文章を繋げるのは本当に至難の業ですよね
コレを仕事にしている人は本当に凄いなと思いながら
下手なりに今回も書かせていただきました。
良ければ読んでやって下さい。
◇カニの爪オブジェ破壊直後◇
⬜︎紋別ゲート-避難シェルター-⬜︎
事件発生から約10分弱。
ヒーローが必要な状況が生じた際、各行政庁と各所轄署は連携を取り、市民の安全確保とヒーロー達が万全の状態で戦えるように避難誘導に尽力する様になっている。
イベント会場の来場者はもちろん、科学館や周辺で働く従業員なども含め、ゲート深部にあるシェルターに誘引し、安全確保を確立させる動きを常に必達の意識を高めていた。
多くの人々がひしめき合う最中、職員の宮村が1組の家族をシェルター入り口まで誘導を終え、持ち場に戻ろうとしていた。
「みやむぅ!状況は!」
そこに広報部の沼上が同期の元へと走ってきた。
「ぬまちぃ!避難は今の1組で最後だよ」
「そう、良かった…」
避難は完了したことを安堵するが、その後の対応は続く事を沼上は続けて情報共有と確認をする。
「通達は見たよね、場合によっては札幌か新千歳に市民を移送になるって」
その発言に深く頷きながら端末を取り出す宮村。
「遠方から来てる人もいるだろうし、そういうお客さんは新千歳の方がいいかもね。最悪の場合は、苫小牧へのゲート使用もあり得るんじゃない?」
「そうね、そこからフェリーで本州に避難させて……ああ!もうっ!本州とのゲート間が繋がっていたら、他にもやりようあるのに!」
「こればかりは未知のテクノロジーだし、言っても仕方がないよね…流石に青函トンネルのゲートもまだ時間かかるだろうし」
「そうね…おそらく輸送車両が用意されるから、ゲートへ誘導後に車両運転を頼まれると思う。そのつもりでお願い」
沼上は宮村の肩に手を当てて伝える。
頷く宮村は、ゲート内の高い天井を仰ぐ。
「それにしても、上の状況どうなってるんだろ…」
地下8階に相当する深部。
一旦は安全を確保出来ているとはいえ、地上では戦いが続いている状況に宮村は不安そうにしていた。
そこへ2人を見つけ駆け寄る人物が現れる。
「お2人とも!無事でしたか!」
「「犬飼部長!お疲れ様です!」」
『犬飼-いぬかい-』と呼ばれた人物は、彼女たちの上長であり。
広報部の現場総指揮を担当する立場にある。
「すみません、2人とも、こちらに」
犬飼は息を整え、2人を誘導する。
⬜︎シェルター内 -物資一時貯蔵庫-⬜︎
ゲート入り口に近い物資貯蔵庫へ呼ばれた沼上と宮村。
2人は上長の狼狽える姿に不安を感じている。
「緊急事態です…落ち着いて聞いてください」
一呼吸の後に言葉を発する犬飼。
「ライジングが激しく消耗、ガリヤーの武装が、敵により破壊されました…」
「消耗!?破壊!?」
「そんな通知来てませんよ!?」
予想だにしない緊急事態に声を荒げる2人。
両手を広げ2人に向けながら、抑えるようにジェスチャーで訴える犬飼。
「情報統制されています、混乱を広げないための措置と理解ください」
懐から端末を出し、画面を見せながら言葉を続ける犬飼。
「戦況は芳しくない…ガリンコナックルが破壊されました」
「嘘ですよね!?」
「ガリヤーさんは!?ライジングさんは!?」
掴み掛からんとする勢いで沼上は上司に近づく。
「幸い生命は無事です」
犬飼の言葉を聞いて少し安堵する沼上。
彼女の肩を優しく掴み、寄り添いながら宮村が続けて問いかける。
「あれを壊す敵なんかいるんですか?」
犬飼はその質問に対し深く頷き、状況の共有を続けていく。
「破壊はされましたが、ドリルが敵に有効打となったという、調査部からの戦況分析がありました…」
犬飼は端末を懐にしまい直し、2人の職員に向かって背筋を伸ばし声を張る。
「職員沼上さん、宮村さん、両名に。近郊にて停泊中のガリンコ号に行き、ガリヤーの新武装を輸送。その後、消耗したライジングを回収する様に命じます!」
