マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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皆さん体調は崩してませんでしょうか。

ここ最近は暖かかったり寒かったりと大変ですが。

そんな私は

愛用のデザインナイフで足を刺しました

キャップしてたはずなのに奇跡的に外れて

不運にもその先が左足という

おかげで1日会社を休んだのですが

そのおかげで色々創作が進みました。

今回も是非時間があれば読んでくださると幸いです。


第16話 『流氷の地』

 

 

 

⬜︎略奪者の母艦⬜︎

 

暗がりの部屋に立つ人影が2つ

 

チャイナドレスの様な服装の女性でこの“略奪者”と呼ばれる一団のリーダー。

『ザザリ』

 

メタリックグレー赤い単眼が光る仮面を被ったロングコートの男性で幹部の1人。

『ジゼル』

 

「報告は以上です、ザザリ様。音声データも後に送信致します」

 

札幌でのズゾロによる襲撃事件の報告をしていた。

 

「ご苦労。仲間の危機によく働いてくれた。それで、ズゾロの方は?」

 

簡単に労った後、幹部の安否確認をするザザリ

 

「目下しゅ…治療中です」

 

修繕中と言おうとしたところを言い直すジゼル。

 

「数時間にて終わるかと」

 

報告に来る前ジゼルはズゾロを母艦内にあるメンテナンスルームに預けて来た。

そこの技術者によれば、数時間で回復すると聞かされたため、それをそのまま伝えるジゼル。

 

「ザザリサマアアアア」

 

そこに自動音声の様で安定しないくぐもって震えた音を鳴らす異形の女性。

『アーラ』が入室する。

 

「ごめんねぇザザリ様ぁ、姉さんが暴れちゃってさぁ」

 

言葉に相反してヘラヘラした口調で止める素振りもなく遅れて入室したのは。

 

「ジゼルオマエエエエエ」

 

アーラはジゼル見つけるや否や威嚇するが、首についたチョーカー型の翻訳機の間の抜けた音声のせいで迫力が半減して見える。

 

「オマエガイナガラドオオシテエエエエエ」

 

両手の爪が伸び、掴み掛かろうとするアーラ。

 

それをわざとギリギリで躱すジゼル。

 

「オマエガヤラレレバヨカッタノニ…オマエミタイナdownerゴトキガアアアアア」

 

「落ち着きなって姉さん。ジゼルさんもあんまり気にしないでね」

 

荒れ狂うアーラの猛攻を躱すジゼル。

 

それを決して止めずにニヤニヤと面白がっているエレ。

 

「えぇ、アーラさんがズゾロさんを好いているのは知っておりますので、なんら気になりませんよ」

 

アーラの動きが止まる。

 

「好きな相手が大怪我を負ったんですから、気が動転するのも仕方がないでしょう」

 

「ナ…ナニヲ…」

 

動揺しているアーラに、ゆっくりと距離を離しながら話すジゼル

 

「彼は無事です、先ほどザザリ様にも報告しましたが、数時間で回復するでしょう」

 

その言葉を聞いたアーラは構えていた両手をだらりと下げる。

 

「アーラ」

 

ジゼルとアーラの間に割って入るザザリ。

 

「ジゼルを責めるのは筋違いだ。ジゼルはズゾロの危機を救ったのだ。それと、この際だから忠告しておこうか」

 

ザザリが左手をぐっと握りゆっくり挙げていく。

 

それに合わせ、アーラもゆっくり持ち上がり。

自分の首を押さえながら、空中で苦しそうにジタバタさせる。

 

「以後ジゼルをdownerと言って卑下する事を禁ずる、良いな?」

 

更に左手を上に挙げたザザリ。

 

先刻より激しく苦しみ出すアーラは、口元から泡の様なものが漏れ始める。

 

「返事は?」

 

「ザザリ様ぁ、それじゃあ返事まともに出来ないヨォ」

 

相も変わらずヘラヘラしながら、姉の危機ですら面白がるエレ。

 

「失礼した。私も大人気なかったな」

 

握った左手をぱっと広げた途端、アーラは地面へと落ちる。

 

「アーラ、すまない」

 

腕組みをして謝罪するザザリ。

 

「ザザリ様、発言いいですか?」

 

ジゼルの発言に対し頷くザザリ。

 

「次はアーラさんに出てもらっては?」

 

苦しそうに息を整えるアーラは、ジゼルを不思議そうに見る。

 

「アーラさんも、ここでズゾロさんの雪辱を果たせれば、振り向いていただける事でしょうね」

 

ビクッとした途端固まるアーラを見て、また面白いものが見られると悪戯な笑顔でケタケタ笑うエレ。

 

