ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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戦争の理由3

 

 

 魔王ゾーマ様は地下世界の唯一無二の絶対的指導者。

 でも、20億人を一人で完全統治するってできるんだろうか。

 いやしかし、現在の中国の人口は14億人。

 これを一人の絶対王政で支配してるみたいなもんだし、できなくもないのか?

 

「地上の人間を晴れて十分の一殺してみせたわけだが、それで魔王軍は目的を達したのか?」

 

「大魔王とルビスで交渉しているそうだが……どうにもルビスは頭イカレポンチらしくてな」

 

 なんか、大魔王の苦労が偲ばれる気がしてきた。

 人間的な価値観を理解する神なら、そもそも魔族の支配領域を侵して人間に与えようとはしない。

 この戦いの始まりがルビスのやらかしから始まったのだとしたら、ルビスも大概邪神なのかもしれない。

 ガゼルの言い分が真実ならば、だけど。

 

「魔王軍も殲滅戦争をするつもりじゃないんだな」

 

「俺の知る範疇では、殲滅までは計画されてない」

 

「じゃあ撤退しろよ」

 

「撤退したらネクロゴンド帝国跡地に植民してまた地上の人間増えるだろ……」

 

 ガゼルが深々とため息をついた。

 

「この戦争、どこに終わりどころがあるんだろうな」

 

 そんなの俺が聞きたい。

 

「お前は勇者じゃなくて、大使になるべきだったんじゃないか?」

 

 どういうわけか、人間でありながら魔王側につく機会を得たガゼル。

 そのチャンスは、敵に寝返るのではなく敵と理解しあうために使うべきだったのではないだろうか。

 そんな綺麗事をいえるほど、こいつに精神的な余裕はなかったんだろうけど。

 

「戦争はいつだって、始めるのは簡単でも止めるのは難しい。今や人類側も魔王軍側も、止めどころを失ってしまった。5000万人の死は、完全に引き返せないラインを超えている」

 

 侵略者に土地を奪われた時、それを「まあそれくらいあげてもいいか」とはならないのだ。

 何かしらの対価で土地を売買することは、国家間でも稀にある。

 だが侵略という手段を講じた場合、歴史が覚えている限り禍根は残る。

 

「魔王軍側としては『だからこそ』の5000万人だな。だからこそ、ネクロゴンドという大帝国を完全に殲滅し、その一帯を完全制圧することに注力したらしい。元々あった枠組みごと奪うのであれば、また禍根は収めやすくなる」

 

「まあ、ネクロゴンドの王族が他所で亡命政府を立ち上げたとかって話もないしな……」

 

 イシスを始めとした人類連合軍は「人類の土地を魔族に奪われた」という危機感から一丸となっているが、その奪われた土地が今戦っている者達の所有地だったかといえばそうでもない。

 所詮、滅んだのは他国。今生き延びている人々にとって、他人の土地が更に別の他人に移譲されただけだ。

 だがそれでも睨み合いが続いているのは、魔王軍が場合によってはそういうことをする、という前例を示してしまったからこそ。

 魔王軍は一国を滅ぼした。だから10年後100年後、また別の国を滅ぼすかもしれない。

 戦略的な意義はさておいて、それが可能という潜在能力を示してしまったのだ。

 

「まあ、今にして思えば魔王軍がネクロゴンド大陸を制圧したのは相当無茶を」

 

 目の前を妖艶に踊る娘が通過した。

 

「ビビアンちゃあああぁぁぁん!!! 世界で一番大好きだー!!!!!」

 

「ビビアンちゃあああぁぁぁん!!! 誰よりもきみをフォーリンラブー!!!!!」

 

「はっはっはっはっは」

 

 腹からの歓声を上げ、ビビアンちゃんを見送る。

 

「今にして思えば、魔王軍がネクロゴンド大陸を制圧したのは相当な無茶をしてたんじゃないか? 大陸一つを支配するなんて、この時代の輸送技術じゃ補給線を支えきれない」

 

「輸送技術? ……まあ、そうだな。人類が今持ちこたえているのは、人類が力を結集したからというよりは、そもそも魔王軍側の攻勢限界点を遥かに超えているからだ」

 

 一時的にそれを更に超えての攻勢に出ることはできる。イシスやアッサラームへの侵攻がまさにそれだ。

 だが、それらを陥落させられていたとして、結局実効支配は不可能だったと今なら判る。

 この時代じゃない輸送技術、つまり地球の輸送技術だとしてもかなり難しい。

 たとえばロシアなんていい例だろう。かの大国は大陸一つを制圧しているといっても過言ではない大勢力だが、その実情はシベリア鉄道という細い背骨で支えられたギリギリの防衛戦略をとっている。

 対してアメリカは地続きの敵対的な国境線をほとんど抱えておらず、防衛戦略は海上防衛を主としている。

 強大な海軍と海兵隊による柔軟な攻防を可能としており、その外征イケイケな印象とは裏腹に日本と近い防衛ドクトリンを有しているのだ。

 海兵隊という、強力無比な遠征兵力も有しているわけだが。

 

「それで、お前はお前の命運を握れるようになったのかよ」

 

「さあな。けど、弱者よりはマシなんだろう」

 

「今のお前は、ひどく窮屈そうに見えるぜ」

 

「お前もな」

 

 俺とガゼルはため息をついた。

 

「まったくやってらんねーぜ。勇者なんてヤクザな仕事はよぉー」

 

「まったくだ。都合がいい時だけ強さに責任を付随させるんじゃねーよ」

 

「殺し殺され、そんな手段に打って出る時点で勇者なんて名乗れっかよ」

 

「そうだそうだ。まあ、それが出来てない俺らに何かを言う資格なんてないんだがな」

 

 目の前を妖艶に踊る娘が通過した。

 

「ビビアンちゃあああぁぁぁん!!!! 世界で一番大大大大好きだー!!!!!!」

 

「ビビアンちゃあああぁぁぁん!!!! 誰よりもきみをスーパーフォーリンラブー!!!!!!」

 

「はっはっはっはっはっは」

 

 腹からの歓声を上げ、ビビアンちゃんを見送る。

 世界平和の命運はビビアンちゃんの双肩にかかっている。

 

 

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