「直接現場に輸送して救助ですか!?」
「それって私たちだけで…戦地に行くって事ですよね」
宮村は驚愕するが、それに相対して沼上は先刻より落ち着いて確認をする。
「よりによってですが…射出用カタパルトが不具合に見舞われ、復旧を待っていたら間に合わないかもしれません」
言いにくそうに事実を述べる犬飼。
「万が一の場合は、ヒーローの全滅もあり得ます」
犬飼の発せられる言葉に、理解が追いついていない宮村は、その場で視線を落とし俯く。
「まさか…そんな」
苦虫を噛み締める表情で犬飼は続ける。
「その最悪を避けるために、上層部はいまいる人材の中で、土地勘、フットワーク、ヒーロー達との信頼と関係値を考慮して。貴方達を指名しました…」
そこでやっと2人は
「なぜ自分たちが選ばれたのか」を知る事となった。
広報部は特にイベントなどの運営に回る事が多く、必然的にヒーローと接点を持つ機会が多い。
特に沼上は特撮アニメなどのサブカルチャーを趣味趣向として持ち合わせており、積極的にヒーローのサポートを自ら志願していた。
宮村も手伝いに駆り出され、ヒーローと業務する事が多くなり、幼い頃と思春期の頃にヒーロー番組などに触れてきたため、ヒーローと言う存在の重要性を認識している。
本人たちの性質や経歴、現場の人員。
それらを考慮した人員配置と指令だった。
犬飼は2人の部下へ告げる。
「ミントリガーが北見から来てくださってます。上層部の意向とは別で、彼には私から紋別司令部を経由して貴方達の護衛を依頼済みです」
2人は驚いた。
行政もそうだが何処も基本的に「お堅いお仕事」であり、それを取り仕切り引き締めるべき立場である上長が。
独断で自分たちの護衛をヒーローに依頼する事に驚愕していた。
ヒーローは誰かを専属で護衛する事は稀なケースであり皆無に等しい。
それをしてしまっては、救える生命や護れる生命を無くす可能性が高くなる。
数の問題ではなく、可能性が絞られてしまう事への懸念点にして、それを世間では良きとしない。
しかし目の前の上長は、それを知っておきながら自分たちに伝えてきた。
自分は命令違反をしていると。
「……お2人ともよく聞いて下さい」
犬飼は更に続ける。
「上からの指示によって“命ずる”とは言いましたが…個人的には貴方達が“嫌だ”と言えば私が単身で行きます!危険な仕事です、断っても構わない!咎められても、私で差し止めます!強制はしない!」
言い終わると同時に宮村が何かを言おうとする。
しかしそれを手のひらを向けて静止させた。
「本当なら、命ずる前に私自身で動くべきなのです…ですが…私も組織に属する者であり、管理職です。筋を通す必要があったことを、ここにお詫び申し上げます」
深々と頭を下げる犬飼。
「そんな!やめて下さい犬飼部長!」
それに対し宮村は彼の姿勢を戻す。
沼上がゆっくり発言をする。
「新武装ってなんなんですか?」
その言葉を聞きハッとなる犬飼。
「数年かけてガリヤーと開発部の技術班長が調整中だった、彼専用の武装らしいです。詳しくは私も不明ですが、準備は出来ていて、運び出すだけとの事」
それを聞き、沼上はふぅと一息吐く。
「職員になった時点で…覚悟は出来てます」
両の手で両頬をバチンと叩いた沼上。
宮村に向き直る。
「宮村さん、準備どれくらいで済む?」
いつもの愛称ではなく、苗字を呼ばれて宮村は悟り、表情と姿勢を切り替える。
「動かせる車両なら私の車両がある、大丈夫だよ沼上さん、すぐ行ける」
お互い目を見合わせ、頷く。
「「やります!」」
揃った2人の声は、犬飼の全身に響き、少したじろいでしまう程だったが。
彼もすぐに持ち直して切り替える。
「わかりました…くれぐれも気をつけて、危険と感じたら、脇目も降らず逃げなさい!ご武運を!」
拳を自分の胸に当てる犬飼。
「「はい!ご武運を!」」
2人は言い終わる同時に動き出す。
◇およそ数分後◇
⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎
劣勢に立たされているヒーロー達。
3名は戦闘中、2名は意識不明、1名は意識不明者の側に就いていた。
「ライジングさん!ガリヤーさん!!」
倒れているライジングとガリヤーに声をかけるセイリュウジン。
何度も同じ様に声をかけ続け、その甲斐があってか、ゆっくりと動き出した2人。
「よかった!俺がわかりますか?」
上体を起こした仲間に尋ねるセイリュウジン。
先に口を開けたのはライジングだった。
「大丈夫だ、ガリヤーは?」
頭を抑えながら、数回首を横に振るガリヤー。
「あぁ…僕はどれくらい意識を?」
〈7分48秒です〉
「そんなに!?」
せいぜい1・2分と思っていたガリヤーは、驚愕の事実に狼狽えている。
そこへ2人に頭を下げるセイリュウジン。
「すみません、無理にでも起こそうとしたところをMERUさんに止められて」
〈ポジティブ。バイタルは辛うじて正常でしたが、意識をなくしていたマスターとライジングの状態を鑑みて、セイリュウジンにはお控え頂きました〉
2人は首を動かし、状況を見渡す。
自分たちは瓦礫となった爪のオブジェの近くにいる。
少し離れた場所では
トリガー、パラディン、ドラゴンがアーラと戦っている。
特にトリガーの動きは鬼気迫るものを感じずにはいられない。
飛翔しながらがむしゃらに振り回す攻撃が、アーラの動きを止め、その隙にドラゴンとパラディンで押し出し、可能な限りオブジェ付近から離している。
〈敵の攻撃を受けたマスターをライジングが引き寄せた結果、オブジェに激突。その衝撃により、お二人は失心されました。しかし先刻の行動がなければ、海中に沈み、最悪は溺死された可能性、およそ96%〉
「溺死…ははは…」
状況が芳しくない上、9割以上の確率で下手すれば命を落としていた事に恐怖心を感じずにはいられなかったガリヤー。
あまりの状況に現実感を得られず、失笑してしまう。
「ありがとう、ライジング」
改めて礼を言うガリヤー。
ライジングは無言で手を振ってみせる。
ライジングは上体を起こそうとするが、力が入らずにいる。
その姿を尻目に立ち上がるガリヤーは、右腕に目を向ける。
ガリンコナックルはドリル部分は原型が残っているものの、腕を覆うガントレット部分はところどころ焦げ付き煙を発していた。
「あぁ…僕の…ナックルが…」
〈ダメージレベル規定オーバー。ガリンコナックルの制御チップ破損により、運用不可能。パージします〉
ガントレットの上部が弾け飛び、腕からスルッと抜け落ちる様に落下。
ドリルの先端が地面に突き刺さり、その衝撃でガントレットの残骸がポロポロと落ちていく。
ガリヤーは屈んで膝立ちになり、ドリル部分に触れる。
ところどころ塗装が剥がれている部分が擦れた傷の様に見えるが、ドリル自体は原型を維持するに何ら影響もない。
ガリヤーは、時折自らでも手入れをし、数々の戦いを共にした戦友に言葉を紡いだ。
「たくさん無理させちゃったよね。今までお疲れ様、後でちゃんと供養させてね」
立ち上がり戦地に体を向け、消耗した仲間に声をかける。
「ライジングはここで待機、君は限界だろ」
なんとか大剣を杖の様に使い、壊れたオブジェに寄り掛かるライジング。
「あぁ…悪い…一抜けするぜ」
歩みを進めようとしたガリヤーをセイリュウジンが呼び止める。
「ガリヤーさん、何か手はありますか?」
「聞いての通り、あいつに1番効果があるのは僕のドリルだったらしいよ」
2人で突き立ったドリルを一瞥する。
「完全に壊れちゃいましたよね…他の方法かぁ…なんかあった気がするんだけどなぁ!」
両手で頭を抱えて何かを思い出そうとするセイリュウジン。
「MERU、他に有効な攻撃ってあるかい?」
ガリヤーは相棒に助言を乞う。
〈ネガティブ。ただし、あくまでも“現状戦力では”となりますが、聞きますか?〉
ガリヤーは一呼吸する。
「聞かせて」
