「ちくしょおおおおお!!」
という訳で首無し死体から逃げ回っている転生者、森田です。
俺、逃げ回りすぎじゃない?
現在は七崩賢アウラの不死の軍勢から逃走中。アウラの魔法、服従の天秤によって魔力量の低い者は従わなければならない。意志が強ければ逆らえるんだが……それをさせない為に首を切る。思考力を失くす為の措置だ。
まあ死者を愚弄する行為と言ったらそうだし、惨たらしい行為でもある。でもこれに関して俺はそこまで嫌悪感は無い。なんでだろうな?選択を尊重してるってことなのかもな。
俺は正義の味方じゃない。自己中心的で傲慢だ。自己満足の為に人を助けるし偽善もする。そういう人間だ。そんな俺だが自分の中でやっちゃいけないことがあったりする。
それが価値観の押し付け。誰かの選択を貶すこと。この二つだ。
自身の意思を押し付けたり、相手に強要するのはあまり好きじゃない。それは俺自身が嫌いだからだ。
二つ目の誰かの選択を貶すことってのは言い換えれば誰かの選択を尊重することだ。苦心して出した結論や決断を否定することは実はこの世で一番残酷なんじゃないか?
その結果どうなろうともそれは知らない。後悔すれば良い。しかし自分が必死こいて選んだ選択は後悔があったとしても良いものだ。
一方他人に委ねた結果は失敗したら最悪だ。成功しても自身に酷い喪失感を生み出す。
まあ別に軽いことなら良いんだ。例えばゲームのガチャを引くか引かないかとか、今日の夕飯なんかは他人が決めても変わらない。だが人生の選択ともなればそうじゃない。重いもの程他人に委ねるべきじゃないからな。
勿論委ねるのも選択ではあるし、それを選んだならそれでも良い。でもそういう場合は基本的に思考放棄をしたいからだ。それは選択じゃない。
……………まあ行き過ぎた選択は流石に止めるけどな。絶対に失敗が見えていて、それをそいつ自身が望んでいない場合は止めてやる。それを見過ごすのも可哀想だしね。偉そうだな俺。
ま、そうでない限り選択は尊重するべきだと思ってる。アウラのそれもまた選択。それによって多くの人に迷惑をかけているのはいただけないが、原作準拠なこともあり俺は何も言えない。
言いはしないが、俺に喧嘩を売ったんだ。対処ぐらいはさせてもらおう。
《魔法を解析する魔法》
俺は魔法を解析するのに酷く時間がかかる。本に書かれていたりする魔法なら数十年かかるだろう。まあ速いときは数ヶ月。実演されているものならもっと早い。基本数日あれば終わる。……………まあ遅いよね。これは正直マジで遅い。アウラ程の魔法なら基本の中には入らないからなあ。という訳で作り出したのがこの魔法。
めちゃくちゃ便利。相手の魔法解析するのって大変だからね。けどこれがあればへっちゃら。どんな魔法も数分で解いちゃうぞ!言ってしまえばパソコンみたいなものだ。自動でめっちゃ速くやってくれます。
そうこうしてたら解析が終わったねえ。
どれどれ…………ワーオ。これは凄いわ。何だこの密度。構成が半端ねえ。完成度も高すぎる。真っ向からの戦闘に向いてないから結構特殊な物かと思ったが………凄いな。無駄が省かれ過ぎてる。極限まで実用的で合理的だ。
俺じゃ無理だなこれは。これが魔法の高みか。俺が年月をかけて使い処も無いような規模の魔法を造り出したのに対し、こいつはどこまでも実用的。使いやすく無駄を省き、最低限で最大限の成果を出せる。まあどちらも他人が使えない程複雑ではあるんだが。
