マナカケンゴの休日   作:LeeMinwoo

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思った以上に読んでいただいている事に驚いております。

個人的に絶対読んでいただけないと思っていたので、とても感謝し

励みになります。




第6話 『信じられる笑顔』

 

 

 

北見市

 

北海道の東部に位置する

 

ここには豊かな自然が溢れる土地であり、マナカ・ケンゴはその中心地にて

 

ウルトラマントリガーの姿のまま

 

ボーッとルルイエの入ったリュックを、胸の前に背負いながら、

避難誘導される市民に手を振り続けて立っていた。

 

「トリガー、大丈夫か?」

 

その問いかけにビクッと大袈裟な反応をするが、どうにも今のトリガーは全てに対して身構えてしまう。

 

未だ数々の出来事に対して情報の処理が追いついてない状態だった。

 

「だいぶ混乱しているだろう」

 

連続で首を縦に振り頷くトリガー。

 

それを見て噴き出すミントリガーは口元をおさえて、ぷるぷると震える。

 

彼からすれば、目の前の存在は「空想特撮ドラマ」の主人公でありヒーローそのもの。

映像でもイベントでもイメージとしては

 

“凛々しく”

 

“神々しく”

 

そして

 

“毅然とした姿勢”

 

が脳内に定着していた。

 

しかし今のトリガーは、リュックを前に背負って放心状態。

動きも中身が完全に劇中で観ていた“マナカ・ケンゴ”そのものだったのだ。

 

貴重な瞬間を見ている自覚はあるが。

 

「トリガーがそんな格好でそんな動きすんなよ…」

 

うっかり感想が漏れ出てしまうミントリガーは肩を揺らすほどツボにハマっている。

 

その感想に首を傾げるトリガー。

 

更に噴き出てしまう。

 

小さく「やめとけよ…おなかいたい」と口と共に腹部をおさえるミントリガー。

 

「ミントリガー!」

 

そんな中、防護服を纏った職員が駆け足で近づいて来る。

 

「お疲れ様です!これより周辺の再調査の後、清掃班による改修作業に移行していきます」

 

「わかりました、お手伝いをしたい所ですが、今日は優先度の高い報告がありますので、僕は彼と一緒に失礼します」

 

「そうですね、よろしくお願いします。こちらは任せて下さい」

 

職員もあらかた察している様子で、すんなり飲み込んでいる。

 

「ところで…気になってたんですが」

 

職員はトリガーを見てふと思った疑問を口にする。

 

「トリガーって活動時間3分でししたよね?やっぱりあれは…あってないような設定扱いなんでしょうかね?」

 

職員の言ってる事は

テレビシリーズに設定された“3分間”という活動時間に対して、明らかにオーバーしているのにも関わらず、活動を続けている描写の事を指しているのだろう。

 

撮影構成場の諸事情と言ってしまえばそれまでだが。

現実問題、彼らの前には「空想特撮」の象徴そのものが、3分以上経過しながらも、目の前に立っている。

 

素朴な疑問を感じるのも頷けるが、他の理由があると察したミントリガーは、自分なりの解釈を述べる。

 

「どうでしょうね、色んな事情があるとは思いますけど。コンパクトになった分、エネルギーの消費効率が緩やかだと考えれば」

 

「ああ!!なるほど!!本来の大きさを維持するのに3分だとして…今の状態なら!!たしかにそれなら納得できます!!報告書の参考にさせて頂いて良いですか?」

 

まるで目から鱗だったかの様に興奮する職員。

 

「僕なんかの見解で良いならどうぞ」

 

なんの話しをしているのか大いについていけない話題の主人公は、未だ首を傾げてしまっていた。

 

そこへ職員がトリガーへと向き直ると、トリガーもそれに気づき、シャキッいつもの体制をとる。

 

「改めましてトリガー、町と市民を護って下さり、僭越ながら私から感謝を述べさせて頂きます。本当にありがとうございました」

 

深々と一例をする職員。

 

今日だけでたくさんの人々に感謝された。

 

この町はどうしてこんなにも自分を受け入れてくれているのか

 

その“好意的すぎる好意”に違和感を拭えずにいたトリガーだった。

 