〈ある一定の条件のもとに大口径弾を使用し、優れた弾道直進力を活かした“アンチマテリアルライフル”を用いた射撃であれば、関節部を基点に敵の四肢を断つ事は可能です〉
【アンチマテリアルライフル】
和名“対物ライフル”と、大口径の特殊な弾丸を用いて貫通力と破壊力に特化した大型のライフル。
本来ライフルが向く先と言えば“人”だが、対物ライフルの対象は人でなく“戦車”“装甲車”“地雷”などが含まれる。
陸戦条約では“対人狙撃禁止”とされる程の危険性と威力誇る。
「それで“ある条件”って?」
ライフルを用いた戦術提案にも気になったが、ガリヤーは武装が揃った条件の更に先の条件を懸念していた。
〈2箇所同時に同一カ所の着弾、もしくは着弾地点に同じ弾丸を再度撃ち込むことに限ります〉
軽くため息をつくガリヤー。
「なるほど…そんな芸当まともに出来るの、どのみちミントリガーくらいだ…」
装備もない、それを活かす人材もいない状況に、再びため息をついてしまう。
「現状この場のキーマンは、僕ってわけだ」
両腕のスクリューを回し、作動を確認しガリヤーは全員に通信で呼び掛ける。
「全員聞こえてるね、作戦を伝えるからそのまま聞いてほしい」
戦闘中通信が入り、ガリヤーの意識が戻った事を再認識するドラゴンとパラディンは、動きを止める事なく戦闘持続に尽力する。
「ここから長期戦だ。少しずつだけど、僕のスクリューで奴の甲殻を削る。みんなは僕をカバーしつつ隙を見てそこを叩いてくれ」
動きを止めてガリヤーに振り返る2人。
「お前まさか、こんな化け物とインファイトするつもりじゃねぇよな!?」
「危険すぎる!トリガーがいるとは言え、今まさに防ぐので手一杯だぞ!!」
静止を促す2人に対し、意思を固く
「今はこれが1番の得策なんだ。悪いけどみんな僕のカバーを頼むよ」
「おい!戦線離脱した俺が言うのもなんだが!それはこの上なくヤバイ作戦だ!考え直せ!」
流石にライジングも苦言を呈す。
そこに別の通信が割り込んだ。
〈こちらミントリガー。全員聞こえるな〉
「ミントリガーさん!?今どこに!?」
何かを思い出そうと頭を抱えていたしていたセイリュウジンだが、突然の割り込みに真っ先に反応する。
〈現在そっちに向かう途中だ、状況は聞いた。俺が着くまで無茶するな、自殺行為なんぞ許さないからな〉
無謀な立ち回りをしようとする仲間に全力で静止する様に伝えるミントリガー。
そこへ更に別の人物が通信に割り込む。
〈おいちょっと待てええええええ!!〉
音割れする程の大きな声量で叫ぶ存在。
〈割り込んで悪いな!!紋別整備班の『織戸-おりべ-』だ!〉
『整備班長織戸』
紋別の技術開発部門の主任技術者であり全ての決定権を統括顧問の肩書を持つ傍ら
「裏方の裏方は性に合わない」
と言う理由で常に開発研究の現場指揮をしている。
ガリヤーのスーツ、装身具やツール、職員の端末やシステム周りや車両なども一手に整備も請け負っている整備班。
ガリヤーのみならず、ミントリガーやエンガイザー達も、武具の整備や手入れを依頼したり、彼の指導を受けて自らもメンテナンスができる様に講習をする程、親身になる人物でもある。
「織戸班長!?」
ガリヤーとしても予想外の人物から通信が入ったため、唖然としてしまう。
〈おい!ミントリガー!お前にはまずガリンコ号に来るように言ってあるだろ!!〉
〈わかってますよ〉
〈ならいい!〉
ミントリガーの慣れた返しとノータイムで切り替える織戸の通信に一同が困惑する。
構わず続ける織戸。
〈戦況分析は確認した!それに合わせた最終調整も済んでる!〉
その一言にビクッと反応し、抑える必要のない耳をマスク越しに手を当てるガリヤー。
「班長、それってまさか!」
〈ぶっつけ本番の運用だが、今は出し惜しみしてられんっ!新装備のお披露目だ!〉
マスクの下では、目を見開き、感嘆の面持ちで唇を軽く噛み締めるガリヤー。
