マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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毎度スローペースですが申し訳ございません。

今回は終始バトルです。

どうぞ。


第21話 『紋別・攻防戦』

 

 

 

⬜︎紋別-カニの爪オブジェ付近-⬜︎

 

アラクネ 

 

女郎蜘蛛

 

呼び方は様々だが、数あるファンタジーや物語の世界で見られる、人間と蜘蛛を掛け合わせた姿。

 

空想の世界にしか存在しないと思っていたモンスターだが。

今まさに彼らヒーロー達の目の前には、それがリアルに襲いかかって来る敵として存在していた。

 

蜘蛛のモンスターと化したアーラは高く跳躍し、ヒーロー達が密集する中心点に降りようとする。

 

「みんな散れ!!」

 

ガリヤーがそう叫ぶと共に、ヒーロー達は四方へ散らばる。

 

図らずもアーラを包囲する陣形となったヒーロー達。

 

本来であれば劇的なチャンスなのだが、醸し出す雰囲気のせいで、踏み出すことに一瞬躊躇するヒーロー達。

 

その中で真っ先に動いたのはセイリュウジンだった。

 

アーラの背部により跳躍して斬りかかるも、黒い甲殻に覆われた柔軟にしなる蠍の尻尾に弾き返される。

 

しなる尻尾は、真後ろにいたパラディンと左側にいたトリガーへ迫る。

 

パラディンは右後方よりその攻撃を専用装備【タイタンシールド】で殴る様に弾き返す。

 

トリガーはパラディンから預かった片手剣【ジオスパーダ】で攻撃を受け流す。

 

正面にはドラゴン、右側にガリヤー、左側にライジング。

 

真っ先に狙われたのは消耗しているライジングだった。

 

ランスの様に尖った左前脚を突き出すアーラ、しかしその攻撃が届く直前に、逆手に握った大剣【ライジングソード】を地面に突き立て、彼の胸部めがけて繰り出された攻撃が地面へと軌道を変えられる。

 

予想外に反する受け流しに一瞬動きを止めたアーラの変化を見逃さなかった、ドラゴンとガリヤーが同時に人型の本体に素早く飛びかかる。

 

【リザルトクロー】による突きと、腕部スクリューを回転させながら繰りだされる【アルキメディアン・スクリューパンチ】の攻撃が迫る。

 

「生意気ナ餌ドもがあああ!!!!」

 

アーラは驚異的な反応速度でその攻撃を、先刻追加で生やした蠍の爪で防御する。

 

ドラゴンの攻撃は、止められ。

ガリヤーの攻撃は爪の外殻に傷を入れるも、決定打には至っておらず。

 

元からあった両の手より伸びる爪で、両者を切り裂こうと腕を振り払う様に左右に大きく広げたアーラ。

 

2人は両腕をクロスさせてその攻撃をガードしながら、後方へと避け、迫り来る衝撃をうまく殺し、地面に着地する。

 

再び正面で睨み合い、依然状況は変わっていない事を確認する。

 

アーラは下部の蜘蛛の様な頭部の口から、何かを吐き出して飛ばす。

 

直感で触れてはならないと察知したドラゴンとガリヤーが交差する様に、敵の正面で攻撃を避ける。

 

案の定、吐き出された赤黒い粘液の様なモノは、地面に付くや否や謎の煙を上げている。

 

「強力な酸性の粘液のようだ、受けない判断をしたのは正解だったな…」

 

「あぁ、けど厄介だね…」

 

自分たちの判断に間違いなかった事に安堵するドラゴン。

それに対し同意するも対処法を模索するガリヤー。

 

アーラは口から次々と、目の前のヒーロー達に向けて酸性の粘液を吐き出してくる。

 

最小限の動きでそれらを躱すガリヤーとドラゴン。

 

剛を煮やしたアーラは、酸を吐く事を止め、大きく上下に顎を開き、2人を飲み込もうと迫る。

 

ドラゴンは上に跳び、ガリヤーは向かってくる口にスライディングの体制で、片腕を地面に着けスクリューの回転力を利用して加速する。

 

ガリヤーが下顎の僅かな隙間に潜りそのまま蹴り上げ、それに合わせてドラゴンが縦に一回転して踵落としで上顎目掛け蹴り落とす。

 