「じゃあ僕も出ようか」

 

「マッテ…ワタシニ…マカセテ」

 

エレの一言に対して静止するアーラは、突然モジモジしだす。

 

「ジゼル…イエ…ジゼルサン…ゴメンナサイ…アナ…タノコト…ゴカイシテタ…」

 

その仕草は照れている事を隠す素振りも見せず、恥ずかしがる振りをしながら挙動不審に視線をあちらこちらと移す。

 

それはまさに

 

恋する乙女そのものと言える。

 

「オウエンシテ…クレテタノネ」

 

「えぇ、これからも応援しておりますよ」

 

仮面で表情を隠している事を良いことにジゼルは、心にもない事をスラスラと言い放つ。

 

(能無しと虫ケラ。吐き気がするモノ同士、ピッタリなカップリングですね)

 

「ではアーラ、次はお前が行け」

 

ザザリがアーラに命令する。

 

「時間にしても昼時だ。食事をして来い」

 

「ハイ」

 

恐らく笑顔を作っているのであろうその顔は、ただただ悍ましく、そして少しばかりの妖艶さを携えていた。

 

「ボクはお留守番かぁ」

 

つまらなそうに不貞腐れて去ろうとするエレに対し、ザザリは声をかけた。

 

「エレ、お前にも頼みたい事がある」

 

首を傾げながらエレはザザリを見る。

 

ザザリは続けて言った。

 

「2箇所同時に攻める」

 

 

⬜︎紋別ゲート 流氷科学センター口⬜︎

 

物資の搬入を早々に取り掛かるトリガー、セイリュウジン、宮村の3人。

 

ゲートを抜けて向かった先は

【北海道立オホーツク流氷科学センター】

 

紋別と言う土地は流氷研究の中心地となっており。

流氷や海洋に関する知識をわかりやすく学ぶ施設として設立され。

世界で唯一の流氷をテーマにした科学館である。

 

この世界ではこの地にて、不定期にカレーを販促と宣伝を目的とするイベントが催されている。

今回は販売元とメーカーにより、新商品の宣伝を兼ねてのイベントを組まれていた。

 

搬入を終えて変身を解いたケンゴは、海岸に近い事もあり、感じたことのない冷気に驚いた。

 

「なんか…すごく寒い?」

 

そう口にした途端、宮村がケンゴにそっと何かを差し出した。

 

「北海道は北のほうに行けば行くほど冷えますよ、もうじき冬本番になるところですし」

 

渡されたのはいかにも暖かそうなベンチコート。

 

宮村もいつの間にか同じベンチコートを羽織っている。

 

ケンゴはそれを受け取り羽織る。

 

「あ、ありがとうございます宮村さん」

 

羽織る前と後ではだいぶ違う事を実感し、安堵するケンゴ。

 

「こんなに違うんだね」

 

「北海道には公式キャッチコピーがありましてですね」

 

「へぇ〜そうなの??なになに??」

 

興味津々に聞くケンゴに対し、厳しい表情を作りキャッチコピーを口にする宮村。

 

「試される大地」

 

ぎょっとするケンゴ。

 

「それ!アキトも同じこと言ってた!」

 

「アキト??」

 

思った以上に大きな声をあげてしまった自分に驚きつつ、宮村は番組としてのトリガーを知らない人物。

この世界では物語の登場人物でしかない1人である『ヒジリ・アキト』の名前を聞いてもピンと来ないのは致し方がない。

 

「僕の仲間だよ。ここに来る前、ノースエリアってとこが、自然豊かでいいって教えてくれてのも、アキトともう1人、ユナだったんだ」

 

「そういえば、報告記録にもありましたね。私字を読むの苦手なんで、音声読み上げ機能使って聴いてました」

 

申し訳なさそうに頭をかく宮村。

 

「アキトも言ってたんだ【試される大地】って。世界は違っても、何かしら共通点は多いんだね!」

 

顔を見合わせ、何か可笑しく思えたのか少し噴き出す2人。

 

続けてケンゴは言う。

 

「だからなのかな、この地の人々が逞しく見えるのは。そう言った自然と隣に暮らしてるからこそ、みんな活き活きしてる様に思える」

 

「それはちょっとわかんないんですけど、そう言われると、悪い気はしないですね!」

 

笑顔を向けあっていた所に、1人の女性が走って近づいてくる。

 

「みやむううううううう!!」

 

宮村と同じくベンチコートを羽織り、中にはパンツスタイルのフォーマルなスーツに身を包むショートヘアーの女性。

腕に着いた青い腕章には【広報担当】と白字で書かれていた。

 

「ぬまちいいいいい!!久しぶりぃ〜!!!」

 

