マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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第2話です。
1話の日替わりです。


第2話 『ノースエリア-北の大地-』

 

「おおおおおおお!!空気美味しいいいいいい!!!!」

 

予定通りノースエリアに着き、空港から車両を乗り継ぎ最北端に近い場所へ辿り着いたケンゴ。

そこには緑豊かで木々が生い茂る、まさに大自然と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。

 

「結構時間かかったけど、たまにはこういうのも良いよね?」

 

専用のリュックサックを前にかけて、収納された花

植物が育たない火星の土壌と環境に適応した唯一の一株

【ルルイエ】

ケンゴは日夜、このルルイエの開花を目的に尽力していた。

 

「手続きも済ませて来たし、ここなら君に適した、良い土が手に入るかもしれないよね、頑張ろうね!ルルイエ!」

 

ケンゴが向かったのは森林公園、念のため本人確認を済ませた後に、研究の名目で土の回収許可も得てきたケンゴは、満面の笑顔でルルイエに語りかけ、意気揚々と森林へと足を運んでいく。

 

 

◆数分後◆

 

野花の群生地を見つけたケンゴ。

土を少量採取し専用の容器に入れ、機械に挿入し、端末を確認する。

 

「窒素、リン酸、カリウム…カルシウムとマグネシウム…嘘…ミネラルまで?量も適量だし、逆にこれは豊富すぎるんじゃないかなぁ…」

 

成分分析の結果は想像以上だった様子だった。

想定を超えていた事にケンゴは、嬉しい誤算と言わんがばかりに静かに興奮していた。

 

「けどしっかり帰ったら成分分離と再分析をして、必要な栄養素を抽出しないとだね。このままでもいいかもだけど、お腹壊しちゃうと困るからね」

 

比喩表現が自然と出る程にケンゴにはルルイエという存在が大切なのだった。

「ルルイエ」

超古代の言葉では

「希望」

を意味する言葉

その言葉はケンゴにとっても特別な意味でもあり、自らの目的への象徴でもある。

 

「さてと、目的も充分果たせたし、僕もお腹すいたからな、そろそろ宿泊施設に向かおうか」

 

土の回収を済ませて分析キットも仕舞い込み、満面の笑顔でルルイエを見るケンゴは、帰還する事にした。

 

その時だった。

ワンッと犬の鳴き声がすぐ側に響く。

 

「うわっ!!びっくりしたぁ…え?君、いつ来たの?」

 

ケンゴが驚くのも無理もなく、辺りに人もいなければ動物の気配もしない。

いつの間にか現れた

まるで雪の様に白く、森林を歩いて来たとは到底思えない程に、汚れが一切見て取れない。

そのうえ、心なしか。

その白犬の立っている周辺には、やけに草花が生き生きとしている様に見える。

 

「君、どこから来たの?迷子…とかじゃないよね…この森に住んでるとか?まさかねぇ〜」

 

訝しむケンゴ。

しかし犬は何も答えず、ゆっくりとケンゴに近づいてくる。

ケンゴもそれに合わせて、ゆっくりと腰を下ろし、警戒されない様に手を伸ばし、犬の頭を撫でる。

 

「毛並みもいいし、きっと飼い犬かなぁ、放し飼いなのかなぁ」

 

何か犬の手がかりがないかと観察しながら撫でるケンゴ。

背中を撫でようとしたその時、見えない固い何かがそれを阻んだ。

 

「ん???なんだこれ???」

 

疑問に思ったその瞬間、ほんの瞬きをする瞬間だった。

白い犬の体毛の一部に赤い模様が見え、触れなかった背中には丸く炎の様に燃えている盾の様な物が見え。

ケンゴはそれを触っていた。

 

その時、突然後方へと勢いよく飛んだ白犬。

 

姿勢を低くし、それはまるで臨戦体制に入るかの如く、一瞬ケンゴに対しての警戒を露わとする。

しかしすぐさま、警戒を解き、お座りの体制へと落ち着く白犬。

 

「え…僕なんか悪い事したかな?」

 

あまりの身のこなしに驚いたが、ケンゴにとっては、気に触る事をしたのではないかと心配になってしまう。

 

「えっと、ごめんね、何か悪いことをしたなら、謝るよ。そうだ!何かご馳走するから、それで勘弁してもらえる?」

 

ご馳走と言う単語に反応したのか、白犬はパタパタと尻尾を振る。

 

「あ、でも、もし野生の子だったらどうしよう…大丈夫なのかなぁ…」

 

喜ぶ仕草を見せる犬を尻目に、自分の提案に不安に思うケンゴ。

 

それも束の間

 

ケンゴは背後に光を感じ、振り向いた。

驚愕するケンゴ。

 

「え?鳥居?いつの間に!?」

 

明らかにおかしい。

そこには決してなかった、そう気づいた瞬間。

目の前にいる犬も怪しく思えたケンゴ、とっさに専用装備

懐の【GUTSスパークレンス】のホルスターのロックを解除、グリップに指をかけようとした直後だった。

 

白犬は勢いよく突撃。

ケンゴの顔面に向けて旋回して後ろ脚で蹴る。

 

余りの勢いと予想だにしない犬の動きに、驚くまもなく。

ケンゴはそのまま重力に任せて、背中から倒れる体制へと向かう。

 

ドサッと背中を床に殴打したケンゴ。

土と草の上とはいえ、痛くはないが充分衝撃で驚く。

 

上体を起こし、懐につけていたGUTSスパークレンスを引き抜き、前方に銃口を構える。

 

しかしそこには、何もいなかった。

 

もっと言うならば、森にいたはずのケンゴが、いつの間にか芝生にいたのだ。

 

「うそ…でしょ?」

 

