はいという訳で無事フリーレン達に会えなかった森田です(号泣)。
いやー聖杖の証取りてーとか思ってたら全然取れないし、てか取り方結局分からないし、フランメはフランメで王国のお偉いさんとしか関わって無いから俺は何も出来ず。今はしがない宿屋の店員として働いております。
こんなことならソリテールと仲良くなっとくべきだったのかもしれん。折角会えたネームドキャラだってのに。逃がした魚はデカイなあ。いやあんなサイコと共存は無理やな(呆れ)。彼女と会ったのももう数年前。あれからまた歳月は流れてしまった。
「モリタさーん!掃除終わった~?」
「はーい!今すぐ!」
いやーもうこの労働も板に付いてきた。人間として生きるためには労働は必須。
これでも俺はまだ価値観が人間だ。時間の捉え方も余り変わっていない。その一瞬に、刹那に全力のノリで生きている。
今までは魔法の修行とか、筋トレとか、日本の娯楽の再現とか、それらを義務として、仕事としてこなしてきたから良かったけど。今は旅しているようなものだからな。
無職はどうしても俺には無理だ。やるべきことが無いと壊れてしまう。そういう人間だ俺は。何も変わらない。前世から変わらない俺のスタンスだ。
もしかして社畜の才能が俺にはあったのか?前世で長生きすれば良かった!
閑話休題。
変わらないと言えばそう。人間の言葉もだ。俺は遥か昔。この世界がフリーレンの世界だと分かった頃に人間の言語を勉強した。第二言語の習得は死ぬ程大変だったけど、体がこの世界のだからかなんとかなった。この体、エルフってだけあって優秀なんだよな。記憶したこと忘れなかったりするし。
てな感じであんな昔の言葉が今でも使われているのだ。本当に楽で助かるよ全く。
まあ他にも変わらない物がある。俺の顔に対しての反応だ。今でも俺の顔は魔物だと思われてしまう。俺は整形とかは嫌いだ。他人には推奨したりするが自分は絶対にやりたくない。自分の体を余り弄りたくは無いのだ。
だから素直に《幻覚を見せる魔法》で顔を誤魔化している。けど敏い魔法使いが見たら分かってしまうだろうから店員をやる時以外は仮面をしている。色々注目を集めてしまうが仕方ない。美味い食事の為だ。仕方ない!
「掃除終わりましたー」
「はーい、お疲れ様ー。じゃあ厨房で肉の下処理お願いできる?その次はソテー作っちゃって」
「はい、分かりました」
この宿屋はレストランも兼ねているのが良いところだよな。時々素材の余りをくれるのも有難い。金を貰えて食材も貰える。俺の欲は満たされてばかりだ。
「あ、いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
どうやら客が来たらしい。こんな時間に来るなんて珍しいな。まだ日本時間で言うところの3時だ。食事の時間じゃないし、宿を取るにも早いなあ。もしかして町の人かな?
ん?厨房に誰か来るな。女将さんか?
「モリタさん!今すぐ来てくれる!?」
「え?あ、はい」
鬼気迫ると言った表情の女将さんに呼ばれた。どうなってる?俺何かやっちゃった系?だとしたらヤバくね?
女将さんに着いていくといかにも貴族っぽそうな服に身を包んだ方々と、へえ、人間にしては凄い魔力を纏ったオレンジ髪の女性。随分と綺麗な方だこと。魔力を抑えているな?成る程、相当な使い手だ。何時だったか見掛けたような気もするな。
よし、取り敢えず、跪くか。女将さんもやろうとしてるしね。俺も一緒に倣っとこう。
「あー良いんだ。そんなことしなくて。顔を上げてくれ」
オレンジ髪が話かけてくる。この人どっかで見たような?マジで何処だっけ?
「私の名前はフランメ。此処に魔法使いが居ると聞いて来た。お前だな?」
!?!????!!!!
はっ!?嘘?!マジか!ほんとだ!本当にフランメだ!何で気づかなかったんだ。マジかよ!おい!?
「ははっ、その表情だと私の事は知ってるらしいね」
「お、お噂は予々。まさかお会いすることが出来るとは思ってもみませんでした」
「随分と仰々しいね。此処では何だし、少し話さないか?」
行きてえ~。フランメと話してみたい~。マジでネームドと話す為にこんな修行したんだからこちとら。でも仕事投げ出すのもなあ。流石によ。
「大丈夫よ。今日はもう上がっちゃって」
「え、本当ですか?有難うございます!」
女将さん優し~~!!よし、行こう!
***
いつの間にかおしゃんティーなカッフェに居たのだが。どうなっている。まさか時間操作の魔法?
こんなおしゃんティーな所に俺は来て良いのだろうか。あ、駄目ですよねそうですよねすいません。周りの視線が怖い。前世の頃からスタバとか一回も行かなかった俺にこれはキツイ!死ぬ~~!!
「あの、その、な、何でこんな所に……?」
「ん?ああ、話し合いだからな。落ち着ける所が良いと思ってね」
そういうことじゃねえんだよなあ。いつの間にか貴族の人達いないし、マジでこんなトラップがあるとか聞いてないぞ。これは罠だ!!
