マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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GWは皆さんどうお過ごしでしょうか。

文章を繋げるのって凄く大変なんだなと

度々思いましたけど

しばらくはずっとその辺を自問自答しそうです(・᷄д・᷅ )


第17話 『市長と社長の商談』

 

 

⬜︎北見市内-ショッピングモール前車道工事現場-⬜︎

 

ケンゴが北見に降り立って丸一日になろうとしていたその時。

 

ジゼルの襲撃にあったショッピングモールでは復興作業が着々と進んでいた。

 

辺りには土木作業員らしき風貌の男女総勢30名ほど。

 

その中でも一際目立つ2人の姿があった。

 

「社長」

 

マイクの様な形のマスクを被り、どこから用意されたのか黒いツナギを着て補修工事をしている男性。

 

彼の名前は『シャベリーマン』

【株式会社悪の秘密結社】に所属する怪人。

 

「なんだ」

 

そのシャベリーマンに声をかけられれるも作業の手を止めず、強くエフェクトのかかった声で応えてテキパキと修繕を進めている全身アーマーを身に纏った男性。

 

彼の名前は『ヤバイ仮面』

【株式会社 悪の秘密結社】の代表取締役社長の怪人。

 

「これ終わったら、帰れますよね?」

 

ヤバイ仮面は手を止めて、シャベリーマンを一瞥する。

 

「そういう取り決めだ」

 

そう言って腰を落とし修繕に戻り、更に応える。

 

「約束を違える様な相手じゃないのは、お前もなんとなくわかってるだろ」

 

「まぁ、そうですね」

 

シャベリーマンは、ヤバイ仮面の一言に対し釈然としないながらも妙に納得してしまっている。

 

何故彼らがこの様に復興作業を進めている理由は、ジゼルの襲撃事件があった日の夜にあった。

 

 

◇昨晩◇

⬜︎北見市-市長室-⬜︎

 

 

ジゼルによる襲撃事件後。

 

ヤバイ仮面とシャベリーマンはミントリガーより要請された、市民の避難誘導を率先していた、その日の夜。

 

市長との会談の場を設けられる。

 

「面と向かって話すのは初めてですね。北見市市長の『天城隣太郎-あまぎりんたろう-』です」

 

名刺を差し出す天城に対し、予測していたかの様に相手の言い終わるタイミングで自らの名刺を差し出すヤバイ仮面。

 

「悪の秘密結社代表取締役社長の『ヤバイ仮面』です」

 

名刺交換をする2人。

 

通常であればなんて事ない光景のはずだが、室内には緊張した空気が満たされている。

 

「どうぞお掛けください」

 

市長室に設置された来客用のソファに向かい合う様に座る市長とヤバイ仮面。

 

天城は進行を始める。

 

「まずは、避難誘導などのご助力と時間を作って頂き、誠にありがとうございます」

 

「前置きは良いので、要件をどうぞ」

 

主導権を握られるのを嫌ったヤバイ仮面は、明瞭な言葉で牽制をする。

 

「そう警戒なさらないで下さい」

 

営業スマイルは崩さず、じっとヤバイ仮面を視界の中心におさめてしっかり観察し直す天城。

 

「社長さんとは今後とも良き関係を築きたいと思っておりまして」

 

お茶の入った湯呑み茶碗を手に取り、どうぞと手を出してヤバイ仮面にも飲む様に促すが。

 

ヤバイ仮面はそれに対し手のひらを相手に向けて、キッパリお断りの意を示す。

 

「業務的な話でしたら一旦社に戻して頂けませんと何ともなりませんな」

 

さり気なく帰還の要求をするヤバイ仮面。

 

「いえいえ、業務といいますかぁ…まずはその…確認と言いますか」

 

それに対してやんわり且つ明確に論点が違うと言っている様なモノの言い回しをしながらお茶を一口飲む天城。

 

「報告に“一部”気になる項目がございましてですね」

 

そう言いながらタブレット端末の液晶を見つめる天城。

 

「敵を招き入れたのは“御社”だったと」

 

笑顔は崩していないが、目は冷たく鋭い。

 

