「はぁ~」
きつすぎるぜ。
俺は思わずため息をつく。
俺の名前は『葛葉 紘汰』見た目も中身も普通であると思っているが、少しばかり変わった事情でこの場所にいる。
ここは世界で唯一となるIS操縦者育成学校『IS学園』だ。
ISについてと俺の事に関しては後々説明するとして、ISを使えるのは女性だけ、つまり男子がいないのである。
よって、周りにいるのは女子女子女子。
男は俺のほかにはもう2人しかいない。
そのもう1人というのが1番前の真ん中の席、これでもかというくらいに目立っている『織斑 一夏』
ニュースの話題を独占していたから(まあ、俺ともう1人もだが)名前は分かる。
よりにもよってあんな目立つ席になるなんて不幸なやつだ。
後ろの方の席の俺でさえ、女子からの視線がキツイというのに、あれでは女子恐怖症になってしまうのではないかと心配になってしまう。
もう1人は少し後ろの席に座っている『駆紋 戒斗』。
こいつと俺は、ここに来る前にもとある人物のもとで一緒にいたので、一応友人と言ってもいい間柄だ。
戒斗は周りの女子などまるで気にしている様子はない。
いつも通りの顔で腕を組みながら窓の方に顔を向けている。
何も知らない人なら照れ隠しに窓の外を見ているのかと思うかもしれないが、戒斗はこれが普通なんだよなぁ。
こいつの度胸が欲しいもんだよ。
そんなことを思っていると、
「皆さん入学おめでとうございます、私は副担任の山田真耶です」
山田先生が挨拶をしてくるが、教室から帰ってくるのは無情な沈黙だ。
女子っていうのは怖い生き物だ、見ろ、山田先生が泣きそうじゃないか。
「……うぅ。きょ、 今日から皆さんはIS学園の生徒です。この学園は全寮制、学校でも放課後も一緒です。仲良く助け合って楽しい三年間にしましょうね!」
それでも流石先生だ。
何とか会話をつなげたが、やはり帰ってくるのは生徒からの視線だけ。
そこからさらに話題を転換して、自己紹介になった。
出席番号1番の人がちゃんと自己紹介してくれた時の山田先生の顔には、ホロリときてしまった。
自己紹介は滞りなく進んでいたが、男子生徒、つまり織斑が、自己紹介した時にそれは起こった。
「学校では織斑先生と呼べ」
黒いスーツをクールに着こなす女性に出席簿で一発もらい、さらに織斑が「千冬姉!」と言ってしまったせいでもう一発げんこつを喰らった。
「先生もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」
いえいえと手を振って否定する山田先生にほほえみにを向けて、壇上に登る。
「諸君、私が担任の織斑 千冬だ。君たち新人を一年で使いものにするのが仕事だ―――」
長く、そして理不尽ともいえるセリフが終わった途端、女子から黄色い声援が耳を貫く。
「毎年よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。私のクラスに集中させているのか?」
織斑先生は手を顔に当てて顔をしかめている。
あれは本当にうるさく思っている顔だな。
「それで? 挨拶も満足にできんのか、お前は」
「いや、あの、千冬姉、俺は……」
再度飛来する主席簿。
うわ、痛そう。
「織斑先生と呼べ」
「はい、織斑先生」
あの2人兄弟なんだな。
名字も同じ『織斑』だし、千冬姉って呼んでるし。
「静かにしろ! 諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろよ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
まったく理不尽なセリフだぜ。
そうぼやきつつも俺は、教科書を取り出し始めた。