「お2人はこの後どう移動されるんですか?」

 

職員が2人に質問する。

 

それに答えたのはミントリガーだった。

 

「このまま飛んでいくつもりです。ゲートを使ったら、避難中の市民や職員に迷惑と混乱を招いてしまいそうですし」

 

ゲート

北海道は広い。

ミントリガーや各地のヒーローと市民を安全に誘導するため。

地下に「空間転移ゲート」が各所へと点在する。

 

このシステムが導入されているのは唯一北海道のみ。

 

避難誘導の真っ最中のゲートにヒーロー2人が現れたとし、

そのうえ片方は“貴重な本物”

瞬く間に“市民”から“ファン”へと早替わりしてしまう群集の事を示唆していたミントリガーだった。

 

「確かにそうですね。では、そちらの花は私達の方で預かり、本部に移送致しましょう」

 

花と言われて咄嗟にリュックをぐっと掴み、身構えるトリガー。

 

また噴き出してしまうミントリガーだったが、今度はすぐに立て直す。

 

「さっきも言ったが、これから俺と君は飛んで移動するんだ。それを背負って飛ぶのは、俺たちは良いかもしれないけど、ルルイエには良くないと思うんだ」

 

そう言われてハッとするトリガー。

 

「お預かりして、安全に移送しますので、どうか任せて下さい」

 

「職員の方もこの様に言ってるんだ、任せてもらえないかな?」

 

そう言われて、身構えて過ぎて疑心暗鬼になっていた自分に気がついたトリガー。

 

ゆっくりリュックを肩から外し、職員へと渡す。

 

職員もそれを丁寧に受け取り。

 

「では後ほど。私は先にこの子を輸送班に手渡して来ます。細心の注意を払えと念を押しておきますので、安心して、気をつけて本部に向かって下さい」

 

首から上だけで深く前に傾け一礼をする仕草と、ルルイエに対して「この子」と呼んでくれている事に、今になってこの人達なら預けても大丈夫だと感じた。

 

トリガーは、深く一礼する。

 

 

 

⬜︎上空⬜︎

 

 

ミントリガーとトリガーは上空3000mの高度を維持して、本部と呼ばれる“北見市役所”へと向かっていた。

 

約5分程飛んだ末に、ミントリガーがトリガーに向かって指を下に向ける。

 

地上に降りた2人。

 

「トリガー」

 

呼ばれて振り向く。

 

「もう、変身を解いてくれていいぞ」

 

頷くトリガーは、変身を解く。

 

 

◇十数分前◇

 

大観衆から「スマイルスマイル」と言われた後の事

しばらく喝采は鳴り止む事はなかったが、そんな中ミントリガーは耳元でひそひそとケンゴに

 

「まだしばらく変身は解かずにいてくれ、マナカ・ケンゴ」

 

みんな自分の正体にまるで勘付いてるのか?

いやそんなはずはないと

どこかで否定し続けてきた。

 

今までは、しかし今は

 

明確に人間の時の自分の名を呼んだミントリガー。

思い返せばさっきも呼ばれた。

疑い、構えようとも考えたが、直ぐにそれを中止する。

 

ミントリガーの表情

 

それは

 

とても強く

 

慈愛に満ちた

 

ケンゴにとっての理想の笑顔だと

 

感じたからだった

 

 

⬜︎北見市役所前⬜︎

 

 

包まれた光が空気に溶ける様に消えると、そこに現れたのはマナカ・ケンゴだった。

 

 

ミントリガーは思った

 

間違いない

 

何度も観た姿だ

 

どこか頼りなくも

 

誰よりも優しく

 

誰よりも笑顔を大事にし

 

最後まで笑顔を

 

どんな相手でも笑顔にしたい

 

その思いを胸に世界を救った

 

その漢が目の前にいる

 

「改めて実感したよ」

 

ミントリガーは一度空を見上げて、ケンゴに向き直って言う。

 

「俺は今日、ウルトラマントリガーに、マナカ・ケンゴに出会った」

 

「うん、改めまして」

 

目を閉じていたケンゴはゆっくりと目を見開き。

 

「はじめましてミントリガー、マナカ・ケンゴ、ウルトラマントリガーです」

 