勢いよく強制的に閉められた大きな口は、蹴りの衝撃を抑える様に数歩分後退する。

 

「餌ノくせにやるジャない!食べ応エありそう!!」

 

巨大な顎は無惨に潰され、原型を維持できずいる。

その攻撃に忌々しいと思いつつ、ヒーロー達の実力に歓喜するアーラ。

 

「姿、形が変わってから、流暢に喋るようになったな」

 

「あぁ、それな」

 

ドラゴンの言葉に返しつつ、両手で大剣を握り、残ってる力で脚目掛け剣を振り下ろし続ける。

 

「お前らな!気になるところ他にもたくさんあんだろよ!」

 

通信は依然繋がったままのため、背部で尻尾の攻撃を殴り弾きながら、パラディンがツッコミを入れる。

 

「なんなんだいこいつは!」

 

特攻した時と同様の方法で、敵との距離を取りながら誰に対してでもなく言い放つガリヤー。

 

「“何”って見ての通り“バケモノ”であろうよ」

 

それに対し至極真っ当な答えを返すドラゴン。

 

そこへ全員の通信機に自動生成された様な女性の声が流れて来る。

 

〈推定、身長約5m、幅約6m、体重約ー〉

 

その声に対し真っ先に反応したのはガリヤーだった。

 

「『MERU-メル-』!そう言うことを聞いてるんじゃない!」

 

『MERU-メル-』と呼ばれた声の主。

ガリヤーが装着するスーツに搭載された【独立型補助支援AI】の名前だった。

ガリヤーのスーツは多くの機能を装着者の脳波と初動を記憶して読み取り、それらの大半をAIがサポートして動かしている。

AIを備えてはいてもサポートシステムに限らなかった所を、技術者の提案で、擬似人格プログラムを組み込まれており。

他者との交流を可能とするための音声出力も備えている。

その結果、ガリヤーのみならずヒーロー達の戦況分析も務める。

 

「ほんとに5mっすか!?なまらデカく見えますよ!?」

 

後方ではセイリュウジンが尻尾の攻撃を躱す、弾く、いなすとその場面のよって適切な対処をしながら声を上げる。

 

〈姿勢と視線によっては大小が異なって見えます、ご注意ください〉

 

それに対しMERUが補足情報を流した。

 

「なるほど!そう言う事!」

 

「そう言う事でもないから!!」

 

セイリュウジンとMERUのやり取りを耳にしてガリヤーがツッコミを入れる。

 

「デカイのもそうですけど、単純にこの見た目…引きますね…」

 

攻めあぐねている最中、率直な意見と感想を述べるセイリュウジン。

 

ふとその時、尻尾の攻撃が一瞬止んだ。

 

しかしそれは止まったのではなく

 

しなる尻尾が、後方のヒーローたちから向かって左へ伸び。

トリガーは伸びてきたその尻尾の殴打を屈んで避ける。

そのまま右へ横薙ぎに大きく振りかぶられた尻尾。

 

それに反応が遅れるセイリュウジン。

 

トリガーが真っ先に動き、超低空で飛翔してセイリュウジンの肩を掴み、無理やり屈ませる。

 

右側にいたパラディンも尻尾の攻撃を屈んで避けると見せかけ、シールドで受け止め衝撃を緩和させた後、強引に殴り上げた。

 

そのままセイリュウジンとトリガーの元に駆け寄るパラディン。

 

「無事か!?」

 

セイリュウジンは屈んだ状態のまま答える。

 

「はい!無事です!」

 

パラディンには素早く応え

 

「ありがとう、トリガー」

 

トリガーに対して感謝の気持ちから真摯に返すセイリュウジン。

 

トリガーは、静かに頷く。

 

パラディンも屈み、セイリュウジンの肩を掴んでぐっと力を入れる。

 

「無駄口たたいてっからこうなんだ、気をつけろ」

 

「はい、すいませんしたっ」

 

心配されてる事と怒られている事を半々で感じ取り、申し訳なさそうにするセイリュウジン。

 

それに対して一度手を離し、軽く肩をポンと叩いて無言の喝を入れるパラディン。

 

「パラディンさん!トリガー!尻尾が来ます!!」

 

先刻打ち上げた尻尾が3人の頭上で左右に揺れ、しならせている動作を見たセイリュウジンは、直感でそれが勢いをつけるための動作だと感じての発言だった。

 

