試合開始時間が近まり、戒斗と一緒に立っていると、
「おーい、紘汰、戒斗」
一夏と篠ノ之さんが近くに来た。
「調子はどうだ?」
「調子は……まあ、ぼちぼちかな。そっちこそ専用機届かなかったんだろ? 大丈夫なのか?」
そう、一夏の専用機は、試合当日のこの時刻にやっと届いたのだ。
そのせいで一夏はずっと剣道だったみたいだし、正直、まともに戦えるとは思えないんだけど。
「大丈夫じゃない。どうしよう紘汰」
俺が知るかよ。
っていうか、対戦相手に聞くな。
そっちが決闘を受けたんだろ。
俺はどっちかと言えば被害者なんだぞ。
そんなことを言っているうちに、山田先生からのアナウンスが入る。
とうとう試合が始まるようだ。
「ほら、さっさと自分のISのところに行け」
「ああ」
俺にせかされると一夏と篠ノ之さんは届いたばかりのISに向かっていく。
残ったのは戒斗だけだ。
「お前があの程度の奴に負けるとは思わんが、一応言っておいてやる。勝て」
「分かってるよ」
俺は軽く手を上げてそれに応え、懐から黒い物体―――戦国ドライバー―――を取り出す。
それを腰に近づけると黄色い帯が巻き付き、ベルトとなる。
さらに今度はオレンジを模した錠前『ロックシード』を取り出す。
それを斜めに構えて一言。
「変身!!」
《オレンジ》
電子音と共に俺の頭上にファスナーが現れオレンジが降下してくる。
ロックシードを戦国ドライバーにセットしてロック。
《LOCK ON》
それと同時にベルトからホラ貝のような音が鳴り響く。
最後に横についているカッティングブレードを下す。
《ソイヤッ! オレンジアームズ・花道・オンステージ!》
オレンジが俺にかぶさり、同時に紺色のライドウェアが作られる。
ちょうど、オレンジの皮がむけるように、俺の頭をすっぽり覆っていたオレンジが展開し、変身が完了する。
これが俺の専用IS『鎧武』だ。
「さてと、行きますかね」
俺は、カタパルトから飛び降りた。
「えーっと紘汰。それがお前のISか?」
「そうだけど、何か問題が?」
「いや……個性的だと思って」
「素直に変って言えよ」
俺だっておかしいと思うもん。
「ま、性能は折り紙つきだ。と、言うわけで、さっさとやろうか」
俺は大橙丸と無双セイバーを二刀流にして構える。
対する一夏も、近接用ブレードを構える。
先に動き出したのは俺だ。
二刀流の利を生かした高速の連続切りを一夏は裁くので精いっぱいだ。
とはいえ俺はまだ本気じゃない。
一夏のISは
せめてそれまでは待っていないと、フェアじゃない。
「おい、紘汰。お前本気じゃないな」
「だったら?」
「お前でも怒るぞ。真剣勝負で手抜きなんかするな!」
「……分かったよ」
俺は剣を振るう速度のギアを上げる。
当然、いっぱいいっぱいだった一夏は、防ぎきれずに切り裂かれる。
「これで終わりだ!」
ドライバーのカッティングブレードを1回倒す。
《ソイヤッ! オレンジスカッシュ!》
「セイハーーーー!!」
オレンジ色のエネルギーを纏った強力な斬撃を繰り出す。
それにより、一夏は反対側の壁まで吹き飛ばされ砂埃が舞う。
『大橙一刀』をまともに受けたんだ、もうシールドエネルギーは残ってないだろう。
しかし、砂埃が晴れると一夏はまだ立っていた。
しかも、ISの形が変わっている。
「
「ああ。これでやっと、この機体は俺専用になったんだな」
見ると武器の形状も変わっている。
「これで対等だ。いくぞ紘汰!」
スラスターを吹かし、俺に接近してくる。
剣も変形して、今はエネルギーブレードになっている。
「上等だ!」
俺は無双セイバーと大橙丸を連結させる。
さらに無双セイバーの窪みにロックシードをはめた。
『ロックオン! イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン』
「だぁぁ!」
俺は無双セイバーの方の刃を二回振り、エネルギー波を放った。
いつもならこれで相手を拘束できるのだが、これは一夏のエネルギーブレードにかき消されてしまう。
そのことに多少驚きつつ、大橙丸の方の刃に持ち替え、俺も走り出す。
《オレンジチャージ!》
「セイハーーーーー!!」
一夏のエネルギーブレードと俺の技である『ナギナタ無双スライサー』は一瞬ぶつかり合ったが、俺は刃を滑らせるようにしてまあ今で近づきすれ違いざまに武器を振り切る。
それにより、一夏のISのシールドエネルギーはゼロとなり、俺の勝利を告げるブザーが鳴った。
戒斗SIDE
当然の結果だな。
だが、敗者に手を差し伸べるのは気に入らん。
俺は、モニターに映る葛葉が、倒れた織斑を起こそうとしているのを見て目を細める。
まあ、いい。
あいつは、そういうやつだ。
そうこうしていると、葛葉と織斑が戻ってくる。
「い、一夏!」
それを見た篠ノ之は慌てて駆け寄っていく。
「ははは、負けちまった」
葛葉の肩からおろされた織斑は、少し笑いながら篠ノ之に応えている。
負けた者の癖にあの態度はなんだ。
