季節の冷えてきました。
体調を崩されていない事を祈ります。
若干タイトルでネタばらしになっておりますが。
今回は色んな要素が随所に起こって頭がついてこられないと思いますが、誠に申し訳ございません。
今後の展開にとても重要なためそうなっております事をご理解くださいますようお願い申し上げます。
楽しんでくださることを深く祈ります。
⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎
轟くエンジン音と銃声が鳴り響く紋別。
重力に従って地に向かうセイリュウジンを、トリガーが掴み抱え、アーラと距離を取り、瓦礫となったオブジェの側へ移動する。
その動きに合わせてハンドルを切る沼上は、トリガーの近くでブレーキを踏み、横転する勢いで左のタイヤが浮く。
ミントリガーが最後の1発を空へ撃ち、反動で傾いた車体を直す。
ガタンと地に着いた四輪の軍用車は、ピタッと動きを止める。
天板から飛び降り、ライフルを解除したミントリガーは、トリガーに支えられるセイリュウジンを見る。
「セイリュウジン…」
仲間の無惨な姿に言葉を詰まらせるミントリガー。
「嘘でしょ……セイリュウジンさん…セイリュウジンさんっ!!」
運転席のドアを開け放ち飛び出た沼上は、セイリュウジンとトリガーの前で膝をつき項垂れ悲痛な叫びを上げる。
「ぬまちぃ落ち着いて!」
慌てて飛び出した宮村は、沼上を抱き寄せる。
そこへセイリュウジンの片手剣が宙に浮かび、突然光輝いた。
光が晴れたそこに、巨大な頭部と短い手足の存在が、セイリュウジンへと駆け寄っていた。
「なんて無茶をするんだ君は!」
「悪い…きよっぴ…」
『きよっぴ』と呼ばれたまるで着ぐるみの様なフォルムの存在。
清里の豊か自然から産まれたジャガイモの妖精であり、セイリュウジンとおなじく、清里を守護する存在であり、彼の相棒でもある。
先刻までセイリュウジンの振るう片手剣【キャライザー】へと変身し、彼と共に戦っていた。
「油断を誘うとかなんとか言って!騙し討ちなんてらしくない事をするからこうなるんだ!もう喋らないで!今治すから!」
横たわるセイリュウジンの側につき、両手を向けて黄金色のオーラを発する。
「セイリュウジン!」
ガリヤーが駆け寄り、近くに跪く。
「ガリヤーさん…やっぱ…俺…」
咳き込みながら、息も言葉も絶え絶えのセイリュウジンは、仲間に顔を向けて語る。
「ヒーロー助けんのも…ヒーローだと思うんすよね…だから……」
大きく咳き込み、一瞬変身が解けるが、直ぐにまた鎧を纏った姿になる。
「喋らないで!意識を保つことに集中するんだ!」
きよっぴはセイリュウジンに全力で声を掛けるも、それを手を広げて静止させるセイリュウジン。
「護りたかったん…すけど……すんません…怪我しちゃ世話…ないですよね」
「ほんとだよ、だからちゃんと生きて、君が手本を示さないとさ」
挙げられたセイリュウジンの手を握るガリヤー。
「しっかりするんだ、こんなところで倒れる様な君じゃないだろ?」
小刻み頷くセイリュウジンは、次に一歩後ろで見つめているミントリガーに顔を向けて声をかけた。
「ミン…トリガーさん…バトンタッチ…おなしゃっす」
使い切った弾倉を地に落とし、次弾を装填して応えるミントリガー。
「………あぁ、預かるよ」
その言葉を聞き、へへっと声を漏らすセイリュウジン。
続いて背中を支える様に抱えるトリガーへ顔を持ち上げる。
