今年もマイペースに上げていきます。
よろしければお付き合いください。
◇札幌行き前日の夜19:00◇
⬜︎市庁舎ルーフバルコニー⬜︎
ケンゴと翌日の準備を終え、自身も翌日に向けての諸々の準備を済ませたミントリガー。
ケンゴの滞在する階層には夜空が見えるルーフバルコニーがある。
季節は秋から冬へと切り替わる頃合いのため。
若干の肌寒さを感じながら、設置されていたベンチに腰掛け。
ミントリガーは携帯端末を取り出し、スピーカーホンで電話をかける。
通話先は
『飛翔演舞 凰孔雀-オークジャック-』
〈おうミントリ!待ってたぜぇ、調子どうよ?〉
初手からフレンドリーな口調のオークジャック。
「すまない、明日の準備でバタついてたんだ」
設置されていたベンチに座り、端末を傍らに置くミントリガー。
〈なんだ?どっか行くのか?〉
「札幌行ってくる」
〈はぁ!?まさかカントさんに会いに行くんじゃねぇだろうな!?俺も行きたい!〉
札幌と聞き若干狼狽えるオークジャック。
オークジャックはカントより剣の指南を受けた事もあり、それ以来交友がある。
分け隔てなく心を開くカントの性格と受け入れる器の大きさに惹かれ、それ以来尊敬しているカントに友人が会うと知り、少しだけ羨ましがるのだった。
「正確には“ジール”さんに会いに行くんだ。ケンゴの事で色々話しを聞きにな」
〈ケンゴってウルトラマントリガーの??オマエもう仲良くなったのか??相変わらず距離感の詰め方バグってんな〉
「良く言うよ、それブーメランだぞ?」
失笑するミントリガーに構わず話を続けるオークジャック。
〈つーかそれじゃチャチャ入れに行くわけにもいかねぇな〉
「そもそもすぐ動けるのか?お前今どこ?」
〈沖縄〉
「見事に端っこだな。なんで沖縄?」
〈寒いの苦手じゃん?俺〉
夏の時期には暑いのが苦手と聞いた記憶のあるミントリガーだったが、それを黙っておくことにした。
「じゃあ尚更しばらくこっちには来られないな、そろそろ“試される大地”が本気出すから」
〈それより蟹食いてぇんだけど〉
「話し聞いてないしな」
静かに笑ったミントリガー。
しかしすぐに切り替える。
「それで、本題が聞きたいんだが」
〈真面目だねぇ〜〉
「対比とバランスってあるだろ?」
〈ぬかせよ!〉
軽口に対し、珍しく返された事に声を上げるも。
オークジャックはすぐ切り替えて話し始める。
〈どうやらおめぇんとこに出たヤツらな、あれは上から来てるらしいぜ〉
「上?」
訝しむミントリガー。
〈それも、大気圏の外からだってさ〉
「確かなのか?その情報筋」
〈壁に耳あり障子に目あり、夜明けの空にー〉
「東雲-しののめ-さんか」
〈最後まで言わせろよ!〉
『纏蟲士 東雲-てんちゅうし しののめ-』
諜報機関 多邇具久-たにくぐ- の頭領であり。
表裏と限らずその名は幅広く知れ渡っている存在。
依頼次第で気まぐれにヒーローの支援や補助に務める事もあれば、時には敵側としても相対する事もある。
「相変わらずの情報通だな…」
〈まぁ諜報機関?ってヤツだし、情報を売り買いしてるとかなんとか言ってた様な言ってねぇ様な〉
「買ったのか?情報」
疑問に対し若干語気を強めに返すオークジャック。
〈買わねぇよ。たまたまイベントでバッタリ会ったんだよ。ついでに耳寄りな話しって押し売りみたいにしつけぇから、飲み代分だったらイイぞって言って奢ってやったら情報よこして来やがった〉
「イベントって…お前のその謎めいたエンカウント率もそうだけど、東雲さんがそれに出席してるのも良くわかんないな」
静かに笑い、友人を関心するミントリガー。