それを聞いたパラディン、ブンブンとしならせて速度を上げていく尻尾を睨む。

 

「蛇みたいにうねうねくねくねと…いい加減鬱陶しいな………」

 

パラディンはシールドの下部を地面に叩きつけ、ガンッと大きく鈍い音を鳴らし、フゥと息を吐く。

 

「……千切るか」

 

「え?」

 

ボソッとパラディンの呟きに、彼を凝視してしまうセイリュウジンとトリガー

 

それと同時に2人には

 

堪忍袋の緒が切れる音が

 

はっきりと聞こえた気がしていた。

 

「おい…お前ら…」

 

手招きして引き寄せるパラディンは、小声で何か指示を出す。

 

やがてパラディンは2人を見る事なく、スッと立ち上がり、簡潔に言う。

 

「言った通り……止めるっ……斬れっ……いいな?」

 

2人の目には、漏れ出ている怒気混じりの黒いオーラを纏ったパラディンの圧を感じる。

 

「あ…はいっ…」

 

圧に押されながらもなんとか返事をするセイリュウジン。

 

左右にしならせて勢いを増していた尻尾は、後方のヒーロー達目掛けて右から横薙ぎに振られる。

 

パラディンは右腕の脇を締め、シールドを右半身を隠す様に構える。

 

その体制で尻尾の攻撃を待ち構える

 

と見せかけ、繰り出される尻尾の付け根付近まで近づく。

 

付け根に近い部分で尻尾の一撃は、先端部分の一撃に比べて衝撃は少ない。

 

しかしそれは充分にヒーロー1人を数ミリ、立ち位置からズラすほどの衝撃はあり、パラディンはそれを耐え抜く。

 

鞭の様に繰り出された尻尾は、付け根を抑えられた末、本来の勢いを削がれコントロールも失う。

 

付け根から半分はパラディンの身体に項垂れる様に絡みつき、先端に近い部位は力無くへたり込んだ蛇の様に地面についた。

 

次の瞬間。

 

パラディンは左手で付け根を鷲掴み、絡んでる尻尾の黒い甲殻の隙間へシールドを引っ掛ける。

 

真っ黒に覆われていたかに見えた尻尾の甲殻部分の隙間には、僅かながら無防備な繊維質が見えた。

 

「やれっ!!」

 

一連の動作を目にしていたセイリュウジンとトリガーは、パラディンの合図と共により動き。

 

セイリュウジンは右上から下に

 

トリガーは宙に浮いた状態で左から上に

 

「ナマライザースラアアアアッシュ!!!!!」

 

「デアアアアアアア!!!!」

 

各々携えた剣で、隙間目掛けて切先を入れる。

 

わずか5cmも満たない隙間へ切先が入り、尻尾の上部と下部を2箇所同時に切り込む。

 

斬り抜いた事を確認したパラディンは

 

付け根を掴んでいる左手を離し

 

甲殻の突起に引っ掛けているシールドを両手で押さえ

 

付け根目掛け渾身の蹴りを叩き込む。

 

その衝撃に1m弱前進するアーラは、今まで複眼で後方を見ていたところ、ようやく主眼で背後に眼を向けた。

 

「え!?」

 

正面に立っていたガリヤーとドラゴンは少し前にガクンと出てきたアーラに驚く。

 

アーラは振り向かざるを得ない状況を目の当たりにして、静かに口を開いた。

 

「アンタ…………何掴ンでんのヨ…」

 

ガリヤーと同じく正面に立っていたドラゴンだったが、アーラが視線を向けた先を見て、驚愕する。

 

1mほど宙に浮いた状態で右手にジオスパーダを持ち、左手を開き特有の構え姿勢で敵を見据えるトリガー。

 

左側には低い姿勢で膝立ちし、専用武具【キャライザー】を逆手に構えたセイリュウジン。

 

そして2人の間には

 

僅かな皮と骨で繋がっていた尻尾を見事引きちぎり、左手で掴んでいるパラディン。

 

「悪い…とは微塵も思ってねぇが…悪いな……」

 

そう言って遠くに放り投げる。

 

ズシンと重々しい音を鳴らしてアスファルトの地に転がるアーラの蠍の尻尾。

 