俺は無意識の内に、一夏を殴りそうになる。
「おっと、待て待て戒斗」
その腕を、変身を解除した葛葉は掴んでくる。
「邪魔をするな、葛葉」
「いや、落ち着けって。お前次試合だぞ」
葛葉に促されてモニターを見ると、既にオルコットはISを展開し、アリーナの空中に待機していた。
「ほら、早く行っていって」
「ち……しょうがない」
俺は戦極ドライバーを装着し、バナナロックシードを構えた。
「あれ? もしかして、紘汰と戒斗のISって同じなのか?」
「同じっていうか互換性があるんだよね。あの錠前みたいなやつはロックシードっていって、あれを変えると機体の武器とパラメータが変化するんだ。データチップ的な感じかな。だから、俺がさっき使ったロックシードを使えば、俺のISと同じになる」
「なるほどな~」
まあ、一般人への説明としては上々だろう。
「変身」
《バナナ》
電子音が鳴ると、先ほどのように、上空に巨大なバナナが現れた。
「バ、バナナ!?」
「いや、あいつのISの名前はバロンだぞ」
外野が何かを言っているが無視する。
右手に持ったロックシードを中指に引っ掛け、クルクルと二回回してからベルトにセット。
《LOCK ON》
すると今度は、ファンファーレ調の音楽が流れだした。
そして、カッティングブレードを振り下ろす。
《カモン! バナナアームズ・Knight of Spear!》
俺の頭をバナナが覆うと同時に、赤を基調とし、胴体は楔かたびら状になっているライドウェアが展開され、その上にバナナが変形した鎧を纏った。
さらに俺はダンデライナーを取り出し起動させる。
それはすぐさまホバーバイク型のアシストアイテムになる。
俺はそれに飛び乗り、空中で待つオルコットのもとへと飛んだ。
「覚悟はいいいか? オルコット」
「それはこちらのセリフですわ。そして今確信しましたわ! あなたと葛葉とかいう男のの機体、飛ぶことが出来ない欠陥品ですわね! 所詮、男みたいな猿が使う機体なんてその程度という事ですわ」
「貴様は学習しないな」
「なんですって?」
「俺は言っただろう。弱い奴ほどよく吠えると」
その言葉は、セシリアの逆鱗に触れた。
「男の分際で生意気な!」
セシリアは連続で射撃を行うが、弾道が単調すぎる。
この程度、避けるのはたやすい。
「くっ! でしたら!」
突如、ブルーティアーズのスカート状のパーツが分離し、セシリアの周りを浮遊し始める。
「ほう、遠隔操作型のBT兵器か」
俺も専用武器であるバナスピアーを取り出す。
「さぁ踊りなさい!私セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でる
「面白い。叩き潰してやる!」
ダンデライナーの出力をフルスロットルにして突撃する。
牽制としてダンデライナーに装備されているバルカン砲も撃つ。
オルコットも四方八方からのビーム攻撃を繰り出してくる。
先ほどよりは避けるのが難しくなったが、ここは広い空だ、避けられないことはない。
しかも、
「どうした! 動きが止まっているぞ!」
浮遊砲台を使い始めてからオルコットがほとんど動いていない。
「っ!! このっ! インターセプター!」
しかも、近づかれた時の反応がやけに鈍い。
ほとんど素人同然の武器など、俺の敵ではない。
立て続けにシールドエネルギーを削り取る。
「なるほどな。その浮遊砲台を使っているときは、操作に集中しているせいで貴様はろくに動けない。おまけに、近接戦についてはほとんど訓練をしていないな」
図星をつかれたようだな、顔に出ている。
「この体たらくであそこまで大きなことを言うとはな」
「黙りなさい!」
オルコットは距離を取って余裕を取り戻したのか、弾幕を張ってくる。
俺はカッティングブレードに手を掛けて1回振り下ろした。
《カモン! バナナスカッシュ!》
「はっ!!」
突き出されたバナスピアーから特大のバナナを模したエネルギーが飛び出し、オルコットを串刺しにする。
「きゃあぁぁ!」
串刺しにしたまま先ほどの葛葉のように壁に叩きつける。
「まだやるのか?」
首筋に獲物を突きつけ問う。
「……私の……負け、ですわ」
その一言が発せられた途端、試合終了を告げるアナウンスが鳴る。
俺は変身を解除し、この試合が終わったら言おうと思っていたことを伝える。
「おい」
「な、なんですの! 敗北した私を笑うつもりですか!」
「ふん、笑ってほしいなら笑ってやる」
「あ、あなたね!」
「が、あいにく今はそんなことには興味がない。貴様に一つ聞きたいことがある、貴様の中の力も意味はなんだ?」
「力の……意味?」
「俺は自分の強さを証明するためにこの力を使う。が、それは決して弱者を貶めるためではない。そして俺の知り合いは、自分の力は守るためにあると言っていた」
オルコットは黙って聞いている。
「貴様も自分の中の力の意味を見つけろ。そうすればもっと強くなれる」
俺はそれだけ言うと、ピッチへ戻って行った。