ご容赦下さい。
⬜︎謎の空間⬜︎
重々しい音を鳴らしながら開かれる大きな両開きの門の様な物から
単眼に赤目、顔を完璧に覆い、フード付きの黒いコートを纏った。ジゼルが現れる。
「おいジゼルッ!!」
ジゼルを呼んだのは。
逆立った黄色い髪に口元には赤と金の装飾をほどこし、獣の顎を模したメタリックなマスクと鋭くも白い目が特徴の、いかにも荒々しそうな印象を持つ男が
ジゼルに向かって怒号に近い声で彼の名前を叫ぶ。
「見てたゼェ〜ジゼルぅ〜、強そうなやつ見つけてんじゃんか」
「………」
目を合わせず黙りこくるジゼル
「けど殺り損ねてたなぁ、俺様だったら一発で終わってたぜぇ?あんな白いやつ」
「次は」
「あぁ〜あぁ〜あぁ〜、そうはいかねぇよ、次は俺様だ」
ジゼルの言葉を遮る
「こう言う時に使うんだってなぁ「弁えろ」って言葉をよぉ〜」
「ズゾロ」
「様をつけろ『downer-ダウナー-』が!!!」
『ズゾロ』と呼び捨てにされた事に腹を立て声を荒げる。
ズゾロは舐め回すかのようにジゼルを見下す。
「いくらお前がザザリ様のお気に入りだからってなぁ、所詮は俺様みたいな【upper-アッパー-】と同じ目線にはなれねんだよ」
upperとdowner
彼らの階級を表す様な共通認識
上流階級と下級に当たる表現にあたる
「ボンボンの小倅が」
「あん?てめいまなんつった?」
「実力もないのに喚かないで下さいよ、こっちまで頭が悪くなりそうです、そういう時は目線ではなくて、立場と言うんですよ能無が」
ぷるぷると震えながらジゼルを睨むズゾロ
「あぁ〜」
口元を抑えて驚いたフリをするジゼルは顔をズゾロに近づけて小声で言う
「ついに耳まで悪くなったか?救いようがねぇなぁ」
ケラケラと笑うジゼル
拳を振り下ろそうとしたズゾロ
「やめろ2人とも」
2人の間を割って入る存在がいた。
「仲間同士で争って何になる」
「ザザリ様…」
静止した女性を見るジゼルが、彼女の名前を口にする。
大きく楕円形の黄色い瞳にシンプルなマスクをした女性
『ザザリ』はチャイナドレスの様な衣装に身を固めカツカツと金属音の響くピンヒールの音を鳴らしながら歩く。
「ジゼル、報告を」
ザザリは玉座の様な椅子に座りジゼルに尋ねる。
「現地の有力者らしき人物を見つけ“使用”する算段でしたが、残念ながら見込み違いの腰抜けどもでした」
「なるほど…期待はずれだったわけか…上手くいけば使ってやるモノを…残念だな」
ザザリは心底残念そうにぼやく。
「今回の“略奪”はそっち方面ではうまくいかなそうだねぇ〜」
“利用”ではなく“使用”と表現した事からも、集団の倫理観は常軌を逸していると受け取られてもおかしくない中、間延びした声で次に現れたのは、小柄な白い服に顔が獣か鬼の様な怪人と
白い服装で女性らしいが顔に歪な5つの眼と口の端から牙らしきモノが生えている怪人の2人
「遅いぞ、アーラ、エレ」
「ごめんねぇ〜ザザリさまぁ〜」
軽口を叩いたのが『エレ』
「アーラがご飯の時間だったから、ほら、うちの姉は食べないと暴れ出すからさ」
「………」
ぎょろぎょろと眼を動かしながら黙る『アーラ』
「まぁ良い、ズゾロ」
「おう!」
「次はお前が行け」
「流石はザザリ様!!わかってんじゃんかああああ!!!!」
辺りに広がる絶叫に近い声を上げて直様豪快に笑うズゾロ。
その場にいる全員を不快にさせる程、煩わしい騒音だった。
⬜︎メディカルラボ⬜︎
採血の後予防接種を受けるケンゴ。
「これって何か意味あるんですか?」
「採血は単純に僕らの為でもあるし、予防接種は間違いなくケンゴくんの為だよ」
ケンゴの疑問に対し、何も誤魔化す事もなく正直に答える渦巻。
それを聞いてもピンと来ないまま首を傾げるケンゴ。
「だって旅行先で病気なんかしても嫌だろ?やらないよりやる方がいいと僕は思うんだ」
「そういえば、火星から地球に来る時、身体検査と注射打った記憶ある」
言われて思い出すケンゴ。
「何それ詳しく聞かせてもらえる???」
キャスター付きの椅子に括り付けられたまま器用に迫る蛇崩。
そこに部屋の入り口から、カジュアルな格好で首から上と手だけがいつもの通りのミントリガーが現れる。
「ダメですよ2人とも、話を聞くのは、僕が話しをしてからです」
その言葉を聞き途端に大人しくなる蛇崩と渦巻。
「え?ミントリガー?何その格好」
「オフのスタイルは主にこれなんだ、今日はもうたぶん、出動もないから…」