「鬱陶しいから千切ったわ」

 

「尻尾を斬ったのか!?」

 

「ヤベェな!まるでモンハンみたいじゃんか!」

 

「るっせぇぞそこのゲーム脳」

 

パラディンの功績に驚愕するドラゴンとライジング。

 

ライジングの賛美に対し反旗するパラディンだった。

 

「アタシの尻尾ヲ……ガアアアアアアア!!!!!」

 

アーラの巨躯は一目散に尻尾の方へとアスファルトを抉りながら向かう。

 

その姿を冷ややかな視線で追いつつ警戒は緩めずにパラディンはトリガーとセイリュウジンに向けて言う。

 

「おいお前ら」

 

「はいっ!」

 

セイリュウジンは気をつけの姿勢にとる。

 

それを見たトリガーも地に足をつけ、並んで同じ姿勢をとる。

 

パラディンはトリガーとセイリュウジンへ左拳で軽くトンと胸部を叩く。

 

「よくやった」

 

仲間に激励するパラディン。

 

元々エンガイザーは、ライジングとドラゴンの2人で遠軽町を中心にヒーロー活動をしていた。

 

ある日からエンガイザーの力と、遠軽町白滝の黒曜石のパワーの影響で、エンガイザーとして変貌を遂げたカラス。

それがエンガイザー・パラディンだった。

 

遠軽町周辺をナワバリとして、周辺に生息するカラス達を牛耳り、群れのリーダーとして君臨していたパラディン。

彼は仲間の力量と性格や癖などを読み解き、相手に対し「どう言えば自分と呼応してくれるか」を即時導き出す事が出来る。

ある意味特殊能力に近いが、純然たる彼自身の生きてきた経験則からなせる技だった。

そうして、気まぐれで且つ執着心の強いカラス達に認められ、束ねて導いてきた。

 

そして彼は知ってか知らずか

 

彼の精神や行動は

 

『達成、神秘と保護』という

 

黒曜石の持つ

 

石言葉を体現していたのだった。

 

「また生えたりしないっすよね…」

 

〈推測。蠍の尻尾は正確には腹部に当たる器官です。トカゲの様に自切を想定しているわけではないため、再生は容易くないかと存じます〉

 

「え!?そうなんすか!?」

 

〈仮にできたとしても、先程の変体時の様に、余程のエネルギーが必要です〉

 

「とりあえずその事は“後回し”って事でいいね」

 

懸念点をMERUの補足説明にて状況理解した一同。

 

そして敵に向き直り並ぶヒーロー達。

 

「ヨクモヤッテクレタワネエエエエエエエエ!!!!」

 

切られた尻尾を本体の腕で掴み、憎々しそうに雄叫びを上げるアーラ。

 

次の瞬間、思わぬ行動を取る。

 

「え…」

 

困惑するガリヤー。

 

「うわぁ…」

 

気持ちの良くないモノを見る様に呻くセイリュウジン。

 

「自分の尻尾を…食っているのか」

 

ドラゴンは見た状況を口にする。

 

手に掴んでいた尻尾を口に運んだアーラは、バリバリと砕く様な音を鳴らして、食べていた。

 

およそ直径20cmはある様に見えた尻尾の、千切られた切断面から喰らい付き、モゴモゴとあり得ない大きさに口で、さながら節分の恵方巻きを食べているかの様に口から離さず、咀嚼している。

 

「解っちゃいたがイカれてるな…」

 

「口悪いぞパラディン」

 

舌打ち混じりで嫌悪感を露わにしたパラディンの呟きに対し、ライジングがそっと一言沿える。

 

「やかましい、俺たちは十分やってるんだ、悪態くらいかわいいもんだろが」

 

やがて尻尾を食べ終えたアーラは、細やかながら更なる変化を遂げる。

 

黒かった鎧の様な甲殻は赤みを帯び、よりどず黒い印象が窺える。

尻尾のあった蜘蛛の腹は形状を変え、甲羅の様に硬くなり。

ドラゴンとガリヤーのコンビネーションで沈黙していた蜘蛛の顔も、再生して元通りとなる。

 

蜘蛛の巨躯は、地面スレスレまで姿勢を下げる。

 

その仕草を見て、ガリヤーは真っ先に仲間達に声を上げた。

 

