「わしはカサンの賢者が一人、魔法オババじゃ」
「それ名前なんすか?」
「ニックネームじゃよ」
「横文字使いこなすとかナウいっすね」
「じゃろう?」
ニヤリと笑う、トンチキな俺の発言に食いついたこのオババ。
いかにもTHE魔女! といった外見の彼女は、なんとこの地を治める賢者が一人らしい。
「本当に賢者なんですか?」
「うむ」
「賢者と魔法使いは別の職業ですよ?」
「うむ?」
オババは首を傾げる。
「そう言われてものう。わしはわしの功績をもって賢者と呼ばれるようになった。なんなら4賢者の中には脳筋な奴もおるぞ」
「賢者とは」
賢者ならせめて賢くあってほしい。いや、脳筋と賢いことは両立するのだろうか。
旧日本軍の将校とか、実は超頭がいいのに脳筋だったみたいだし。
いやこれに関しては現代人も笑えないかもしれない。苦労して大学出て有名企業に入って、社会に出た末にやってることがブラック企業で脳筋業務、ってことも多々あるわけだし。
くわばらくわばら、社会になんて出るもんじゃないな。ニート最強説。
「してお主らは何者じゃ? 旅人かね?」
「賢者なら推理してください」
「ふむ?」
魔法オババは興味深げに指を顎に当てて思案する。
「見たところ、随分と国際色豊かな面子じゃの。西方形式のドレス、南方の宗教服、そのサークレットはアリアハンのものじゃな。おや、こっちの娘は新大陸の出身じゃな? 出身地だけで世界一周できそうじゃ」
「博識なこって」
「勇者一行じゃな」
俺は息を呑んだ。
ちょっといきなり核心に迫りすぎじゃなかろうか。
「えっと、どうして世界各地の人間が集まってると勇者になるんだ?」
「それが決め手ではない。わしが核心したのは、お主からオゾンの匂いがしたからじゃ」
オゾンという科学的な物質が知られているのは、まあ蒸気機関車が実用されている土地なのだから不思議ではないか。
「勇者は雷を操るとされている。伝承に残る雷とは、おそらく巨大な静電気じゃ。わし等が発明した起電機によって、伝説上の雷の特性については予想がされておる。その一つがオゾン臭じゃな」
色々とツッコみたい部分はある。
この魔法オババは世間が知らない「雷」を知っているのかとか、起電機ってエレキテルだっけとか、ギガデイン使いすぎて俺オゾン臭いのかよとか。
とにかく、このオババは只者ではないらしいというのはわかった。
「そうだ、俺は勇者だ。よろ」
「うむ。よろ。して話は戻るが、お主らは何をしに来たのじゃ?」
「うーん、そうだな……オババ、そろそろ昼飯時だろう。奢るから色々と話を聞かせてくれないか?」
「ほほう、レディを誘うとは殊勝な勇者じゃ。よかろう、ナンパされてやる。ちょっとお高い店に行こうぞ」
口の減らないババアだ。さて、ここの高級料理を見せてもらおうか。
そういえば今日は令和6年6月6日です。
うーん、不吉!