〈どこぞのバカタレがカタパルトを無断で動かしやがったうえ開き切らない状態で射出したもんだからイカれちまったんだ!届けるにはミントリガーが必要なんだ!〉
〈失言です。適切な射出ルートでした。訂正を要求します〉
ミスを指摘された人工知能は訂正を要求する。
しかしそれも構わず続ける織戸。
〈上層部の馬鹿どもも一般職員にそれを戦地に送れとか言いやがってな。そっちが切迫してるのもわかってるが、どんぶり勘定でも勝ち筋がどっちにあるかわかるだろ!!〉
織戸に続きミントリガーも一方的に通信を飛ばす。
〈そういうわけだ。直ぐに向かうから、それまで耐えてくれ。通信アウト〉
「え!?ミントリガーさん!?」
一方的に通信を切られた事に状況把握が追いつかないセイリュウジンが動揺する。
「ったく、どいつもこいつも簡単に言ってくれるぜ……おい」
戦闘中のパラディンが一旦下がり後ろの仲間を一瞥する。
「お前ら…気合い入れて耐えろ…いいな?」
再び怒気混じりの黒いオーラを放って圧をかけるパラディン。
それに対し、ドラゴンも一旦下がって声をかける。
「いいのか!?」
シールドを持った右肩をぐるぐると回して応えるパラディン。
「あいつが動いた、つまりはそう言うコトだろ」
そう言い切るとアーラ目掛けて渾身の殴打を叩きつける。
一瞬バランスを崩したアーラ。
「おいそこの性格ブス、まだまだ俺達の護りは崩せてねぇぞ、来いよ」
アーラに人差し指と中指で手招きをするパラディン。
憎々し気にパラディンを睨み咆哮を向けるアーラ。
一方通信のやり取りは依然続いていた。
〈ガリ…いや、ミナト!!〉
織戸がガリヤーの装着者『鴻之ミナト-こうのみなと-』の名を呼ぶ。
〈おめぇが望んだモノを徹底して形にした!壊せるもんなら壊しても構わん!!直してやる!!!〉
両手に力を入れるガリヤー。
震えながらも、声だけは懸命に平静であろうとする。
「作るのにも随分苦労したんですよ?直せるんですか?」
織戸は本日1番の大声でがなりたてた。
〈やってやれねぇ事はねぇ!!ミナト!!おめぇが願った!!俺たちが応えた!!文字通り“掴んでぶちかましてみせろ”!!そのための“掌-てのひら-”で、そのための“拳-こぶし-”だ!!〉
震える拳を力強く押さえつけ、そのまま左右の拳を互いに打ち付けるガリヤー。
鈍く、重く、硬い拳の音が、辺りに響く。
「……ありがとう…ございますっ!」
滲み出す涙を堪え、気持ちを切り替えたガリヤーは、ヒーローたちに声をかける。
「よし、みんな!聞いての通りだ!目標改め、討伐じゃなく“討伐”のための“時間稼ぎ”だ!全員無茶はしない様に!」
「ガリヤーさんのフォローは俺がします!」
互いに顔を合わせて頷き、駆け出した次の瞬間。
ピコン ピコン
とクリスタルグラスとベルを掛け合わせた様な音がする。
“ウルトラマン”と言うヒーローを知ってる者、よく知らない者でも、その音だけは聴き馴染みがあるであろう。
そんな音が今まさに、戦場と化した紋別にこだましている。
「この音…」
近くで聞こえていたドラゴンは、警戒しながらも見る事はなく、全てを察していた。
対してパラディンは、それを鳴らす音の主に気付き、勢いよく目を向けた。
知っているからこそ信じたくはなかった事が、目の前で宙を舞うヒーローの胸部にある、菱形のクリスタルの点滅に呼応して鳴っている。
否が応でも現実である事を認識してしまったヒーロー達。
「おいおい、ここに来てかよ…」
堪らずぼやいてしまうパラディン。
トリガーも、戸惑いと焦りの様な素振りをする。
◇トリガーインナースペース◇
「どうして!?」
そう言ってケンゴは自らの精神世界で叫ぶ。
剣を握る手に力が入りづらくなっている。
今までとは違う焦燥感と倦怠感を感じるケンゴは、戸惑いを止められなかった。
そしてある言葉を思い出した。
活動限界は3分。
と言っていた清掃班の一言。
本来の姿ではなく、等身大の人間サイズで活動する事により、エネルギーの消耗を抑えているのではないか?
