マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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遅くなり申し訳ありません。
今回はいつもより長くなりすぎちゃいました。


第9話 『愛宕屋さんと駿菊さん』

 

⬜︎市長室⬜︎

 

市長室へと足早で向かう人物、秘書の愛宕屋が部屋の前に立ちノックをする。

返事がないためもう一度ノックをしようとした所を、室内の天城が携帯端末を耳に当てたまま開いて端末を指差す。

それを見た愛宕屋が指で輪っかを作りOKのサインを送って室内に入り静かにドアを閉めた。

 

部屋はそこまで広くない空間だが、必要な物は大体が揃っている。奥には市長の席があり、来客用のソファが設置され、簡易的な炊事場もある。

 

「えぇ、ありがとうございます、この恩は…え?…あぁ、そうですね、また家族総出でキャンプでも行きましょう。では、また」

 

「どなたと通話されてたんですか?」

 

通話を終えたタイミングで伺う愛宕屋。

 

「札幌の市長」

 

「では許可いただけたんですか?」

 

「うん、市長からはわざわざ確認する必要ないとは言われたけど、これは礼節の話だしね。この後資料室に行くよね?その時に一緒に伝えて欲しい、何か糸口が見つかると良いんだけどね…」

 

何かの許可を得ていた天城。

ある程度その内容は愛宕屋にも話してある様で、深く追求する事は無かった。

すかさず報告のため液晶端末を天城に手渡す愛宕屋。

 

「分析班からは、情報があまり得られないと言われましたが、その割には…」

 

「相変わらずの情報収集能力だね、彼らにはまた今度労いに行かないとだね…また散財しそうだ」

 

ざっと十数ページする程の報告書が液晶端末には映し出されていた。

それを観ながら困った様な笑顔を作りつつも、予想以上の仕事ぶりに喜んでいる天城だった。

 

「分析班の連中も市長に会いたがってましたよ、行く度に市長は?って聞かれる始末ですし」

 

どこか誇らしげな愛宕屋は天城にそう伝える。

 

「そんなに慕われるようなことした記憶はないんだけどな」

 

微笑しながら、液晶画面のトップに戻り、ゆっくりと報告書に目を通す天城。

 

報告書には次の項目が記述されていた。

・敵の情報と容姿、残った残骸から導き出された敵性勢力について。文明レベルは非常に高いが、加工技術などはさほど高くない。とてもアンバランスで歪である事。

・トリガーはなんらかの理由で能力が制限されている、巨大化できない分活動限界の時間が長くなっているらしいと言う推察。

・被害状況と範囲および情報漏洩の規模は世界に一瞬で広まっているため、問い合わせが殺到している。

・近隣への情報共有方法は、敵の傍受なども鑑みて、モールス信号を元に暗号文で各行政に共有済み。

・現場調査班、清掃班からの報告書。

・被害者および関係者のインタビューログ

 

簡略化するとこうだが、それぞれ情報の密度は原稿用紙2枚分はある。

 

「これだけ拡散されてしまうと、誤魔化す事が出来ませんね」

 

苦笑いする愛宕屋に対して、キョトンとした顔で返す天城。

 

「誤魔化す必要なんかないさ。だって事実はそのまま物語っているでしょ?“旅行者がたまたま北見の地に現れて、たまたま持ってた力で市民や町を救った。それになんの問題でも?”でいいじゃない」

 

「ちょっと煽ってませんか?」

 

「ちょっとね」

 

ニヤッと笑う天城に、呆れ混じりに笑みを浮かべる愛宕屋。

 

「トリガーの力が限定的なのは気になるね、何か理由があるのかな」

 

丁度トリガーの項目に目を通していた天城。

 

「それもそうですが、今は“どうやって彼がここに来たか”が重要です」

 

「そうだね、その辺も本人に聞いてみて欲しい」

 

「もちろんです。それとマナカ様に携帯端末を支給する準備が出来てますがー」

 

「構わないよ、僕の番号もー」

 

「登録済みです、私とミントリガー、ラボの連中と各地のゲート管理者の連絡先も入れてあります」

 

お互いがお互いの意図を先読みした事が少し可笑しく感じ、失笑する2人。

 

「相変わらず仕事が早いね」

 

「お褒めいただき光栄です」

 

