マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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前後編の前編2

でございます

終始バトルの文章にかなり拘りましたが

自分でも思いました

こだわりが強すぎても伝わらなきゃ意味ない事に

もっと文才が欲しいです(T ^ T)

今回も楽しんでいただけることを祈ります。


第19話 『合成虫-キメラ-の女王』

 

 

 

⬜︎紋別-カニの爪オブジェ付近-⬜︎

 

 

エンガイザーライジングと敵幹部アーラの戦闘は、高硬度な金属のぶつかり合う音で幕を開ける。

 

右腕を大きく、幅の広い鎌の様な形状に変え。

左腕は蜘蛛の腹の様な、すり鉢状に変え。

鎌で斬りつけ、すり鉢状の蜘蛛の腹で殴りつける、猛攻を加えてくる。

 

その攻撃を、冷静に一手一手見定め、大剣を器用に使い、攻撃をいなしていくライジング。

 

「見た目に削ぐわずパワーあるな」

 

細い身体で、見るからに女性らしいスタイルのアーラから繰り出される攻撃は、その体格から考えられない程に重く、まともに攻撃を受けては、吹き飛ばされてしまいそうになる程だった。

 

その為に、攻撃を“受ける”ではなく“いなす”方向に持っていき、自らの負担を減らしつつ、相手の隙を作る目的でもあった。

 

幾度も攻撃をいなされ、躱され、時に弾かれる事に苛立ちを募らせるアーラは。

左腕を大きく振り上げ、右の鎌の振りのスピードをさらに上げて、にじり寄っていく。

ライジングは、受け流す方向で対処をしていたが、それを一旦全て受ける事に切り替え、大剣を盾の様にして、防御体制を取る。

 

少しずつ後退りするライジング目掛け、振り上げていた左腕を降ろすアーラ。

 

しかしその攻撃を、紙一重で躱すライジング。

 

そこへすかさず、すり鉢状の腕を右足で踏みつけたパラディン。

 

突然の乱入に驚きと怒りに金切り声を上げて威嚇するアーラ。

 

アーラは踏みつけられた腕を引き抜こうとするも、パラディンの強靭な脚力で踏みつけられた腕は外れない。

 

身動きが取れないアーラへ、ドラゴンが迫り、専用武器【リザルドクロー】の鋭利な爪による正拳突きが放たれる寸前。

 

アーラは迷わず

 

左肘から先を鎌で斬り離し

 

斬った腕から、白い血液をぼたぼたと流しながら、エンガイザー達から距離を取る。

 

耳障りな絶叫をあげると共に、たちまち傷は塞がり新しい腕が生える。

 

「トカゲの尻尾切りならぬ腕斬りってか…」

 

関心に似た哀れみを向けるライジング。

 

「こいつは?」

 

パラディンが専用武器の盾である【タイタンシールド】を構え

収納されている片手剣【ジオスパーダ】を抜剣する。

 

「例の“略奪者”の1人だろ。報告にあった、黒い穴から出てきたぜ」

 

ライジングはその問いに対し、大剣を肩に担ぎ直す。

 

「本当に神出鬼没なのだな」

 

低い姿勢を維持し、いつでも立ち向かえる様にするドラゴン。

 

3人の連携を躱したアーラは、再生させたもう一本の腕を変異させ。

今度は右腕と同じ鎌を生やす。

 

〈紋別司令部よりエンガイザー!聞こえますか?〉

 

通信が入ると同時に

 

戦闘再開する。

 

アーラは右の鎌で、エンガイザー3人目掛けて横薙ぎに振るうも、パラディンのシールドに阻まれる。

 

そこにドラゴンが再びクローでの正拳突きをするも、アーラの攻撃が僅かに早く。

瞬時に攻撃から防御に切り替え、リザルドクローの徹甲部分で防ぐ。

 

それを予測していたのかライジングは、ドラゴンとアーラの間に入り、大剣をアーラの腕目掛けて振り下ろした。

 

しかしそれは直撃するでもなく弾かれるでもなく、ただただ空を斬るハメとなった。

 

