モリタさん?恩人よ。幾度となく私を救ってくれたわ。最後に会ったのは何時だったかしら。あの時にお礼を言えていればどれだけ良かったか。結局最後まで嫌われたままだったもの。いつの間にか感じられなくなったあの魔力………年老いた私にとって唯一の心残りよ。それよりレルネン、そんな昔の話をどうして知ってるのかしら?
大陸魔法協会特別外部顧問 ハーティリア
「抜けねえ………」
勇者の剣。それは選ばれた勇者にしか抜けないという剣。天上の女神が残した物。抜いた者は世界を滅ぼす大いなる災いを撃ち払うらしい。
という訳で雪山スニーキングミッション完了、森田です。
いやあ雪山の主相手にスニーキングして勇者の剣までたどりつくのは無理があるって。まあやったんですけどね。誰だよ余裕って言った奴!ざけんな!
勇者の剣による影響かここら辺の魔物は本能や感覚といったものがエグい。勇者一行やフランメですら気づかなかった俺のスニーキングがバレかけた。周りの魔物全員がこっちを向いた時は流石に肝が冷えた。
何でそんなことしてるのかって?だって勇者の剣だよ勇者の剣。一回ぐらいは挑戦してみたいじゃん!お前ら男の子だろ!?下のモン付いてんなら一度は憧れるだろ!
まあそんな甘いことはないわな。ヒンメルに抜けないのが俺に抜ける訳がない。特に魔法的な物は感じないんだけどなあ。どうなってんだろこれ。まあ俺の魔法の力が足りないだけの可能性もある。
この世界の魔法ってのにはある法則がある。力量が離れすぎてる魔法は魔法として認識出来ないって奴だ。魔力が感じられないんだな。作中じゃマハトの魔法をフリーレンやフェルンが認識出来なかった。いや、フリーレンは解析出来たし(作中から)600年前には一回解除してる。
それを考えるとフリーレンすげえわ。俺なんかよりよっぽどすげえ。すいません作中の魔法使い全員俺より凄かったです。
てな訳でお手上げだ。相も変わらず俺は魔法の才能の無さに苦しんでるってことだ。まあ天上の女神が残した物だし、俺には荷が重すぎたかな。
さて、そろそろ彼らが来る。後は作中通りに進むだろうよ。ヒンメルは偽者のまま進むんだ。この世に本物が存在したとしてもだからなんだって話なんだ。それを証明するってのはどうしても難しいけどね。
アイゼンパネェ………。
***
雪山を越えて、恐らく作中でクラフトと出会う小屋も抜けたのだろう。ここは……うんまあ恐らくそうなんだろう。
北側諸国アルト森林近くの村。
という訳でザインの村に来ました森田です。
ここでのイベントは……んまあ特に無し。あんたらもさっさと次の話にいくことをオススメするぜ。それにしてもザインかあ。あの僧侶はまあ結構好きなんだよね。それに、ヒンメルのあの言葉がある。
「今、かあ」
ザインを誘う下りは残酷だ。そこには大人としての、大人になりきれていない青年の苦しみがある。その苦しみを否定して、その変化を消して、踏み出せと言うんだ。
そりゃ後悔は無い方が良いとか言うんだろう。それが普通なんだろう。しかしだからと言って、そこでウジウジしてるのが悪い訳でもないと思う。でも俺にとって耳の痛い話だったのも事実。
後悔する選択が無い人生はあり得ない。それを後からでも取り戻せと言ってくる。今どうしたいかが重要だとヒンメルは言ったから。俺のような半端者には後悔が無い人生なんて存在しないからな。それを諦めるのは、夢を諦める人生ってのは結構ありふれた物だろう?
それが否定される。辛いが、相容れない思いもある。プライドも夢も希望も、先ずはバキバキに折るところから俺は始まったってのに。取り戻せない人間もこの世には居る。只、それだけなんだろう。それは酷く寂しいけど、仕方ないって言葉で諦めるしかないんだとも思う。そういう人生でも楽しいもんだ。
そうやって諦めた代わりに人間は色々知ることが出来る。経験ってのはそういうもんだ。
思いは言葉にしないと伝わらない。よく言われる言葉だ。けどここまで難しくて簡単なことはない。
でもまあどんなに言葉にしても伝わらない時もあるんだけどな。
伝わらないと言えばだ。ヒンメルもさっさと言えば良いものを。まあこのままフリーレンに言う気は無いんだろうな。そうして原作が始まる訳だ。伝えない選択もあるってことだ。思いは言葉にしなきゃ伝わることはない。良くも悪くもな。
でもプロポーズ紛いのことしといて告白しねえお前は何なんだヒンメル!!
まあ鏡蓮華のアクセサリーなんて分かった時は流石に可哀想だったけどさ。フリーレンが分かってないのを理解したあたり皮肉すぎる。
………フリーレンを思ってのことなんだろうけどなあ。
さ、折角だしクラフトの像でも探しますか。
***
「うっひょぉ~!!!死ぬってこれ!!」
フォルさんツヨスギィ!!
右!と見せかけて足!見えてるぞ!!
「首!胴!甘いわぁ!!」
「………儂の敗けだな」
よっしゃあ!!俺の勝ち!シュタルク敗北!!