ミントリガーがそう言っていた推察。
それらをふまえて、ケンゴは次の結論に辿り着く。
「知らない間…僕は…連戦で消耗していたのか…」
昨日は北見、今朝は札幌、今は紋別を守っている。
移動中などの休憩があったとしても、肉体のみならず精神的にも、自らでは認識できない疲労が間違いなくケンゴに蓄積していた。
そう解っていながら、剣を振るう事を止めるわけにはいかなかったケンゴことウルトラマントリガー。
その微々たる隙を目敏く見つけたアーラは、容赦なく爪の攻撃で迎撃する。
数度の剣戟の後、掬い上げる様な爪の一撃に剣は弾かれてしまい、力が入りきっていないトリガーの手から、抜け飛んでしまう。
「しまった!」
ケンゴの口から焦りが漏れてしまう。
⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎
弾かれた剣【ジオスパーダ】はくるくると旋回してアスファルトに突き刺さる。
ガラ空きになったボディに爪の一突きが迫るところ。
「危ない!!トリガー!!」
そこに割り込んだのはガリヤーだった。
両腕をクロスさせ、敵の攻撃を防ぎスクリューを回して爪を削っていく。
だがしかし、僅かにアーラの勢いと力が勝ったため削り切ることは出来ず、トリガーと共に後方3m程飛ばされる。
なんとか膝立ちの体制で飛ばされた勢いを消し、立て直そうとするガリヤーとトリガー。
「トリガー!君は援護に回るんだ!」
後ろにいるトリガーに向き合い指示を出すガリヤー。
その隙を卑しい女郎蜘蛛が見逃すはずもなく。
アーラは蜘蛛の頭頂部に生やしていた半身の 胴体を蛇の様に伸ばし、勢いよく2人のヒーローへと飛び掛かる。
完全に虚をつかれた2人は、なすすべなく攻撃を受ける
はずだった。
「セイリュウジン…」
2人の目の前には、長身で大きな背中を向けたヒーローの姿が映っていた。
彼が自分たちを守ってくれた
そう気付かされると同時に
ある異変に気づいたガリヤーとトリガー。
「来るト思ッてた」
そう口を開いたアーラは、相変わらずあり得ない程大きく裂かれた口角を開き、笑みを浮かべる。
アーラの左手から伸びる爪は、2人を庇う様に立っているセイリュウジンの右肩のアーマーごと貫き。
左の脇腹には、先刻ガリヤーが削った爪が食い込んでいる。
金色の粒子が煌めきながら、貫かれた傷口から大気中へ溶ける様に消えていく。
アーラは首を左右に揺らしながら、恍惚な表情でセイリュウジンの耳元を抜け、背後にいる2人のヒーローに目を向ける。
「アンタみたイな奴ガ1人クらいいテ、身体オ張ッて仲間ォかバウわ。その瞬間狙ウのが私ノこのミ」
紡いでいる言葉はセイリュウジンに対してのもだが、一言一句それは間違いなく、周りで呆然としているヒーローたちに向けられている。
「セイリュウジン!!」
動き出したのは最も近くにいるガリヤーとトリガー。
手を伸ばし、セイリュウジンを掴もうとした2人は、虚しくも空を掴まされる。
伸ばした胴体は勢いよく収納され、蜘蛛の下半身にセイリュウジンと共に引き寄せられる。
「こウやってェ、近クで苦シむ姿ヲ見ながラァ、絶望ヲ感ジながら逝カせてアゲルのガァ」
セイリュウジンを掴み離さないまま近づかれ、虚をつかれたパラディンとドラゴン。
「誰に触ってんだこのクソアマ、離せててめえええええ!!!!」
パラディンは怒号を上げながら、地に突き刺さったジオスパーダを引き抜き、がむしゃらに斬りかかる。
パラディンも静かに怒気を纏いリザルトクローの一突きを繰り出す。
アーラの額が光りだし、瞬時に再生された蠍の爪に攻撃に阻まれる。
「それそれぇ!!!わたしのゴノミィイイイイイイ!!!!」