アーラは後方へ飛んでいた。

 

文字通り

 

飛んでいた。

 

背中に生やしたトンボの様な羽根は、常人では視認できない程の速さで羽ばたき。

かなりの低空ではあるが、僅かばかり宙に浮いた状態で移動している。

 

「なんであんな動きできんだよ…」

 

大剣を逆手にし構えを変え、辟易とするライジング。

 

「聞こえてる、現在交戦中だ」

 

通信にはすこし遅れて、パラディンが応える。

 

〈こちらでも確認しました!そのまま…落ち着いて聞いてください〉

 

言いづらそうにするオペレーター。

 

アーラは十数メートルの距離を維持しながら、エンガイザーの3人を観察するが如く、右へ左へと飛び回っている。

 

〈襲撃は…紋別、北見の…同時に行われています〉

 

「マジかよ!!」

 

「北見はどうなってるのだ!?」

 

オペレーターの報告に、声を大にして驚くライジングとドラゴン。

 

その感情の機微を見逃さず、一瞬にして距離を詰め、斬りかかったアーラ。

その攻撃を、パラディンが右手に装備したシールドで、殴る様に弾き飛ばす。

 

「動揺見せんじゃねぇ!敵前だぞ!」

 

パラディンは2人に喝を入れ、体制を立て直す。

 

「すまん!パラディン!」

 

〈すみません!…僕の伝え方が悪くて……〉

 

オペレーターは、自らが伝達方法の構築と、躊躇してしまったせいで、本当に伝えたかった事が伝わらず。

危うくヒーローを危険に晒してしまった事に、狼狽する。

 

弾かれたアーラは、再度エンガイザー達に向かって行く。

 

その攻撃をライジングが大剣で

 

ドラゴンは左腕に装備した【アビリティシールド】で

 

それぞれ攻撃を受けながら通信に応える。

 

「いや、『瀬込-せこむ-』くんは悪くない」

 

「悪い、ちゃんと聞くから、状況を教えてくれ!」

 

そこへ、ドラゴンとライジングが落ち込みかけていたオペレーター瀬込に、声をかける。

 

瀬込は新人で入ったばかりの職員だが、積極的に業務を買って出ていた結果、エンガイザーのオペレーターをする機会が多かったと言う縁があり。

彼らに、瀬込の名前を覚えて貰っている程、関係性が構築されている。

 

〈え…でも…〉

 

「頼む!状況は芳しくないのか!?」

 

瀬込はドラゴンの問いかけにハッとなり、1番伝えたかった事を伝えた。

 

〈いいえ!むしろいい方です!〉

 

攻撃を防いでいるライジングとドラゴンの間を抜け、アーラ目掛け剣を振り下ろすパラディン。

 

その一撃はアーラの右肩を掠め、退かせる。

 

「なら聞かせろ瀬込!」

 

パラディンは瀬込に対し叱咤激励を込めて言葉を投げる。

 

〈はい!現在確認できている情報は、現場にてヴィークが戦闘中!ミントリガーがフォローに向かっているとの事です!〉

 

「聞いただろ!!」

 

パラディンは2人に向けて叫ぶ。

 

「ああ!聞こえた!」

 

ライジングがそれに応えた。

 

「ならば考古の憂いなし!」

 

右拳を左の手のひらで受け止め、気合を入れ直す。

 

エンガイザー達による反撃の狼煙が上がったその時。

 

「デアアアアアアアアアアア!!!」

 

彼らの後方上空から頭上を抜け、勢いよくアーラに突っ込む、鮮やかな紫、赤、銀の色が目立つ戦士

 

ウルトラマントリガーが出現する。

 

アーラに正面から飛び蹴りをお見舞いし、飛翔していたアーラはそれを両手の鎌をクロスさせて受け止める。

 

両腕を押し返す様に開かれ、トリガーはその勢いを利用して後方宙返りの後、エンガイザー3人の前に着地する。

 

「トリガー…まじでいたのかよ!ヤバイぜ!」

 