「来るよ!全員警戒体制!」

 

言い終わる少し前には、すでに跳躍していたアーラは、下部にある蜘蛛の顎を目一杯開き、ヒーロー達を飲み込もうとする

 

ヒーロー達は後方に跳び、その攻撃を躱す。

 

アーラはズシンと地響きが鳴る程の重い衝撃を響かせ、ヒーロー達がいた地点を陥没させる。

 

ライジングは消耗のせいなのか、他のヒーロー達より半分ほどの回避距離しか稼げず。

それを目敏く見ていたアーラは、ランスの様な鋭く長い前脚の攻撃を向ける。

 

それを大剣で丁寧に受けつつ、隙を見て関節部目掛け剣を叩きつけた。

 

しかしその攻撃は、まるで反射されたかの様に弾かれ、その勢いで後方へと強制的に下げられる。

 

「おい!あの殻!硬度上がってないか!?切れ味が足りない!こんなんじゃ部位破壊狙えないぜ!」

 

敵の方向を指を刺して強く訴えるライジング。

 

「そこのゲーム脳!いいから下がって大人しくしてろ!無茶すんな!」

 

それに対してビシッとライジングに向け指を刺し、指摘するパラディン。

 

「先ほど見せた亡骸の捕食といい、奴はそれを重ねるごとに形態を変えていっている…侮っていたが…これ以上何かを食わせるわけにはいかないな」

 

〈ポジティブ。敵の外殻の硬度は先刻の約2倍、且つ耐衝撃にも優れた性質変化に至っております。恐らくはマスター達の攻撃力に起因して防御と衝撃に対処すべく合わせた形態かと〉

 

冷静に状況分析するドラゴンに対し、サポートAIのMERUが捕捉情報と共に応える。

 

「また尻尾生やされないだけマシか…」

 

安堵と共に憎々しそうに呟くパラディン。

 

「MERU、だいたいでいい、奴の硬度はガリメタルに比べてー」

 

〈ガリメタルに比べたら“児戯に等しい”です〉

 

自動生成されているはずの音声に、若干語気が強まった様に感じたと共に、言葉選びにも気になったガリヤー。

 

「MERUさん?それ使い方合ってる?」

 

〈取るに足りません、繰り返します。取るに足りません。ガリメタルは唯一無二です。異論がございますか?〉

 

音声はガリヤーにのみ届けられていた。

 

「解った!なんかごめん!そうだね!ごめんね!」

 

「来ます!!」

 

セイリュウジンが叫ぶと共に、赤黒い甲殻で身を固めたアーラが、ヒーローたちに向かって行く。

 

トリガーとパラディンに前脚の突きが迫る。

 

トリガーは飛翔し敵の側面へと攻撃を避ける。

 

パラディンは身を屈めて突き出されたランスの様な脚を払い除ける。

 

人型の上半身を前のめりにし、手腕の両爪と蠍の爪を四方向に伸ばすアーラ。

 

それは攻撃ではなく

 

ヒーローたちからの攻撃を受ける為に出されている。

 

右の手腕でドラゴンの突き攻撃を受け、とっさに放った蹴りの攻撃を蠍の爪で防ぐ。

 

左の手腕で浮遊したトリガーより振り下ろされた剣撃を弾き。

 

左下部から繰り出されたセイリュウジンの剣撃を蠍の爪で防ぐ。

 

トリガーとドラゴンはそのまま左右の方向へと跳ね除けられ。

セイリュウジンはアーラの目下に落とされ、敵の正面に着く。

 

「無駄ヨ、そノ程度余裕デ弾イテあげるわ」

 

前脚が左右に開き、セイリュウジンを挟むかの様に迫る。

 

右はパラディンが入り込み押さえつける

 

左はライジングが大剣を地面に突き立てながら堪える。

 

再び主腕の長く伸びた総計10本の爪が迫る。

 

「さっきより動きは鈍くなりましたけど!この硬さはしんどいっすよ!」

 

迫り来る爪の攻撃を剣でいなし弾きながら、声を上げるセイリュウジン。

 

主腕の攻撃をうまく弾き交わすところに、蠍の爪を携えた副腕が迫ってくる。

 

爪はセイリュウジンの胸部に迫ろうとしていたところへ、後ろから割って入る様にガリヤーが前に出る。

 