それを聞いてヤバイ仮面は反撃に出る。

 

「おかしいですね、その報告には“補足”があるはずなのですが」

 

わざとらしく驚いたジェスチャーとコロコロと変わる目の形。

やがていつもの吊り目型になり。

 

「“先方契約違反につき解除既決”と。よもや行政機関と親しい間柄のヒーローともあろう“ミントリガー”が、報告業務を怠ってたと、そんな事ありませんよね?」

 

状態を前にして天城を凝視するヤバイ仮面。

 

カチャンッとお茶の器を受け皿に戻して、天城は少し早口で言う。

 

「私がしたいのはですね」

 

無表情を作り真っ直ぐとヤバイ仮面を見つめる天城。

 

「“連れてきた件”であり“御社の契約内容”には触れてませんつまりこれは………“筋”の話なんですよ」

 

早口言葉の様に一息で台詞を吐いた天城に対し。

それとなく警戒を強めたヤバイ仮面は、少しだけ上半身の体制を前へと運ぶ。

 

言い終わるや否や、先ほどと同様に笑顔を向ける天城は。

人差し指と中指を立てて、ヤバイ仮面の顔の前に向ける。

 

「2つほどお願いを聞いてくださいませんでしょうか」

 

「お願い?」

 

向けられた指をじっと見ながら訝しむヤバイ仮面。

 

「それが終われば、お2人が無事に帰社出来る様に、私ができる範囲で便宜を図ると“約束”致します」

 

ヤバイ仮面の拳に力が入る。

 

「それは“脅し”ですか?」

 

足を大きく開き今にも飛びかかる体制に移行するヤバイ仮面。

 

一気に危険な空気に包まれ、そのやりとりを見ていた側近2人は、冷や汗をかくほど緊張した。

 

「いいえ“お願い”です。なんなら正式な稟議も通して捺印付きで書面にしましょうか?」

 

天城はそう言って両手をテーブルの上に置き、少し前のめりの状態でヤバイ仮面を見据える。

 

しかしその焦点は。

 

明らかに彼に向けられていない事を、ヤバイ仮面は感じていた。

 

まるでその先にある何かをじっと見る様な眼差し。

 

「なのでそう殺気を向けるのをやめて頂けませんか。ここは市役所ですよ?戦地や軍備を預かる場ではございません」

 

着座しなおし、姿勢を正し、

再び営業スマイルに戻る天城。

 

「貴方たち怪人と我々一般市民にどれだけの力の差があるのか、十二分に理解してますし、そちらもご存知でしょう?」

 

そう言い終わると同時に天城は、何かを持って控えていた愛宕屋に目配せする。

 

愛宕屋はヤバイ仮面の前に2枚のチケットを置いた。

 

ため息混じりに手に取るヤバイ仮面。

 

「こ…これは!!」

 

それは飛行機のチケットであったが、表記に驚愕する。

 

「ファースト…クラス!?」

 

「御社に帰るまでの道のりは私共の方で手配させて頂きます」

 

そうやって持っているタブレット端末を2人に見える様に提示する愛宕屋。

 

そこに映し出されていたのは

 

知る人ぞ知る細長い車。

知る人ぞ知る高級車の代表。

 

それはまさに

 

特別な者のみに乗ることが許される

 

そう思われている車。

 

「リムジン…しかも社長これ!」

 

「メルセデス…」

 

リムジンの中でも最上級と言われているメルセデス社のリムジンがそこに映し出されていた。

 

「そして今回のみならず」

 

ぐりんと首を動かして天城を凝視する2人。

 

「今後また来てくださる際は“常識ある範囲内”で“V.I.P”として対応致します。あぁ!もちろん!勝手に来られても非常〜〜〜に困るので、事前に連絡を頂けますと…助かります」

 

そう言った後、その場で立ち

 

無言のまま

 

足を揃え、深々とお辞儀をする天城。

 

「頭を上げて貰おう…いや、上げて下さい市長」

 

こうなってしまっては威厳ではなく、誠意で返す事にしたヤバイ仮面。

 

天城の肩に手を置き、頭を上げる様にお願いするのだった。

 