〈こっちのこたぁイイんだよ!それより問題は敵の話だ〉
一呼吸置いて再度話を始めるオークジャック。
〈今大気圏の外をデッケェ母船がステルス状態で潜伏しているらしい、それも昨日や今日からって話しじゃねぇぞ〉
随分と具体的だと思いつつ話が続くため耳を傾けるミントリガー。
〈最初に目撃されたのは、香港。それも1ヶ月前〉
予想だにしてなかった単語が出たため、素直に驚くミントリガー。
「それ確かなんだよな?」
〈あっちのヒーローでドリームガーディアンっているだろ?あいつらも確認したとよ、すぐに見失ったらしいけどな〉
『ドリームガーディアン』
香港の地域を中心に活動するヒーロー『ザ・ガーディアン』の1人。
相棒の『ブレイブ・ガーディアン』と共に日夜、平和のために街を守る守護神である。
武術の達人でもあり、その実力は広く知れ渡る程で、海外遠征も度々している実力者。
ミントリガー自身面識はないものの、名前と実力は聞いていた。
「まるで現地にいたかってくらいに具体的すぎるな、それも東雲さんからの情報か?」
話しを戻すミントリガー。
〈他にも色々あるらしい…んだが、悪りぃあんま覚えてねぇ〉
「それで、なんでそいつらはここを狙ってるんだ」
核心をつくミントリガー。
〈さぁな…これは東雲のヤローが言ってた推察でしかねぇんだけどな〉
信憑性に欠ける事が声のトーンでも感じられるが、今はどんな事でも情報を集めたいため、耳を傾けるミントリガー。
〈拠点にするつもりじゃねぇかって話しだ〉
「北見を?…」
(拠点にする?にしても…北見を狙うか?…いや待て…ひょっとしたら“拠点”と言ってる前提条件がまず違う可能性がある。考えろ…北見だったのはたまたまか?そう仮定して、偵察か事前調査…)
ミントリガーは熟考した結果、導き出した答えの中で、最も最悪の結末をそのまま口にした。
「北海道全域ってとこか」
広大な北海道は島国の一つと見ての判断だった。
明確な情報が不足している上に母船の規模が不明。
しかしてそれを有する程の戦力がある相手。
あくまでも一つの可能性でしかない事柄からミントリガーが。
導き出した結論。
北海道全域を拠点として周辺に侵攻して行く。
まさに「馬鹿げた発想」から、敵の狙いはこれではないかと、一つの答えが出たのだった。
〈あぁ…そんなとこだって言ってたな…突飛な話しだけどな〉
否定しなかったオークジャック。
彼も少なからずこの最悪の答えを導き出したのであった。
「敵は“略奪者”って自分の事言ってた。東雲さんはどこまで知ってたんだ…」
〈さぁな。また会ったら詰めてみてやるよ。オレが聞いた情報はここまでだ〉
「わかった。ありがとう、助かるよ。情報の精査はこっちでもしてみる」
〈おう、そうしてくれ〉
お互いフゥと一息つく。
〈ところでよぉ〜どぉなのよ??〉
「ん?何がだ」
さっきまでの緊張感のある空気は薄れるような声のトーンで話を切り出すオークジャック。
〈だぁ〜かぁ〜らぁ〜トリガーってどうなんだ??凄かったらしいじゃんか?遊び行くからちょっと紹介しろよ。あ、ついでにジョーニアスと会えないか相談もー〉
「おやすみ、オークジャック」
通話を一方的に切り、着信機能も念のためオフラインに切り替える。
(さっきの推察、荒唐無稽として片付けるには不安が残る。事実確認は分析班に任せるとしてだ。きっとあいつはまた現れる)
「直接問いただしてみるか」
答えて来る確率は非常に低い、次回の接敵時、直接聞く事を決めたミントリガーは、市庁舎内に戻る。
◇同時刻◇
⬜︎沖縄の居酒屋⬜︎
