アリアハンを旅立ってから5年が経過し、今や6年目に突入した。
足が速い船旅とはいえ、大陸を回り込むのは時間がかかる。アリア号は半年もの時間をかけて喜望峰を抜け、インド洋を横断し、北上してジパングにたどり着いた。
季節は夏。残暑厳しい頃合いだがーーー
「暑っつ……」
俺はこの弧状列島の、懐かしき湿度の洗礼を受けていた。
蒸し暑い。シュウマイになっちまいそうだ。
故郷とは別の国とはいえ、ずっと恋い焦がれていたジパングだったが……ちょっと来るタイミング間違えた。
いっそこのまま旅をして涼しくなるまでムオルを探そうか、しかしあの村には何もない。
オルテガの忘れ物? いやーいらないッス。
「勇者様、行きましょう」
「はーい」
俺たちは船を進め、ジパングの人里に辿り着く。
地図上は関東平野の港のどこかっぽいが、さてどんな場所なのか。
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具体的な文明の年代を20面サイコロで決定します。
14世紀 室町時代
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町の状況をサイコロで決定します。
発展度合 5
治安の良さ 6
教育レベル 1
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「うーん、貧相」
言っちゃなんだが、ジパングの町並みはしょぼかった。
建物は一応2階建てが多いみたいだけど、基本的に色合いに欠けて安っぽい。
いかにも文明! って感じの欧州諸国と比べれば、どうしても見劣りする。
重厚感に欠けるのは、木造建築の宿命だろうか。
更にいえば、故郷に戻ってきたという郷愁も湧かない。
それはそうだ、町並みが現代とは違いすぎる。ここは俺の故郷じゃない。
「さて、まずは王様に挨拶が定番だけど」
一応町の真ん中に城があるけど、あそこに王様がいるとは限らない。
ゲームだと城があれば王都と決まっているが、現実であれば城なんて国内にいくつもある。
軍事拠点であればまだいいけど、日本史を考えるとジパング内で群雄割拠の戦国フィスティバルをしてても不思議じゃない。
なんにせよ、まずは情報収集だ。
「野郎ども、酒場に行くぞ!」
「「「おーっ!」」」
俺はパーティーメンバーと船員を引き連れ、手近な酒場に突撃した。
酒場で供されたのは、白く濁った酒だ。
「これがこの国の酒か……」
なんというか……甘くない甘酒?
地球では未成年だった俺は酒の知識が乏しい。その乏しい知識によれば、酒っていうのは果物とかの糖質がアルコールに変化したものだそうだ。
つまり、甘酒が更に発酵すればこれになるのだろうか。
酒場は飲食店というより、酒屋のイートスペースって感じだった。酒を買って勝手に飲め、って感じだ。
いちおうアテも販売されている。定番は鮎の塩焼きだ。
串を通して内蔵ごと焼き上げた一品。これを雑と評するか風流と評するかは意見が分かれるだろうけど、俺としては見た目も嫌いじゃない。
他の客は突如現れた異国の集団に、かなり訝しげな視線をこちらに向けている。
まるで珍獣扱いだ。どうやら海外に対してかなり閉鎖的な政策を行っているらしく、ガイジン自体が珍しいらしい。
「あはははっ! 樽ごと酒を持ってこーい!」
酒飲み達が肩を組んで歌い騒いでいる。
ノリがジャンプの海賊漫画なんよ。
というか本物の海賊が普通に混ざってる。
「……オー! ひょっとして、同郷のヒトデスカー?」
何故か片言な口調で話しかけられた。
見れば、そこにいたのは……
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ステータス外要素をサイコロで決定します。
性別(6以上で女性) 2
年齢(あまりに不自然であればやり直し) 41
容姿(かっこよさ、かわいさ) 4
頭の良さ 4
運動神経 6
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そこにいたのは、西洋風……この国では南蛮風というべきか、とにかく教会の人間であった。
「ワタシ、神の教えを広めるタメにキマシタ。でも、ここでは卑弥呼サマがカミサマ! これではマイッチング!」
「はあ、お疲れさまです」
はるばるジパングまできた宣教師らしい。
宣教師と卑弥呼が同じ時代にいることにツッコんではいけない。原作からしてそんな感じだ。
宣教師に興味なんてなかったが、ふと思い立ち懐から金貨を取り出す。
「このような最果ての地まで神の威光を知らしめようとは、とてもご立派です。せめてもの支援として、少額ではありますが寄進をさせていただけますか?」
そう言って、彼に幾らか資金提供する。
「オー! アリガトウゴザイマース! 神の御加護ヲ!」
聖職者という立場であれど、金がなくては生活はできない。
個人ではなく教会への寄進という名目があれば彼らも支援を受け取りやすい。
彼は喜んで資金を受け取り、俺と握手する。
仲間たちが胡散臭そうに俺を見ている。なんすか、俺にだって神様への信仰に目覚める時くらいありますよ。
クリスマスとか。
「貴方はこの国での活動は長いのですか? あ、これどうぞ」
「ドウモドウモです。ジパングは2年にナリマス」
宴席に参加する宣教師。宣教師たる彼は割と敬虔な信者らしく、塩焼きは食べているが酒には手を付けていない。
ちなみに教会の教えでは、酒は厳密には禁じられてはいない。
とはいえ推奨もされていない。いわゆる「努力義務」ってやつだ。
つまりホントは駄目だけど、守らなくてもお咎めなし。
「ヒンナヒンナ」
ガツガツと塩焼きを食べる宣教師。ひょっとして日々の食事にも苦労しているのだろうか。
「俺のおごりです、食べて食べて」
「マイウー!」
「ところで、この国の王様はどこにいるのでしょう?」
「ここ、オエドにはオオサマがイマセン。オオサマはキョウの都にイマース」
「ああ、遷都前なのか……」
たぶん彼のいうところの王様は天皇陛下なんだろう。
歴史的には彼らは、東京より京都にいた期間のほうがずっと長い。
しかし京都か。船があるから、会いに行くのは難しくないけど。
「デモ、ホントの話、この国はオオサマが沢山イマス。アッチコッチがオオサマだらけデス」
「な、なるほど?」
もしかして、本当に戦国パラダイス状態なんか?
いやいや、別に中世なんて世界中で貴族が王様みたいなもんだったし。現時点で治安を危惧するのは早計か。
「コンナに沢山オオサマがいては、誰が一番なのか分からなくナリマース! でも今イチバンフィーバーしてるのは、オエドの女王様、ヒミコ様デース!」
「……ヒミコ様が幕府のトップなんですか?」
将軍じゃないのか。いや卑弥呼が将軍なのか?
なまじ日本史の知識があるせいで、情報がまとまらない。
「ヒミコ様はトテモ強いドラゴンを操ってマス」
「ドラゴン?」
「ドラゴンはキケンな存在デス。ヒミコ様はそれを使って国をシハイしようとシテマース。ワルイ女デース!」
宣教師の語りは止まらない。
ドラゴンは魔物だ。つまり魔王軍側の存在。まんまドラゴンって名前のモンスターだっているんだから、これは間違いない。
だが竜の女王という神に近しいドラゴン的存在もいるわけで。
「ヒミコ様のことでしたら、私におまかせ!」
ソニアが会話に割り込んできた。
「知っているのかソニ電!?」
「外交の場でお会いしたことがありまーす! 顔つなぎだって出来ますよ!」
酒場での情報収拾、いらなかったかもしれない。