チェック柄にライダースジャケットを着ているミントリガーに驚くケンゴは、仲間の意外な一面を見られて少し喜んでいた。
「ミントリガー、丁度終わったところですので、彼は任せます」
括り付けられたままミントリガーに伝えて器用にその場から離れる蛇崩。
それを無言で見送る3人。
ケンゴを静かに見つめながら、可能な限り優しいトーンで応えるミントリガー。
「それじゃあ、一緒に来てくれ、ケンゴ」
「うん、わかった」
可能な限り笑顔を作るケンゴ。
内心は、これからどんな話が出るのか、不安であった。
⬜︎元資料宿直室⬜︎
ミントリガーは趣味で写真を撮っている。
動植物などの自然の写真を撮り。
SNSにアップロードしている。
ミントリガー曰く
「趣味でやってただけなんだけど、地域の新聞に載せられたから、なんか嬉しくなって、気づいたらずっと続けてた」
「そうなの!?じゃあこの写真全部ミントリガーが!?」
部屋には綺麗な花や空、景色の写真
可愛い動物の写真などが飾られていた。
植物学者のケンゴからすると、花の写真は興味津々だった。
「ねぇ!ミントリガー!」
何か思いついたケンゴはミントリガーを呼ぶ
「僕の花も撮ってもらえない?」
ふふっと静かに笑うミントリガーは
「わかった、約束する」
やったと小さくガッツポーズをするケンゴ。
「ケンゴ」
ミントリガーはケンゴに声をかけ、本題に入る準備をする。
「座って。俺がいいって言うまで、目を閉じてて欲しい」
「わかった」
ケンゴは手で顔を覆う。
深い意味はなかったが、指の隙間から覗こうとしたケンゴに対し
「ケンゴ、見えてるからな」
「あ、ごめんなさい」
特に意味もないとは言え、申し訳ない気持ちでいっぱいになるケンゴは、素直に目を閉じて待つ。
◇数分後◇
「もういいぞ、ケンゴ」
そう声をかけられて、ケンゴは目を開ける。
そこにノックの音。
ミントリガーが出ると、職員がリュックをカートに乗せて連れてくる。
一礼をして感謝をするミントリガー。
ミントリガーは、ソファに腰掛けるケンゴに見える様にリュックを向ける。
「ルルイエ!」
「思ったよりも早かったな、きっと職員の人が気を利かせてくれたんだろう」
ルルイエをケンゴに手渡す。
「ありがとー!良かったぁ〜、無事だったんだね、お疲れ様、ルルイエ」
別行動した友人をリュックから出し、ケンゴは窓際にルルイエを置く
「今日は気持ちいいくらいの陽射しだね、いい日向ぼっこ日和だと思うよ、ここに居てね」
友人のベストポジションを見つけて設置したケンゴは、ソファに腰掛け直す。
目の前にはプロジェクター。
スピーカーも用意されていた。
リモコンを手渡されるケンゴ。
「ケンゴ」
手渡しながらしっかりとお互いを見つめ合う2人
ミントリガーは続ける
「さっきも言ったが、何があっても、最後まで俺の話を聞いて欲しい。君の疑問にはちゃんと答える、誤魔化したり、嘘をついたりはしない」
「うん、わかった」
ふぅと一息吐くミントリガー。
「これからケンゴには、ある映像を観てもらう。そのリモコンを使ってそこを押せば再生、もう一回押せば止まる」
「話しをするんじゃ?」
「あぁ、けどこれは大事な事なんだ、まずは観てくれ」
真剣にかついつもの優しさは崩さずケンゴに伝えるミントリガー。
「タイミングは任せるよ、大丈夫そうだったら、再生ボタンを押してくれ」
そう言い終わると同時にミントリガーの携帯端末へと着信が入る。
「ちょっと電話してくる」そう言って部屋から出て行ったミントリガー。
1人になったケンゴは、深く深呼吸をした後に、再生ボタンを押す。
⬜︎資料室近くの廊下⬜︎
ミントリガーは携帯端末の着信表示を見て通話ボタンを押す。
〈お?出たな、ミントリ〉
電話の主は関東地方のヒーロー
『飛翔演舞 凰孔雀-オークジャック-』
不死鳥の力を宿し、不死身の身体としなやかでスタイリッシュな佇まい
それに見合った強靭な精神を持つ
ミントリガーにとって
最も信頼できる友と呼ぶべき相手だった
「すまないオーク、あまり時間は取れないんだ、どうかしたか?」
長話は避けたいミントリガーは先んじて謝罪と共に釘を刺す。
〈相変わらずそういうとこ真面目だなぁ…まぁいいや〉
ハハっと軽く笑った後にオークジャックは本題に入る。
〈動画観たぜ、ウルトラマントリガーとお前が並んでるやつ、アレってリアルなやつか?〉
「動画?」
〈しらねぇのかよ当事者のくせに、結構拡散されてんぞ?ウルトラマントリガー北海道に降臨ってよ〉