しかし解析してしまってはゴミも同然。そういう何かに影響を及ぼす系統の魔法は解析してしまえばこちらの物。あとはその魔法を無効化するだけだ。
「ほいっとな」
《呪いを解く魔法》
辺りを光が包み、周りの鎧がバタバタと糸が切れたように倒れていく。アウラは一度も魔法を解除されたことがない。それは未来のフリーレンとの一戦で明言している。まあ軽く原作崩壊だ。
そんなことやって良いのかって?まあやりようはいくらでもあるさ。
それよりも最低限の魔力で解除できるし、完成度の高い魔法も知れたしでメリットの方がデカイ。案外良かったな今回は。
強制的な呪いの解除をする魔法もあるが、それは女神の魔法なんだよね。そこまでは俺も習得出来てない。俺に出来るのは自分の傷の回復だけだ。後は普通の魔法で呪いを跳ね返すとかね。それだけだ。
それに解析したことによってもしかしたら俺がこの魔法を習得できるかもしれないのだ。流石にここまで悪趣味な魔法は使い処が難しいが、まあ覚えておいて損はない。
正直破壊って方法もあった。この軍勢を見る限りヒンメル達では絶対に無理だ。何かが原作とは異なっている。勿論作中では語られなかっただけで何者かの手助けがあった可能性もある。しかし順当にいけばヒンメル達は負ける。どうあってもこれじゃ倒せない。
だからこそ、ヒンメル達が来る前に破壊してどうにかする方が良かった。そちらの方が速いし、ヒンメル達にバレる確率も少ない。しかしどうしてもそれは嫌だった。
本当によく頑張ったとそう言いたかったから。
ここにいる死体は全員アウラに立ち向かった者達だ。中には俺が知る者もいる。百年以上前に名を馳せた英雄や何度か一緒に依頼をこなした冒険者。名も知らないが、それでも最後まで足掻いた者達。そいつらに終わりが必要だと思ったから。
確かに今回アウラの魔法が知れたことは嬉しい。アウラの選択も尊重はする。しかしだ。それによって犠牲になった人達に対して何も思う処が無いのか、と言われたらそれは違う。
だからこそ祈りを捧げる。誰にかは分からない。形式的な物かもしれない。けど彼らは犠牲になった。弱肉強食、それが自然の摂理とはいえだ。その最後が残酷だったことに変わりはない。彼等が少しでも幸せになれたらと、そう願っておくことにした。
***
うーん。まあ粗方片づいたがどうしようかな。フリーレンやハイターには気づかれてないだろうが、さっさとやらないとキツイだろうな。まだアウラも進軍する前だ。町から結構離れてるからな。ここならある程度は大丈夫だろ。
「さてと、やるか」
久しく出していない全力を出す。勿論魔法の方じゃない。近接戦闘の方だ。
俺もこの千年只待っていた訳じゃない。金を稼ぐ傍らてきとうな魔法を発動し続け、戦闘は出来るだけ近接で行った。
俺の場合は冒険者だったからな。討伐依頼も多かったから助かった。
時には無茶なこともやった。村中が魔物の巣窟になっていたところに飛び込んだり、凶暴な魔物の住む山で暴れたり。
そのお陰で今では単独でのドラゴン討伐も出来る。アイゼンとは体の作りや才能の差が激しいから難しいが、それに近しい強さは手に入れた。自由落下も五キロまでなら無傷だろうな。
つまり、アウラ単体なら負ける要素はない。
魔力を使わず飛び上がる。全力でやれば結構移動できるものだ。さてアウラは………見つけた。ここから左に五百メートルくらいか?お、いたいた。特徴的な角に濃いピンク髪。
うーんギルティ!