やがてお互い座り直し、ヤバイ仮面が問いかける。

 

「それで“お願い”とは?」

 

目を合わせ、一瞬だったが、営業スマイルとは違う笑顔の天城は、すぐさまいつもの営業スマイルを作り。

 

愛宕屋から書面を受け取る。

 

記述されている内容は

 

①帰還までの間復興支援のご助力。

期間:復興作業完了まで。

場所:北見市内ショッピングモール近郊。

②双方の技術および情報提供

期間:無期限

解除要項:双方納得のいく協議の上決議する事。

 

以上、並び全ての要項を承諾の元、悪の秘密結社を今後北海道に来訪される際に最大限の便宜を図る。

 

と記述されていた。

 

要項は一例を含めてもおよそ30に及び。

 

書類は表紙裏を合わせても5枚に達し。

 

製本もされていた。

 

じっくり要項に目を通す2人。

 

「PDFもご用意いたしましたので、メールで宜しければ添付して送付いたします」

 

愛宕屋がタブレットを携え、画面を見せながらPRする。

 

そこへ天城が少し間を置いて問いかける。

 

「難しいご提案ではないと思いますが、いかがですか?こちらを飲んでくだされば、一応仮押さえですけど、早ければ明後日にでもご帰省出来ます」

 

シャベリーマンは唖然とする。

 

「……社長…これ」

 

「いいでしょう!謹んで請負います!」

 

「判断はやっ!?」

 

力強く返事するヤバイ仮面に対し、シャベリーマンは驚く

 

「交渉成立ですね」

 

いつもの営業スマイルに戻る天城。

 

 

 

◇現在◇

⬜︎ショッピンモール前車道工事現場⬜︎

 

 

「安請け合いだったのでは?」

 

シャベリーマンがため息混じりに言う。

 

「その先の利益を考えた末だ!それにもう少しで復興も終わる」

 

ヤバイ仮面の言う通り。

彼らが復興支援に参加した事により、修繕は迅速に進んでいた。

 

技術と経験、工事責任者も目を見張る程の手際の良さに驚嘆するばかりだった。

 

「筋…と言ってたな…あの市長」

 

ふと昨夜の商談中に天城から発せられた言葉を思い出すヤバイ仮面。

 

「確かに招き入れたのは私達だ、止めるのも我々の役目だった」

 

「社長は止めるつもりでしたけどね」

 

修繕を続けながらボソッと呟くシャベリーマンの背中を見て、ヤバイ仮面は少し驚くも、喜びを感じずにはいられなかった。

 

なんと言いつつも、悪の秘密結社の名の下に集まった社員含めて、忠義とは少し違う信頼感があった。

 

それを噛み締める代表取締役社長。

 

「そんな単純な話じゃない…」

 

仮面の下は不敵に笑みを作る。

 

そしてヤバイ仮面は思案する。

 

(あの市長、いかにも罰を与える様な項目と共に、明らかに自分たちに不利益な報酬を目立つ様に織り交ぜた。恐らく1番の目的は“技術と情報の共有”であると共に、“常識の範囲”と釘打って牽制して縛りつけて来た…)

 

ただのなんの気もない商談だったはずの一幕。

 

しかしそれは対等な立場であるならばの話し。

 

どう理由をでっち上げようと足掻いた所で、人と言う存在と怪人と言う存在の間には明らかであり明確な差がある。

 

それ即ち

 

【力-チカラ-】

 

腕力の話だけではない。

 

人脈、人望、経験、知識、判断力。

 

自他含めた全てが兼ね備わってるからこそ

 

対等な立場と言えるが

 

“人”のくくりと

“怪人”のくくりを

対等にするのは極めて難しい

 

それを知らないはずのない天城。

 

しかし天城はヤバイ仮面に対し、終始引く事もせず攻めの一手で挑んできた。

 

まさに“無謀”極まりない。

 

そんな天城の内なる何かに強く興味を持ち、関心を寄せているヤバイ仮面だった。

 

「随分と面白い商談相手が出来たな、下手すればあの市長“人類の敵”になっても戦い続ける狂人かもしれないな」

 