「ま、通算67敗3勝5引き分けだけどな!クソが!!」
という訳でフォル爺との修行中、森田です。
フォル爺ことフォルさんとはヒンメル達よりもずっと前、数百年程前に偶然出会えたのだ。その頃から修行相手としたちょくちょく会っていた。腕の鈍りを解消するのには良い相手だ。当時は俺より圧倒的に格上だったからな。力を付けるために追い込んだ時期は助かったものだ。
ヒンメル達がここに来るのはあと一週間ぐらいはあるだろう。今回が最後かもしれないからな。話がしたかったし別れも言っておきたかった。
「なあ、フォルさん───────────────────
一通り話を終え、時間が過ぎ、あっという間に最後の日になっていた。そろそろヒンメル達も来るだろう。バレない為にも離れなければいけない。
「行くのか」
「ん?ああ、まあね。…………フォルさん、あんたはまだあの人の声を覚えているかい?」
恐らく覚えているだろう。自身の嫁のことなど、それはもう鮮明に。けど、敢えて聞く。一応聞いておく。
「覚えておる。当たり前だ」
「そう……じゃあその記憶を未来に連れていってくれよ。いずれ人は忘れてしまう。声から姿から匂いまで、全て忘れてしまうからさ。だから大切にしてくれ。その記憶を」
重要な、とても重要なその記憶。いずれ、100年もしたら忘れてしまうのだろうけど。それでも少しでも長く覚えていて欲しい。そうしたらより多くの記憶を思い出せるだろうから。
「ああ、覚えておこう」
「よし、これでお別れだフォルさん。前に言った通り俺はこれから死にに往く。俺の記憶は未来に連れてくなよ?」
空元気とは違う。死にに往くことがそんなに悪いことでもないと、俺は本気でそう思ってしまう。死ぬことへの恐怖はある。でもそれは健全なことだ。それを抱きながら死ねるのは素晴らしいことだなんて。俺はやはりイカれてるんだろうな。
まあ前世の頃からこんなだったし今更だ。前世の知り合いにも軒並み頭がおかしいとは言われてたんだけどなあ。只の冗談だなんて笑ってしまっていた。
「………分かった。それは良い。しかし本当にお前が死ぬようなことがあるのか?」
少し心配そうな、同時に疑うような、この戦士には似合わない反応をされた。まあ逆の立場だったらあまり受け入れられることでは無いよな。それを尊重しようとしてくれる辺りこの人は優しい。
「フォルさん、南の勇者って知ってるかい?」
「ああ、会ったことはないが」
「あいつはさ、未来が見えていたんだ。自分の死が、最後の戦いが、人類と魔族の未来が」
「そうだったのか。あの最強の勇者が」
「信じられないだろ?でもまあそんな奴から言われたんだ。俺は近いうちに死ぬってさ。だからさ、それに乗ってやろうと思うんだ」
「死ぬことは恐くないのか?」
「ふふ、恐いさ。そりゃな。でもそれで良いんだよ。死への恐怖が失くなるような化け物にはなったつもりはないからね」
「そうか、妻は恐くないと言っていた」
「ああ、あの子は確かにそう言っていた」
何年も前に死んだ彼の妻。彼女とも俺は面識があった。何度も会ったし、一緒に話もした。料理も作った。思い出すってのはやっぱり独特の寂しさと嬉しさがある。
「俺とあの子は違うってことだ。実は俺って死ぬの二回目だしね」
「冗談が上手いなお前は」
「ああ、本当に嘘が上手いだろう?俺の唯一誇れる汚点さ」
「昔から変わらないこれも終わるのだな」
「ああ、永遠は無い。この会話もこれで終わりだ。俺もそろそろ往くよ」
「森田、お前と会えて良かった」
「ああ、俺もだよ。最後だからな、餞別だ」
辺りが淡い光に包まれる。何時ものように発動する魔法。けどこの魔法は少し特別だな。願わくば、その追憶が上手くいくように。
「いつか思い出す時が来たらそれを使うといい。それじゃ、さようなら、フォルさん。元気で」
「ああ、ありがとう森田」
もう会えない。できれば、そんなのは嫌だった。自分が死ぬからなんておかしい話だ。けどやらねばならない。南の勇者、あんたも同じだったのかもな。
「さて、次はと」
ペラペラと手帳のページを捲る。原作のイベントを覚えてる限り書いた手帳。覚えてるうちにと昔作ったものだ。順番もしっかり整えられてる筈だ。
「ローア街道、後はオッフェン群峰………氷柱桜か。というと、あそこかもな」
何となくあの世界を思い出す。いつか帰れたら、なんて思うけど。叶わない夢だろう。置いてきた物もない。特段執着や繋がりも無かった。戻りたいと思うのはゲームがしたいからとか、その程度の理由だ。
そう言えば次の氷柱桜ってあれか。しだれ桜みたいな感じだったよな?まだ冬の氷柱桜は見たことないな。
「ふふ、楽しみだ」
もう少し要らない物語は続く。
お久しぶりです。
結構重要なところなんですが、短くまとめました。フォル爺とか勇者の剣はもう少し書きたかったなあ。自分の文章力の無さが恨めしい……。
追記
主人公の本気っていりますか?
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