近づいて来た女性にかなりフレンドリーに返す宮村のテンションに少し驚くケンゴ。

その姿を見て、ある程度察する。

 

「来てくれてありがとぉ!たすかるわぁ……は?」

 

宮村と腕を抱きながらへ感謝を述べた女性は、ケンゴの姿を見た瞬間に固まる。

 

「マナカさん紹介します!こちらわたしの同期のー」

 

「あ…あ…ま…ままままま」

 

宮村が紹介しようとしたところを押し除ける様にしてケンゴへ近づき確認する。

 

「マナカ・ケンゴ?え?マジ?え?」

 

ケンゴは女性の大きく見開かれた目力に気圧されかけていた。

 

「ハァアアアアアアアアアアア!??????」

 

突然大声を発する女性職員。

 

「ああああああああの!ははじゅめまして!!こ!広報部の『沼上-ぬまかみ-』です!!お会い出来て光栄でしゅ!!」

 

なんとか平静を取り戻そうと自己紹介をするが、その場にいる誰もが噛んだ事にはスルーする。

 

「みやむぅ…」

 

人息つく間もなく職員の沼上は宮村に向き直る。

 

「おめぇマジおめぇえええええ!!」

 

「え!?どぅした!?なんだ!?」

 

宮村の両肩を掴み狼狽する沼上。

 

「私がウルトラマン好きなの知ってたべやあああああああああ!!!!」

 

そう言われ何かを思い出した宮村。

 

「あ…そいやぁ…」

 

「言えよおおおおおそおおお言う事はああああああああああ!!!!!!」

 

「ごおおおおおめえええええええんんんんてええええええ!!!!!」

 

前後左右にぐわんぐわんと揺らされる宮村。

 

しかしすぐにピタッと止まる。

 

「んで…私どうすりゃいい?私どうなる!?」

 

未だ慌てふためきながら沼上の飛び出そうな両目を見つめる宮村。

 

「ウルトラマンが目の前おるんよ!?しかもホンモンが!!そら最推しはロッソとブルだけどさ…いやそじゃなくてな!!……あ…ひょっとして…私今日…死ぬ!?」

 

「落ち着けって!」

 

「ぬまちゃーん」

 

呼ばれた方向を表情はそのままで首だけぐりんと回す沼上。

 

「とりあえずケンゴくんは俺が会場連れてくっすねぇ」

 

その形相をあえてスルーするセイリュウジンはケンゴの肩を叩きながら誘導する。

 

「ケンゴくん!お腹すいたっしょ?ご飯食べてください!カレーありますよカレー!」

 

「ケンゴくん!?」

 

沼上は怒号の様な声をあげる。

 

「うん!」

 

そう促され離れようとしたが、ケンゴは気になる事があり車両に目を向ける。

 

「あ!ここは冷えますし!ルルイエちゃんは車内で安全に保護しますから安心してくださぁ〜い!この後私も会場に行くので〜!」

 

視線の意図を汲み取った宮村はケンゴに向かって手を振って伝える。

 

「ああん!?」

 

聞き捨てならない事をまたもや耳にしたのか、一瞬止まっていた沼上が再び動き出す。

 

「わかった!ありがとう!」

 

セイリュウジンとその場を駆け足で去っていくケンゴ。

 

「ルルイエ!?おまっ!ちょっ!おまあああああ!!!」

 

「だからおちつけってぇのおおおおお!!」

 

「いるんだな!?中にいるんだな!?おまっ!おまああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

⬜︎イベント会場⬜︎

 

 

「わぁ!大盛況って感じだね!」

 

会場の従業員口から入り、厨房を抜けた1番近いテーブルに案内されるケンゴは、思い思いの時間を過ごしている来場者の活気に気持ちが高揚していた。

 

「ケンゴくんはここに座って待ってて下さい!」

 

セイリュウジンよりイスを引かれ、着座を促されたケンゴ。

 

そこに2人の人物が、驚きを隠せずに近づいて来た。

 

「セイリュウジン!?」

 

メタリックで赤いアーマーが目立ち、両腕のアームカバーには掘削用のドリルの様なモノが付いている。

紋別を中心に守護するヒーロー。

『砕氷船士ガリヤー』

 

「おまえ…またとんでもない人を…」

 

カラスの様に夜の様な漆黒の鎧を纏い、スラっとした体格が特徴でスマートな印象の戦士。

近隣の地、遠軽町を中心に守護するヒーロー。

『エンガイザー・パラディン』

 

「あ!ガリヤーさん!パラディンさん!」

 

ケンゴの後ろに周り彼の両肩を軽く掴んで自慢げに見せるセイリュウジン。

 

「マナカケンゴさんっす!」

 