「トリガー…ごめん…」
支える手を震わせながら、セイリュウジンをじっと見つめるトリガー。
セイリュウジンはトリガーに手を伸ばし、トリガーがそれを握る。
「俺も……一緒に…笑顔を…護りたかっ…………」
言葉を紡ぎ終わる前に、力無く項垂れるセイリュウジン。
ピクリともしなくなった彼の変身は解け、人の姿へと戻る。
トリガーは竜人を仰向けに横たわらせ、それに合わせてガリヤーが脈を確認する。
〈マスター、心音が弱まっております。このままでは危険です、適切な治療をしなくてはなりません、対処法を〉
「わかってる!MERU!指示を!」
ガリヤーは声を荒げて相棒に助言を乞う。
悲痛な声を上げる沼上は、地に頭をつけてへたり込む。
トリガーは手を握ったまま、左肩の傷口に手のひらをかざし、光を当てる。
カラータイマーの明滅が徐々に早くなっている事も構わず、自らのエネルギーを竜人に注ぎ込み、出来る対処を必死で行う。
鎧が解けた事により、ダメージが深刻である事が露わとなった竜人。
貫かれた肩にはアーラの爪が刺さったまま。
引き抜いてしまうと開いた傷口からは多量に血液が流れてしまう事を考え、宮村が服を千切り患部に当てる。
傷口からは黄金色の粒子に混じって血液が滴り、徐々に千切った布を赤く染め、地面に血溜まりを作っている。
各々が人命救助に尽力する最中。
まるで状況に合わせたかの如く、青空が見えていた空が、どんよりとした曇り空となり、辺りに影を落とす。
苦しみもがきつつも、倒れた竜人に迫ろうとするアーラを、必死で抑えるドラゴンとパラディン。
「押し負けているぞパラディン!もっと踏ん張れ!こいつを離すんだ!」
しかし流石のヒーローの力でも、3倍以上する質量のアーラを押さえつけきれずにいる。
「クソがッ!他人のこと言えんのかよ!!お前も気張れや!!」
言葉を荒げ、仲間に八つ当たりしながらも、シールドの殴打と剣戟でアーラに攻撃するパラディン。
どんなに力強い猛攻でも、錯乱と怒りで麻痺しているアーラを止める事は出来ず、絶体絶命であった。
その刹那。
何もない空間に一つの斬撃が現れ、アーラを大きく後退させる。
突然後方へと下がったアーラの動きに対し、前のめり気味にバランスを崩しかけるヒーロー。
何が起こったのか理解できていない一同の中心地に、白い何かが上方から跳んで来た。
それは真っ白い毛並みを逆立たせた、大型の狼。
それがアーラを一点に睨みつけ、犬歯を露わにし、喉を鳴らして威嚇している。
突然の刻まれた大きな斬撃跡で我に帰るアーラは、麻痺して忘れかけていた額に生じる痛みのあまり、手で抑える。
疼き始めた痛みに焦り、現れた狼を睨みつける。
狼はアーラへ向かい、右側を回り込む様に走る。
狼を目で追うアーラは、前脚で刺そうと身構えるが、突然強風が吹き、巨体を煽られる。
アーラは踏ん張りバランスを保とうとするところ、更に突然全身が炎に包まれていく。
炎に驚くアーラは必死に振り払おうとする。
狼は飛びかかり、一回転して何か見えない攻撃をアーラへ叩き込んだ。
アーラは堪えきれずバランスを崩し倒れた。
「え?なんだ?」
ガリヤーは一連の流れを目の端に捉えていたが、アーラのズシリと重い体躯が横転で生じた地響きに驚き、顔ごと目を向けた。
「白い狼?」
先の衝撃音を耳にし、俯いていた顔を上げ振り向いた沼上は、走ってくる乱入者を見て呟く。
狼は、オブジェの近くに止まり、その場にいる一人一人の顔を見回す。
