海の気配がする。
妙に道の起伏が激しくなり、徐々に標高が下がっている印象がある。
意外と海の匂いなんてものはない。風向きによるものだろうか。
だがしかし、違うフィールドに入ったという気配があったのだ。
「貴方様、あそこ」
「ん?」
「魔物です」
普通に報告されて、俺は一瞬遅れて慌てて剣を抜いた。
「ついに出たか」
「二人旅ですから、いよいよ狙われやすくなったということでしょう」
アリアハンを発った時のような集団行動はしていない。城壁がない宿場町からの出発となる2日目からは、冒険者達は各々自分のタイミングで出発していた。
だから、俺達は遂に二人旅をしているのだ。
「あれは、大鴉とスライムか」
剣を抜く。銅の剣だ。
ネットだと青銅じゃないかとか色々言われていたが、俺にはよく判らない。とにかく、銅の剣。
最初は背中の重さに慣れなかったが、素振りをしてみると徐々に手に馴染んできていた。
「大鴉は空にいるな」
「ではスライムに集中致しましょう」
「おう」
スライムがぴょんと飛び跳ねる。
その跳躍の高さを見て、俺は少し驚いた。
やっぱり人を殺しうるモンスターだ、けっこう速い。
「やあっ!」
ポジションが近かったルナリアが、棍棒でスライムを叩く。べちゃっと、嫌な音を立ててスライムが潰れる。
「やったか?」
「まだです!」
その言葉通りに、潰れたはずのスライムは素早い動きで俺に迫ってきた。
俺の方が与し易いと思ったか、けど攻撃力はこっちが上だ!
銅の剣を叩きつける。刃はスライムを容易に切り裂き、真っ二つにした。
「おおおっ、いける!」
「さすがです」
大鴉が空から襲ってきた。奴の攻撃はルナリアをかすり、右腕を浅く抉った。
「痛っ……!」
「ル、ルナリア! ホイミ使えホイミ!」
「は、いっ」
痛みを堪えつつ、ルナリアは自分に回復魔法を唱える。
「ホイミ!」
光が彼女の腕を包む。
「大丈夫か?」
腕を見ると、確かに傷口が塞がっている。
さすが回復呪文だ。これがなかったらと思うと恐ろしいな。
俺は高度が下がった大鴉に素早く接近し、一太刀に切り伏せる。
大鴉の首がぽんっと飛び、敵は全滅した。
「よし、終わったな」
「はい。……あの、すいません。腰が引けて、上手く動けませんでした」
ルナリアが頭を下げる。
「い、いや、いいよ気にするなよ」
ホイミを使えと言ったのは俺だし。初めての戦闘としては上出来だ。
俺は魔物達の死骸を見た。
「魔物の死体って売れるんだよな? 大鴉は食肉として、スライムはどこを売るんだ?」
「スライムは特殊な素材が取れるらしいんですが、私はその知識がありません……」
「ま、売れないなら仕方ないか。カラスは毛皮も売れるんだっけ?」
「はい。肉と皮が売れます」
魔物の死骸を荷物入れの袋に入れる。あまり日持ちはしないだろうけど、宿場町の商店に処理は任せよう。
再び歩き始める。
夕方頃宿場町に到着し、精肉を扱う商店に大鴉を提示する。
「ちゃんと血抜きしろ」と怒られた。
首をはねていたことで血抜きは偶然出来ていたそうだが、それでも中途半端ということで安値での買取になった。
魔物の解体も、どっかで覚える必要がありそうだ……。