あまりの状況に理解が追いつかないケンゴだったが、それでも緊張はとかず、周囲を見回す。

 

やはり、自分が元いた場所とは違う。

 

芝生だけではない。

 

周りに人の気配や話し声が聞こえ、車の行き交う音もする。

確かに数メートル先には山道の入り口らしき物が見えるが、木々の種類が違う事の不自然さを再確認する。

 

「落ち着け、まずは現在地の確認をしなきゃ」

 

携帯端末を取り出したケンゴ。

しかし予想だにしない事態がケンゴを襲う。

端末には

-NO SIGNAL-

と出ている。

 

「そんな…こちらマナカ・ケンゴ、ナースデッセイ号、応答を願います。ナースデッセイ号!アキト!ユナ!!」

 

すかさず通信を試みるケンゴだったが、ノイズ音しか聞こえて来ない。

 

「だめだ…通信障害か何かなのかな…どうしよう…」

 

辺りを見渡すケンゴ。

ショッピングモールらしき建物を見つける。

 

「とりあえず、人がいるところに行こう、なんだか不安だし…」

 

そこに向かう事にした。

 

 

◆数分後◆

 

モールの入り口には、キッチンカーらしき物が停まっていた。

なんとも食欲を唆る香ばしい匂いがする。

 

「そういえば、お腹空いてたんだった…」

 

少し悩んだが、長時間の移動と極度の緊張のおかげで、限界に近かったケンゴ。

 

「腹ごしらえを先にしよう、まずはそれからだ」

 

 

キッチンカーへと赴くケンゴ。

 

「すみません、えっと〜、このホットドッグとポテトを下さい」

 

立てかけてあるメニューを見るが、空腹のせいかあまりじっくり見てられず、1番上に位置した物を注文したケンゴ。

 

「は!はい!ありがとうございます!!すぐ用意しますので!!そちらの席でお待ち下さい!!!」

 

偉く興奮気味に受け答えをするキッチンカー内部の男性に驚くケンゴ。

 

端末の電子マネーで支払おうとしたが、タッチ端末が見当たらず。

 

「あのぅ、支払いって」

 

「支払い!?大丈夫です!!サービスします!!させて下さい!!!」

 

これもまた偉い勢いで言い放たれ、払うと言ってもいそいそと用意しているためか、耳に入っていない様子。

 

渋々席に着くケンゴはテーブルの上にルルイエを置く。

先程のただならぬ対応のせいか、周りの視線を感じずにはいられないケンゴ。

 

「なんか僕、凄く見られてない?」

 

ルルイエに語りかけるも返して貰えるはずもなく、不安が更に募るケンゴだった。

 

「お待たせしました!ご注文の品です!あとドリンクもおつけしました!」

 

「あ、ありがとうございます、やっぱりちゃんと払うので、現金でもいいですよね?」

 

タッチ決済が出来ないんだと判断したケンゴは、すぐさま財布を取り出そうとするが。

 

「大丈夫です!その代わりと言ってはなんですが……」

 

肉薄する距離で迫ってくるキッチンカーの男性

 

たじろぐケンゴ

 

「その…お写真撮らせて頂いてもよろしいですか!?お願いします!!!」

 

地面が割れるのではないかと思うほどその場に土下座する男性の勢いに負け。

ケンゴは小さく「はい」と応えた。

 

そこからケンゴは良く覚えていない。

店主の奇行を皮切りに視線を飛ばしていた周りの客も、ケンゴに頼み込んでくる。

ケンゴ単体ならまだしも、ルルイエも一緒に必ず撮られる。

大切な存在と一緒に写真を撮ってもらう事、尊重してもらえている気分になり。

何よりも、本当に空腹が限界に来ていたため、ほとんど耳に入っていない微睡状態に近かった。

 

10組目の女子高生2人が最後となり、これでやっと食事にありつける安堵が増していたケンゴ。

 

「いきますよぉ〜、せ〜の、スマイルスマイルゥ〜♫」

 

「え?ええええ??スマイルスマイル!」

 

「ありがとうございました!」

 

「え!あのちょっと!」

 

微睡の中ではあったが流石に驚いたケンゴ。

 

「スマイル・スマイル」

ケンゴが自分や他者に向けて使う、笑顔の合言葉でもある。

この言葉には。

ケンゴの母である『マナカ・レイナ』から受け継がれた言葉であり。

「スマイル」と言う言葉にケンゴは「太陽」と置き換えていた。

 

植物が綺麗な花を咲かせるには「雨」と「太陽」が必要。

「雨」を人が成長するために必要な「困難」とし

「雨」の後には「太陽」が出る

ケンゴはこの「太陽」を「笑顔」とし、照らしてあげたい

そしてその「笑顔」は人から人へ伝わっていく物

 

自分の笑顔の1つ

相手に与える笑顔の2つ

 

「笑顔」と言う名の「花」を咲かせる

その思いからケンゴは

 

「スマイル・スマイル」

 

と2回言っているのだった

 

それを見ず知らずの人が何故使っていたのか。

それがケンゴには気になってしまったため、彼女らを引き止める。

 

「あ!大丈夫です!」

 

しかし逆に制止されてしまったケンゴ。

 

「プライバシーは守ります。ネットにはあげませんから、安心して下さい!!」

 

そう言って女子高生2人は、走り去ってしまった。

 

聞きたいことはそれじゃないのに。

 

そう口にする気力も残ってはいなかったケンゴ。

 

訳もわからず、考えることを一旦諦め、ホットドッグを頬張るのだった。




読んでくださりありがとうございます。
中盤の不穏な雰囲気を読んでくださればわかると思いますが、もう日常系ではなくなっています。
次の話では、ケンゴがどこにたどり着いたのか。
多少確信に触れる事になりますので、次も読んでくださると嬉しいです。
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