両椀のスクリューを回して、敵の攻撃を押さえる。

 

ポジションチェンジしたセイリュウジンは敵の状態と仲間の状態を観察する。

 

そこに突然、彼は何かに抱えられ、宙に浮いた。

 

「え?トリガー!」

 

吹き飛ばされたはずのトリガーは、空中で踏ん張り、体勢を立て直して早くも戦闘に復帰する。

 

握っていたジオスパーダを左手に持ち直したトリガーは、セイリュウジンを腰から抱える様に持ち上げて、宙を舞う。

 

ジオスパーダの切先を一度敵に向けた後、セイリュウジンへ顔を向け強く頷く。

 

「なぁる!そゆことね!っしゃ!!楽しくなってきた!!一緒になまらはっちゃけようぜ!!!」

 

トリガーの意図を汲み取ったセイリュウジンは、そのままスクラムを組んだ状態で宙を舞い、アーラの本体を中心に旋回しながら斬りつけるヒット&アウェイ戦法で牽制と撹乱に転ずる。

 

前方は正面のヒーロー3人を対処

 

旋回して弱点部位を探りながら攻めるトリガーとセイリュウジンに対し、主腕と甲殻で防ぐ。

 

時折頭部を狙って斬りつけるも、あり得ない方向へ首を動かし、剣を躱す。

 

両腕のスクリューで押し合いをしていたガリヤーは、回転率を上げて硬い甲殻を火花を散らせながら徐々に削っていく。

 

丁度ガリヤーとアーラが真正面に向かい合ったその時。

 

副腕の両爪がガリヤーに伸びる。

 

両腕を上段に上げて爪の挟み込みを受け止め、スクリューを回転させるガリヤー。

 

「なんの!これしきぃいいいいい!!」

 

拘束されそうになったガリヤーはなんとか気合いで抜け出す。

 

ドラゴンが飛びかかり、空中三段蹴りお見舞いするも、硬い甲殻で弾かれる。

 

好戦に接戦、しかし状況打破出来ずにいる中。

 

セイリュウジンはトリガーと共に、上空から敵を観察する。

 

自分たちの攻撃に対し

 

ほとんどの攻撃を弾くか防いでいる

 

しかしそれは、一点を除いての行動だった。

 

(あいつ…さっきから頭を随分と念入りに庇ってる…ひょっとして)

 

一つの可能性に勘づいたセイリュウジンだったが、一旦その思考を止める通信が入る。

 

〈マスター、有効な攻撃手段を算出しました〉

 

「え?」

 

サポートAIのMERUからの通信に注目する一同。

 

「一旦下がるぞ!」

 

ドラゴンの一言で全員がアーラと距離を取る。

 

訝しむもアーラは警戒を緩めず、ひたすら待ちの姿勢を崩さない。

 

〈先程の腕部スクリューの研磨により、通常の攻撃手段よりおよそ15%増のダメージ蓄積値を確認。再生速度も他の部位より30%の遅延が発生している模様〉

 

「つまりそれって」

 

MERUの情報に真っ先に反応し、打開策を見出したのはガリヤーだった。

 

〈ポジティブ。ドリルによる掘削が現在最も有用な手段です〉

 

「やっぱり…MERU!」

 

〈射出完了〉

 

「まだ何も言ってないよ!?」

 

何かを指示しようとしたガリヤーに対し先回りで対応しているMERU。

 

〈3歩下がって下さい〉

 

その上でガリヤーに動く指示を出す。

 

それに従うガリヤー。

 

そこへ、上空からとてつもない勢いで風を受け、直径約1.5mのコクーン型の物体が降り。

先刻までガリヤーの立っていた地面に突き刺さる様にめり込む。

 

「あっぶなかったぁ…けど、ありがとうMERU!」

 

指示通りにしていなかった時の事に多大な恐怖を感じながら相棒に感謝を述べるガリヤーは、迷わず物体に右手で触れる。

上部が内側にスライドしながら折りたたまれ、開いたコクーンの内部に右手を入れる。

 

「皆やる事は判っているな?」

 

ガリヤーの動きに合わせて言葉を投げかけるドラゴン。

 

「当たり前だ!俺たちで敵を押さえる」

 

大剣を担ぎ、左肩をぐるぐると回すライジング。

 