胸に手を充てながら一礼をする愛宕屋。しかしすぐに向き直り、市長室の入り口に動き出す。

 

「では私は資料室に向かいます。報告書のインタビューログも確認しておいて下さい」

 

「ああ、ありがとう、マナカさんによろしく」

 

静かに頷き、最後に一礼をしながらゆっくりドアを閉めて行く愛宕屋。

 

「…これはいよいよ、現実味が帯びてきちゃうよね…」

 

席に座り呟きながら、部屋の窓越しに目を向け。

 

「“物語の数だけ世界がある”…本当にあるかもしれないし、僕らの世界も…ひょっとしたらその物語の一つかもしれないとか、考えてしまうよなぁ」

 

そう独り言混じりに空を仰ぐ天城だった。

 

 

◇数時間前◇

⬜︎資料室⬜︎

 

ミントリガーはケンゴに対し、世界の説明、自分の自己紹介や諸々の話し。

今後の方針を決議中と言うところ、その間の滞在拠点も確保する、基本的に行動を共にする等の話を済ませた。

 

「僕のためにそこまでフォローしてくれる理由ってあるの?」

 

素朴な疑問を向けるケンゴ。それに対してミントリガーはいつもの優しいトーンでケンゴに答える。

 

「ケンゴは北見にとって“ゲスト”だから」

 

そこにミントリガーの携帯端末に通知が入る。

 

「すまんケンゴ、通知が来たからちょっと確認するな」

 

聞きたいこともあったが一旦質問を止めるケンゴ。

 

ミントリガーには秘書の愛宕屋よりメッセージにて任務が申しつけられた。

 

本文にはこう書かれている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

件名:マナカケンゴ様への対応について。

 

鳥戦士ミントリガー様

お疲れ様です、愛宕屋でございます。

 

掲題の件につきまして連絡致します。内容確認の上、速やか且つ不自然のない様に行動願います。

 

貴殿につきましては以下の事を必須とします。

・マナカ様を可能な限り部屋に引き留めて下さい。

・時間は私がそちらに伺うまで。

・この世界の、特に“ウルトラマン”についての情報漏洩を極力避けて下さい。

許容範囲一例:ウルトラマントリガー第5話までの視聴。以外の事は全て禁止とします。

禁則事項に触れる可能性があるため細心の注意を払う様に心がけて下さい。

 

我々職員はこの後集まり、今後の方針と決議を締結する予定です。

その後私は分析班へ赴き、報告を終了次第連絡を入れます。

その後簡単なヒヤリングをする旨をマナカ様にお伝え下さい。

 

以上

 

貴殿に重積を背負わせる事は重々承知しておりますが、何卒宜しくお願い申し上げます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……」

 

5話までの指定は何を元に言ってるんだろう…

と個人的に気になっていたミントリガー。

諸書諸々気になる点もあったが、1番そこが気になっていた。

 

「どうしたの?ミントリガー、なんか引き攣った顔してるよ?」

 

本文を見て苦笑いするミントリガーに対し、相変わらず何故表情が読めるのか、謎の能力を発揮するケンゴ。

 

「なんでもないよ、続きでも観るか?」

 

「うん!」

 

そう元気良く返事をして再生ボタンを押すケンゴだった

 

 

◇数時間後◇

 

日も暮れてきた中、ミントリガーが加入しているサブスクリプションを活用し、ウルトラマントリガー本編を観ていたケンゴ。

 

最初こそ急な事で戸惑い、混乱し、取り乱してしまったケンゴだったが。

 

今では立派な視聴者となっていた。

 

「ケンゴってさ…切り替え早いって言われたりしない?」

 

「え?言われた事ないよ?」

 

何故か照れながら答えるケンゴ

 

ハハハと乾いた笑いをするミントリガー。

 

そこにミントリガーの携帯端末に通知が来る。

 

愛宕屋から「今から向かう」との事だった。

 

「ケンゴ、愛宕屋さんが来るらしい」

 

リモコンを手にして停止ボタンを押したミントリガー。

 

「少しだけ話しを聞きたいらしいから、頼めるかな?」

 

「大丈夫だよ」

 

笑顔で返すケンゴ。

そこにタイミング良くノックの音が聞こえ、内心早すぎないか?と思いつつもミントリガーがドアを開ける。

 

「どうもマナカ様、ご不便はございませんか?」

 

