シャーレの裏切り者になって、みんなを曇らせたい 作:ユッキ〜ゆきゆき
「 "………!?" 」
「ハナ……ちゃ…ん………?」
「うそ………」
「なん……で………?」
「っ………!?」
いつもと変わらない日々だとそう思っていた。変わることの無い日々、永遠に続く幸福だと誰もが本当にそう思っていたのに、待っていたのは混乱とドロドロで苦くて吐き気を催すような絶望感だった。涙で目がいっぱいで視界を歪め、とうとう足の感覚が無くなり今地面に立っているのかすらも分からなくなってしまっていた。認めたくなかった。こんな真実が待ってるなら最初から関係なんて………と初めて本気でそう思ってしまった。そのくらい彼女、ハナのこと大好きだった。
いつも来ている仕事用のスーツの裾で涙を拭きふと視線を横にずらすと目が濁りきった生徒たちが何人もいる。どれだけ彼女が慕われていたのかそして絶望しているのかがよく分かる。そんな私たちを嘲笑うかのように彼女は笑を浮かべながら口をあける。
「驚いた?まさか私が裏切り者だなんて、吃驚しちゃったかなぁ?」
まるで子供のイタズラが成功したかのようなトーンで彼女は喋る。この表情、仕草、口調、どれを取っても普段の彼女と変わらないはずなのに今までの生き生きとした希望で輝いていた瞳は黒よりもドス黒く底が見えない絶望の瞳をしていた。もう今までの彼女はどこにもいないんだとその瞳がそう語ってるような気がした。
「まさか、最後の最後まで気が付かないなんてシャーレの部員は阿呆のばっかりだったなぁ。まぁ、薄々気づいてはいたけど」
「 "それが、本来の君………なんだね" 」
「そうだよ。私みんなのこと大っっっっ嫌いだったんだもん。そりゃあこんな性格になっちゃうよね!」
「"なんでこんなことを………"」
「なんでって、そりゃ復讐だよ。本当の絶望を知らない平和ボケのおこちゃまに本当の絶望を教えてやるのさ。どいつもこいつも揃いも揃って毎日毎日毎日毎日のうのうと過ごしやがって!!!反吐が出る。」
これが本来の彼女。今までの彼女では考えられない言動を吐き捨てるように言ったかと思えば、顔は憎悪で歪め今にでも私たちを殺さんばかりの殺気を向けている。シャーレのみんなとそして私との日々の思い出が全て否定された。シャーレの最初の入部者でみんなの中心となったいた彼女本人によって。
「ハナが………裏切り……者…?」
まだ動悸が激しいが辛うじて冷静を取り戻したヒナが言葉を紡ぐ。彼女と1番と言っていいほど仲の良かったヒナにとって、これはなにかの間違えだと、悪い夢でも見ているんだとそういった目線をハナに送る。しかし、返ってきたのは否定ではなく肯定。さも当然かのようにハナは言う。
「そうだよ風紀委員長。私がシャーレの。いや、□□□□□の裏切り者なんだよ!!!!」
その日、私達は人生最悪な日を更新した。
★★★★★★★★★★★★★★★★
冬もとうの昔に終わりを告げ、暖かい日差しが窓から差し込んで来たところで目を覚ます。まだ隣にいる同居人はすぴすぴと寝息を立てていて思わず笑みが溢れる。こういう何気ない一時こそ人は幸せを感じているのだ。例えばふかふかのベットがあれば十分な睡眠を取れるし、住む場所があれば寒さを凌げる。澄み切った空気があれば息をするのも苦ではない、しかしここゲヘナは安全という点ではどの地区にも負けず劣らずの不適切な環境がある。例えば、朝っぱら銃撃戦を行うアホどもだったり。例えば、出す食事が気に入らなかったら爆破する部活だったり。例えば………
「お目覚めですか?アキさん」
当然のように人の家に上がり込む不審者だったり………。
「朝一番からあんたの顔を見る羽目になるなんて最悪。不愉快だ消えろ。」
「ククッ、随分と嫌われてしまったようですね」
こいつは黒服(自称)。なぜ自称なのかと言うと他人が外見からのイメージで決めた仮称なのだが本人が気に入ったらしく今では黒服呼びが固定化されている。まぁぶっちゃけ、名前なんてそいつを識別する時に使えればいいから仮称でも問題ない。私はこの大人が嫌いだ。なぜ嫌いなのかというと…………
「そんなカッカせず、同じゲマトリアの一員として仲良くやろうではありませんか。」
「自分から嫌われに来てるくせヌケヌケとよく言う」
こいつはいつもそうだ。いつもゆっくりと過ごそうとした日に必ず来る。こいつは定期的に私に必ず会わないと死ぬ呪いでもかかってるか?もしそうなら是非とも死んで頂きたい。しかし、今ある幸せは全てこいつがくれたもの、あまり無碍に出来ないと分かってはいるが嫌いなものは嫌いだ。その気持ちは変えられない。
「それで今日はなんの用?」
「いつも通り依頼しに来ました。最近このキヴォトスに外から来た大人がいることを知っていますか?」
「勿論。確か、最近連邦生徒会が立ち上げた機関の顧問だったか」