「いやいや!見りゃわかるけどさ!え!?連れてきたの!?無断で!?」

 

無断での問いに「いやいや」と言いながら手を振る仕草をしながらガリヤーの前まで行くセイリュウジン。

 

「とりあえずガリヤーさん!1皿お願いします!奢りで」

 

そう言い放って厨房へと逃げる様に去るセイリュウジン。

 

「僕!?」

 

それを追いかけるガリヤー。

 

「騒がしくてすまないな」

 

ケンゴへと近づくパラディンは。

いつの間にやら何かをトレイに乗せていた。

 

「初めまして、俺は『エンガイザー・パラディン』さっきの赤いのはガリヤーだ。寒いからこれ飲んで待っててくれ」

 

水の入った未解錠のペットボトル、スプーンとフォーク、ナプキン、温かいオニオンスープをテーブルに置く。

 

「ありがとうございます!パラディンさん!」

 

「パラディンでいい。俺もケンゴって呼ばせてもらうから」

 

「うん!わかったよパラディン!」

 

そこへ1人の人物が近づいてくる。

 

「パラディン、私のお昼ついでに客引き……」

 

会場正面入り口側から来場者を十数人引き連れて歩いて来た一際目立つ新たなヒーロー。

 

彼の名は

『エンガイザー・ドラゴン』

深みのある赤と黒の鎧に名前の通り“龍”を模した印象の顔と胸部装甲が特徴の拳闘士。

パラディンと同様に遠軽町を中心に守護するヒーローの1人。

 

もう1人

『エンガイザー・ライジング』と呼ばれるヒーローと彼らは3人で活動をしている。

『エンガイザー』とは

所謂彼ら3人のコードネームでありチーム名でもある。

 

ドラゴンは会場見回り警護を終え。お昼休憩に来たついでに客引きをした様子だったが。

到着早々に何かに気付いて固まった。

 

「おまえ…なんで裏から回らないんだ、表は混雑するかもって今朝話し合ー」

 

「マナカケンゴがいる!!!?」

 

従業員口から入って来なかった理由を問おうとしたパラディンを遮るが如く、辺り一面に広がる大声でケンゴの名前を叫んだドラゴン。

 

結果

 

来場者の全員がざわつき出し

 

ケンゴの姿が見えた途端

 

殺到する。

 

「マナカケンゴさん!なんでここにいるの!」

 

「マナカケンゴさん!握手して!」

 

真っ先に反応を示したのはドラゴンに1番近かった子供達だった。

 

その背後には大人も控えている。

 

何人かは端末を取り出し写真撮影する始末。

 

「えっと…僕はただご飯を食べに来ただけで」

 

勢いに困惑するケンゴ。

 

「馬鹿!騒ぎすぎだ」

 

「ああああすまないっ!つい興奮して!まずいな…人が集まってしまった…」

 

明確な失態を犯してしまい叱責されるドラゴン。

 

しかし反省するよりも今の現状をどう収めるかを最優先とし、名誉挽回を図ろうとしていた。

 

「あぁ…なんとかしないと、とりあえず彼を裏に誘導するか」

 

「では私が彼のカバーをする」

 

そう言いながら動き出そうとしたその時。

 

「皆さーーーーん!」

 

あたふたするケンゴの隣に拡声器を持った沼上が現れる。

 

「突然失礼致します!イベントスタッフよりお願いがございます!」

 

会場の内外に聞こえるように高めに拡声器を向ける沼上。

 

「マナカケンゴさんはご旅行で来られたのです!色々聞きたいことや伝えたい事はあるでしょう!ですが彼もみなさんと同じ客人です!!

 

「ご存知の様に!昨日は北見!本日は札幌を護って戦ってくださりましたマナカさんは!………」

 

一旦一呼吸を置いて、来場者の反応を伺う沼上。

 

「朝から何も食べてないそうなんです!!」

 

ざわめき始めた会場。

 

それはまずい

 

と口々に漏らす来場者の声が聞こえてくる。

 

「改めて皆様にお願いします!!どうか!!……せめてご飯を食べさせてあげてください!!」

 

拡声器を口元から離し、深々と一例する沼上。

 

「お願いします!!」

 

肉声でも十分に響き渡る声。

 

それを聞いていた近くの少年がケンゴに問いかける。

 

「マナカケンゴさん、カレー食べるの?」

 

それに対して少し前屈みになり、優しく返すケンゴ。

 

「うん、そのつもりだよ」

 

応えてもらえた事に嬉しくなった少年は。

 

「一緒だね!ボクも食べるんだ!」

 

途端はしゃぎ出した子供達。

 

