ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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禁断の果実

 

 

 その後もしばらくは城を見て回った。

 そして入手した物が2つ。

 

「ラックの種と……小さなメダル」

 

 遂に禁断のアイテムを見つけてしまった。

 俺がかつてプレイしたバージョンのドラクエ3では、このアイテムは序盤において重要な意味を持っているのだ。

 

「どうかされましたか?」

 

 宿の部屋にて、小さなメダルを手の平で回す。

 ルナリアが俺の様子で訝しんでいる。よほど変な顔をしていたらしい。

 

「なあ、このメダル知ってる?」

 

「はい。好事家の方が集めている、希少なメダルですよね?」

 

「好事家?」

 

「私も詳しくはありませんが、古い国家の硬貨だとか。コレクターの間では高額でやり取りされていると聞きます」

 

 なるほど、小さなメダルはこの世界ではコレクターアイテムと化しているらしい。

 地球でも希少な切手や玩具などが、信じられないほど高額で売買されていた。

 それそのものに価値があるのではない。価値があるから価値があるのだ。

 

「人間ってバカだなー」

 

 俺は魔法の袋からキメラの翼を取り出した。町から町へ移動する為の道具だ。

 まあまあ高価な上に、手持ちの荷物しか運べないことから物流には活用出来ないらしい。

 まだ使ったことはないが、非常用に昼の内に買っておいたのだ。

 俺はキメラの翼を掲げ―――

 

「ちょ、どうなさる気ですか!? 使うのですか!?」

 

「いや使わないけど」

 

 ―――掲げたキメラの翼を下ろした。

 ルナリアが俺を睨む。

 

「あの、何がしたいのですか? 高価なアイテムなので、間違って使ったら大損失ですよ?」

 

「いや、ちょっと実験をね」

 

 俺はルナリアを宥めつつ、小さなメダルを魔法の袋から取り出した。

 そして、袋にメダルを戻す。

 

「あの……?」

 

 俺の不審な行動に訝しむルナリア。

 俺はもう一度キメラの翼を掲げ、小さなメダルを袋から出し入れする。

 もう一度キメラの翼を掲げ、小さなメダルを袋から出し入れする。

 キメラの翼を掲げ、小さなメダルを袋から出し入れする。

 掲げ、出し入れする。

 

「…………。」

 

 ルナリアの目は、すっかり奇人を見るそれだ。

 しかしめげない。最初の1回目で成功してしまったからには、俺はこれを98回繰り返さなければならない。

 数時間後。

 俺はルナリアから隠しつつ、袋をひっくり返して中身を机の上に出す。

 ジャラジャラと流れ出てくるメダル。

 100枚の小さなメダルが、俺の前には存在した。

 

 

 

 キメラバグ。ドラクエ史上、最強最悪と言われるデタラメ技である。

 

 

 

 

 

 

 アリアハンを歩き回るのは俺にとって大変だ。どこにアルスの知人がいるか判らない。

 とはいえ現実化したこの世界の王都が人口10人弱なんてことはまったくなく、実家から離れた区画に行けばほぼ安心して歩けた。

 ルナリアに再び別行動を提案し、今日俺はメダルおじさんを探していた。

 原作ゲームでは井戸の中に住んでいるという謎の人物。

 まさか現実となったこの世界ではそんな場所に住んではいないだろうと思っていたが、聞き込みの末に辿り着いたのは地下空間の町だった。

 

「なんだここ?」

 

 さすがに入り口は井戸ではなかった。ちゃんと階段が用意されており、しかもそれが隠されている様子もない。

 地下には町……というのは大げさだったが、小規模な商店街くらいの町並みはある。

 どうやら一般人もふらふらと入り込んでいるらしく、これはこういうものとして、世間に受け入れられているようだ。

 

「なんだ坊主、興味本位で入ってきたのか?」

 

「あ、どうも。えっと、ここってなんですか?」

 

 俺よりよっぽど屈強な男が声をかけてきたので、俺は素直に訊いてみた。

 気前よく答えてくれるおっさん。やさしい。

 

「ここは上水道の管理施設だぜ。町中に井戸があるだろ、あれに水を供給するために地下通路から管を通してるんだよ」

 

 なるほど。ここはローマの上水道、あれが地下に拵えられたような設備らしい。

 

「あれ? 井戸……井戸じゃないんですか、町中のあれ」

 

「まあそうだな。水が供給される汲み出し口ってだけで、いわゆる井戸とは別もんだ。っていうかアリアハンで本物の井戸を掘ると、塩水が出るんだよ」

 

「へー。なるほど。いやなんで町が?」

 

「それは判らん」

 

 判らんらしい。

 

「知っての通り王都は土地が高いからな。地下でもいいって奴がいたんじゃないか?」

 

「ここって国の施設でしょ? 国が地下の土地を販売したんですか?」

 

「してるわけねーだろ。勝手に建物立てて住み着いてるんだよ」

 

 やっぱり後ろ暗い部分がある者が住み着いたらしい。

 それは最初期の話であって、今は普通の人も入り込んでるっぽいが。

 

「あの、ここにメダル集めてるおじさんって住んでます?」

 

「ああ。それなら……」

 

 おっさんが指差した方向には、地下町でも一際大きな建物が鎮座していた。

 

 

 

 

 

 

 おっさんに礼を言って、メダルコレクターのおじさんの家を尋ねる。

 俺を出迎えたのは―――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

性別(6以上で女性)           7

年齢(あまりに不自然であればやり直し) 41

容姿(かっこよさ、かわいさ)       3

頭の良さ                 4

運動神経                 6

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「よくぞ来た。私は世界中のメダルを集める者だよ」

 

 ―――中年の、おじさん……おばさん? だった。

 先程のおっさん、俺が彼女をメダルおじさん呼ばわりしても訂正しなかったあたり、性別不詳なのは共通認識なのだろう。

 俺は探りを入れる為に情報収集を試みる。

 

「ここでは小さなメダルを景品と交換してくれるですよね?」

 

「そうさ。枚数に応じて色々とコレクションを分けてあげる。けど1枚2枚じゃ駄目だよ、最低でも5枚からだ」

 

「景品は100枚までで合ってます?」

 

「一応私が用意してるのはそこまでだね。世の中にはもっと多くのメダルがあるけど、本当に全部集めてこいとは言わないよ」

 

「昔の通貨ってことは、見つかってないだけで何千枚も何万枚もあるって認識でいいんですか?」

 

「さてねえ。ひょっとしたらもっとあるかもしれないよ?」

 

 メダルおばさんはメダルは100枚以上あることを把握している。

 その総数は数万枚以上である可能性も想定している。

 俺は袋から、机の上に小さなメダルを全部取り出した。

 

「祖父が集めていたこれ、小さなメダルで合ってます?」

 

「……よくもまあ、こんなに集めたもんだね」

 

 

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