ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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他文化をバカにしてはいけません

 

 

 

「いやあ、女海賊シャキアは難敵でしたね」

 

「お前ら、やっぱ勇者なのな……」

 

 シャンパーニの岬の灯台を根城にしていた女海賊を、俺たちは電撃戦でふんじばって捕縛した。

 移動に数ヶ月。船を使って長駆移動し、ギガデインとバギクロスの乱打でゲームセットだ。

 圧倒的火力を撒き散らす勇者パーティーに、カンダタはドン引きしていた。

 

「いやだって、下手に敵を残したらカンダタが危ないし」

 

 よわよわなカンダタは後方に下げているが、それでも流れ弾一発で事故死する可能性が高い。故に、とにかく速攻で殲滅するしかなかったのだ。

 鞭やブーメランといった複数攻撃の武器を持ち全体攻撃で薙ぎ払い、強敵には魔法の乱発で吹き飛ばす。

 か弱いカンダタを守るべく奮闘した俺たちの頑張りも認めて欲しいところだ。

 灯台の上にて、縄で縛られた女海賊シャキアが唸る。

 

「はん、なんだいなんだい。大の男がか弱い女を寄ってたかってさ!」

 

「パーティーの半数が女性なのですが……」

 

 ルナリアの謎ツッコミ。

 縛られてなおふてぶてしく、女海賊は俺たちに唸る。

 

「アンタ、勇者だろ? こんな悪党の味方をするのかい?」

 

「カンダタが悪党かはともかく、今は課せられた責任を果たすだけだ」

 

「不自由だねえ」

 

 移動のためにソニアの手を借りて立ち上がったシャキアは、毅然とした表情で訴える。

 

「アンタらはアタシを人さらいの悪党と呼ぶかもしれないがね、アタシからすればあの移民船は新大陸の人間を誘拐する、奴隷狩りの乗った収奪者の船だ。アタシは悪党を悪党に売り飛ばしてるだけだ。そんなに糾弾されることかい?」

 

 うーん、敵にも敵の言い分があるらしい。

 聞いてねーぞとカンダタを見れば、カンダタは海から吹く潮風に気持ち良さげに目を細めていた。

 話を聞け。

 

「なんともいえんけど、旧世界の冒険者ギルドのルールには反してるんだろうな」

 

「それがそっちのルールだっていうなら、奴隷狩りの船を襲うのはアタシ達のルールじゃ合法だ。結局は無法の応酬だ。そして少なくとも、先に無法を働いたのはそっちだ」

 

 そういうのは個別に審判するもので、お互いの罪過を打ち消し合って帳消しにしたりはしないんだけどな。

 

「で、カンダタさんのご見解は?」

 

「今日は風が騒がしいな……」

 

「ご意見は?」

 

「……少なくとも、移民船に乗っていた女子供まで誘拐するのは過剰だろ。こっちでも新大陸での奴隷狩りについては賛否両論だがよ、非戦闘員への被害については糾弾すべきって風潮だ」

 

「船の男が狩りをして、その収益で女子供が養われてるんだ。同罪だろう!」

 

「まあ、子供に選択肢はなかっただろうな」

 

「アタシ達だって選択の余地なく誘拐されてるんだ! 何が違う!」

 

「泥沼すぎる、首つっこみたくねえ……」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

町の状況をサイコロで決定します。

発展度合                8

治安の良さ               4

教育レベル               9

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 近隣で一番大きな港町にて。

 しみったれた泥沼に首を突っ込みたくない俺達は、景気づけに酒場に入っていた。

 

「罪状が増えた〜♪ シャンパンの名産地〜♪」

 

 チーズやハムが乘ったクラッカー(未成年なのでピンと来ないけど、これはいわゆるカナッペらしい)も悪くないが、やはりシャンパーニ地方といえば酒……ワインが主役だろう。

 常に涼しい気候、晴れた日が少なく適度に雨が降るという条件からワイン用のブドウ栽培に適した地域。

 うまい具合に発酵させることでスパークリングとなったワインは、その適度な酸味とフルーティーさがナンチャラカンチャラ。

 

「いやーひと仕事終えたあとの酒は美味い!」

 

「その割に顔色悪くないですかぁ?」

 

 ソニアに指摘され、俺は肩を落とした。

 

「まあ、人を殺しちゃって遠路旅をすることになって、それで捕まえた犯罪者も言い分がある別の正義となるとな」

 

 しんどい。

 しんどいから、俺は気を取り直すためにはっちゃけることにする。

 

「ウェーイ!」

 

 とりあえずウェーイする。

 

「なあ、この地方で『乾杯』ってなんて言うと思う?」

 

「サルーテですよぉ」

 

「そっちじゃない」

 

 ソニアが即答するも、俺の求めた答えじゃなかった。

 

「ほらあるだろ、もう一つの言い方。チンチンとか」

 

「言ってますっ!?」

 

「チンチーン! ほら、ソニアも!」

 

「チ、チンチンっ……」

 

「もっと大きな声で!」

 

「オチンチン!」

 

「誰がオを付けろと言った」

 

 でもよくやった。

 

「次、ルナリア! チンチンって言え!」

 

「ちんちん?」

 

 言いやがった。

 キョトン顔で恥じらいもなく応じるルナリア。まだ酔っていないらしい。

 

「私、孤児院の仕事で小さな男の子と関わることも多かったので。そういうのは慣れています」

 

「俺の精神年齢が未就学児レベルだと?」

 

「私は何も言っていません。そう思うのであれば、何かしら自覚があるということでは?」

 

 そう言って、彼女はグイと酒を煽った。

 

「あははははっ! オチンチーン! チンコチンコ! チンチーン!」

 

 ※乾杯の意

 

「最後! カンダタ、チンチンって言え!」

 

「アホか」

 

「なにを恥じらう必要がある! 各地の文化は大切だ! 多種多様な文化をそれぞれ尊重し合うべきだ!」

 

「アホな内容なようで、今回の案件を鑑みると重いセリフだな」

 

「チンチン!」

 

「……チンチーン!」

 

 カンダタはやけくそ気味に乾杯に応じてくれた。

 湿気た旅もここまでだ。色々と酒で洗い流して、ちゃんと世界に旅立とう。

 いつか俺に「家族を殺された恨み」とか言って、復讐者が来るかもしれない。

 あの町での失態を再び糾弾されるかもしれない。逆に「その程度で立ち止まるな」と叱られるかもしれない。

 きっとこの世に、因果応報なんて都合のいいシステムなんてない。傷付けた者はそのことを忘れて生きて、傷付けられた者は鬱憤を晴らさないまま生きる。そんなものだ。

 とにかく、旅をしよう。

 俺はシャンパンの泡を見ながら、船を外洋に向けることを決めた。

 

「新たな門出に! チンチン!」

 

「泣き上戸にでもなったのですか、勇者様」

 

 ルナリアが抱きしめてくれた。

 泣いてねーし。

 さっきのワイン、ノンアルかよ。

 シラフでチンチン言ったのか聖女様。

 

 




チンチン発言回数 15チンチン

フランス語として有名なチンチンですが、あのへんの言語は全部英語の親戚みたいなものなので、イタリアでもイギリスでもドイツでもどこでもチンチンで通じるんだとか。
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