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も起こらない。

 

恐る恐る目を開けると、大剣は自分の数cm先で止まっていた。

 

「『何でもする』という言葉の重みを考えなさい。陛下が本気だったら、貴方は本当に死んでいましたよ」

 

騎士は大剣を下ろすと、諭すように話しかけた。

 

「強さに責任が伴うように、言葉にも責任が伴います。貴方のその軽率な言葉が、どのような結果を齎すか考えた事はありますか?」

 

モルガン「バーゲスト、下がりなさい」

 

バーゲストと呼ばれた騎士は元の位置に戻る。

 

「クスクス…アハハ!お母さま見た?『何でもする』とか言ってたくせに、自分の命を差し出すのは怖いって!今の顔、写真に撮っておけばよかったぜ!」

 

モルガン「口を慎みなさい、バーヴァン・シー。誰だって、目の前に死が迫れば恐怖するでしょう」

 

モルガンは、自身をお母さまと呼んだ赤髪の少女を窘める。

 

新(バーゲストに、バーヴァン・シー……そうか。この2人が、ソフィアさんに教えてもらった『妖精騎士ガウェイン』と『妖精騎士トリスタン』か)

 

モルガン「しかし、アナタの妹への想いは伝わりました。そこで、アナタにチャンスをあげましょう」

 

新「チャンス…ですか?」

 

モルガン「私が課す試練をクリアしなさい。そうすれば、グランド・キャスターに会わせてあげます」

 

新「っ!やります!やらせてください!」

 

その言葉にモルガンはゆっくりと頷く。

 

モルガン「では、新。アナタに与える試練は…」

 

ガッシャアアアアアン!!

 

その時、天井のガラスを突き破って巨大な黒い何かが落ちて来た。

 

「グルルルルルゥゥゥ………ッ!」

 

それは黒いドラゴン。生物と機械のようなユニットが組み合わさったその姿は戦闘機を彷彿とさせる。

 

新「ソフィアさん!」

 

ソフィア「新くん!」

 

新はソフィアを守るように自分の背後に隠す。ドラゴンは新の目と鼻の先まで顔を近づけて、金色の瞳で見定めるように見つめる。

 

モルガン「メリュジーヌ、御客人に失礼ですよ」

 

次の瞬間、ドラゴンが青い光に包まれた。光が消えると、先ほどのドラゴンは影も形もなく、代わりにメタリックブルーの鎧を纏い、目元をバイザーで覆ったシルバーとメタリックピンクを合わせたロングヘアーの少女がいた。

 

メリュジーヌ「すまない陛下。興味深かったからついね。驚かせてごめんね」

 

新「あ、いえ…」

 

ソフィア「貴女は…?」

 

メリュジーヌ「あぁ、自己紹介が遅れたね。僕はメリュジーヌ。ランスロットの称号を持つ妖精騎士さ」

 

新「妖精騎士、ランスロット…」

 

バーゲスト「メリュジーヌ、いい加減天窓を突き破って出勤するのは止めないか。貴様があれをやる度に陛下が自ら魔法で修繕しているんだぞ?」

 

メリュジーヌ「外からダイレクトに出勤できるからね。天窓なんて止めて、開閉ハッチにすべきだよ。そうすればいちいち修繕しなくていいし、僕もフリーダムみたいにカッコよく飛び出せるし」

 

バーヴァン・シー「お母さま、1回コイツに痛い目合わせた方がよくない?」

 

モルガン「天窓の件は一旦置いておきます。メリュジーヌ、良い所に来ました。アナタにはこれから、そこの彼と戦ってもらいます」

 

新「…はい?」

 

メリュジーヌ「僕が、彼と?」

 

モルガンの突然の宣言に状況が飲み込めない新とメリュジーヌ。

 

新「もしかして、試練って」

 

モルガン「飛鳥新、どのような手段を使っても構いません。妖精騎士ランスロットに勝利しなさい」

 

これには、バーゲストとバー・ヴァンシーも目を見開いて驚いている。

 