一緒に戦った新しい仲間へ

 

笑顔を向けた

 

 

⬜︎市役所内エントランスホール⬜︎

 

 

「おかえりミントリガー」

 

入り口にはスーツを着た男性が立っていた。

 

「ただいま戻りました、市長」

 

え?市長?と驚くケンゴ

 

「は、はじめまして、マナカ・ケンゴです」

 

「マナカさん、ありがとう!町を、市民を救ってくれて!」

 

手を差し出されて、咄嗟にその手を掴んだケンゴは、市長と握手をする。

 

「私が市長の」

 

「ミントリガアアアアアアアアアア!!!!!」

 

自己紹介をしようとした市長

 

しかしそれは、甲高く絶叫にも似た声で走ってくる、白衣を着た女性のせいで

見事に掻き消された。

 

綺麗なまるでスプリンターかの様なフォームで駆けてきた彼女は、ミントリガーに掴みかかる。

 

「ウルトラマンが現れたと伺いました!!!どこですか!!!!」

 

「お!落ち着いて下さい蛇崩さん!そこにいます!」

 

「そこ!?どこですか!?」

 

周りを見渡す『蛇崩-じゃくずれ-』と呼ばれた女性。

 

「いないじゃないですか!!どこを見ても銀色の顔面が見当たりませんよ!?」

 

「そこにいるでしょう!彼がウルトラマントリガー!マナカ・ケンゴです!」

 

「は?ふざけてるんですか?私を謀ろうとしてるんですか?そうですよね?羽をば全部むしり候へましょうか?」

 

「ちょっと待ってなにそれ怖いんだけど?」

 

「あんなゆるふわな顔のくせに筋肉質な彼がウルトラマンなわけないでしょうが!!映像観たんですよ!?出しなさい!!銀色を!!」

 

「あんた人とウルトラマンを顔の色で区別してないか!?」

 

とてつもないパワーを全力投球する蛇崩とミントリガーの受け答えを唖然としながら眺めるケンゴ

 

「すみません、ちょっと通りますねぇ」

 

そして端から姿を見せたのはパーマにびんぞこの様なメガネをかけた白衣の男性がスタンガンを持って現れる。

 

そしてそのスタンガンを蛇崩目掛けて押し当てる。

 

「んああああああああ!!!!」

 

変な叫び声を上げて白目を剥く蛇崩。

 

そのまま近くに控えていた同じ白衣の2人に指で指示を出す男性。おとなしくなった蛇崩はキャスター付きの椅子に拘束されてそのまま運ばれて行った。

 

「すみません、うちの上長ある日を境にほんと見境なくなっちゃって、お騒がせしました。あ、おやきありますけど、一つど〜ぞ〜」

 

白衣のポケットから紙袋を取り出し中から一つ丸い焼き菓子をケンゴに渡す。

何故か焼きたての様にほかほかで煙も出ているのだった。

 

「ようこそマナカ・ケンゴさん、僕は鳥獣保護研究所所属、副主任の『渦巻-うずまき-』と申します。あ、ちなみにさっき連行されたのは主任の蛇崩です、どっちも珍しい苗字なんで覚えていって頂けるとうれしいかなぁ〜なんて思ってます」

 

「は、はい、こちらこそ…ん!?これ美味しい!!」

 

気圧されながらもおやきを口にするケンゴ

 

「ですよねぇ〜?これ実はすぐそこで売ってるんですよ、たまぁ〜にトラックが来て焼いてくれるんです」

 

オホンッと咳払いをする市長。

 

それに注目する一同。

 

「とりあえず疲れただろうし、ミントリガー、マナカさんを休ませてあげなさい。諸々手続きなどはこっちでやるから」

 

「わかりました」

 

市長の指示にミントリガーは応える。

 

「改めまして、マナカさん」

 

深く一礼をした市長。

 

「市長の『天城-あまぎ-』です、何かあれば、すぐ申しつけて下さい、滞在中のサポートはしっかりさせて頂きます」

 

「あ、あの…じゃあ」

 

ケンゴは意を決して聞くことにした。

 

「TPU本部と連絡を取りたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

その要望を聞いて、天城は申し訳なさそうに応える。

 