「僕も」「私も」「俺も」と喜びを露わにしていた。

 

「そっか!みんな一緒だね!」

 

満面の笑みで子供達に返すケンゴを見て、1人の男性が先頭に立った少年へ近づき、彼の肩に手を置く。

 

「じゃあお邪魔しない様に、私達も向こうでご一緒させて頂くのはいいですよね?」

 

そのまま周りの来場者に向けて声をかけた男性。

 

そこへすかさずガリヤーが大きな声で来場者に向ける。

 

「食べたい方はこっちに集まって下さ〜い!あそこの大きいのが目印でぇ〜す!」

 

指差した先にはセイリュウジンがぴょんぴょんと跳ねながら大手を振っている。

 

「ありがとう沼上さん、おかげでこの場をおさめられた…」

 

沼上に向け、ドラゴンが感謝を述べる。

 

「いえいえ、本来私が一緒につくべきだったんです…すみません」

 

首を横に振るドラゴン。

 

ドラゴンはケンゴへと近づく。

 

「マナカケンゴさん、自己紹介が遅れてしまった。私はエンガイザー・ドラゴン、パラディンの仲間だ。私が迂闊なばかりに、申し訳ない」

 

「いえいえ!いいんです、大丈夫です」

 

両手を上げて手を振り、言葉を返すケンゴ。

 

「あの良かったらお2人も一緒にお昼どうですか?」

 

折角なのでと思い2人を誘うケンゴ。

 

「身に余る光栄ですが…今は辞めておきます。すぐに動かないとなので」

 

「私も成すべきことがあるので。パラディン、現状報告をライジングにして来る、ここは頼むよ」

 

「お前の分は裏に用意しておく、悪いな」

 

「謝るのは私の方だ。じゃあマナカさん!ごゆっくり!」

 

そう言って足早に裏へと回ったドラゴン。

 

「マナカさん。ご友人は今も車内に保護し、他の職員にゲート近くのシェルターへと護送する様要請しました。今頃は到着していることでしょう、情報頂ければしばらく我々の方で面倒を見ますが、よろしいでしょうか?」

 

ご友人と称したのは、間違いなくルルイエの事だと気付かされたケンゴ。

 

自分だけでなく、この世界の人々はルルイエも歓迎してくれている。

 

そう改めて実感したケンゴ。

 

「ありがとうございます!じゃあ…あのリュックに簡易散布剤がありますので、水やりと一緒にお願いしてもいいですか?ルルイエもそろそろお腹が空くころなので」

 

引き続き散布剤について「ロックを外して撒くだけで良いので」と身振り手振りで説明するケンゴに対し。

沼上は何か意を決した様に問いかける。

 

「あの…良ければ…なんですけど」

 

先ほどの様に深々と頭を下げる沼上。

 

「その水やり、私がしてもいいですか!!」

 

勢いよく頭を下げられた事もそうだが、予想外の申し出に驚きつつ歓喜しているケンゴ。

 

「ほんとですか!?助かります!ありがとうございます沼上さん!」

 

会って間もない相手だが、その誠意と行動は十分ケンゴの中で“信頼に値する振る舞い”だった。

 

彼女の手をしっかり握り、感謝を述べるケンゴ

 

「わ…わわあわわわわ!ありがとうございます!」

 

突然の出来事に脳の処理能力をフル回転させて平静状態への軌道修正を必死に試みる沼上。

 

「えー…職員の宮村も裏方に回ってもらってますので、伝えておきます。呼べばすぐ出てくるはずなので、何かあれば彼女を頼って下さい」

 

なんとか体裁を取り戻した沼上。

 

しかし

 

「では……失礼します!!!」

 

脱兎の如く裏へと駆け込み。

恐らく中にいる宮村に飛びかかったであろう沼上の事が厨房より漏れ出た歓喜の声で察しがついたケンゴ。

 

苦笑いしながら席に座り直したケンゴへと、ガリヤーが食事をトレイに乗せて現れた。

 

「お待たせしました!これが名物の【流氷カレー】です!!」

 

テーブルに置かれたカレー

 

それはケンゴの知ってるカレーとは明らかに違った

 

海の様に青い色をしていた。

 

 

⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎

 

 

会場がある海岸付近。

そこには、カニの爪を模った

高さ12m 幅6m 重さ7トンの

巨大なオブジェが存在する。

 

とある彫刻家、紋別商業会、そして多くの紋別市民によって制作された。

 

まさに“紋別市のシンボル”と呼んで良い。

 

巨大なカニの爪のオブジェ。

 

そこに1人ヒーローがおり、彼の元へとヒーローが駆け寄ってくる。

 

「ライジング!」

 