お座りの姿勢になった狼は、比較的友好的な印象で、一同に向け「ワンワン」と吠えた。
最も近くにいた沼上が狼に近づき、無意識に手を伸ばし触る。
舌を出し、尻尾を振り、全く敵意を感じさせない仕草。
先刻までの威嚇行動が嘘の様に、ぽやぽやとしたなんとも言えない安心感を感じた沼上。
「君、助けに来てくれたの?」
狼に尋ねる沼上。
その時、突然眩い光が天から辺りを照らし出す。
雲が不自然に薄れていき、曇天模様はたちまち雲ひとつない晴天となった。
太陽の光も暖かかく、煌々と辺りを照らし。
昼を過ぎて正午に向かおうとしている時間帯に、まるで朝焼けの様な清々しく優しい陽射しが、その場にいる全てを包み込みはじめた。
狼は姿勢を正し立ち上がり、首を天に向け、大きく遠吠えをする。
すると、辺り一面に暖かい春の陽気が広がると共に、破壊されたオブジェを中心にして、色とりどりの草花が瞬時に生い茂り咲き誇る。
それらはあり得ない事に、とてつもない勢いで広がっていく。
「え?花?草!?」
咲いた花は、スポーツ観戦の観客が行う“ウェーブ”の様に走り抜けるが如くその場にいる人間を抜け、芝生を作っていく。
空気が一変し、あたかも最初からそうだったかの如く、芝生は風に揺られている。
「おいおい、どうなってんだこれ、全く頭追いつかねぇぞ。なんなんだよあのワンコロは!」
突然の乱入と立て続けの不可思議現象に頭を抱えるパラディン。
「少なくとも敵ではないのだろう。しかし最も妙なのはそこより、あの狼から感じる気配だ、私達に似た気配。全く同じではないが、太陽を感じる…」
仲間の興奮に相反して、冷静に分析するドラゴン。
その場にいた全員が、生えたばかりの芝生を触り、踏み締め、幻ではない事を実感する。
「なにこれ…なんでこんなに暖かいの?もう冬だよ?」
10度台だった気温で、吐く息も白かった空気も、まるで春も半ばと言わんばかりに優しい暖かさを醸し出す。
そんな信じられない光景が続く中、オブジェに寄りかかっていたライジングは、見事に花に包まれていた。
ハッとなったライジングは必死でそれらを掻き分け、スッと立ち上がる。
先ほどまでの疲労感は嘘の様に薄れて、すんなり立ててしまった事に違和感を覚えつつも。
辺りを見渡し状況把握をするライジングの目には、驚く程一面緑色と化した草原の景色が広がっていた。
しかし彼にとってはそれよりも、“最も”驚く事が“最も”近くで起こっていた。
「オブジェが…直ってる!?」
ライジングとガリヤーが激突し、無惨な瓦礫となったカニの爪オブジェ。
それが今まさに元通りとなって、大きく立ち、爪の先を天に向けている。
今までもあった圧倒的で巨大な存在感に、更に今は後光が射し、気高さすらも感じる町の象徴が、ここに復活したのだった。
目まぐるしい超現象が起こる最中、必死に竜人の治癒に専念していたきよっぴ。
しかし彼にも、手を止めさせてしまう事象が目の前で観測される。
突然淡く輝く竜人。
傷口から漏れ出ていた血液と粒子もピタリと止まり、竜人の全身を不思議な黄金色の膜が包む。
「血が………傷が塞がってる…」
薄く眼を開き、竜人の口から漏れ出る。
「竜人!?」
突然耳に入る、倒れていた仲間の声に、ガリヤーは驚く。
覚醒して咳き込む竜人は、口の中にあった血を吐き出し、薄目で周りを見渡す。
「俺…なにが」
絶えず現象が続く中、ミントリガーは乱入してきた狼をじっと見つめる。
(あの隈取と背中の燃える盾?……どこか見覚えがある…か?)