予想だにしていなかった助っ人に大興奮する、ライジング。

 

「加勢助かる、トリガー」

 

ドラゴンが近づき、トリガーに声をかける。

 

トリガーは立ち上がり、ドラゴンを見て頷いてみせた。

 

4対1となった戦況

 

一気に劣勢に立たされたアーラは、突然口から、夥しい量の糸を吐き出す。

 

「なんだ…何してんだあいつ」

 

唖然としつつも警戒を強めるライジング。

 

アーラはみるみるうちに、自らが吐いた糸で包まれていく最中。

 

何もない空間に黒い穴が4つ出現する。

 

「おい…あの穴」

 

ドラゴンが穴を指差す。

 

〈皆さん!警戒してください!敵がこの動きを見せたと言う事は!〉

 

黒い穴からは、体長約2mほどは予測される

 

アリとカマキリを混ぜた様な怪物

 

クモとサソリを混ぜた様な怪物

 

それぞれ穴から次々と現れる。

 

「そら来るよなぁ…」

 

言葉とは裏腹に、大剣を両手にしっかりと構えるライジング。

 

「ぼやくなよ、来るぞ」

 

パラディンは発言とは逆に、怪訝そうに脱力した状態で盾を構える。

 

パラディンの宣言通り、一斉にして向かってくる合成虫-キメラ-

 

クモ達は高く跳躍し、携えた蠍の爪で襲いかかり。

アリ達は勢いよく走り、縦列体制で顎を鳴らしながら行軍する。

 

ドラゴンは、飛び掛かってくるクモの爪を掻い潜りながら、眉間目掛け右拳を叩き込み。

迫り来る爪をシールドで弾くか逸らし、1匹1匹確実に左手で掴み、堅実に打撃と刺突の一撃で、頭部を破壊し急所を突く。

 

ライジングは両手で構えた大剣を上段に構え、渾身の力で振り下ろし、同時に襲いかかってきたクモとアリを真っ二つに斬る。

その一振りで衝撃波が発生し、彼から前方数mの敵は、豪快に吹き飛び。

これをひたすら繰り返す。

 

パラディンは向かってくるアリに対し、右手に装備したシールドで数m先まで殴り飛ばす。

時折シールドに組み付くアリは、アリごと持ち上げ地面に叩きつけ、アリ同士で叩き潰す等、大雑把に数を減らして行く。

 

トリガーは手の先から放たれる、トリガーハンドスラッシュで牽制し、動きが鈍くなったモノから順に、両腕から放たれるトリガースライサーで切り裂く。

それらを掻い潜った敵には打撃で対応し、蹴り上げ、蹴り飛ばし、チョップで鋭い爪の関節を斬り。

一定距離を保ち無力化させている。

 

各々が適材適所の動きで対処した結果、着実にキメラの数を抑えつつあった。

 

〈司令部よりエンガイザー!司令部よりエンガイザー!糸を吐いていた化け物が!とんでもないことに!あり得ない!!〉

 

「落ち着け瀬込くん!いったい……おい、ライジング!」

 

異常を訴えるオペレーターを落ち着かせようととも攻撃は緩めず、ライジングを呼ぶドラゴン。

 

「アレ、まずくないか?」

 

アレと指し示された先を見て、ライジングは若干たじろぐ。

 

「あぁ…あからさまにヤバイ気がする…」

 

オペレーター瀬込、ドラゴン、ライジングが目にしたのは

 

直径約5mはあるかと思われる

 

巨大な繭。

 

それは間違いなく

 

敵の幹部である

 

アーラがいた場所に点在していた。

 

「トリガー!パラディン!」

 

ただただ敵を斬りながらライジングは、仲間達を呼ぶ。

 

ひたすら振り下ろしていた大剣を、今度は下から上へと切り上げて、向かって来るキメラを宙に浮かせる。

それをドラゴンが跳躍し、回転蹴りで吹き飛ばす。

 

「こいつら任せてもいいか?」

 

構えていた剣を肩に担ぎ、やっとそこで仲間達に向き合うライジングと、着地とともに彼の側に立つドラゴン。

 