エンガイザー・ドラゴンは、周辺の巡回警備をしている仲間へ声をかけながら向かっていく。

 

「なんか会場が騒がしそうだったけど、どうしたんだ?」

 

近いとはいえ常人では聞き取れる距離にはないはずの会場の盛り上がりを耳にした人物。

 

彼の名は

『エンガイザー・ライジング』

その名の通り燃え上がる太陽の様に赤と金に彩られた鎧を纏い、騎士や戦士と呼んでも差し支えない出立ちと立ち居振る舞い。

パラディンとドラゴンの仲間であり、同じく遠軽町を中心に守護するヒーローの1人。

 

先ほど交代をしたばかりの仲間が戻った事もそうだが、やはり会場の様子が気になり尋ねる。

 

「その事で報告があって。会場にマナカ・ケンゴが来た」

 

「マナカ・ケンゴ……へ?」

 

予想外の答えに少し裏返った声を出すライジング。

 

ドラゴンは簡潔に事情を説明する。

 

会場に戻る途中客引きをして集め

 ↓

何故かマナカ・ケンゴが会場にいた

 ↓

驚いて騒いだ

 ↓

来場者大騒ぎ

 ↓

職員の沼上がナイスフォロー

 ↓

マナカケンゴと沼上に謝罪

 ↓

ライジングに報告

 

それを一通り聞いたライジングが応える。

 

「会場の騒ぎはそのせいか…やばいなそれ」

 

腕組みをして顎の辺りを摩るライジング。

 

「今は一旦落ち着いてるよ、この事で職員も対応してくれているだろう」

 

そう補足を済ませたドラゴンに向き合うライジング。

 

「わかった、俺もこの辺軽く見回ってからそっちに戻るとするよ」

 

「ん?巡回を切り上げるにはまだ早くないか?」

 

交代制で動いていた2人は。

 

予定より早く切り上げると宣言されて疑問に思う。

 

「言ったろ?やばいって。考えてもみろ。あのマナカ・ケンゴだぜ?昨日は北見、今日は札幌を救ったホンモノが名物を食べるんだ」

 

ドラゴンの肩に手を乗せるライジング。

 

「しかも客引きまでして集めたんだろ?人が人を呼び寄せ連鎖するんじゃないか?今回用意したカレーの数には限りがある、あっという間になくなるかもしれないぞ」

 

結論が見えてこないドラゴン。

実は想像をしてはいるが、あまり現実的じゃない気がしているため、考えない様にしていた。

 

しかしそれは虚しくも、目の前にいる仲間の口よりその答えが程なく出てきた。

 

「予定より早くイベントは終わるだろうなぁ」

 

「いやいやいや!!それは飛躍しすぎてないか!?」

 

驚くドラゴンに対し宥める様に続けるライジング。

 

「あくまで可能性の話だって。とりあえずドラゴンは戻って飯食ったら現場を良く見張っておいてくれ。頼んだぜ」

 

そう言って踵を返して巡回ルートへと歩みを進めるライジング。

 

「あ、ああ、わかった!」

 

その背中に向かって返事をして。

全速力で会場裏へと飛んでいく。

 

「きっと今日は、とびきり騒がしい日になるだろうなぁ」

 

何やら嬉しそうに巡回を始めるライジングだった。

 

 

⬜︎イベント会場⬜︎

 

 

出された食事をこの上なく不安そうに眺めるケンゴ。

 

「これは…カレーなの?」

 

「カレーです!」

 

両の手を重ねる様に前へ組み、接客時の基本姿勢を保ったままハキハキと応えるガリヤー。

 

「青い……ものすごく…青いですよ?」

 

「僕は赤いです!」

 

「これの事言ってるんだけど!?」

 

予想だにしなかった応対を受けて、ついつっこんでしまったケンゴ。

 

「大丈夫!ぜっっっっったいっ美味しいから!」

 

どこからともなくセイリュウジンが現れ、何かを運び小走りに去って行く。

 

だんだんと食べなくてはならない空気が漂い出す。

 

周囲を見ると何人かはもう既に食べ始めている。

 

見た目は青く、クリーム色のソースと具材らしき物がまるで流氷のように点在する。

 

さながら海に浮かぶ流氷のようである。

 

躊躇するケンゴだったが。

目の前にあるカレーらしきものは、とてつもなく食欲の唆る香りを発していた。

 

朝から動き、ろくに食事もしてなかったうえに戦闘を終え、はたまた搬入の手伝いまでした彼の空腹は限界に達していた。

 

意を決し、一際気になる白い塊を海の様な色のカレーと共にスプーンで掬い。

 

目を瞑りながら口に運ぶ。

 

ケンゴは驚きのあまり目を見開く。

 

