「というわけで、魔王軍でご入用のものはございますか? 人材からダーマ神殿まで、なんでもご用意しますよ?」
「あー、そういうのわからんので、担当者を紹介します。一緒に町に来てるんで」
「素晴らしい。是非紹介していただけますか?」
ガゼルとエルマン氏がダルい会話をしばし続け、ガゼルは席を立った。
「俺、もう帰るわ。はあ、なんで踊り子見に来たのに仕事の話してるんだろ……」
「確かに……なんで真面目な話してたんだ、俺ら。すげー馬鹿なことしてた」
現代の社会人は飲み会を仕事としか見ていないらしい。
俺としてはエルマン氏の接待とはいえ、純粋に楽しむつもりだった。
なのにこのザマだ。これが21歳の責任ということなんだろうか。あーやだやだ。
「我々も、そろそろお暇しましょうか」
「そっすね。おあいそお願いしまーす」
俺達3人は、ダラダラと気だるい雰囲気で店を出た。
夜はそれなりに更けている。街灯もない夜道だけど、空には2つの月がちょうど高く浮かんでいるのでそれなりに明るい。
時間帯的なものなのだろうか。繁華街の割には人がいなかった。
「俺はエルマン氏を送ってく。じゃあな」
「ああ、さよなら」
踵を返すガゼル。
その背中に向けて、俺は手を向けた。
「ライデイン」
「ライデイン」
俺とガゼルの手から、同時に稲妻が放たれた。
光は中間でぶつかり合い、閃光を散らして相殺される。
「仕留めそこなったか」
「甘いわ」
「じゃあなー」
「なー」
「はっはっはっはっはっはっは」
俺とガゼルは手を振って別れた。
殺れるなら殺っとこうと思ったんだけど、やっぱりあいつもそう簡単に倒されてはくれないらしい。
町中だからギガデインを使えなかったというのもある。レベル差が致命的にならなかった。
「いやはや、勇者様の魔法は凄まじいですな。あれが勇者専用の魔法というものですか?」
「ああ、はい」
エルマン氏は俺の魔法に興味を持ったらしい。
ゲーム中で雷の魔法を使えるのは勇者だけだし、単純に珍しかったのだろう。
「大きな音と光でしたな。あれは炎なのでしょうか?」
「いえいえ、あれは雷ですよ。火じゃないです」
「カミナリですか。炎とは違うものなのですか?」
「……うん?」
俺は訝しんだ。
「雷は雷では?」
「すいません、カミナリという単語を知らなくて。てっきり明るいので炎かと思ったのですが」
うーん?
「雷、ご存知ないですか? 大雨の時に空で光ったりする」
「ふむ、そういう現象はみたことがありませんな」
あ、あれー?
この世界、雷ないの?
いいかげん設定を固めないと展開に困るので、いろいろと考えました。
月が2つあるのはとりあえずファンタジー感を出す常套手段。
作中の2つの月はほぼ同じ大きさというイメージですけど、現実に現実の月と同サイズの衛星が2つ回ってたら物理的にはあんまり良くないそうです。