口の端をめいっぱいに開き、血走った目でセイリュウジンをジッと見ながら、ヒーロー達の攻撃を爪で弾く。
「ダカラゼッダイニ゛ワ゛ダジノテデゴロズドギメデルノオオオオオオオオ!!!」
一歩出遅れたトリガーとガリヤーがアーラの本体に組み付く。
トリガーは右腕を掴み、拳と肘の殴打の猛襲をかける。
ガリヤーは左腕を掴みスクリューを高速回転させて、ギャリギャリと覆われた甲殻を削る。
「やめろおおおお!!僕の仲間を!!はなせええええええ!!!!!」
悲痛と憤怒の混じり合った叫びが響く戦場。
そこへ更に、ヒーロー達を絶望の淵へ落とす事が起きた。
アーラに掴まれていたセイリュウジンの身体が、だらりと力無く項垂れたのだった。
言葉を失い固まるヒーロー達。
目の前の仲間が息絶える瞬間を目の当たりにし、じわじわと怒りよりも、悲しみが勝っていく。
糸の切れた人形を揺さぶる様な雑さで、セイリュウジンの様子を確認するアーラ。
「逝ッたかしら?安心シなさい…じっくりと味ワって、その後はアンタ達をー」
「なに…笑ってんだよ…」
屍と思っていた対象をゆっくり引き寄せていた瞬間。
両腕を押さえつけられたアーラ。
「ハナ、れナいっ!」
渾身の力で引き離そうとするアーラだが、まるで万力で固定された様にビクともしない。
「人が死んだみたく言い…やがって…」
不安定で宙に浮かされた状態のセイリュウジン。
「感謝するぜ…思いついた事思い出したんだよな…お前への攻撃…」
セイリュウジンの力はその硬い甲殻にヒビを入れる程の握力でがっしり掴む。
「やメ!近寄ルなッ!!」
宙に浮かされた状態で不安定なはずのセイリュウジン、その腕力から成される驚異的な力に引き寄せられるアーラ。
傷の隙間からは、先刻よりも多い金色の粒子が溢れ出る。
「ヒーロー……」
大きく首を上げ
「なぁめんっっっっなッ!!!」
勢い良くアーラの頭部に埋め込まれた、輝く宝珠の様な器官部目掛け、頭突きを叩き込んだ。
セイリュウジンは先の戦いでトリガーとタンデム飛行からのヒット&アウェイをしつつ、アーラの観察をしていた。
彼はその時、気づいた事があった。
大抵の攻撃を受けては弾くをしていたアーラだが、首から上の攻撃は基本的に避けていた事。
具体的には
額にある宝珠の様な器官への如何なる接触を最優先で避けていた事。
歴戦の戦士であるセイリュウジンだが、最初から戦士だったわけではない。
真っ直ぐ過ぎる事、器用ではない事、あまり深く考えない事。
パッションタイプな性格と培ってきた粘り強さが幸いしていた事もあり。
先輩ヒーローの教えを全て受け入れ、彼なりにそれを読み解き、昇華してきた。
その経験があったからこそ、宿敵との戦いを終結させた、今の優しく、強く、誰よりも頼りになり、愛されるヒーローとなった。
セイリュウジンの攻撃を受け、今までに聞いた事ない断末魔を上げて全身が痙攣し始めるアーラ。
赤黒く変わっていた甲殻は随所で茶色く変化し、関節部からは出血らしき様子が伺える。
そんな状況に、ヒーロー達は唖然としていた。
「やっぱな…そこだけ必死に守ってたし……弱点……だ……ろ」
掴まれていた力が緩むと同時に、セイリュウジンも力を抜く。
その刹那
大きな音が鳴り。
アーラの頭部に備わった側面の複眼が一部弾け飛び。
続け様に轟音が一定間隔で何発も鳴り響く。
「銃声!?」
驚くガリヤーが音の発生源へ振り向いた瞬間、猛スピードで走る軍用大型車両が見える。
その上部から閃光が飛び、顔の横を抜けた。
光はアーラの右手と左肘関節に減り込み、同じ場所に再度閃光が盛り込んだ結果。
アーラの右指先と左肘から先は本体から吹き飛ぶ離れる。
「ミントリガー!」
ドラゴンが叫ぶ。
「やっと来やがったか、おっせぇぞノロマ!!!」