「違ぇだろが、お前は下がってろっての」

 

消耗してる仲間を諌めるパラディン。

 

「安心しろって、中距離から立派に援護する…さっ!!」

 

そう言って剣を振りかぶり、アーラ目掛けて投げた。

 

大剣は高速で旋回し直線軌道でアーラに直撃、甲殻に弾かれる。

ダメージこそないが、見事に相手の虚をつく事に成功し、注目させるには十分すぎる効果を得る。

 

弾かれた大剣は弧を描いて、形状に見合った軌道でライジングの元へと還る。

 

一連の芸当に目を丸くするパラディン。

 

「お前まさか、それもゲームか?」

 

「馬鹿にできないだろ?ゲームもさ」

 

フッと笑ってみせるライジング。

 

それに対して黙って盾を向けるパラディン。

 

「あの女郎蜘蛛…絶対泣かすぞ」

 

それに応え、大剣を左手に持ち替えて剣を当てる。

 

「俺たち全員でな」

 

敵に勢いよく向かっていくパラディンとドラゴン。

それに合わせてライジングは、再び大剣を投げる体制に入る。

 

一方コクーンの側にいるガリヤーは、中からゆっくりと何かを引き出す。

 

ガリヤーの右腕には、腕の3倍はする大きさの機械式のガントレットが装着される。

太さ約50cm、手甲上部から拳の先を抜けて2本の巨大なステップドリルが伸びている。

ガリヤー専用の“氷砕掘削装備”であるが、本来の使い方は武器ではなく重機に近いが、激化する宿敵との戦いに合わせ、武装としてチューンナップされた結果。

その強靭で頑強なドリルは、数々の敵を貫いて来た。

 

〈ユーザー認証完了。全てのロックが解除されました。【ガリンコナックル】アクティブ〉

 

ドリルの起動音と初動の確認をし、前後左右に振って接続に問題ない事を確かめる。

 

アーラの正面には縦を構えたパラディンが惹きつけ役として立ち、攻撃を盾で受ける。

トリガーとセイリュウジンは空中から旋回しながら斬りつけ、アーラを撹乱。

ドラゴンはアーラの周辺を走り、隙を窺い、トリガー達の作ったチャンスを活かし攻撃を加える。

 

「鬱陶シイわねッ!」

 

ダメージはさほど無いが、気を散らされた事に憤慨するアーラ。

正面に待ちの姿勢で留まるパラディンを標的として定めたその時。

 

パラディンが盾を肩に担ぐ体制となる。

その背後から、スクリューの回転を利用してスライディングしながら勢いよく駆けて来るガリヤー。

 

パラディンの真後ろに着く直前、ガリヤーは下半身をたたみ左腕と腹筋の力で跳び上がり、パラディンの盾の上に乗る。

 

パラディンはガリヤーを乗せたまま盾をしっかりと握り、アーラ目掛けて大きく振りかぶる。

 

「ナに!?」

 

パラディンの強靭な腕力、ガリヤーの頑強な脚力、それらが相乗効果を生み出し。

投げ飛ばされたと言うより、射出されたに近い驚異的な速度でアーラに激突。

 

咄嗟に蠍の爪の甲でドリルの切先をガードするアーラ。

接触した瞬間ギリギリと甲高い甲殻の削られて行く音とドリルの回転音が周囲に響く。

 

「斬るのも無理で叩くのも無理…なら…」

 

ガリヤーはそう言いながら、左手でナックルを握り、押し込む力を更に強くする。

 

「一点突破…削って切り開く!!」

 

ドリルの先端は爪の甲殻を削り、その奥に佇む肉の繊維に食らいつき、絡めて巻き込み、突き進む。

言うまでもなく見事に貫通したドリルは、文字通り「一点突破」を達成させた。

 

アーラにとっても予想外の事であり、蠍の爪の腕を肘から先を主腕の鋭く伸びた鋭利な爪で自切する。

 

その巨躯は数歩下がり、ガリヤーとの距離を取ろうとするが、それをさせまいと次は一歩下がり遅れた左前脚にドリルがくらいつく。

ギィイイイと甲高い金属が削れる音を鳴らしながら前脚を僅かばかり手繰り寄せた結果、ドリルは関節部に到達して引きちぎる。

 

その攻撃にバランスを崩すアーラ。

 