「はい、正式には連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの顧問です。キヴォトスの外から来た大人……ククッ、大変興味深い。」
また始まった。本人曰く観察者であり、探求者であり、研究者らしい。言い換えれば自分が興味を持ったものにしか目線が映らないとも言える。本当にめんどくさい上に一度思考を始まるとなかなかに終わらない。私の嫌いな一つである。
「おっと失礼しました。そこでアキさんには、シャーレの潜入捜査をして頂きたいのです。」
「潜入捜査って具体的には何をすればいい?」
「基本的には外から来た大人に関する情報だっり、シャーレ有する権限や設備だったり、私達ゲマトリアに害があるのかないのかだったり………、そんなところです。」
外から来た大人ね。私達に害が無ければそれでいい。それ以上干渉しないし、絡むこともないだろう。しかし私に害があるとわかったら………
「分かったその依頼受けよう。いや、元々拒否権なんてないんだろ?」
「ククッ、よくお分かりで」
私はコイツに下っ端として働く代わりに衣食住を提供させてもらっている。万が一こいつの支援が無くなれば私達は昔の生活に逆戻り今の幸せも簡単に消えてしまう。だから私はこいつを無碍に出来ない。でも、何時までも上の立場にいるとは思うなよ。
「ではくれぐれもゲマトリアの一員バレずに情報を集めてくださいね。」
そう言いながら家から出ていく黒服。本当に毎回毎回鍵かけてんのにどうやって入ってこれたんだあいつ?あいつすることに思考を当てても時間の無駄か。そうこうしてるうちに同居人が目を覚ましたようだ。まだ眠たいのか目を擦っている。
「あはよーおねぇちゃん」
「おはよ、レンゲ。今ご飯作るから待ってて」
この子の名前はレンゲ。とある理由で私と暮らしてる子供。直接的な血の繋がりは無いけど、私はこの子のことを世界で1番愛してる。今ある幸せはこの子いる時間。一緒にご飯を食べたり、一緒に買い物をしたり、一緒に布団で寝たり……。数えればキリがないほど私はこの子といる時間に幸せを感じている。
「おねぇちゃん、いまだれかとしゃべってなかった?」
「まさか、レンゲそれ夢の中の話なんじゃないの?それよりもレンゲ、顔洗ってきな。」
「うん、わかった!」
この子には私が悪い大人といることを知らない。その方がいい。幼い時は厳しい現実ではなく夢のような時間だけを見せてあげてたい。だからこの任務失敗できない。今ある幸せを守るためにも。レンゲを幸せになってもらうためにも。そして私の計画のためにも………
・・・・・・・
と、思ってたのに……
「ハナ、私風紀委員の仕事で疲れてて、その私も………膝枕して……欲しい。」グイグイ
「うへ〜、やっぱハナの膝枕が落ち着くな〜。おやすみ〜」スピー
「ハナ、このミレニアムの超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私が特別に時間を空けて来たのです。私の相手をしなさい!」
「ハナちゃん!先日発売されたペロロ様のぬいぐるみなんですが!!」
「怪我の具合はどうですか?あまり激しく動いちゃダメですよ。」
どうしてこうなった!!!シャーレの潜入捜査で顧問の大人と信頼関係を築く過程で他校との交流して来た生徒どもが私に群がるように集まってくる。何が楽しくて私なんかに群がるんだ、せめてあいつの方に行けよ。目線を顧問の大人に向けるとあちらもあちらで盛りあがってるようだ。
「ん、先生。」
「先生どういうことですか!?この領収書、戦隊ロボフィギュアに5万!!?いい加減節度をわきまえてください大人なんですから!!!」
「ご主人様!お茶が入ったよ!!最近忙しいでしょ〜、肩揉んであげようか?」
「それよりも先生、この間ゲーム開発部で制作したゲームなんだけど!」
「先生、この書類に不備が」
「今私が先生とお話してるから!邪魔しないで欲しいな☆」
「"ハナ……たすけて………"」
なんかあっちだけ湿度が違う気がする。ミカのオーラがどす黒く見えるから気の所為では無いはずだ。まぁ、これも全部生徒たらしなあいつの所為だ、自業自得だと思って受け入れて欲しいが私は違うだろうと訴えかける。せめて私だけでも………と思った。いや、思ってしまった。
「勇者アリスパーティ!!ただいま参上しました!!!緊急クエスト ハナちゃん、先生救出作戦開始〜〜!!!!」
「かいし〜〜!!!」
そう言うながら私に向かってダイブしてくるアリスとレンゲ。いつも元気でいい事なのだがいつも私が困ってる時にアリスとレンゲは更に混乱させてくる。ほんと勘弁してください。これは収拾着くのに時間がかかるなぁ、あぁどこから間違えたんだろうか。そう思いながらため息を深くつく。今日も今日とてシャーレはクソみたいに平和なようです。
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