「あ!あんのトリ頭!切りやがった!…ったくこれだから真面目ちゃんはよぉ」
飲み屋の個室に座り端末をテーブルに置く、金髪アシンメトリーで顔の右半分を覆う男性。
悪態を垂れつつも、面白そうに笑う彼が、通話をしていたオークジャック本人。
本名『珠川 浄-たまがわ じょう-』だった。
「随分とミントリガー殿とはフレンドリーですなぁ」
そこに件の諜報員東雲がカジュアルな服装で目深にキャップを被り現れ、浄の座っていた個室席に顔を覗かせてきた。
「てめぇ…盗み聞きか?」
通話中とは変わってワントーン声が下がる浄。
「私ともさっきくらいのテンションで接していただけるとありがたいのですがねぇオーク殿」
「昨日の呑みは奢った、十分だ」
グラスに入ったドリンクを一気に飲み干し、席を立つ浄。
「そいやぁ聞きそびれてた」
目深に被ったキャップのつばに触れそうな距離まで顔を近づけ威嚇する。
「お前なんでそんなに詳しいんだ?あ?」
さらに睨みを利かせて、髪で隠れているはずの右眼を紫色に鋭く光らせ威嚇する。
「なんか繋がりあんだろ?」
失笑しながら答える東雲。
「繋がり?そうですね。一度オファーが来たのですが、それを丁重にお断りしたところ、襲撃され危うく殺されかけたと言うのでは…不足ですかな?」
「……萎えたぜ」
テーブルに置いた端末を手に取り、革製のギターケースを肩に背負う浄。
「もう帰られるんですか?釣れませんねぇ。まぁそれくらいが後腐れなく商売相手としても接しやすい訳です」
舌打ちしてその場から立ち去ろうとする浄。
それに構わず話を切り出す東雲。
「あ、昨日のアレですが」
「あ?」
「推測とは言いましたけど…実際に起こったら大変でしょうね」
浄を振り向きもせず語り続ける東雲。
「北海道は豊かな土地もあって資源も幸も豊富、自給自足するにはとてもよく、何より」
ゆっくりと振り向き、口角を上げながら笑みを浮かべて浄を見る東雲。
「冬場の季節が使い方次第で、広大な自然の砦になります…ホワイトアウト広がる島国…いやすみません、大袈裟でしたね」
微笑する東雲の胸ぐらを掴み詰め寄る浄。
「何が言いてぇんだや?…あ?」
ポンポンと浄の掴んでいる手をタップする東雲。
「いえいえ、私の想像が当たらなければと良いと言う“だけ”の事ですよ…これ以上は失礼しますね、お得意様と敵対したくないので。気をつけてお帰りください」
静かに手を離す浄は、忌々しく睨み、出口へと向かいながら捨て台詞を吐く。
「オレはオメェの客じゃねぇぞ」
「今後ともご贔屓にぃ〜」
お互い振り向く事をせず背を向けて進行方向へと進む。
イライラを押さえながら会計に向かう浄。
「ごっそうさんでした。あ、伝票忘れたわ…取って来ー」
「お会計ならもう頂きましたよ?」
「は?」
忘れ物を取りに行く必要がないと静止され一瞬理解できなかった浄。
「先ほどお話しされてた方が、お客様の代金を支払われたので。聞いてらっしゃらないんですか?」
浄はそれを聞き目の色を変え回れ右をする。
急足で東雲の歩いた方へと向かう浄。
しかし東雲の姿は見当たらない。
最終的には店の席を全て確認するハメとなり、やむなく戻って来る。
「…返金するから処理してもらえませんか?」
「電子マネー決済でございます…申し訳ございません」
「………」
深くため息をつく浄。
これ以上言っても店に迷惑がかかるので観念する事にした。
「すみませんでした、ご馳走様です、美味しかったっす」
「ありがとうございました、またのお越しを」
店に出る浄は、夜空を見上げて悪態をつく。
「チッ…食えねぇ奴だ…だから信用できねんだよ」