野菜を煮詰めた様な深みのあるコクとスパイスの香り。

それらが口の中に広がり、後から来るピリッとした辛さ。

それをまろやかにする白い塊。

これが鶏肉だった事に安堵した直後、白いソースだと思っていた物はカレー独特の香辛料の香りを漂わせ、更に食欲を促進させる。

白いソースはホワイトカレーだった。

 

スプーンを進め、気がつくと夢中になって食べていたケンゴ。

 

「見た目すごいけど……すごく美味しい!」

 

その言葉を聞いた、傍で様子を見ていたガリヤーが満足気に会釈する。

 

その声と同時に少し遠巻きで席に座っていた他の来場者も同様「美味しい」と口々にしていた。

 

何人かはケンゴと同じく、初めて食べる人もいる様で、見た目を熱心に観察したり、関心する人なども見受けられ。

その場にいる人々の十人十色の反応が伺える。

 

ケンゴは半分ほど食べ終わった後、ふと自分から見える範囲のテーブルに座る人々の顔を見る。

 

皆が笑顔である事を確認し

 

ここでも

 

『笑顔の花が咲いている』

 

事を確信して

 

一口一口噛み締めてカレーを味わうのだった。

 

 

◇数十分後◇

 

空腹が満たされ、温かい食事に満足するケンゴ。

 

食前と食後に用意されたオニオンスープをゆっくりと飲んでいた時。

 

「皆さーん!!ご注目おねがいしま〜す!!!」

 

配膳を終えたのか、空のお盆を持ってセイリュウジンは会場にいる全員から見える位置に着き、大きな声をかける。

 

そこに次いで、ガリヤーが隣に立つ。

 

「誠にありがとうございます!本日、今この瞬間に入ってきて下さった方含め。皆様のおかげで、用意した食品が全て完了となりました!」

 

周囲からは「おおぉ」と言うような驚きの声と共に、拍手する人も見受けられた。

 

「これにて本日の試食イベントを終了とさせて頂きます!」

 

深々と一礼をするガリヤー、少し遅れてセイリュウジンも一礼をする。

 

そして姿勢を正し、来場者に見える様に体の向きを変えながら話していく。

 

「なお本日提供しましたカレーは、全てレトルト品にて用意しております!来週より発売されますので、ご興味ご関心を持って頂けた方は」

 

セイリュウジンがプラカードの様なものを手にして、来場者に向ける。

 

プラカードにはカレーのパッケージがプリントされており、その横には四角い形のバーコード、QRコードもプリントされ、上部には大きく「新発売」と派手に装飾されていた。

 

「こちらのQRコードにて詳細ページに飛ぶことが出来ます!是非チャックください!」

 

プラカードを持ったセイリュウジンに一斉に端末を向ける来場者。

 

プラカードを持って動き回るセイリュウジンだったが、何かを思い出したかの様に厨房の方へと駆け出して行き。

 

中のスタッフを全員引っ張り出す。

 

「本日皆様へお食事を提供しましたスタッフです!宜しければ、彼らに暖かい拍手をお願いします!」

 

よく響き渡るその声は、用意されたイベント会場のみならず、会場の外にまで届いた。

 

会場の内外共に再び大きな拍手が響く。

 

「そして最後に!」

 

セイリュウジンは忙しなく、今度はケンゴの方まで駆け寄る。

 

「本日飛び入りで訪問頂いたマナカ・ケンゴさんにも、感想を聞きたいと思います!!」

 

「え!?僕!?」

 

祭りさながらの大歓声が上がる会場。

 

小声で「なんか一言おなしゃっす」と無茶振りをするセイリュウジン。

 

「えっと…その…ご…ごちそうさまでした!!すごく!すごく美味しかったです!!」

 

先ほどと同様の大きな拍手が鳴り響く中、すかさずガリヤーが近づく。

 

「じゃあマナカケンゴさんもいる事だし!!みんなでアレをやりましょう!!せーので行きますよ!!」

 

アレと言われてただ1人呆けているケンゴ。

 

「せーの!!」

 

辺り一面に広がる

 

「スマイル、スマイル」

 

の掛け声

 

唖然として

 

またしても何もかも出遅れた

 

マナカ・ケンゴだった。

 

 

⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎

 

 

巡回ルートを終えてスタート地点に戻ったライジング。

 

会場の盛り上がりを聞き、少し驚く。

 

「予想してたより早く終わったみたいだな」

 

会場へと歩み始めようとした直後。

 

背後から異様な空気を感じ振り返ると、黒い穴が現れている。

中から白衣を纏い、辛うじて身体のラインで女性型と見える蜘蛛の様な顔の怪人が現れる。

 

