俺達は海を見て、すぐにアリアハンに戻ってきた。
旅の期間はおよそ1週間。道中何度かの戦闘を経て得た結論は。
「戦えないことはないが、戦い抜けるほどの手応えはない」
俺達は以前の宿屋で休憩しつつ、旅の成果を報告し合っていた。
「私達2人だと、アリアハン周辺の弱いモンスターを倒すのがやっとです」
ルナリアもこの旅にさほど手応えを感じていないらしい。
「もっと、確実に遠方まで行けるって確信が欲しいよな」
「これではとても魔王を倒しに行けるとは思えないです……」
俺は銅の剣を見つめる。この剣が悪い訳じゃないと思うが……。
いや、これがなかったらそもそも死んでいただろう。
「しばらく歩き通しだったんだ、数日休暇にしよう。その間にパワーアップ方法を思いつければ僥倖だ」
「わかりました。私も実家の書庫で調べてみます」
翌日、俺は一人でアリアハン城に来ていた。
実は旅立ちの日に、王様から手紙を貰っている。
世界各国への紹介状だ。これを見せれば、勇者として便宜を図ってもらえるらしい。
原作ゲームにおいて勇者が世界中の城に顔パスで入れたのは、これが理由だったようだ。
入城許可を得ているのはアリアハン城も例外ではない。というわけで、俺は情報収集の為にアリアハン城に来ていたのだ。
「事務機能に特化しているだけあって、民間人もけっこういるんだな」
通りで新米勇者がふらふらと城内を歩き回せるわけだ。
中には鍵がかかった扉も多く、むしろ本質的には城の廊下は屋外と同じ「道路」なのだろう。
「あら、勇者様ではありませんか?」
声をかけられ、目を向ける。
そこには、ドレスを着た女性がいた。
お姫様 セリーナ
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ステータス外要素をサイコロで決定します。
性別(6以上で女性) 6
年齢(あまりに不自然であればやり直し) 25
容姿(かっこよさ、かわいさ) 3
頭の良さ 3
運動神経 6
――――――――――――――――――――――――――――
「えっと、どちら様で?」
「あら、ごめんあそばせ。わたくし、この国の姫のセリーナですわ」
からからと笑う大人の女性。そういえばゲームでもいたな、お姫様。
「あー、はじめまして。勇者のアルスです。英雄です」
「まあ」
お姫様に捕まってしまった俺は、それから1時間ほど愚痴に付き合わされた。
「お城から出してもらえない」とか「お父様って抜け目がない」とか、煮ても焼いても食えない情報ばかりが蓄積されていく。
これをルナリアに報告したら怒られるかな。
怒られるだろうな!
城の地下には牢獄がある。罪人を投獄している牢屋だ。
……冷静に考えるとなんで罪人を王族の足元に放り込んでおくのか謎だ。そりゃ城に牢屋があれば色々と使い勝手が良いのかもしれないけど、普通の犯罪者は城ではなく刑務所に入れられるはずだろう。
というか地球の中世時代では、刑務ってあんまりなかったらしい。さっさと処刑するか、鞭打ちとかで罰していたのだとか。
もしかして、ここに囚われている罪人は取り調べ待ちなんだろうか。
ここの牢屋の住人は割と短期で別の場所に移送されるのかもしれない。
そう考えると、俺にある考えが思い浮かんだ。
「期間限定は会ってみたい」
確かアリアハン城にはネームドキャラが閉じ込められていたはず。
さして興味もなかったが、数日以内に移送されたり処刑されたりするのであれば、せっかくだから会っておきたい。
そんな期間限定アイスに飛びつくミーハーな消費者のように、俺は城の地下へと向かった。
「ゆ、勇者様? なぜこのような場所に?」
見張りの兵士が俺を見て、困ったように眉を顰める。
「あー、……あれだ、有名な盗賊が捕まったと聞いてな。情報収集が出来ればと思って来たんだ」
「さようでございましたか。自分が同伴するのであれば、面会することも許可しますが」
「頼む」
名前なんて覚えてないが、ドラクエ3の最初の城にはチンケな盗賊が捕まっていたはず。
面をおがんでやろうじゃないか。
石造りの地下通路を進み、牢屋前を幾つか通過する。
そして、俺の前に自称大盗賊が現れた。
盗賊 バコタ
――――――――――――――――――――――――――――
ステータス外要素をサイコロで決定します。
性別(6以上で女性) 1
年齢(あまりに不自然であればやり直し) 34
容姿(かっこよさ、かわいさ) 5
頭の良さ 2
運動神経 6
――――――――――――――――――――――――――――
「くそーあのナジミの塔の老人め! このバコタ様を牢屋なんかに閉じ込めて、おまけに鍵を持っていってしまいやがった! 盗賊の鍵があれば、こんな牢屋の鍵くらい開けられたのに……畜生!」
「よく考えるとどういう原理なんだ? 簡単な鍵を問答無用で開けられるって」
鉄格子越しに俺は、中年男性の盗賊と話していた。
彼の名前はバコタ。この近隣で名を馳せた盗賊らしい。
とはいえゲーム内では最初から捕まっており、必要となるのは会話に出てきた「盗賊の鍵」である。
簡単な扉の鍵なら開けられるのだとか。
「仕組み自体はどうってことねーよ。シリンダー鍵ってのは複数のピンが揃った時に円柱が周るようになってるわけだがよ、俺の鍵はそのピンをめいいっぱい外側に押し込む仕掛けがあるんだ」
「それだと鍵から飛び出したピンが邪魔で回らんだろ」
「おうよ。だから俺の鍵のピンは力が加わると、途中で外れて回せるようになってる。そうすりゃおおよその鍵は開くって寸法だぜ」
「あー、不正に作られたマスターキーみたいなもんか。でもそんなの鍵職人なら誰だって作れるんじゃないか?」
「作れねーから出回ってねえんだよ。都合よく切断されるピン、幾つかのシリンダータイプに適合する採寸、細かい部品がバラバラにならないロック機構……もう一度同じものを作れって言われても作れねーよ」
部品精度の問題ということか。じゃあ、ひょっとしたら盗賊の鍵って地球でも作れるのかもしれないな。
ここでバコタが美人盗賊で、魔王討伐の労と引き換えに恩赦で牢を出て仲間に……とか考えていました。
でもガチャでオッサンが出たのでサヨナラです。
サイコロで展開決めるのけっこう面白い。