パラディンが嬉しそうに怒鳴る。
◇数分前◇
⬜︎ガリンコ号貨物搬入口⬜︎
紋別と言う土地は、唯一日本で流氷が観測できる。
その為に“流氷の町”とも称される程に流氷とは密接であり、流氷を砕いて海を走る船【ガリンコ号】が地域内外でも評価されている。
そして複数存在するガリンコ号の1隻は、ガリヤーのサポートとスーツと武装のメンテナンスの主に、行政の開発技術部門が運用する移動要塞ともなっていた。
戦闘が激化する中、沼上と宮村は、上層部司令によりガリヤーの“新武装”を受け取り、搬入口に来ていた。
「「広報部の者です!!」」
搬入口には大型車両を囲む様に作業着を着た整備の職員と、それを腕組みしながら指示を出す土方スタイルの男性がいた。
技術顧問と現場指揮を統括する、『織戸-おりべ-』であった。
「よく来た!!用意してある!運転する方は乗り込んでそいつから指示を聞け!1人はこっちの説明をするから後部ハッチから乗れっ!」
軍用の大型車両にしか見えない車を指差し的確に指示を送る織戸。
「なんですかコレ!?」
「行政にこんなのあったの?…信じらんない…」
宮村と沼上が驚愕する。
「無駄口叩くんじゃねぇ!これでも一般車だ!細かい事気にすんな!!」
織戸の怒号に近い声に、その場にいる誰もが一瞬ビクつく。
沼上は咄嗟に運転席に向かう。
それに構わず宮村に向かって説明を続ける織戸。
「いいか?このレバーとハッチは連動してる。上げれば開いて出てくるからから、そいつをガリヤーに言ってやれ、“新しい拳”だとな」
指差しを一個ずつする織戸、それを真剣に覚える宮村のやり取りに割り込む形で空から降り立ったミントリガー。
「完成してたんですね、これ」
「「ミントリガーさん!!」」
車両から顔を出した2人を目にして、ミントリガーも車両に近づく。
「2人は自分が護衛する、直ぐに出るよ!」
後部から乗り込もうとしたミントリガーの肩を掴み静止させる織戸。
「ミントリガー!お前は上だ!あそこがお前の特等席だ!」
織戸が示した先は、車両の天板部分に手すりと身体を固定するハーネスが付いた、本来であれば銃座となる箇所。
「なるほど、自分にピッタリですね」
一跳びで上から乗り込んだミントリガーは、ハーネスを掴み準備を進めながら、静かに笑みを浮かべて納得と称賛の言葉を織戸に伝える。
「お前専用にカスタマイズさせた特別仕様だ!普通思いつかねぇからな、車両の天板から狙撃するとかよ」
「自分は“普通じゃない”のが“強み”なんで」
その言葉を聞いた織戸はわかりやすくガハハハと大笑いをする。
「いいぜそういうの!だから俺らはお前らヒーローをサポートしてぇと思うんだ!」
準備を終えたミントリガーはエメラルドグリーンに彩られたオーラを左手から排出。
不定形であったそれを愛銃に当てた瞬間、重量と質量のある巨大なライフルとなった。
「準備完了しました!いつでも出せます!」
沼上が窓から首だけを出してその場の全員に伝える。
「おし!頼んだぞ!ぶっ壊してもいい、怪我は仕方がねぇ、だが絶対に生きてそいつを返しに来い!でなきゃ俺がお前ら一人一人にアルゼンチンバッー」
織戸が言い終わる前にガンッと出来上がったばかりの対物ライフルを設置したミントリガーは、有無を言わさず発進を促した。
「行けっ!」
「はいっ!!」
勢いよく発進する装甲車両。
読んでくださりありがとうございます。
オリジナル要素として
ミントリガーさん固有技を表現しました。
イメージとしてはHUNTER×HUNTERの念能力の様なモノと言って、伝わる方が果たして何人いらっしゃるのか分かりませんが、わかっていただける事を祈ります。
今回も読んでくださり
本当にありがとうございました。