「クライアントの悪口ですか!それしっかり記録しました!言いつけますよ!」

 

背中を向けていたシャベリーマンが状態を逸らして人差し指でビシッとヤバイ仮面を指す。

 

「上長を脅迫する気か!!イイ度胸だ!法廷で会おう!!」

 

同じく人差し指でシャベリーマンを指すヤバイ仮面。

 

そこに

 

「ヤバイ仮面さん!シャベリーマンさん!お昼の時間です!」

 

作業着姿で小柄の人懐っこそうな青年が近づいてきた。

 

彼の名は『安蒜-あびる-』

 

行政の職員であり、ヤバイ仮面らが手助けをしている事後処理や修繕を主に活動する。

【清掃班】の一員である

 

 

◇数分後◇

 

「お二人がいて助かりましたよ、この調子なら日暮前には終わりそうですって班長も言ってました」

 

安蒜はお昼休憩の時間を告げて、ヤバイ仮面らを班長と呼ばれる人物にアテンドしていた。

 

「新井班長!お二人を連れて来ました!」

 

「おう!みんなでメシ行くぞ!ここからならうちが近ぇから、悪いがそれでいいよな!?」

 

作業着越しでも体格の良さがわかる『新井-あらい-』と呼ばれた男。

 

この現場を監督指揮をする清掃班職員である。

 

「安蒜くん、うちって?」

 

「新井班長のご両親がやってる定食屋です!」

 

 

⬜︎定食屋-七日堂-⬜︎

 

 

ガラガラとスライド式の引き戸を開けて、ヤバイ仮面とシャベリーマンを真っ先に中に招き入れる安蒜。

 

「どうぞどうぞ!ここスタミナラーメンがおすすめでして!」

 

「お?なんだおめぇまぁた来てたのか!」

 

店のおすすめを紹介している所。

新井班長がカウンター席で食事をしている人物に声をかけた。

 

「げっ…筋肉だるま…」

 

全身黒一色と言っていいほどの格好に、少し暗いオーロラ色で複雑に景色を反射させるシールドバイザーの様な顔に鳥の様な装飾。

色が白であればミントリガーではないかと見紛う程に近い形状をしている。

 

彼の名は『鳥戦士ヴィーク』

 

ミントリガーが人の形を得たのとほぼ同時期に、その影響を受けて1羽の鴉が変異したヒーローの1人である。

 

「まぁたあんたは随分と引き連れてきたねぇ」

 

店の奥から気の強そうな印象の女性が出てくる。

 

「いいじゃんか母ちゃん!店に貢献してんだよ!」

 

「店の貢献よりとっとと嫁捕まえて孫の顔でも見せるくらいの親孝行したらどうなんだい!」

 

新井は腕組みして応えるも、そんなことは構わず新井母は“母は強し”と全霊をかけて説き伏せる。

 

しかしそんな母親も、全身メタリックな鎧を纏ったヤバイ仮面を見て驚く。

 

「アンタ…随分とゴツいね」

 

「こちらヤバイ仮面さん!社長さんです!」

 

自己紹介をしようとした前に出ようとしたヤバイ仮面に割って入る様に紹介をされてしまいびっくりするヤバイ仮面。

 

「社長!?冗談だろ?…えらくカッコいい社長もいたもんだ!」

 

勝手に紹介された事に物申すつもりだったヤバイ仮面だったが。

予想だにしない好印象にぽわっとしてしまう。

 

「そっちの人は部下かい?」

 

「社員のシャベリーマンさんです!」

 

またしても先に紹介されてしまい唖然とするシャベリーマン。

 

「なんともまぁ…スマートで知的っとはこういう感じの人を指すんだろうねぇ」

 

やはり予想外の好印象にぽやっとしてしまうシャベリーマン。

 

「お2人は復興のお手伝いに名乗り出てくれたんですよ!」

 

「なんだって!?漢気まであるってのかい!そいつぁ素敵じゃないかい」

 

あれよあれよと評判が上がっていく最中

 

「おめぇら!」

 

厨房からご老体が顔を出し、ヤバイ仮面とシャベリーマンに対し声を上げる。

 

「味玉サービスしてやる、食ってけ」

 