端末を確認し、とある人物へと連絡する。
「あ、先輩、すんません夜分遅くに。ちょっとお願いしたい事あるんすけど、いいっすか?」
そう言いながら夜の街を歩く浄だった。
◇現在時刻◇
⬜︎月寒公園-公園広場-⬜︎
ミントリガー、カントの2人は敵に対する注意を崩さず、ゆっくりとオートバイを降りる。
相手を見据えながら、ガヲク達とトリガーが去った方角に背を向けて敵の前に立つ。
「カント」
ジールがカントを呼ぶが、剣を左手に持ち替え。
腕に装着された彼に目を向けるのではなく、視界に入れると共に構える。
「ガヲクアーマーのダメージは、打撃によるモノとー」
「わかってます、ありがとうございます」
状況報告を受けるもすでに把握していたカントは、ターゲットを絞っていた。
「ミントリガーさん」
「なんでしょう」
「あの黄色い髪の奴は、僕が相手します」
柄頭を握りしめ、切先をズゾロへ向けるカント。
「わかりました、なら」
カートリッジを散弾に換装するミントリガー。
それと同時に目にもとまらぬ速さでジゼルとの距離を詰める。
「お前の相手は……俺だっ」
来ることはわかっていたとばかりに繰り出された左の裏拳を、同じく左腕で受けるジゼル。
「おやおや……せっかちですねぇ」
ジゼルはミントリガーの頭部に向けて発砲するが、それを予測し首だけ動かして躱す。
コンマ数秒の遅れでジゼル目掛けて散弾を放つミントリガー。
身を捩り躱そうとしたすると、近距離での散弾を肩に喰らうジゼルは、その衝撃を受けて少し後方へと下がる。
「クソッ!!!……ほほう、拡散する弾でしたか、随分“パラエティ”に富んだ銃だ」
予想外だった攻撃にイラつくも、また不自然に落ち着き払うジゼル。
「それを言うなら“バラエティ”だ」
「おや?そう言ったつもりだったのですが…翻訳が一部イカれた様ですね」
再び組み合う形で激突する2人。
⬜︎公園広場(カント側)⬜︎
近づくでもなく、じっと剣を自身と敵との間に置き、切先を向けるカント。
「あんだあ?テメェが俺様の相手しようってのか??この俺様に勝てると思ってんのか??ああ!?」
形勢逆転した事により多少落ち着きを取り戻したズゾロは、新たなチャレンジャーが来たと呑気にも舞い上がっていた。
「まぁ、さっきの雑魚どもに比べたらやれるんだろうがなぁ〜」
それまで視界の端で相手との距離を測っていたカントは、今の一言でぴくりと反応する。
「雑魚?ひょっとして彼らの事?」
ゆっくりと右手に剣を握り直し、敵をはっきり見据えるカント。
「あったりめぇだろおがよおお!尻尾巻いて逃げたカスどもだぜぇ???テメェはばーかなのかあああ???考えなくてもわかん…!?」
ズゾロは咄嗟に後ろへ飛んだ。
その距離約3m。
カントとの距離は優に10mは越える。
(なんだ…今俺様は…何された)
ズゾロは自身の左手に目を向ける。
先程後ろに飛んだのは、明確な恐怖と危機を感じてのこと。
「どうかした?」
ゆっくりゆっくりと一歩一歩踏み出したカント。
ジリジリとにじり寄るカントに、動揺を隠せずにいるズゾロ。
「まるで、腕でも斬られた顔しているけど」
カントの言う通り。
彼の放つ怒気混じりの闘気をぶつけられ。
ズゾロの脳内はあり得ない映像を映し出した。
一瞬にして左腕の肘から先が消える映像。
幻覚に近い錯覚を
呆然とするズゾロ。
気がつくと、すでに2人の距離は1m弱まで詰まっていた。
カントは左手でローブ翻し、後ろ回し蹴りをズゾロに放つ。
咄嗟に左腕でガードするも、受けた瞬間に呆気なくバラバラになる機械仕掛けのガントレットは、ものの見事にスクラップとなった。