「そうしたいのは山々ですが、現状そのご要望に応えるのは、極めて困難です」

 

「え?」

 

まさか断られるとは思ってなかったため、驚愕するケンゴ。

 

「市長、そこから先は自分が説明します」

 

説明をしようと口を開きかけた天城を制したのは、ミントリガーだった。

 

「自分が連れてきた訳ですし、その役目は自分だと自負してます、お願いします」

 

市長に近づき頭を下げるミントリガー。

それに対して静かに頷く天城。

 

ミントリガーは断られた事に不安が募るケンゴに向き直る。

 

「ちゃんと話す、驚いてもいい、疑ってくれてもいい、けど出来れば、最後まで話を聞いてほしい」

 

ミントリガーはケンゴへ深く一礼する。

 

「わかった…何か理由がありそうだね」

 

「マナカ・ケンゴさん」

 

ケンゴは呼ばれた天城を見る。

 

「話す前なので詳しくは言えないが、これだけは言わせて欲しい。帰還をご所望ならば、私達は全力を持って協力致します。何としてでも、必ず」

 

天城はケンゴの目をしっかりと見て、優しくも明瞭良く、一言一言を丁寧に伝える。

 

その真意の先には、まだ何も見えていない事に不安は残るが、深く頷き、これを承諾する。

 

その姿を見て、優しく微笑む天城。

 

「あ、じゃあこれは聞いてもいいですか?」

 

「お答えできる事はちゃんと答えます、どうぞ」

 

変わらず笑顔を向ける天城

 

「どうして皆さんは、僕をそんなに受け入れてくれるんですか?初めて会ったばかりなのに」

 

ざわつく

 

そこに咳払いを一回する天城

 

「そうですね、それにはお答え出来ます。私達は“貴方がウルトラマンである事を、貴方に会う以前から知っている”からです」

 

「え!?」

 

「詳しい理由はミントリガーからしてもらえると思うので、一例として」

 

スタスタと受付のカウンターに向かう天城。

 

座っている受付嬢の1人に向かって

 

「君は確かウルトラマンの中でトリガーが好きだと聞いた記憶があるんだけど。確か鞄に缶バッジをつけていなかったかな??」

 

悲鳴に近い声を出す受付嬢

 

「なんで知ってるんですか市長…セクハラですよ!」

 

「え!?そうなの!?」

 

その様子をずっと笑顔を崩さず見つめていたスーツの男性が天城の元へと近づく。

 

「市長、よろしいですか?」

 

「ねぇ、私の発言ってセクハラ??」

 

「大丈夫です市長、セクハラではありませんが……」

 

満面の笑みで男性はこう言う。

 

「危ういです」

 

「危うい!?」

 

危ういと発言した男性は懐から名刺入れを取り出し、ケンゴへと近づく。

 

「申し遅れましたマナカ様、わたくし、市長の秘書をしております『愛宕屋-あたごや-』と申します。何かございましたら、ミントリガーかわたくしに申しつけ下さい」

 

名刺の連絡先を指差しながら説明する愛宕屋は、近くにいたミントリガーへと、ケンゴに向けた笑顔と同じ表情で声をかける。

 

「ミントリガー、私達は次のスケジュールもありますので、あとは任せますね」

 

「はい、承りました、愛宕屋さん」

 

丁寧な返事をするミントリガー。

 

「では、失礼致します」

 

2人の位置から離れ、天城の元への近づき、背中を押しながらその場から離れる愛宕屋。

 

「愛宕屋くん…危ういってなに?」

 

「んふー、危ういです」

 

「だから!危ういって!?」

 

変な空気が流れる。

 

ミントリガーは受付嬢の方へと向かい、ケンゴの方へと声をかける。

 

「ケンゴ、とりあえず申し訳ないけど…彼女にサインしてもらってもいいかな」

 

またも変な声を出してしまう受付嬢だった。




読んで下さり誠にありがとうございます。

今回職員の方々の名前が出ました。

名前で気づいた方がいたら凄いのですが。

全員とある方のコントや舞台の登場人物の名前を拝借しております。

わかる方がいらしたら、是非コメントをどうぞ。
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