トリガーは何も言わずに目を合わせ、確実に頷いてみせる。

 

「あぁ、やってやるっ!」

 

パラディンはなかなか組みついて離れないアリに剣を突き刺し、盾から無理やり引っぺがした後、前蹴りで前方の黒い穴目掛けて吹き飛ばす。

 

吹き飛んだアリは勢いよくキメラの軍勢にぶつかり、進軍の勢いを削ぐ。

 

「助かるぜ、出来る限り引き付けてくれ!」

 

そう言って斬り込みながらライジングは、繭の方へと前進して行く。

 

「わかった!おい、トリガー」

 

返事をするとともにトリガーへ、愛剣のジオスパーダを投げるパラディン。

 

咄嗟にキャッチしたトリガーは、早速襲いかかろうとしていた蜘蛛達を、横薙ぎの一回転で5体斬り伏せる。

 

その切れ味の凄まじさに驚愕しながら、トリガーは剣を見つめ、違和感とともに、どこか扱いやすさを感じていた。

 

「思った通り、丁度いい長さだろ?」

 

パラディンは近づき、トリガーの肩をポンと叩く。

 

ジオスパーダは、トリガーが戦闘の際に、使っていた愛用の神器。

【サークルアームズ】のマルチソードに近い、刀身の長さをしていた。

唯一の違いは、少しズッシリと重いくらいだが、トリガーにとって問題なく振るえる重量だった。

 

パラディンはジオスパーダの刀身にシールドを当て、甲高い金属音を鳴らし響かせ、並び立つ。

 

キメラ達はその音に反応し、トリガーとパラディンへ向かって行く。

 

「寄ってきたな、このまま引き寄せる、いいな?」

 

パラディンの提案に頷くトリガー。

 

「行こうぜトリガー、今日は俺とお前で…ライヴの時間だ!!」

 

パラディンとトリガーは剣と盾を打ち鳴らす

 

それはまるで古代ローマ兵が自らと仲間を鼓舞する為に行う儀式の様に

 

現代戦術でも“音”の役割は非常に大きく、特に殲滅戦においてそれは大いに発揮される。

 

打ち鳴らし、引き寄せられるキメラ達は。

 

トリガーによる一閃

 

パラディンによる殴打に

 

続々と沈黙して行く。

 

大雑把に見える、その“戦術”とも言えない戦闘方法。

 

キメラ達に感情や知性、せめて昆虫種が有しているはずの“本能”があったならば

 

ものの数秒で戦意を喪失し、全速力で逃げ、運が良ければ生き延びていただろう。

 

中には動きを止めている個体もいる程

 

その場を完璧に制していたヒーロー2人は

 

さながら“鬼神”の如き強さを誇っていた。

 

 

トリガーとパラディンが軍勢を引き付けている隙に、ライジングとドラゴンは巨大な繭の前に到着。

 

〈エンガイザー!調査部から報告です!繭の内部温度が急上昇!分析によると、恐ろしい速度の細胞分裂による熱源反応との事!!〉

 

「相変わらずしれっとおかしい事を言うなぁ調査部は…」

 

瀬込からの情報を聞き、目の前の物体がより一層常識はずれな事を実感する2人。

 

繭から微かに光が明滅し、低く響く和太鼓の様な音が規則的に聞こえる。

 

「脈打つ様な音…巨大な心臓の様だな」

 

「ドラゴン、久々のコンビプレーだ。俺たちが“ヤバく”て“強い”ってとこ、見せてやろうぜ!」

 

「任せろ!」

 

互いの左拳を合わせる2人

 

「永遠に輝く黄金の魂!とくと見るがいい!!」

 

ドラゴンは黄金に光輝き、人型から形が変わり、光が晴れたそこに

 

全長約10mに及ぶ赤い龍が宙を舞っていた。

 

伝説の龍の姿となったドラゴンに、ライジングが飛び乗り

そのまま地上から10数メートルの高さまで上昇。

 

大剣を両手で握り、顔の前に掲げ

 