初めて会った時と同じ様に、明瞭快活な声と印象でケンゴに話しかける愛宕屋。

社交辞令に近いが、その悠然たる立ち居振る舞いにより、悪い印象は感じない。

 

「いえいえ!とんでもない!ありがとうございます!」

 

「では、いくつか質問をさせて頂き、その上で今後の方針をお伝えしようと思います」

 

愛宕屋はケンゴに次の事を聞いた。

・ここに来るまでのシチュエーション

・その際に不審な点と不思議に感じた事

・ケンゴが思う、今1番希望する事

これらを元に、準備している対応策を組み立てていく。

簡単にいえばそうだが、この行き着く先は。

ケンゴの帰還という一つに集約される。

 

そしてそれとは別に、ケンゴには滞在場所と、この世界で使用できる連絡用の携帯端末を支給される。

 

「マナカ様には、しばらくの間こちらの部屋をご利用ください」

 

そう言いながらカードキーを渡された。

 

「この部屋の鍵ですか?」

 

「いいえ、これは館内の全ての施設に入れるアクセスキーです」

 

「そんな常用なものを!?」

 

驚愕の果て戦慄を覚えるケンゴ。

 

「だだだだダメですよ!そんなの僕に渡して……無くしなんかしたら大変じゃないですか!!」

 

「なくさないで下さいね」

 

笑顔ではあるが目は笑っていない愛宕屋だった。

そのやりとりを見て噴き出すミントリガー。

 

オホンと咳払いをして整え直す愛宕屋。

 

「私、ミントリガー、市長、ラボの連中と各ゲート管理者の番号もいれておきました、何かあれば全力でサポートが出来る様にするためです」

 

「いいんですか?」

 

目を閉じて静かに頷く愛宕屋。

その後彼は語る。

 

「先ほど、マナカ様に対する今後の対応の決議が出ました」

 

笑顔だった愛宕屋は、真剣な面持ちでケンゴを見る。

 

「私たちは、マナカケンゴ様を元の世界に帰還させます、これは我々職員全員の共通認識であり」

 

いつもの営業的な笑顔ではなく、愛宕屋本人の笑顔をケンゴに向ける。

 

「おそらく、北見市民全員の総意も得られるでしょう」

 

ここまで献身的にしてくれる彼らに怖さを少し感じずにはいられないが。それを上回るほどの、包容力を感じていたケンゴは、無意識に受け入れていた。

 

「それとミントリガー」

 

愛宕屋はミントリガーに近づく。

 

「明日、マナカ様と一緒に札幌に向かって下さい」

 

「札幌?」

 

「えぇ、念の為ではありますが、先方の許可は頂きましたので、後ほど君から連絡してみて下さい」

 

「自分が?どちらに連絡すれば」

 

「もちろん“梟の戦騎カント”様にです」

 

『梟の戦騎カント』

札幌市を中心に活動をするヒーローの1人。

梟を模した仮面、白銀の鎧と閃めく腰のローブが特徴で、体術と剣術に秀でている。

ヒーローの中でもトップクラスに君臨する実力を持った英傑である。

 

「カントさん…なるほど…ジールさんですか」

 

『ジール』

カントの師であり相棒である白銀に輝く不思議な梟。

森の守護神の一柱であり。“森の賢者”と名高い程の膨大な叡智を有している。カントの鎧は彼の知識と特殊能力によって、研究員の仲間たちが力を合わせて創り上げた物である。

 

「お察しの通り、神様であるジール様であれば、何か糸口を掴めるかと」

 

携帯端末を取り出したミントリガー。

 

「わかりました、連絡してみます」

 

そう言って外に出ていくミントリガー。

 

その様子を見ていたケンゴは、愛宕屋に質問する。

 

「あの…愛宕屋さん」

 

呼ばれた愛宕屋は、これぞ営業スマイルの模範と言える笑顔を向ける。

 

「はい、なんでしょうかマナカ様」

 

「その…愛宕屋さんもですけど、皆さん僕の事知ってるんですよね?」

 

少しだけ驚きの表情を見せるが、すぐさま笑顔を作る愛宕屋。

その笑顔は、いつもの営業モードではなく、慈愛に満ちた優しい表情だった。

 

「えぇ、存じてますよ」

 