「そ、それで、話っていうのは?」
「ああ、まあ、単刀直入に言うと国の魔法使いになってみないかという話だ。後お前の名前は?」
国の魔法使い?…………ああ、成る程。国専属の魔法使いになってフランメと一緒に魔法を広めろと。人間に広める手伝いをして国に認めさせろと。そういう事だろうな。
「ああ、忘れてました。森田です。よろしくお願いします」
「ふーん。モリタか、よろしく」
「それで、国の魔法使い、でしたっけ?」
「ああ」
うーん無理だな。断る以外あり得ない。此処で下手な事をしたら俺は歴史に名を残しかねない。
この時代、魔法を使える人間の方が珍しい。まだ誰もが魔法を使える時代じゃないし、それは魔族の物という認識だろう。だからフランメは此処に来た。魔法を使える人材が珍しいから。末端として利用する気なんだろう。
別にフランメからどう思われていようが構わない。勿論魔力は抑えているし、ムラが無いように何千年とその状態で過ごしている。だから俺の魔力の膨大さがバレることは無い筈だ。けどバレたって別に変わらない。
そりゃバレないに越したことは無いさ。強い存在ってのはそれだけで記憶に残る。
それでフランメの何かが変わるかもしれない。会話の内容がほんの少しだけ変わるかもしれない。フランメはそれだけで未来を変えるだろう。それほど強大な人物だ。歴史に名を残す英雄だからな。
けどまあその程度だ。物語は大きく変わることはない。ただそういう人物が居たと。過去に居たのではないかという幻想が残るだけ。物語に変な一ページが加わるだけで、物語の内容に変化は無い筈だ。
だから断る。断った方が何もならない確率は高い。彼女からの心象が悪くなる程度なら、仕方ないだろう。
次に必要なのは断る理由だ。聞かれないかもしれないが、聞かれた場合はヤバい。流石にこんな意味不明な理由で断る訳にもいかないからな。単純に責任が重いってことにするか。うん、それが妥当だろうな。
さて、こんな重大な嘘なんて久しぶりだけどいけるかな?鈍ってないと良いけど……
「随分と考えるんだな?」
「え?あ、ああ、すいません。もう大丈夫です。それで、今回はまあお断りさせて頂こうかと……」
「理由を聞いても良いか?私はそれなりに良い条件だったと思うんだけどな」
「いやあ、流石に重大過ぎますよ。国の魔法使いなんて僕には無理です。何かあった時が怖いですから」
「………なるほどな。分かった。うん、今回は諦めるさ」
随分あっさりと引き下がったな。何か感づいたか?いや、そうだとしたも断れるなら良い。
「はい、今回はありがとうございました。また何かあった時はお願いします」
「ああ、そうだね。それで、ここからは個人的な話になるんだけどさ、お前どれくらい出来る?」
?????
おいおいおい、待て、待ってくれって。可笑しいだろ。いやまだそうだと決まった訳じゃあ無いんだ。そうだよ、全然大丈夫に決まってるだろ(震え)
「どれくらいとはどういう……?主語が無いと何も分からないのですが」
「魔法だよ。分かってるだろ?」
「ああ、そういう。でもそんなに出来ませんよ?他人と比べたことも無いので分かりませんが、少なくともフランメ様よりは下ですよね」
少し雰囲気が強まった。フランメから圧を感じる。
「………お前は色々隠し過ぎじゃないか?さっきから私はお前の素性が全く見えない。その顔の魔法もそうだし、その雰囲気もだ。血にまみれている感じはするのに私やゼーリエなんかとは違う。まるであの子みたいな、平和の時代の魔法使いみたいだ」
なるほどな。今ので確定した。そう、二つ確定したことがある。一つ目はフランメは俺をいぶかしんでいること。何か悪印象がある訳じゃない。何かを疑っている訳ではなく、単純に疑問に思っているだけだ。
二つ目はフリーレンとフランメが会っていること。ゼーリエとフリーレンは分からんけど、エルフの村はやられたらしい。行ってみたかったな………。
「別に隠している訳じゃないんですよ。顔は違いますけど。安心して下さい。僕は只の人間ですから」
じっと彼女らの目を見つめた。此処で目を反らしてしまえば嘘だと断定される。自身の誠実さは視線に、表情に、身体の機敏に現れるから。
「………はあ、嘘じゃなさそうだね。あと、その敬語も止めなよ。お前には何故か使われたくない」
敬語使われたく無いってなんだよ。まあ良いや。雰囲気も弛緩したし、取り敢えずやりきっただろう。
……………これさ、何か知ってる謎の怪しい奴ムーブいけるくね?謎キャラムーブとか思春期の夢だよな。ちょっとだけ試してみるか。
「分かったよ。敬語は止める。じゃあ俺はここら辺で行くわ」
「そう、じゃあまたいつかね」
「……フランメ、人の時代を切り開くのは偉大なる誰かだ。人間の幸せを願えるのは人間しかいない。けどもういるだろ?平和な時代の魔法使いは。あんたも頑張れよ」
「………お前本当に何者だい?」
「言ったろ。只の人間だよ」
これがフランメとの最初の出会いだった。
謎の色々知ってそうな人って良いよね