「おつかれ、戒斗」
俺は戻ってきた戒斗にねぎらいの言葉をかける。
「最後は2人の試合か」
一夏も会話に混ざってくるがそれは少し違うぞ。
「ああ、俺辞退するわ」
「俺もだ。クラス代表などには興味がない」
「いや、流石にそれは千冬姉に怒られるんじゃ……」
「いや、もう許可は得たぞ。戒斗の分も」
割とあっさりくれたのはびっくりだったけど。
その代わり、あとで部屋に来るように言われたけど。
「と、言うわけで、クラス代表は一夏かオルコットさんの勝った方で」
「マジか……」
「さ、行って来い」
俺は笑顔で一夏を送り出した。
さて、一夏とオルコットさんの試合なのだが、正直勝負になっていない。
一夏はまだまだ白式に振り回されているのだ。
「しかも武器が近接ブレードしかないのか?」
先ほどから射撃武器を使わないどころか装備すらしない。
俺との時は、俺の装備が剣だったから同じく剣しか使わかないのかと思っていたが、どうにも違うようだ。
それでも何とかオルコットさんの攻撃を避けていられるのは、一夏の反射神経がいいのか、白式の性能がいいのか。
しだいにタイミングがつかめて来たのかオルコットさんの特殊武器である『ブルーティアーズ』を撃破できるようになってきている。
《もらったぁ!》
4機すべてのブルーティアーズを破壊した一夏は、オルコットさんに切りかかるが、不意打ちで発射されたミサイルを喰らう。
「あ~あ」
思わずそんな声が漏れる。
あの距離からの直撃だ、もはやシールドエネルギーは残っていないだろう。
そう思っていたが、煙の中から白式は猛スピードで飛び出してくる。
シールドエネルギーギリギリで耐えきったんだな、運がいい。
そのままエネルギーソードとなった自らの武器で切りかかるが、
《勝者、セシリア・オルコット》
その攻撃が届く寸前で、一夏の敗北による試合の終了が告げられる。
「は? なんで?」
思わず俺も、画面の一夏のような声を出してしまった。
「つまりお前の機体は欠陥機だ」
戻ってきた一夏に織斑先生が厳しい声をかける。
なんでも、白式の主力兵装である雪片弐型によるバリア無効化攻撃をしたからだそうだ。
これは相手のバリアを切り裂いて直接ダメージを与えられるが、これは自分のシールドエネルギーを攻撃に転化するものなので、0に近かった白式のシールドエネルギーはあっという間に底をついてしまったという事だ。
「欠陥機!?」
「ああ、言い方が悪かったな。ISはそもそも完成していないのだから欠陥もないにもない。お前の機体は、他の機体よりちょっと攻撃特化になっているだけだ」
確かにそうだな。
零落白夜はうまく使えば一撃必殺の攻撃になりえるなから。
でも、効果的に使えれば、なかなか面白い能力なんだよな。
「ISは今待機状態になっていますけど織斑君が呼び出せばいつでもすぐに展開できます。規則があるのでちゃんと呼んでおいてくださいね」
そう言って山田先生から渡されたのは『IS 教則本』と書かれた厚い教材だった。
あ、一夏がこの世の終わりみたいな顔になった。
「あ、葛葉君と駆紋君にも……」
俺と戒斗にも同じものが渡される。
とりあえず決闘は終了したのだった。
が、俺の仕事はまだ終わらない。
「失礼します」
俺は現在、織斑先生の部屋に来ている。
俺たちがクラス代表を辞退する条件は、あとで個人的に話をする事だったからな。
それと一つ渡すものがあったし。
「来たか。まあ好きに座れ」
「はい」
言われた通りに近くにあった椅子に座る。
好きに座れと言われたが、流石に女性のベットに腰かけるのには少し抵抗があったからな。
「さてと、私は回りくどいのが嫌いだ」
「はい」
分かってるよそんなの。
一夏には口より先に手が出てるもん。
一夏に先生と呼ばせたいなら、あなたも先生らしく振舞うべきだと思うんですが。
「なので単刀直入に聞こう。お前と駆紋が持っているIS。それは篠ノ之束に貰ったものだな」
「そうです。よくわかりましたね」
まあ、こんなふざけた仕様のISを作るのは、あの人だけだろう。
ここに来る前に束さんに織斑先生によろしく言っといてと言われたが、この2人は一体どういう仲なのだろうか?
「……その形状のISには見覚えがあったからな。お前たちはどこまで知っている」
なるほど、そうだったのか。
という事は、あの計画の事も知っているのか。
「俺と戒斗はコアの仕組みと森の事、それとプロジェクトアークについてですね」
それを聞いて、織斑先生は目を細める。
「その計画についてお前たちはどう思っている」
「どうって……この世界を守るための重要な計画ですよね? 確かにあんな事実は簡単に公表できないと思いますし、公表したらしたで、IS以上の騒ぎになるのは目に見えてますから。しかるべき時まで、僕たちの手でどうにかしないと。全人類を守るにはこれしかないんですから」
「……そうか、分かった。ご苦労だったな、これで話は終わりだ」
「ああ、すいません。今度はこっちの話なんですけど。束さんがこれを」
俺はもってきていたアタッシュケースを差し出す。
それを受け取り中を見た織斑先生は、表情を変えずにケースを閉じる。
「……確かに受け取った、そう伝えておいてくれ」
「いや、無理だと思いますよ。こっちから連絡できないんで」
俺は顔を書きながら曖昧に答え、挨拶をして部屋を出ていった。
千冬SIDE
葛葉が部屋を出てしばらくして、私は再びケースを開ける。そこには久しく手にしていなかったものが入っていた。
戦極ドライバー、そして、緑色の果実を模した錠前だ。
「こんなものを送ってきて、あいつは一体何を考えているんだ……」
私のほかに、あんな子供にまで真実を教えるなんて、正気の沙汰とは思えない。
2人の様な性格だからこそ、あの様ににふるまっていられるのだろうが。
問題は、束が嘘を話しているかもしれないという事だ。
あの計画では全人類を救うことはできない。
しかし、葛葉ははっきりと全人類を救うと口にした。
全てを知ったうえで協力しているならともかく、葛葉は都合のいいように改ざんされた内容を聞いたのかもしれない。
もしもそうだとしたら、葛葉は……
私は嫌な考えを振り払い、再びケースを閉じるのだった。
セシリアSIDE
私は自室の浴室でシャワーを浴びながら、今日の試合で対戦した相手のことで物思いにふけていた。
「……なぜこんな気持ちになるのかしら」
頭の中にうつるのは、自分が求めてきた何者にも屈しない強い男。
「……駆紋 戒斗」
鏡に映る私の顔は、赤みをおびていた。