バーゲスト「陛下!いくらなんでも無茶です!」

 

バー・ヴァンシー「そうよお母さま!一般人が勝てるわけないじゃない!」

 

新「そんなに強いの?」

 

ソフィア「強いなんてものじゃないよ!彼女は、妖精騎士ランスロットは、妖精国、竜人族最強の騎士。その実力は、あの結城明日奈に1回の模擬戦で12回の致命傷を与えるレベル」

 

その言葉に新は絶句するしかなかった。文字通りの規格外。あの結城明日奈でさえそれなら、自分なんかが相手になるわけない。

 

メリュジーヌ「へぇ、君は自分の身の程が分かっているようだね。良い事だよ。自分より強いモノに立ち向かうのは、無謀以外の何物でもないからね」

 

新「それでも…」

 

メリュジーヌ「?」

 

新「それでもやらなきゃいけない!優を、妹を救う為に!」

 

メリュジーヌ「……」

 

新(でもどうすれば?考えろ、考えろ……あ)

 

ふとある事に気付くと、新はメリュジーヌに問いかける。

 

新「なぁ、アンタ、ガンプラバトル出来るか?」

 

メリュジーヌ「驚いたね。どうして分かったんだい?」

 

新「さっき、『開閉ハッチにすれば、フリーダムみたいにカッコよく飛び出せる』って言ってただろ?それって、ガンダムSEEDの『舞い降りる剣』の事言ってるんじゃないかと思って」

 

メリュジーヌ「っ!そうか!ということは、君もガンプラバトラーなんだね!嬉しいよ!アスナがいなくなってからというもの、()と対等に戦える相手が碌にいなかったからね!うんうん!皆まで言わなくてもいいよ!早速やろう!すぐやろう!というわけで陛下、ガンプラウォーズ出して?」

 

今までと打って変わって、子供の様にはしゃぐメリュジーヌに一同は呆気にとられる。

 

モルガン「私をどこぞの青タヌキと間違えているようですね」

 

そう言いつつも、魔法で2つのガンプラウォーズを出現させる。観戦用モニターまで完備されて至れり尽くせりだ。

 

メリュジーヌ「さて、始める前に、改めて君の名前を聞いておこうか」

 

新「…飛鳥新、ランクはダイヤ3、二つ名は『ガンダリウムキラー』!」

 

メリュジーヌ「なるほど、君があの…ふふっ!面白い!僕は妖精騎士ランスロット!真名はメリュジーヌ!いざ、尋常に勝負!」




○神羅シオン
魔術世界『ペンタゴン』を管理する神羅族。一応括りとしては穏健派ではあるが、基本的に興味対象以外にはドライな性格の為か他者との関わりを其処まで持とうとしない。継承前はマジカルキャットという魔力を宿した猫である。前述の通りドライな性格の所為か穏健派の集会にも殆ど出席しない。無呪羅かなたにやられて核を奪われたが、解放後は元の世界に戻って何事もなく過ごしている。

神羅シオンの設定は少し前に神楽様より頂きました。この時は、まさかシオンちゃんが卒業するなんて夢にも思ってなかったなぁ。あくたんや沙花叉がいれば、また違ったのかなぁ…。神羅シオンの容姿やペンタゴンの魔術師達の容姿は遊戯王の『エンデュミオン』というテーマのカードイラストを参考にしました。

最近見積もりが甘すぎると思っている。今回でバトルまで終わらせるつもりだったんだが、まさかのバトル無し。その代わりフラグは立ちまくってるので、オムニバス25で『????』にしていた人物が誰か、皆さんもうお察しでしょう。

NEXT CHAPTER
モルガンの試練としてメリュジーヌに挑む新だが

超高速で繰り出される攻撃に徐々に追い込まれていく

果たして最強の騎士を攻略することは出来るのか?

優を救い、GWDWCに向かうことは出来るのか?

次回『CHAPTER16 妖精騎士ランスロット』
「切開剣技開始!繋げ!『イノセンス・アロンダイト』!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。