反射的に首を縦に何度も振ってしまう2人。

 

 

◇数分後◇

 

一先ずは席に座って

 

安蒜のおすすめである

 

スタミナラーメンを注文する事になった一同。

 

冷水でしまった太麺に

とろみのある醤油ベースで甘辛いあんをたっぷり乗せ

キャベツを中心に、レバー、カボチャ、緑黄色野菜が素揚げされている。

 

茨城県発祥のスタミナラーメン

それを北海道の食材を使って食べてみたいと言う店主の思いから始まった。

 

テーブル席とカウンター席は一般の客とヤバイ仮面たちと合わせて38席が満杯となり。

 

表には行列と呼ぶほどではないが、10組ほど待機する客。

 

お昼時のその時間であれば、十分盛況と言っても良い程だった。

 

カウンター席の端ではヴィークが件のスタミナラーメンとミニ角煮丼を堪能している。

 

新井母がお茶碗を持って、ヴィークの前にそっと置く。

 

それはうずらの味玉だった。

 

「頼んでないよ?」

 

口いっぱいだった食べ物を飲み込み、不思議そうに尋ねるヴィーク。

 

「新メニューに加えようかと思ってね、いつも来てくれるお礼も兼ねて、試食してくれないかい?」

 

「……わかった…ありがと…」

 

照れくさそうに小鉢に盛られたウズラを食べるヴィーク。

 

「そういえば、社長あれって」

 

「あれは、ヴィークだったか?」

 

シャベリーマンもヤバイ仮面もヒーローの情報は仕入れている為、認知はしていた。

 

「彼この店の常連なんですよ!」

 

安蒜は今まで以上に大きな声で言う。

 

「先月うちの父ちゃんが腰痛めて倒れてたところを、ヴィークが助けてくれたんだよ。なぁ!?ヴィーク!!」

 

新井班長がヴィークに対し、これも更に大きな声で話し掛けるが。

 

ぷいっとそっぽむくヴィーク。

 

「それ以来様子見がてら来てくれるんだよ。もう平気だって言ってるのにさ」

 

新井母は嬉しそうに語り微笑んでいた。

 

「違うよ!気が向いたから来ただけだよ!」

 

流石に新井母からの言葉には反応せざるを得ないらしく、慌てて訂正する。

 

新井母はヴィークの器をみて尋ねた。

 

「おかわりするかい?」

 

その言葉にビクッとするも、周りをゆっくり見渡したヴィークは少し震えて答える。

 

「いらない!ごちそうさま!お金はここ置いていく!」

 

荒々しくテーブルにぴったりの金額を置くヴィークは、そのまま立ち去ろうとしたその時。

 

「ヴィーク!!!」

 

厨房から今日1番の大声を聞く。

 

「いつもありがとな」

 

何かが入ったビニール袋を差し出す新井父

 

「気が向いたら…また来るよ…」

 

丁寧に受け取り、ゆっくり外に出るヴィーク。

 

 

⬜︎7日堂-店先-⬜︎

 

 

店を出たヴィーク。

貰ったお土産をじっと見つめながら歩いていた。

 

「また貰っちゃった…これじゃ飛んで帰れないや、まったく、めんどくさいな」

 

めんどくさいと言いながらも、とても嬉しそうに手にしたお土産の中身を覗き込むヴィーク。

 

先ほどまで自身が食べていた豚の角煮、そしてそれとは別で大きな餃子が容器に入っていた。

 

いつもは空を飛び移動するヴィークだったが。

 

この店に立ち寄った翌る日からお土産を持たされる様になる。

特に市長とミントリガーはこの店の味が好みだったらしく、持ち帰ったら喜んで食べるほどだった。

 

この味を楽しみにしている“仲間“のため。

貰った料理を大切に運ばなくてはならない。

 

いつもならば事前に連絡をするのだが、サプライズと思いあえて連絡をやめ。

ゲートを使って帰還する事にし、ショッピングモール近くのゲートへと向かうのだった。

 

 

◇約10分後◇

⬜︎モール前⬜︎

 

 

突然何もない空間に黒い穴が現れ。

白衣の様な服を着た猫耳容姿の少年が現れる。

 