白い狼の毛並みには、燃える炎の様な隈取模様と、背中には丸い盾の様なモノがついており、そこからメラメラと火が揺らめいている。
しかし周りの反応を見る限り、少なくとも沼上と宮村、おそらくガリヤーも、一目で異質だとわかるハズの印象に一切触れていない。
そしてその特異な姿に、何かで見た記憶がある事と、それに関連した何かに引っかかって思出せず、静かに思案するミントリガー。
「ま…じか…ヤバイぜありゃ」
何かに動揺する仲間の様子に疑問に感じたミントリガーが声をかける。
「どうしたライジング?」
「アマテラス!!あれアマテラスだ!!」
不思議そうに首を傾げてみせるミントリガー。
それに対してライジングは訴える。
「ゲームキャラだよ!アレは「大神-おおかみ-」ってゲームに出てくる主人公!アマテラスだ!!」
そう聞いたミントリガーは2つの事を思い出す。
自分も『アマテラス』と呼ばれた隈取模様を身に宿した白い狼を知っていた事。
そして状況を鑑み、ケンゴがこの世界に来る前に接触したされる大型の白い犬の事。
ミントリガーの中で、点と点が繋がった瞬間だった。
「間違いないか!?」
ライジングに問いかけるミントリガー。
「俺は太陽戦士だぜ?太陽にまつわる事を知らないわけないだろ?
あの狼からは、俺達と同じ…とまでは言わないけど、太陽を感じる。それにあのメーカーのゲームキャラを見間違える事なんか、有り得ないぜ」
ライジングはある日を境に、とあるメーカーのゲームにご執心となり、それらを元に新技や戦法を編み出す等、極まった末の柔軟な多様性を獲得していた。
ミントリガーもそのゲーム自体を遊んだことはないものの、プレイ画面を側で見ていた事もあり、記憶の片隅にあった。
「わかった、参考にするよ」
モヤモヤしていた気持ちが消え、警戒を広げていた神経を、横転して再び立ちあがろうとするアーラに絞り、愛銃をくるりと回して構えて視野を広げ全体を見据える。
一方ガリヤーにも事件が発生。
〈マスター。異変発生です〉
通信機から聞こえるビープ音と振動に反応するガリヤー。
「異変ならずっと起きてるよ!?」
ガリヤーの反応に構わず人工知能のMERUは続ける。
〈体内より謎のエネルギーが発現。エネルギー源が移動します〉
そう告げた瞬間、ガリヤーの胸から“赤い光源”が現れ、ゆらゆらと淡い輝きを放ちながら揺蕩っている。
「ん?なんだこれ!?」
〈計測不能。未知のエネルギーですが、危険は一切感じられません〉
赤い光源はゆっくりとトリガーへと近づき。
明滅する菱形のカラータイマーへ潜り込む様に消える。
「赤い光が…トリガーに」
ガリヤーは自分の胸に手を当て、疑問を口にする。
「どうして、僕の中から」
〈申し訳ございませんマスター。適切な返答が思いつきません〉
「あぁ…うん…そうだね」
戸惑いつつ、不思議そうにトリガーを見つめるガリヤー。
トリガーはカラータイマーに手を当てる。
◇トリガーインナースペース◇
精神世界にいるケンゴの目の前に、強く赤色の光を放つ光源が現れた。
「赤い…光…」
それを目にしたケンゴは、何か懐かしい感覚を感じていた。
「まさか!?」
直感で腰にマウントされたブランクキーを一つ手にするケンゴ。
光は彼の手に握られたブランクキーに吸い寄せられる様に動き、接触した瞬間に熱気を感じる程の強い光を発する。
思わず目を瞑りそうになったが、ケンゴは何とかその光を見つめる。
やがて光は晴れ、手のひらを確認。
そこには馴染みのある赤い色のGUTSハイパーキー。
【トリガーパワータイプのGUTSハイパーキー】
があった。
不思議そうに見つめるケンゴ。
次の瞬間、キーから見覚えのない記憶の断片が脳裏に映し出される。
それは自分ではない誰かの目線で進行された。
見知らぬ子供達と笑顔で遊ぶ。
その子供達はこっちを向いて「パパ」と呼んでくる。
エンガイザーの3人と竜人と話している。
何かからかわれているようで、それに呼応して楽しそうに組み合う。
沼上、パラディンと会議らしき事をしている。
会議中に首をかくつかせる竜人の肩を揺すり、びっくりした竜人の変顔に手を叩いて笑っている。
セイリュウジンとケンゴが2人並び、セイリュウジンはケンゴを押し付けて厨房へと逃げていく。
会場のテーブルに座るケンゴにカレーを運び困惑させている。
ケンゴを含めた、たくさんの人々の笑顔を配膳しながら見て回り、胸の奥で温かいモノを感じている。
職員の大切な仲間達と共に、市民の避難誘導している。
ヒーロー達と共にアーラと戦っている。
戦う仲間の中には、トリガーがいた。
ケンゴは気づいた。
「コレは、ガリヤーが見てきた光景だったんだ」
ケンゴは知った。
彼が何を目指し、何を想い、今日と言う日だけでなく、何のために戦っていたのか。
「そうだったんだ…ガリヤーの…彼の中に僕の光がいたんだ。けど…」
どうして?