「俺の…腕が…ただの蹴りで!?」
「…貴方は哀れですね」
マスクのバイザーからも解るほど可哀想なモノを見るが如く、冷ややかな雰囲気で見つめるカント。
「僕の見立てでは、その腕はすでに限界が来ていた」
カントの一言に言葉をなくすほど驚愕するズゾロ。
「貴方は彼らを馬鹿にしていたが、どうやら貴方と彼らとは実力に差が明確な形であったらしい」
白月剣を一振りして何かを確かめるカント。
「よかったですね」
そしてズゾロに構わずにじり寄る。
「彼らが戦線離脱して、少しだけ貴方は“生きながらえた”って…」
その後のただ一歩の踏み込みがズゾロには、大きく辺り一面に響く一足に聞こえた。
恐怖から成る光景、ズゾロの眼前には。
カントの青いバイザーの向こうに、内側で睨みを利かせて光る瞳が見えていた。
「事実を知れたんだ…」
気が動転したズゾロは懐を弄り、円柱の何かを取り出す。
上部を砕き、中に入った液体を溢しながら荒々しく飲む。
訝しむカント。
一応は警戒の体制に移る。
「こっからが本番だ!銀色野郎!その見窄らしい鎧俺がぶっ壊してやる!!!」
身体から蒸気のようなモノを出し、無造作に腕と脚を繰り出しながら、先刻の戦いより数段速い動きで猛進するズゾロ。
その攻撃を黙って躱すカント。
「よけてばかりかぁ!?しょせんはクソ雑魚だ……」
そういって右腕を上げて振り下ろそうとしたズゾロだが。
「へ?」
右肘から先が無くなっていた事を知り、驚愕の余り情けない声が出る。
再び敵を見るズゾロだったが、その姿は既になく。
カントはズゾロの背面に立ち、切先についた白い液体を無造作に振り払う。
「流石だと言いたいが、下劣な者の腕などいくら斬ったところで…だな」
100%拒否反応を示すジール。
「えぇ、むしろ不名誉極まりないですね」
相手の全てを否定したカント。
吹き飛んだ腕は重々しい音を鳴らして地面に落ちた。
「てんめええええええええええ!!!!!!!」
背後のカントに身体ごと向き直るズゾロ。
「後悔させてやっー」
言い終わるまでもなく、もう片方の腕を斬り飛ばすカント。
「後悔か…それはこっちの台詞だ。僕に出会ったこと……いや、すまない違うな」
翻るローブの端を掴み、渾身の回し蹴りをズゾロの胸部へと叩き込むカント。
背中を地につけてもんどり打つズゾロ。
「うあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
怒気混じりだった闘気は
すでに純粋な殺意へと変わっていた。
「後悔する暇すら与えないっ」
一振りの剣は
ズゾロの首目掛け振り下ろされようとしていた。
⬜︎公園広場(ミントリガー側)
ジゼルの拳を受け流し、すかさず肩口へ銃を放つミントリガー。
それに対し状態を逸らす様に躱してミントリガーの頭部目掛けキック。
しかしそれを受け止め押し返すと同時に姿勢を低くし、足払いをする。
それを跳躍で躱して再び拳銃を2発放つジゼル。
ジゼルの実弾を愛銃【蒼禅空-あぜく-】の銃身で叩き落とす。
一気に距離を詰め、再び組み合う形でお互いの顔面に銃口を向けて引き金を弾くも。
残弾数がゼロに達した。
「今日はやけに積極的じゃないですか?」
ヘラヘラした声色で語りかけるジゼル。
「忘れたか?お前は討伐対象だって…ところで聞きたいことがあるんだ」
「何を?」
一旦距離を離す両者。
「お前らは空にいるのか」
あえて疑問系でなく問いただしながらカートリッジを生成し次弾装填の用意をする。
「はい?」
ジゼルも同様背部からマガジンを取り出す。
