ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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よく考えたら小説を書いた息抜きに小説書くっておかしくない?


プロローグ 最後の質問

 

 

 気が付くと、深い森の中にいた。

 俺は周囲を見渡しながら呟く。

 

「―――どこだ、ここ」

 

 自分よりずっと太い木々の根。あまりの密度に、日の光すら通らない樹海。

 なぜこんな場所に。俺は困惑のまま、光が唯一漏れる方向へと歩く。

 溢れる光。

 そこは切り立った崖だった。

 正面に巨大な滝を見据える、展望台のように迫り出した森の中の崖。

 樹海とは一転して光の満ちた世界に迷い込み、俺はその落差に目眩を覚えた。

 

「綺麗……」

 

 景色に感動するなんて、いつ以来だろうか。

 眼前に広がる雄大な自然。

 滝壺の水面に陽光が反射し、七色の光を周囲に解き放つ。

 そんな美しい光景に見惚れていた俺に、ふと何者かが声をかけてきた。

 

『アルス……アルス…私の声が聞こえますね?』

 

「だ、誰だ?」

 

 突然頭の中で響いた声に、俺は慌てて周囲を見渡す。

 しかし、周囲に人影はない。あるのは滝から降り注ぐ光の粒子だけ。

 

『私は全てを司る者。あなたはやがて、真の勇者として私の前に現れることでしょう』

 

「何を言っているんだ? お前は誰だ?」

 

『私は全にして一。全てに存在して、全てに存在しない者』

 

「わけの分からないことを……いや、なんだこれ……?」

 

 俺は強い既視感を覚えていた。

 この光景。語りかけてくる声。俺は確かに、この状況を知っている……?

 

『この私に教えてほしいのです。あなたが、どういう人なのかを……』

 

 そうだ、このイベントは―――

 

「ドラゴンクエスト3の、オープニング……?」

 

 間違いない。これは、有名RPGドラゴンクエスト3のオープニングだ。

 主人公の勇者は旅立ちの朝、夢の中で対話という名の性格診断を行うことになる。

 

『さあ、私の質問に正直に答えるのです。用意はいいですか?』

 

「ま、待ってくれ! ちょっと考えさせてくれ!」

 

『あなたはなかなか用心深いようですね。それともただのひねくれ者なのか……ともかく私も、待つこととしましょう』

 

「わ、悪い。助かる」

 

 時間をくれるというので、言葉に甘えて俺は座り込む。

 ここがドラクエ3の冒頭だというのなら、俺は勇者だというのか。

 冗談じゃない。世界を股に掛けた大冒険なんて、ゲームだからこそ楽しいんだ。

 俺は深呼吸して、自分のことをゆっくりと思い返した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

年齢              18

容姿(かっこよさ、かわいさ)   7

頭の良さ             5

運動神経             5

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 俺はもうじき卒業しようという高校生3年生だ。頭の出来も体育の授業も平凡な普通の学生でしかない。

 年頃なので多少は身嗜みに気をつけているが、それでもいわゆるイケメンには届かない。

 クラスの女子に「角度によってはイケメン」と言われるレベル。

 ありふれた男子高校生、最近では受験勉強で運動不足の感すらある。

 そんな俺がゲームの主人公になって勇者として魔王を倒す?

 

「無理無理無理無理」

 

 俺は思わず拒絶していた。

 なんとかして現実に戻らなければ……そう考えて、気が付く。

 まさに今、俺はそういう超常的なことが出来そうな奴と対峙しているではないか。

 

「あー……あなたは……神なんですか?」

 

『いいえ、私は神の遣い。ただの架け橋に過ぎません』

 

 そういえばそんな設定だった気がする。

 ドラクエ3をやったのなんて随分と昔だから、あんまりしっかりと覚えていない。

 

「俺がどこから来たか、理解した上で問いかけているんですか?」

 

『ええ、あなたがこことは異なる世界の魂であることは理解しています』

 

「ま、まさかアンタが俺をこの世界に連れてきたのか? なんでそんなことを……」

 

『あなたが世界を救うために必要な力を持っているからです』

 

 俺は大きく息を吐いた。この状況が彼女の思惑であるのなら、俺を地球の日本に返してくれることはないだろう。

 

「なんで俺なんだ。ゲームの知識があるからか? いや、俺よりドラクエ3に詳しい奴なんてごまんといるだろ」

 

 神様モドキ相手ということで最初は丁寧語だったが、すぐにそれは崩れた。

 俺を拉致しやがった奴に敬意なんて払えない。

 

『げーむというのが何か判りませんが……あなたはこちらの世界の事情について、ある程度理解しているようですね』

 

 俺は首肯する。ドット絵越しなので、本当に「ある程度」だけど。

 

『あなたがこれから宿る肉体の持ち主は、やがて勇者となるはずだった若者です』

 

「はずだった?」

 

『はい。勇者の魂は、旅立ちの前日に魔王の呪いによって滅ぼされました』

 

「はぁ? いや待て、それはつまり……」

 

『はい。あなたには勇者の代わりを務めて貰います』

 

 いやいや待て待て。おかしいだろ。なんで俺がそんなことに巻き込まれなきゃいけないんだ?