その表情に気づいて、ケンゴは改めて思いを吐露する事になった

 

「さっき…ミントリガーにも聞こうと思ったんですけど。どうしても考えちゃうんです、みんなは知ってて、僕はみんなを知らない」

 

全てにおいて知らない、わからない環境に、そのうえたどり着いた先ではトラブルに巻き込まれ。

挙句何故だが周りは自分の事を良く知っている上に誰もが好意的に接してくれる、まるで昔からずっと知っていたかのように歓迎される始末。

数々の混乱の中一旦他所に置き、真実を告げられ、無意識に考えないようにしていた不安が溢れ出た。

その結果、様々な感情に耐えきれず、文字通りの男泣きをした。

 

冷静になったケンゴは、それらの心情を、愛宕屋に話した後に、振り返りながら語った。

 

「あんなに近くで、あんなにたくさんの笑顔、僕初めてでした。それだけみんな僕を…マナカケンゴであり、ウルトラマントリガーの物語の主人公を観てくれていた結果なんですよね…」

 

思い返し、また更に不安を抱くケンゴ。

 

「僕は…みんなのマナカケンゴになれているのかなって…考えちゃうんです」

 

目を閉じ、愛宕屋は再認識した。

目の前にいる青年は、まだまだ未熟な成長段階。

産まれた環境や状況、ましてや“世界”そのものが違うが。

それがただただ特別な力を手にしてしまっただけ、今を生きている人間であり、悩み学んでいく若者。

そんなケンゴに対し、少なからず人生の先輩としてしてあげられる事を思案して、ゆっくり話し出す。

 

「そうですね、つい数ヶ月前まで放送されていたウルトラマンが、何せ目の前にいるんですから。私だってリアルタイムでは無いものの、毎週息子と観てました。そんな人物が自分たちと町を守った、浮き足立ってもおかしくありませんよね」

 

至極当然の一般論だった。

愛宕屋達からすれば、偶然有名人に会ったのと感覚に近い。

しかし、愛宕屋が伝えたい事はその先だった。

 

「しかし、それとマナカ様…いや、ケンゴくんと呼んでも宜しいですか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「では僭越ながら、ケンゴくん。それはとても、いらぬ気を回しすぎですね」

 

「え?」

 

あっけらかんと言い放つ愛宕屋に、ケンゴは唖然とした

 

「“みんなのマナカケンゴ”それは私達が観てきたドラマのマナカケンゴであり、あなた自身の事では無いでしょう」

 

きょとんとするケンゴに対し、構わず続ける愛宕屋

 

「何より、市民もそこまで求めてはいないでしょうし、考えてませんよ。何故なら、実益と信頼の元、我々は貴方に助けて頂き、文字通り“未来を築いて頂いた”訳ですから。それをどうこう言う人は、少なからずこの地にはいないと思います。百聞は一見にしかずって言うでしょう?私たちが見ているのは、ケンゴくん自身です」

 

ゆっくりと首を横に振りながら、ケンゴが考えていた事は「ただの杞憂です」と優しく否定する。

 

「それに、そもそものご自身の立場を見失わないで下さい」

 

そして突然両腕を後ろに回し、真剣な眼差しで見据える

 

「貴方は植物研究がてら遊びにきた旅行者です、休暇中に何をされるかは自由です、それをただ私達が好きでサポートしているだけ。ですよ。私はねケンゴくん、常にこう考えてます」

 

先程の質疑の際、自分が休暇中だと言う話しを既に聞いていた愛宕屋。

 

「労働したならばそれに見合った休養も必要である!!言ってみなさい!!マナカケンゴ!!!」

 

豹変した愛宕屋に驚愕するケンゴ

 

「え?…労働したなら、それに見合った」

 

「おうおうおうおう声が小せえぞど畜生がっ!!!そんなんじゃお天道さまも呼び起こせねぇだろが!!!おめぇさんそんでも日本男児かぇってんだこのすっとこどっこい!!!」

 

「呼び起こす!?何を言って」

 

「つべこべ言うな唐変木!!」

 

豹変っぷりが更に輪をかけてひどくなり、べらんめぇ口調で捲し立てる愛宕屋。

 

「あ…愛宕屋さん??」

 

「駿菊-しゅんぎく-でい!!!」

 

「ひぃ!!」

 

とっさに両腕を顔の前に持って来て、何かを庇う体制になるケンゴ。

なに?この人なんでこんな人が変わったの??