「お前らの母船は空にいるのかと聞いてるんだ」
「それを聞いてどうするんですか?」
同時に銃口を向ける。
「なるほどな」
激鉄を下ろすミントリガー。
「それは肯定と取るぞ」
「随分と頭に血が昇っている様ですねぇ、私何かしましたっけ?」
先に撃ったのはジゼル。
連続して5発放つ。
その実弾を装填した炸裂弾で撃ち返すミントリガー。
「あなた本当に器用ですね!」
一気に距離を詰め肉薄するジゼルは銃口を向けながらミントリガーの頭部目掛けて腕突き出すと同時に引き金を弾く。
それをよく見て躱し、次々と同様に繰り出されるパンチと銃撃を避けるかグリップエンドで上腕目掛けて叩いて軌道を逸らす。
「なるほど!これも避けますか!実に優秀だ!もっと見せてみてください!いや!見せてみろ!!」
「前も思ったんだがな……」
再び組み合い
ジゼルの頭部
ミントリガーの頭部は
激突する。
お互いの眉間を擦り合わせる様にぶつけた両者だったが、すぐに離れる。
「お前……良く喋るな」
うんざりしながらミントリガーは銃を構え直す。
「うあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
そこに騒々しくも、誰が聞いても情けない雄叫びが広がる。
いち早く動いたのはジゼルだった。
ズゾロの首筋目掛けて振り下ろそうとされる剣に向かって、ジゼルは拳銃を5発撃つ。
突然の遠距離攻撃に対し、目の前のズゾロに集中しすぎたカントは、コンマ1秒反応に遅れるも。
ジゼルから放たれた実弾を斬り落として行くカント。
瞬く間にズゾロの側に着いたジゼルは、カントへ何かを放る。
たちまちピンク色の煙に包まれる一同。
「煙幕!?」
(煙に包まれようとも、気配を辿れば!)
そうカントが思ったのも束の間。
「カント!早く煙から抜け出るんだ!」
警告するジール。
それを聞き後ろへ急走るカント。
煙の中からジゼルはズゾロを引き摺る様に抜け出し、煙に向かって銃口を向ける。
その行動に違和感を感じると共に、鳥類種の持つ嗅覚が反応する。
(この匂い…まさか!!)
背中にたたまれた翼を開き、一気に煙のなか目掛けて飛んでいくミントリガーは、中にいるカントの腕を掴み取り上空に引っ張り上げる。
そしてジゼルより放たれる弾丸は
煙に触れるや否や
広がった煙の分だけ轟音と共に
辺り一面火の手が広がった。
「やはり可燃性のガスだったか!」
ジールの警告の意味を目の当たりにし、自分が救われた事に安堵しつつ感謝を述べるカント。
「ありがとうございますミントリガーさん」
すぐに地上へ降り立つミントリガーとカント。
「すみませんミントリガー」
ミントリガーを呼んだのは、黒い穴目掛けて仲間を乱暴に投げ入れるジゼルだった。
「決着つけたかったのですが、仲間?が使い物にならないので、撤退致しますね」
「待て!!」
銃口を向けるも、間一髪で間に合わず。
穴は閉じてしまった。
荒々しく愛銃をホルスターに収納するミントリガー。
「…ジゼル…おまえは……必ず狩るっ」
自然界で生まれ育ってきた猛禽類特有の本能もしくは感性なのか。
“倒す”ではなく“狩る”と口にしたミントリガー。
彼の中でジゼルは
対等な立場の“敵”ではなく
狩るべき“獲物”となった。
こうして戦地であった札幌は。
無数の破壊の跡を残し、奇しくも“静けさ”を取り戻したのだった。
重軽傷者:16名
死者:なし
戦闘終了。
読んで下さりありがとうございます。
戦闘が続きましたが、しばらくまた平和なシーンが続きます。
次回のゲストは、清里の英雄です。
またお付き合い頂けると嬉しいです。