「よっと」
「ッッッ!………あなた何者?」
「じゃあまずは自己紹介から。俺の名前は森田。只の弱者男性だ」
***
「おかしい」
そう言ったのはヒンメルかフリーレンか、アイゼンかもしれないし、私かもしれない。けど全員が思っているだろう。明らかに少ない。
私達は魔王軍幹部、七崩賢アウラとの戦闘を行っている。最初にその惨い戦い方を聞いた時は頭に血が登った。魔族はどこまでも魔族なのだと思いしらされた。
しかし腐っても魔王軍幹部。その戦略は強い。今まで旅をしてきた中でも一番の苦境。クヴァールとの一戦が思い出される程に。そう、確かに強いのですが………
「うん、やっぱりおかしい」
フリーレンの言葉で確信する。そう、不死の軍勢の数が少ない。事前に私達が聞いていた数と違う。見ていて三割程少なくなっている。これは、どういうことでしょうか。
「ヒンメル、これは……」
「うん、明らかに少ないね。けど好都合だ。元々の数だったら負ける可能性があったけどこれならいける。僕らなら負けない」
「………そうですね」
ヒンメルの言葉はいつしか信じられるものに変わっていた。最初に勇者に成るなんて言われた時は、お前には無理だなんて言ってしまいましたが。それがこんなところまで来てしまった。今では彼の言葉が信じられる。私達ならこの苦境も乗り越えられるでしょう。
***
「ッ!あなた何なのよっ!」
分からなかった。突如前に現れたこの存在が何なのか。自分よりも明らかに弱い。取るに足らない存在だと認識した。しかし目の前の光景はそれを否定する。自分の魔法を解析され手駒が減っていく。自身のプライドが人生をかけた魔法への執念が崩れ去っていく。
こんなのが私より強いなんて、あり得ない!
しかし現実問題打開策が思いつかない。このままでは戦力は減らされていくだけだ。自分が攻撃したところで何も通用しないだろう。どうする?どうすれば………
そうだ、私にはこの魔法がある。
最後の最後まで頼りになるのはやはり自分だ。何を弱気になることがある。魔力は私より低いのは明らか。この私が人間に負けるわけがない。
「どんなにやろうとあなたは私には及ばないわ」
この天秤は絶対だ。私は500年表以上生きた大魔族なのだから、負けるなんてあり得ない。ましてやこんな魔力量の低いゴミになんて……
「ああ、そうだなぁ」
瞬間、不気味な笑顔が顔に張り付いた。
嫌悪感が増す。底知れなさが一気に表層に表れた。自身の本能が何かを訴えている気がした。
何?何なのこの感じは。いや、大丈夫。何を不安がることがあるの。私の勝ちは揺るがない。何も心配はいらないわ。
「その笑顔もここまでよ。《服従させる魔法》」
私と相手の魂が天秤に乗る。徐々に天秤が傾いていく。やはり私の勝ちだった。どこに不安になる要素があったのだろう。おおよそただのハッタリの類いだったのだろう。
ああ、いつものようにそこには泣き顔があるだろう。人間では私に敵うことなど出来ないのだから。?どうしたのだろう。天秤が……震えてる?
どうなって、いや、何でそんな顔をしている?まるで勝ち誇ったような。何?何を見落としているの!?
「ははっ」
「あなた何をっ、ッッ!!!」
思わず顔を睨み付けて、絶句した。
不気味だ。どこまで言っても恐怖が晴れない。そんな、この世の怨嗟が詰まったような笑顔をしている。何故、何故そんな顔をしているのよ。
「本当に………あんた馬鹿だよ」
「えっ、嘘……」
なによ………これ
「嘘よ!どうなってっ!」
「いいや、嘘じゃない」
あり得ない光景だった。
奴が言葉を発した瞬間に圧倒的な魔力が溢れた。恐怖で身がすくむ程の魔力量。もう魂が天秤に乗ってしまっている。取り止めは間に合わない。
非常にも、天秤は傾き全てが喫した。
「何でっ!どうしてこんなこと!」
「何で?どうして?そりゃあんたらに勝つためだ。生き残るためだ。そして今それが証明された」
「そんな……、私がこんなことで……!」
「卑怯か?ならそれで良いさ。戦いに油断も何も言ってる暇はないんだ。誇りなんて犬の餌にもなりやしねえ。お前らはそこを履き違えてんだ」
「嫌……嫌よ!こんなのあり得ない!」
「じゃあな。アウラ、俺を一生忘れ、今まで通りに振る舞え」
勝者の言葉によって戦いは幕を閉じた。
フェイトはゼロからの方が良いですかね?それともステイナイト?
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