と混乱するケンゴだったが、愛宕屋は構わず続ける。

 

「いいかよおおおおおおく聞けもやしっ子!!」

 

「は!はい!」

 

反射的に“気をつけ”の姿勢になるケンゴ。

 

「おめぇさんはさんざっぱら地球を守ってたんだろが!だったら休む時はしっかり休め!!そんでもって休暇を楽しむっ!北海道はいいぞおおおお!!存分に楽しめる!!わーったら調べ物は俺ら職員とこの“愛宕屋駿菊-あたごやしゅんぎく-”に任せなっ!文句あるかってんでい!!」

 

「僕何にも言ってないです!」

 

そこにドアが開きミントリガーが入る。

 

「廊下まで響いてますよ愛宕屋さん…ケンゴおまえ一体何したんだ?」

 

騒々しさに拍車がかかったため、急ぎ用事を済ませて戻ると、涙目で今にも泣きつきそうなケンゴを見るミントリガー。

 

「おうミントリ!連絡はとれたんか!」

 

「うわ…完全にスイッチ入ってるし…取れましたよ駿菊さん」

 

さも面倒そうにも慣れた様に応対している。

スタスタとケンゴの元に近づくミントリガー。

 

「ケンゴ、明日俺と札幌に行こう」

 

「え?札幌?どこ?そこ」

 

「そうだなぁ、この北海道でも最も有名な、街ってとこかな??そこでとある人物と会う事にした…」

 

気の抜けるようなぎゅるるるるると言う腹の虫が盛大に響く、音の主はケンゴだった。

とっさに腹を抑えるが、意味のない行動だった。

 

「…とりあえず2人とも」

 

いつの間にか元に戻っている愛宕屋に2人はギョッとした表情で振り返る。

それに構わず続ける愛宕屋。

 

「食堂はまだやっているはずです、2人で腹ごしらえをして来なさい。代金は私宛にと伝えておいて構いませんので、後は任せましたよ」

 

そう言って部屋を後にする愛宕屋。

 

「ねぇミントリガー…」

 

「なんだよ…」

 

「アレは…愛宕屋さんなんだよね?」

 

「あぁ…まぁそうだな…あの人何がきっかけかわかんないけど…突然ああなる事があるんだ」

 

理解に苦しみ顔をしかめるケンゴ。

 

「一応ああなった時の愛宕屋さんを俺たちは名目上“駿菊さん”って呼んでるよ、覚えておいてくれ」

 

「あぁ…うん」

 

腹の虫が鳴り止まないケンゴ、最早この一瞬で盛大にカロリーを消費したのかと思うくらいの焦燥感を顔面に押し出していた。

 

 

⬜︎札幌市某所⬜︎

 

白衣を着た青年が、携帯端末を片手に鼻歌を歌いながら嬉しそうにしている。

 

「そんなに嬉しいのか“神斗-かんと-“」

 

やけに嬉しそうにしている青年『望月神斗-もちづきかんと-』の肩に乗り、白銀の梟ジールは彼に尋ねる。

 

「そりゃそうですよ、なんたって本物のマナカケンゴに会えるんですから、楽しみだなぁ、仲良くなれますかねぇ?ジール」

 

「植物学者なのだろう?君の研究テーマと近しいじゃないか」

 

「そうなんですよ!!時間があったら話したいけど…なんか切羽詰まってるっぽいし…けど話したいなぁ…色々語りたいなぁ…」

 

神斗は大学院生であり、北海道の自然を調査と研究している。

植物学者であるケンゴとは通ずるモノを感じずにはいられないようで、今回の面会に対して心躍らせていたのだった。

 

「とりあえずは本人の話を聞いた後だな、その後時間があれば話しをするくらい良いだろう」

 

「ですよね!そうだ!もし出来たら手合わせとかもしてもらえるかなぁ」

 

「あまり失礼のない程度にしなさい…」

 

「はい!」

 

嬉しそうに肩越しのジールに笑顔を向ける神斗に対し、少し不安を感じるジールだった。




読んでくださってありがとうございました。

次回はローカルヒーロー界でも指折りで有名な彼の方と、注目の新人が出ます。

良かったら読んでみてください。
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