ドラゴンは炎を纏い

 

ライジングは雷を発生させ

 

炎は2人を覆い

 

雷は炎の表面をバチバチと音を鳴らし走る

 

不定形だったそれらは徐々に形となり

 

炎と雷の円が出来る。

 

その炎と雷は、大剣【ライジングソード】に吸い込まれる様に集約し、圧縮され

 

全てを照らす、太陽の様な輝きを宿した

 

長さ3m以上の巨大な光の剣が形造られた。

 

「喰らえ!」

 

ライジングはその剣を上段に構え

 

ドラゴンは地上目掛け急降下

 

「私たち“太陽戦士”渾身の!」

 

「「一撃だああああああああ!!!!!」」

 

2人は叫びながら巨大な繭目掛けて剣を振り下ろす。

 

切先が繭の頂点に触れた直後

 

数十mに及ぶ

 

光の柱が上がる。

 

それを目の端に捉えたトリガーは

 

あまりの輝きと衝撃に、動きを止めて魅入ってしまう。

 

「驚いたか?」

 

敵を乱暴に殴り飛ばしながら、動きを止めたトリガーの側に寄り、パラディンは背中を合わせてそう問いかける。

 

「アレがあいつらの実力、“太陽最強の戦士”と“伝説の龍”のコンビネーションだ」

 

圧倒的な攻撃範囲の一撃は

 

繭の近くにいたキメラを巻き込み

 

不自然なほど空間に張り付いていた、黒い穴すら掻き消す程の威力だった。

 

ドラゴンは地上に降り、ライジングは彼の背中から飛び降り、膝立ちに着地をする。

 

ドラゴンは元の人型に戻る。

 

柱は徐々に収まり、景色が晴れて行く。

 

物言わぬ骸となったキメラには、光の熱に燃やされている。

 

「よし、片付いたか…」

 

そして柱の中心だったそこには

 

何も残っていない

 

パラディンとトリガーが引き付けていた残党も駆除し

 

戦闘終了。

 

 

 

 

誰もがそう思っていた

 

 

 

 

「チッ、不完全ナ状態、仕方ガないわネ」

 

 

 

 

柱があった地点を中心に

 

散乱する敵の残り火の中から

 

何者かが残念そうに悪態をつき

 

ゆっくりとヒーロー達に近づく

 

その姿は

 

先刻のキメラ達より巨大なクモ

 

前足は西洋騎士が騎乗して使うランスの様に長く鋭く

 

全身白く、甲殻類が有する殻の様なモノに身体は覆われ

 

蜘蛛とは違う形状の、大きな顎がある

 

更に異質な点は

 

クモの額に中る場所から

 

長い黒髪を不自然に靡かせた

 

艶かしく美しい、均衡の取れたスタイルの

 

女性の上半身が生えている。

 

誰もが目を疑う光景。

 

そこに立つのは

 

大きく変貌を遂げた

 

敵幹部『アーラ』だった。

 

以前までの禍々しく蜘蛛そのものに近い顔ではなく、卵型の輪郭に目鼻もくっきりしている。

 

額には緑色に輝く宝石の様な器官があり、人間の様な主眼とは別に、左右対称の黒い複眼が合計6つ。

 

「少シ焦ッたワ、あのまマ“変体”ヲ続けてタら」

 

その姿は、妖怪絵巻や神話や空想などで見る語り継がれている

 

“女郎蜘蛛”や“アラクネ”の様な

 

妖艶と畏怖を合わせた姿で

 

カツカツと歩みを進めてくる。

 

「私モ、消し炭ニなっていたかモしれないワ」

 

ライジングはその姿を目にし、持っていた大剣を地面に突き立て、

立ちあがろうとする。

 

「マジかよ…アレで仕留めきれなかったかとか…冗談キツいぞ」

 

「よせライジング!君は無理すべきではないぞ!」

 

先の攻撃は強力ながら、ライジング自身にとてつもない身体的負担をかけていた。

 

立ちあがろうとするライジングの両肩を掴み、支えるドラゴン。

 