「バタついてて確認できてないよ、そんなに有名なのか?」
〈お前なぁ、今世界トレンド1位だぜ?俺が言うのもなんだけど、もっと情報は仕入れておけよ?んで?どうなんだ?リアルか?フェイクか?〉
「…リアルだよ」
〈マジか!?くうううう!!!〉
何か興奮しているオークジャックに対し、冷静に返すミントリガー。
「要件はそれだけか?」
〈まぁ待てって!それと同時に面白い情報があったんだよ、たしかぁ〜……アレ?どれだっけ??〉
深くため息をつくミントリガー。
〈あ、今おめぇため息ついただろ?むやみやたらとため息ついちゃいけませんってママに教わらなかったのかよ!?なんか傷つくんだぞ!?わかったら教えてくれたママ上様と俺に謝れ!!〉
「もういいか?切るぞ」
〈待て!わるかった!ちゃんとあるんだって〉
よほど伝えたい情報なのか必死になって引き留めるオークジャックだったが、その行動は虚しく、やがて一方的に切られる事となる。
ガタンッ バンッ
と資料室から物音がした。
「悪いオーク、掛け直すっ」
端末を切り、室内へと入るミントリガー。
◇約3分前◇
⬜︎資料室⬜︎
再生ボタンを押したケンゴは、聴き覚えのないBGMと共に流し出された映像を観ていた。
冒頭、ケンゴにとっては良く見知った
宿敵であり因縁の相手
闇の三巨人の女戦士
『妖麗戦士カルミラ』
の封印が解かれる瞬間だった。
なに?この映像?なんかよく出来てる気がするけど、ファンメイドかなにか??
そう思いながらも続けて観ていたケンゴは、次のシーンで驚愕する。
自分が勤めていた火星の植物研究所にて
“自分にそっくり”
もしくは“自分に瓜二つ”な男性が、先ほど自分が窓際に設置したルルイエと同じ花に、栄養剤入りの水を散布していた。
なに…これは
理解が追いつかないケンゴ。
やがてシーンは変わり。
実家の室内でケンゴとその母親
『マナカ・レイナ』
との日常の会話が映し出される。
あり得ない…どう言う事…
すでにキャパオーバーだった脳内に、更に負荷が掛かっていくケンゴ。
盗撮?…その割には…ころころ方向が変わりすぎてる…一体これは
気になりすぎて鋭敏になってるケンゴは、表現上のシーン変わりすらも気になってしまっている。
そして次のシーンが終わった直後
ケンゴは限界を迎え
荒々しくリモコンを握り
停止ボタンを押す
冷や汗をだらだらと流すケンゴ。
勢い良く開け放たれた入り口からはミントリガーが現れる。
ミントリガーは一度ケンゴに焦点を合わせるが、そのまま視野角を広げ、モニターの画面を観る。
そこには
『ウルトラマントリガー』
とタイトルロゴが出ていた
「ミン…トリガー」
呆然と立ち尽くすケンゴを見て、ミントリガーはやるせ無い気持ちだった。
まずは自分も相手も落ち着かせるためと思い、行動に移すミントリガー
「…ケンゴ、一旦座ろう」
「これは…なに?」
「座ろう」
「教えてミントリガー!!これはなんなんだ!!」
ミントリガーの両肩を掴むケンゴ。
その手は、震えていた
それを振り払わず、ゆっくり左手をケンゴの手に合わせ
「座ろう、ケンゴ」
今にも泣き出しそうな、悔しさとも怒りとも取れる様な複雑な表情をするケンゴ。
そのままストンと力が抜けたかの様にソファに腰を降ろす。
ミントリガーは、端に畳んであったパイプ椅子を取り出し、開いて座る。
沈黙が続く
ケンゴはやり場のない気持ちのせいか
震える両手を何度も抑える
「まず」
口を開いたのはミントリガーだった
「これがなんなのか?だったよな?」
ケンゴを見るも、俯いて、眉間に皺を寄せ、明らかに気分が悪そうな表情をしている。
それを見て、ミントリガーも苦しくなるが。
息を一度吐き、言葉を続ける事にした。
「これは、俺の世界で放送、配信されていた“人気空想特撮ドラマ”の一つ」
そこでやっとケンゴはミントリガーを見るために顔を上げる。
目があった2人
ミントリガーはモニターを指差して言う。
「ウルトラマントリガーの、記念すべき、第1話の冒頭だ」
今回も読んでくださってありがとうございました。
自分が異世界に飛ばされる、自分以外は自分の事を知っている。
ウルトラマンガイヤの映画でもこういう話がありましたが、もしケンゴがその状況に陥ったら。
知っているからこそ、なんとかしたい、そう思う周りの群像劇を表現しています。
次回も辛いところからの続きになりますが。
お時間がある時で結構ですので、読んでくださると嬉しいです。