その異様さを察知した近くの市民と目撃した従業員は迅速に避難を始める。

 

巡回中の常駐職員や警邏を務める巡査も誘導と各本部への通達をし。

 

一気に物々しい雰囲気で満たされる。

 

「なんか綺麗になってない??おかしいなぁ」

 

略奪者と呼ばれる集団の主要人物であり、猫の様な顔と鬼の様な角を携えた少年

『エレ』は昨日ジゼルのよる襲撃事件の現場に降り立った。

 

傷跡はまだ残るも、事件の復興は着実に進んでいたこの場所に対し、不満そうな表情を見せる。

 

「まぁいっか、どうせまたぐちゃぐちゃに」

 

そしてまたこの地は

 

「いやもっとぐちゃぐちゃにしてあげるよ!!」

 

ごくごく何気ない日常を取り戻そうとするその地にいる者全てを否定する、バケモノに蹂躙されようとしている。

 

「さぁみんな!ごはんの時間だよ!」

 

黒い穴から虎の様な形をベースに禍々しく鋭利で長い牙と爪を持ち、背中には鰐の様な鱗を携えた合成獣が現れ、四方に駆け出す。

 

そこへモール近くにたどり着いたヴィークが現場の状況を目の当たりにする。

 

「なんだあいつら」

 

虎型の大きな怪物が2体ヴィークへ向かって来る

 

1匹は躱し

 

もう1匹は爪で切り掛かってきた為片手で押さえる。

 

「あぶないな、気をつけてよ」

 

そのまま強く掴み横に投げ倒すヴィーク。

 

地面に叩きつけられた虎はなんとか立とうとする。

 

構わず歩き出そうとしたヴィークに、先刻躱した虎が後方から飛びかかり。上方より毛色の青い別の個体が同時に襲撃して来る。

それを身を屈めて前方へと一飛びで躱すヴィーク。

 

が、しかし問題が発生する

 

後方より近づいてきた虎の爪がお土産の袋の底を掠める。

 

「あ…ああああああ!!!!」

 

地面にばら撒かれたお土産は

 

虎たちに踏みつけられる。

 

「何してんだよ…おまえッ!」

 

ヴィークは3頭いる虎の前に瞬足で立ち。

 

倒れていた虎は下顎を蹴り上げ

 

上げた足をそのまま青い個体の頭頂部に蹴り下ろし

 

最後にお土産を台無しにした1頭を拳での脳天を叩き潰し、そのまま鷲掴み、遠心力をつけて投げ飛ばす。

 

痙攣する虎だったモノは、敵幹部エレのいるモールのエントランス付近まで転がっていき。

 

その光景に多少なり驚かされたエレは、飛んできた先を凝視する。

 

「何、お前?」

 

尊大な言葉に更なる怒りを燃やすヴィーク。

 

「おまえこそ何なんだ!ここはオイラのナワバリだぞ!」

 

「ナワバリ??知らないよぉ……そんなのさぁあああああ!!!」

 

両腕を肥大化させゴリラの様に太く、白虎の様な体毛へと変化するエレ。

ヴィークへと大きく上から下に拳を振り下ろす。

 

それを無駄なく躱し、振り下ろされた衝撃に乗ってエレの背面へと飛び、距離を取る。

 

「へぇ、やるじゃん?」

 

ヴィークの動きに関心し舌舐めずりするエレ。

 

ヴィークは腰の後ろに左手を運び、黒塗りの鞘と柄頭と唾が金色の打刀を取り出す。

 

「おまえらのせいで大将のお土産が台無しになった!」

 

エレが指先を上に上げてそのままヴィークを指し示すと。

ヴィークが立っている場所目掛けて四方に散らばったはずの虎達が集まり飛びかかって来る。

 

ヴィークはその場に膝立ちになり

 

刀を抜き放ち

 

1回転半その場で回ったヴィークは

 

刀を鞘に納め直す

 

辺り一面

 

鮮血が飛び交った。

 

「もうめんどくさい!全部斬る!」

 




読んでくださってありがとうございます。

続きはまた今週中に
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