その刹那

 

一瞬にして2人に距離を詰めてきたアーラは

 

ドラゴンとライジング目掛けて左前足を振るう

 

「クリオネキック!!」

 

「ナマライザースラッシュ!!」

 

危機一髪の状況に

 

突如アーラの右側面から、一つの打撃と、一つの斬撃が炸裂。

 

その隙を見てドラゴンは

 

ライジングを抱えたまま後方に跳ぶ。

 

「お待たせしました!」

 

「大丈夫かい!ライジング!ドラゴン!」

 

現れたのは、避難誘導を終えて駆けつけた、セイリュウジンとガリヤーだった。

 

「ああ、すまない…」

 

大剣を構え、なんとか立て直すライジング。

 

トリガーとパラディンも駆け寄り

 

総勢6人のヒーローが

 

一箇所に集まった。

 

数の勝負では圧倒的不利にも関わらず。

 

全く意を返さないアーラは、ヒーロー達に構わず。

 

とてつもない速度で跳躍し、彼らの後方へと降り立ち、自ら背後を見せる。

 

「んのやろっ!!」

 

そう言って真っ先に飛びかかったのはセイリュウジンだった。

 

しかし彼の攻撃は、何かに阻まれ、弾かれた勢いで元いた場所まで戻される。

 

アーラの背部

 

蜘蛛の腹の上部が真ん中に割れ、そこから収納された蠍の尾が、しなやかにくねくねとうごめいている。

 

状況が理解できなかったセイリュウジンは、その鞭のように縛った尾の攻撃に、跳ね返された事に気づく。

 

当のアーラは、残骸となった自分の尖兵を見渡している。

 

「あラ、私ノかわいイペッとがこんな易々ト、これは困ッタわ…仕方ガナいわね」

 

腕組みしながら、人差し指で顎を押さえ、わざとらしく弱った様子を見せ

 

次の瞬間

 

巨大なクモの口が開き

 

散り散りとなっている残骸を

 

食べ始めるアーラ。

 

「なんだ…何をしてるんだアレ…」

 

「な…なまらグロいんすけど…」

 

理解が追いつかず、率直な意見が漏れ出てしまうガリヤーとセイリュウジン。

 

みるみるうちに残骸は無くなっていく

 

やがてアーラの異変に気づいたパラディン。

 

「おい、なんかまた変わってくぞ!」

 

全身白かった殻は、黒く変わり

 

人間体の上半身も同じく黒くなり、鎧を着ているかのような姿に加え。

脇の辺りから、別の腕が生え、蠍の爪が一瞬にして形成される。

 

「食って取り込んだってとこか…笑えない冗談だ」

 

更なる変異を遂げたアーラは

 

先刻までの妖艶さはなくなり

 

禍々しい“蜘蛛の悪魔”と呼んで過言ではない見た目に変わっていた。

 

「不完全ナ状態のワタシでごめんなサいね」

 

全高およそ5mにも及び

 

体積面は大型車両のジープの様に広く、重厚

 

ところどころ聞こえづらくも流暢に喋るアーラに、一同は警戒を強める。

 

「コウでモしないトこノ身体ハ脆くて」

 

腕組みをし、自らの頬をなぞる様に触りながら、ヒーロー達を見下ろす。

 

「さぁ…ハジメましょう、お食事ヲ」

 

腕組みをしていた両腕を左右に広げ、手のひらを広げた瞬間、爪の先が長く鋭く伸びた

 

「安心シなさい…全部残サず……食べてアゲル!!!!」

 

何者をも魅了しそうなその顔は

 

残忍な表情で塗り替えられていた。

 




今回も読んでくださりありがとうございます。

以前ガヲクチームの戦いを書かせていただいた時もそうでしたが

エンガイザーさん達の様に

チームプレイでの戦いを考えて構築するのが非常に楽しかったです。

また読んでくださると非常に嬉しいですし

ご質問や、ご意見、ネガティブでもポジティブでも
なんでも構いませんので

よろしければお聞かせください。
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