「ん?」

 

突然の事に驚くも、すぐに状況整理し思い当たる節に辿り着く。

 

「何者だ…と言いたいが」

 

ロングコートの様なローブを軽くはたき、足を少し広げて姿勢を低くする。

 

「情報にあった略奪者の一味ってとこか。この場に市民がいなくて良かったぜ」

 

ライジングはどこからともなく武器を取り出す。

 

【ライジングソード】

エンガイザー・ライジングの専用武器。

ソードと言うよりも、形状はブーメランに近い大剣を肩に担ぎ、警戒する。

 

「ドコダ」

 

口を開く敵幹部『アーラ』

 

「ワタシノ…イトオシキズゾロサマ…キズヅゲdーーーーーッ…!!!!」

 

アーラは耳障りで刺す様な金切り声を上げる。

首に装着されていたチョーカー型翻訳機の音声が音量を処理しきれず小さく火花が弾け、煙を噴く。

 

それと同時に目の前のアーラは、額のあたりを緑色に光らせ、みるみる禍々しく変貌を遂げていた。

 

頭頂部からつま先は変わらず。

 

右腕は大きなカマキリの様な腕になり

左腕にはクモの腹の様な形状に変わり

背中からはクモの脚とトンボの羽の様なモノが生えている。

 

「複数の虫が混ざった合成虫(キメラ)だな」

 

踏み込める様に下半身に力を込めるライジング。

 

「自己紹介しとこう『エンガイザー・ライジング』だ」

 

けたたましい咆哮を向けてくる敵に、最早会話が成り立たないと判断したライジング。

 

「会話が苦手か?まぁいいさ…こっちも構わず…叩き斬るぜ!!」

 

 

⬜︎イベント会場⬜︎

 

 

「何の音?」

 

金属を弾いた様な金切り音と破砕音が会場に届き、ケンゴが疑問符を浮かべた瞬間。

ヒーローと職員が一斉に動き出す。

 

「皆さん!落ち着いて避難を!避難口は向こうです!」

 

真っ先に指示を出したのはガリヤーだった。

 

「何かあったんですか!?」

 

「わからないけど、万が一のために市民を安全な場所に誘導します。パラディン!ドラゴン!」

 

「わかってる、先に行くぜ」

 

呼ばれた2人は既に武器を構えて現場の方へ向かった。

 

「セイリュウジン!僕はゲート付近に向かう!周辺の市民誘導を任せた!」

 

「了解です!終わり次第現場向かいます!」

 

職員の宮村がケンゴに近づく。

 

「マナカさんも避難を!」

 

あくまでもケンゴは来賓。

 

そう認識している一同を代表して声をかけた宮村だったが。

 

ケンゴがそれに頷くはずもなかった。

 

「僕も現場に行くよ。また奴らかもしれないし、それに」

 

そう言ってGUTSスパークレンスとハイパーキーを構える。

 

「この地に暮らすみんなの…あの素敵な笑顔を護りたい!!」

 

その言葉を聞いたガリヤーとセイリュウジンはふと思い出した。

 

“彼も”みんなの笑顔のために戦っていた。

 

“自分たち“と同じ気持ちを抱いていた。

 

“同じ志し”を持っていた。

 

どこか半信半疑だったガリヤーも

 

分かってはいても何か現実味に欠けてたセイリュウジンも

 

今、目の前にいるこの人は

 

間違いなく

 

みんなの笑顔を護るために闇と立ち向かい戦い抜いた

 

本物のマナカ・ケンゴだと

 

そう“2人”は確信した。

 

「わかった!俺たちも終わったらすぐ行くから!頼んだっす!」

 

「ありがとうございます。みんなは僕らに任せて、仲間を頼みます!ウルトラマントリガー!」

 

セイリュウジンとガリヤーはそう言って各々別方向へと駆け出す。

 

「ご武運を!」

 

宮村も割烹着を脱ぎ、次いで市民の誘導に動く。

 

「ありがとう、皆さんも気をつけて」

 

ケンゴは宮村に応えながらグリップエンドにハイパーキーを挿入し、銃身を展開。

音のあった現場へ身体を向ける。

 

「未来を築く、希望の光ッ!!」

 

スパークレンスを前に突き出し、右肩の位置でぐっと力を貯める。

 

「ウルトラマンッ!トリガアアアアアアアアアア!!!!」

 

高々とスパークレンスを天に掲げて叫んだケンゴは、光と共に上空へと飛び上がった。




文字数で言うと今回が1番多いパートかもしれません。

次回はいよいよ戦闘を織り交ぜたパートが恐らく2話分続きます。

本日も読んでくださり、誠にありがとうございました。
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