 

「じゃあ俺はこれからどうすればいいんだ? 魔王を倒せば元の世界に戻してもらえるのか?」

 

『あなた使命はただひとつ。勇者の遺志を継ぎ、魔王を倒すこと』

 

「どうすれば元の世界に帰れるかって聞いてるんだけど」

 

『……私の力では、貴方を元の世界に戻すのは困難です』

 

 こいつ確か地下世界にいたよな、辿り着いたらどついてやろうか。

 俺はそんな衝動を必死に抑えた。さすがに女性をどつくのは良くない。

 

『しかし私程度でも、呼び寄せることは出来ました……あるいはより上位の神族であれば、元の世界に戻せるかもしれません』

 

 より上位の神と言われて連想するのは、精霊神ルビスと神竜か。

 あとはダーマ神殿に命名神なんて存在もいた気がするが、命名の神が異世界転移を出来るとも思えない。

 他のメディアには更に別の神様も出てくるのかもしれない。俺が覚えていないだけという可能性もある。

 しかし、ゲーム中に名前が出てくる神様といえばやはりこの2柱であろう。

 

「……つまり、ゲームと同じか。主人公らしく強くなって世界を救えばいいんだな」

 

『その通りです』

 

 神様モドキは満足そうに頷く気配があったが、俺は到底納得出来ない。

 出来ないが……今は話を進めるしかない。

 

「と、とりあえずアレをやってくれ。性格診断みたいな奴」

 

『わかりました。私はこれから、いくつかの質問をします。難しく考えず、素直な気持ちで答えて下さい。そうすれば……私はあなたを更に知ることになるでしょう』

 

 本当に始めるのか……俺は息を呑んだ。

 

『あなたにとって、冒険とはつらいものですか?』

 

「……はい。自分はあんまり、冒険に向いていない性格だと思う」

 

『町の人達と話すことは楽しいことですか?』

 

「はい。特別多いってわけじゃないが、友達はそれなりにいるし人付き合いは嫌いじゃないぞ」

 

『洞窟を見付けると、つい入ってみたくなりますか?』

 

「はい。立入禁止には入りたくなる」

 

『近くの高い宿屋より、遠くの安い宿屋に泊まりますか?』

 

「いいえ。というか身体を休めるのに遠くの宿屋に行くのは本末転倒だろ」

 

『よく夢を見るほうですか?』

 

「はい。今だって見てるしな。ああ夢オチだったらいいんだけど」

 

『誰かに追いかけられる夢を見ることは?』

 

「はい。あるかも……?」

 

『あまり知らない人といるのは疲れますか?』

 

「いいえ。そういうのはあまりない方だと思う」

 

『なにか失敗をしても、あまり気にしない方ですか?』

 

「はい。気にしない方だ」

 

『たとえ人と意見が違っても、言い争うのはあまり好きではありませんか?』

 

「いいえ。むしろ、そういうのはしっかり話し合うべきだろう』

 

『体を動かすのは好きですか?』

 

「はい。好き、かな」

 

『少しのことでも、すぐにイライラしてしまう方ですか?』

 

「いいえ。そうはならないと思う」

 

『どんな理由があっても、約束を破ってしまうのは許されないことと思いますか?』

 

「いいえ。特殊な状況なんていくらでもある、場合によっては許すべきだ」

 

『一つのことを始めると、周りが見えなくなることがよくありますか?』

 

「いいえ。あまりない」

 

『何があっても守りたいと思う大切なものはありますか?』

 

「いいえ。いや家族は普通にいるからハイか? まあいいや、いいえで」

 

『道で石にけつまづいて転びました。転んだのは石のせいではなくて自分のせいだと思えますか?』

 

「いいえ。とりあえずストレス発散の為に蹴り飛ばしてやるぞ」

 

 俺は次々と投げかけられる質問に全て答えた。このやり取りの中で心を読むならそれはそれでいい。

 

『そうですか……これであなたのことが少しはわかりました』

 

 来た。この言葉の次に来るのは、こうだ。

 

『ではこれが、最後の質問です』

 

 声が聞こえると共に、俺は別の場所へと移動していた。

 

 

 

 

 

 

 俺は最後の質問を終え、巨大な滝の前に戻ってきた。

 

『……私は全てを司る者。私には、貴方がどういう人かわかった気がします』

 

「笑うなら笑え」

 

『アルス、あなたはかなりおっちょこちょいのようですね』

 

 試練の内容は、長いトンネルを歩くというものだった。

 トンネルの途中には分かれ道があり、『右に進め』『左へ進むべし』『真っ直ぐ進め』などと注意書きがされていた。

 特に逆らう理由もなく、案内に従って進んでいたのだが……途中、脇道に宝箱があった。

 俺は考えもせず、宝箱に飛びついた。看板の『真っ直ぐ進め』という指示を忘れて。

 結果、宝箱の手前で落とし穴に落ちた。

 まさしくおっちょこちょいの所業である。

 

『いろんなことに興味を示して思いついたらすぐに行動。まわりが見えなくなることがあります。そのせいか失敗も多くて、くよくよと悩みがちです。しかし頭の切り替えも早く―――別の面白いことを見つけて、そう長くは悩んでいられません。常に前向きに考えられる。これがあなたの一番の長所です』

 

「ポジティブな見解ありがとう」

 

『しかしときには立ち止まって……まわりをよく見てみるのも、大切なことなのかもしれませんね』

 

「マジレスなアドバイス重ね重ねありがとう」

 

『そろそろ夜も明ける頃。あなたもこの眠りから目覚めることでしょう』

 

 気が付くと、世界が白く霞んできていた。

 どうやらこの問答が終わり、あの広大な世界の旅が始まるらしい。

 

『私は全てを司る者。いつの日か、あなたに会えることを楽しみに待っています……』

 

 薄れゆく意識の中、俺は思った。

 魔王倒せそうになければ、勇者パワーで金稼ぎをした後に魔王の目の届かない離れ小島とかで隠居してやる。

 

 

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