疑問が浮かんだが、それを振り払うケンゴ。
「考えるのは後だ!」
そう、今この状況で、ケンゴが最も欲していた力が戻ってきた事。
それ以上に勝る事実は、今この瞬間は重要ではないと、全ての疑念を振り払う。
ケンゴはGUTSハイパーキーのスイッチを押す。
〈Ultraman Trigger -Power Type-〉
問題なく作動する事を確認。
それとともに今までとは違って、掌から何かを感じる。
それは新たに芽生えた仲間の、今日に至るまでの想いと決意。
それらと共に握りしめ、ケンゴは言う。
「伝わってくる。ガリヤー、君の想いと一緒に…行くよっ!」
キーをグリップエンドに挿入。
〈Boot Up “Deracium”〉
スパークレンスを前へ突き出したケンゴ。
その動作と想いに呼応するが如く、彼の精神世界であるインナースペースは、炎の様な赤いオーラが周囲を包む。
「勝利を掴む、剛力の光!!」
スパークレンスを引き寄せ
「ウルトラマンッ…トリガアアアアアアアアアア!!!!!」
高々と掲げ叫ぶ。
⬜︎カニの爪オブジェ付近⬜︎
立ち上がったアーラは、再び怒りに自我を失った様に襲いかかる。
それを2人のヒーローが盾を構えて抑えるが、やはり馬力が違うせいで、押し負け徐々に下がっていく。
「相変わらずの馬鹿力がっ!!」
「踏ん張るんだ!私達が下がったら!総崩れだぞ!」
左右にアーラに向かい合い押し合いをするパラディンとドラゴン。
その間に、ピコンピコンと例の音を鳴らして割って入るヒーローの姿を見る。
「「トリガー!?」」
トリガーはアーラの正面に立ち、両手で蜘蛛の上顎と下顎を掴んで押さえつけようとする。
「ムダヨ!!アンダナンガニィ!」
虚をつかれ、意識を多少戻したアーラだったが、トリガーの力が及ばない事は充分に理解していたため、敵を嘲笑し始めた。
しかしその認識は、カラータイマーの音が止むと同時にトリガーの目に見える変化によって、大きく覆された。
弱体化していたはずのトリガーの力がより一層増し、メリメリと甲殻にヒビが入っていく音が聞こえたアーラ。
「ハ?」
アーラは真正面に立つ銀色の戦士に主眼と複眼の全ての焦点を向けた。
トリガーの全身が赤く変わって行く。
「赤いトリガー!?」
ドラゴンがその姿を見て呟く。
銀と赤と紫の鮮やかな色彩で彩られていたトリガーは、ボディが赤く変わり。
金色だった胸と腕部のプロテクターと頭部の飾りが虹色に輝き、形状を変えて行く。
両肩を覆っていたプロテクターは襷掛けの様なスタイルに変わり、胸部、背部、上腕部が一回り太く逞しくなる。
籠手のように覆っていた腕部はコンパクトな腕輪となり、強靭な腕が鋼の様に白銀に輝く。
流線型で後方に向いていた頭部の角は、まるで斧の様な形状の鶏冠となり、スマートな顎と首のラインも、太く引き締まったスタイルへと変わった。
「おいおいまさか、パワータイプかよ!!」
パラディンからは再び歓喜の声。
トリガーは相手を掴む拳へ更に力を込め、上顎と下顎を一時的に開き、強制的に勢いよく閉じる。
ぶつかり合った顎と硬い外殻は軋み砕け、グシャリと蜘蛛の頭部は潰れる。
トリガーはおもむろに掴んだまま上半身を後ろに逸らし、アーラを持ち上げ、ジャイアントスイングの要領で振り回す。