〈各所に有用なダメージ蓄積値を確認、およそ15%アップしています〉

 

「よし!このまま畳み掛ける!」

 

再び突貫するガリヤーは、本体下部の巨大な顎目掛けて突き刺した。

 

僅か1秒半にドリルは閉じていた顎を砕き、口腔内部を破壊しようと回転力を上げて行く。

 

〈ガリヤー!離れるんだ!〉

 

〈マスター。一時離脱を〉

 

ドラゴンの通信とほぼ同時にMERUもガリヤーに危機を知らせる。

 

それは僅かながら遅かった。

 

アーラの本体頭部があり得ない程口が裂けて大きく開かれ、そこから粘液混じりの蜘蛛の糸を突き刺さったガリンコナックルの鉄甲とドリルの接続部に向けて吐き出す。

 

糸が内部の機構に絡まり、回転が停止。それとともに化学物質が溶けたかの様な異臭を放ち、付着部位から煙が上がる。

 

「しまっ!」

 

「残念デしたッ」

 

アーラの右手のひらがガリヤーの左肩を中心に頭部へ叩かれる。

 

その力はアーマーを軋ませる程の衝撃であり、ガリヤーはそのまま後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「ヤッベ!」

 

跳んでいくガリヤーの身体に手を伸ばし掴んだライジングは、なんとかつ引き寄せる。

 

組み合ったガリヤーとライジングは勢いが削がれる事なく

 

街の象徴

 

カニの爪オブジェに激突し

 

重々しい音と共に崩れる。

 

「まずい…トリガー!一旦降りよう!!」

 

セイリュウジンの言葉に従い、地上オブジェの方へと降りるトリガー。

 

「なんだ!?何があった!!」

 

一瞬の出来事に理解が追いつかないパラディン。

 

「口ノ端、痛めルからあんまリ使イたくなかっタのよ…ネ゛ッ!」

 

と言い終わり糸を口から吐き飛ばすアーラ。

 

その攻撃を察知して防御を取ろうとしたパラディンを無理矢理屈ませて攻撃を避けたドラゴン。

 

吐き出した糸はアスファルトに触れ、謎の異臭と煙を上げる。

 

「やはりか…何か仕掛けると思ったが、まさかあんな隠し玉をとはな…」

 

「ふざけやがってこの女郎蜘蛛がっ…」

 

警戒を強めるドラゴン。

 

静かに怒りを積み重ねるパラディン。

 

「ガリヤーさん!!ライジングさん!!」

 

地上に降りると共にセイリュウジンは、真っ先にオブジェに激突行した仲間へと、急いで駆けつけるセイリュウジン。

 

その場にいる全員が唖然とする。

 

一瞬にして形勢逆転。

 

「大シたチカラダけど、強度ハなイわね!」

 

得意げに高笑いを交えてヒーロー達を見下すアーラ。

 

「潰れちゃったかしらねぇ…ご愁傷サマアアアアアアアア!!!」

 

この世に存在するどんな伝記や空想、御伽噺の類から見ても、今のアーラの姿に畏怖を感じずにはいられないだろう。

敵の嘲笑に対し、その場にいる誰もが怒りに身体を震わせる。

 

拳を震わせて強く握る一同。

 

真っ先に飛び出したのは

 

ヒーローの仲間たちではなく

 

トリガーだった。

 

トリガーは地を蹴り、一飛びでアーラに向かい剣で斬りかかる。

 

それを両手の爪で交差する様に防ぐアーラ。

 

トリガーが防がれた事も構わず剣を振る。

 

金属同士のぶつかり合う甲高い音鳴らし、ウルトラマンと怪人は凄まじい勢いでぶつかり合う。

 

それに驚いたパラディンとドラゴンだったが、追随して動く。

 

「パラディン!トリガーを援護だ!」

 

「わぁーってるよ!なんであいつが1番熱くなってんだよ!」

 

激しい剣戟が響き渡る紋別。

 

戦いはまだ続く。

 

 




読んでくださりありがとうございます。

もっと所作を文章で表現する方法を身につけたいと思いつつも、なかなか難しくて出来ません。

それでもこの先のストーリーラインは完成させちゃっているので。

必ず完結させたいと思っております。

是非ともお時間ある時にお付き合いください。
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