「ナンナノヨオオオオオオオオ!!!」
情けない声を漏らすアーラを5回転半振り回した後、トリガーは勢いよく投げ飛ばした。
およそ10数m投げ飛ばされたアーラは、逆さまにひっくり返り、蜘蛛の脚を天に向けた状態でジタバタと動めく。
何か咆哮と罵声を発しているが、蜘蛛の体躯から生えた状態の本体は、下敷き状態で身動きと状況把握がうまく出来ていない。
トリガーは、開いた両拳を握り直して姿勢を正し。その場にいる仲間の一人一人に顔を向け、頷いて見せる。
「ぬまちぃ…」
トリガーの変異と圧倒的な剛力を見せられた宮村は、沼上へ尋ねる。
「トリガーってフォームチェンジ出来んの!?」
呆気に取られていた沼上だったが、宮村の言葉に意識を取り戻し、言葉を返した。
「正確にはタイプチェンジ…赤になったり紫になったり…色によって能力も変わって、赤は力が強くなって、紫になったら飛行能力と俊敏性が上がるの」
簡潔に“ウルトラマントリガー”と言うヒーローの特徴を言葉にする沼上。
その説明を聞いた宮村は、朧げだった記憶を呼び覚まし、気付かされる。
形態を変えると共に戦闘スタイルが変わる。
宮村は唯一知っているウルトラマンについて口にした。
「それってまるで…ティガじゃん!!」
宮村を見る事なく、戦場に立つトリガーの姿を目に焼き付ける様に涙を滲ませながら見つめる沼上は、静かに頷く。
「そう、トリガーはティガの劇場版を元に設定を流用して出来たウルトラマン。だけどティガとは全く違う、もう1人のウルトラマンなの」
戸惑い、混乱しながらも、胸の奥から熱いモノを積もらせる宮村と沼上。
宮村自身、特撮番組を全く観ていない訳ではなかったが、ジャンルの違う他のヒーローを中心に観て育った。
特撮界隈で良く使われる単語「フォームチェンジ」は知っていても「タイプチェンジ」が頭になかった。
ウルトラマンと言う存在を良く知らなかったがために、現実感が感じられていなかった宮村だったが。ここに来て記憶が鮮明に甦り、ウルトラマンの存在を肌で感じたのだった。
「トリガーって…いったい……」
セイリュウジンこと神池 竜人もまた、トリガーの姿を凝視し、幼い頃の薄れていた記憶を呼び起こされていた。
とあるショーに行った際、2人のウルトラマンと写真を撮った記憶。
それが今でも形として残り、大切に保管されている事。
幼き日の彼と一緒に撮ったウルトラマン、それは
『ウルトラの父』と
その息子である『ウルトラマンタロウ』
大好きだった架空のヒーローの側に、幼き日の自分が一緒に写り、笑顔で喜びを表している姿。
その後成長した彼は、今では自らが本当のヒーローとなり、誰かの側に並び、笑顔を向けられる様になった。
忘れていた訳ではない、あの時の気持ちと想いを、再び手繰り寄せられた竜人。
「やっぱ赤いウルトラマンって…なまらかっけぇ……」
竜人は安堵と満足感を抱きながら、笑顔のまま目を閉じ、健やかな眠りについた。
読んでくださりありがとうございます。
今回は登場するキャラクターの想いや心情などを頑張って書きました。
本当に拙く文才もない私ですが、伝わっていると願います。
次回でこの紋別編も一旦完結します。
お時間があれば次回もどうぞ読んでみて下さい。