翌日、軽く昼食を腹に収めた俺たちは学園を訊ねた。
そしてそのまま説明もなく会議室への直行である。
事前説明とか紹介の場とかないんスね。いや、顔見知りだけの会議だしその場ですべて済ませてしまおうという算段なのだろうか。
「これより賢者会議を開く。議長はわし、魔法オババじゃ」
「魔法オババが議長なのか、っていうか結局本名不明だし」
「勇者様、一言目からツッコみを入れていては最後まで保ちません。ご自制を」
思わず小声でツッコんだ俺に、ルナリアがやはり小声で注意した。
会議マナーとしての注意ではなく、このメンツを相手にするのに細かいことを気にしていては身が保たないぞという忠告らしい。
ルナリアの言い分もわかる。会議に参加している4人の賢者がなかなか濃い。
「今日は客人もおるからな。自己紹介をしておこうかのう」
魔法オババが立ち上がる。
「我が名は魔法オババ。主に転移魔法の研究をしておる。バシルーラを応用しての長距離移動が今の課題でな、毎日学徒を他国まで吹っ飛ばすことに邁進しておるのじゃ」
「やべえぞあのババア、思ったより狂ってる」
まともそうに見えて、日頃から学生ふっ飛ばしてキャッキャしてるのか。
さすがは賢者、探求のためならば禁忌を恐れちゃいない。
平静と情熱の間で反復横跳びしている。
続いて立ち上がったのは全身鎧の騎士。
「我が名はキラマ。剣の道を探求する求道者なり」
「え、学問とか魔法は?」
「道を究めんとする者はすべからず賢者なのだ」
いやどうなんだろうそれは……
いいこと言ってる風だけど、ここ学術都市だぞ。
魔法オババの言っていた脳筋賢者ってコイツのことだろうか。
次に立ち上がったのはドワーフの老人だ。
一見普通の老紳士のようだけど、なぜか頭に猫が乗っている。
にゃーん。
てっきり、こっちが脳筋要員だと思ったにゃあ。
「わしの名はバクダ。ふむ、旅の者か。そなたらを見ていると若い頃を思い出すのう」
「まともだ……!」
俺は感動した。
魔法オババと全身甲冑のエキセントリックな自己紹介を見ていたせいで、ドワーフの男性の言葉が極めて普通に思える。
脳筋枠とか言ってごめん。俺が思慮不足だった。
「わしも昔はオルテガという勇者様のお供をして冒険をしたものだ。オルテガ様は火山に落ちて亡くなったそうじゃが、わしにはまだ信じられぬ。そこでわしは、この地で人が空を飛ぶ研究をしておる。空を飛んで火山の向こうに行けば、そこでオルテガ様が助けを待っているかもしれぬからな」
「空を飛ぶ? ルーラみたいな魔法の研究ですか?」
あんまりにも使い勝手が悪いからめっきり使ってないけど、この世界のルーラやキメラの翼は飛行魔法だ。
一方向へ飛ぶだけなので、ドラゴンボールみたいに魔物と空中戦をする、なんてこともできない。とても使いにくい。
しかしバクダは俺の問いを否定した。
「いいや、わしは空気より軽い空気を集めて袋に詰め込むことを考えておる。この世はいわば海底のようなものだ、浮き輪があれば浮き上がれるはずだ」
「いやいや無理だろ、浮き輪は宙には浮かねえよ」
サイモンが肩を竦める。他の仲間達も概ね否定論側らしい。
しかし俺は知っている。空気より軽い航空機、熱気球や飛行船のことを。
じつをいうと人が乗れる熱気球を作るのは難しくない。性能や安全性や航空法を考えないなら、たぶん俺にだって作れる。
すごく大変だし、すごく危ないけど。
「興味深い、今度あなたの研究を見せてください」
「ほう、興味があるのかね? 良かろう、いつでもいいからわしの研究室に来なさい」
「ちなみにオルテガは生きてます」
「なにっ? それは、どこからの情報だ?」
意外というか、冷静に訊ね返すバクダ。
すぐに信じないのは歳を重ねているが故の慎重さか。
やっぱり一番賢者らしい。
「精霊神ルビス様のお告げです」
「お告げか……それを言われると反論出来ぬ。なんでもありだからな」
困り顔のバクダ。
「そういうものだから」は最強過ぎるカードだ。
「オルテガ、父は地下世界アレフガルドで未だに戦っているそうです。記憶を失いながらも」
「父……そうか。お主、アルスか。オルテガ様より話に聞いておるぞ、わんぱくな息子がいると……!」
感慨深げに俺を見るバクダ。俺は毅然と精悍な面持ちで胸を張る。
いや、俺だって空気くらい読むし。ここで「ウィーッス」とか言えねえし。
「オルテガ様がよく言っておった。息子が鼻くそを食べるのをやめてくれなくて困る、と」
ルナリア以外の仲間たちが一歩俺から引いた。
パパン、そういう風評は広めちゃだめでござる。
ルナリアが引かなかったのはもちろん俺との絆……ではなく、孤児院で子供の行動に慣れているからだろう。
「オババよ。わしは地下世界とやらへ行く。賢者の席はこいつにくれてやる」
バクダは頭の上の猫を机に乗せた。
新たなる賢者ぬこ爆誕。
にゃーん。
「落ち着けバクダ、地下世界とやらにどうやって行くのじゃ。それに精霊神ルビスについてもそうじゃ。我らの研究においては得体のしれない存在でしかないのじゃぞ、無闇矢鱈に信じられるのか?」
「むぅ……」
一度は腰を上げるも、しおしおと腰を椅子に降ろすバクダ。
猫は机の上で香箱座りのスタイル。動く気はなさそうだ。
そして最後に立ち上がった人物は……
アンヤ
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ステータス外要素をサイコロで決定します。(魔族用テンプレート)
性別(6以上で女性) 2
外見年齢(20歳以下に限定) 20
容姿(美形が基本、大きいほど人間寄りの姿)8
頭の良さ 9
運動神経 4
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「―――妹が世話になったな、勇者よ」
俺を睨みつける魔族の美青年。
ほぼ人間の容姿だが、背中のコウモリの羽はたぶん吸血鬼のそれ。
俺、勇者と関わりのある吸血鬼の妹、つまり女性となると、心当たりは一人しかいない。
「キューレの親族か」
「その通りだ。妹の死に様はどうだった、勇者」
「木っ端みじんこだが」
美青年は俺を冷たい視線で睨みつける。
「俺の名はアンヤ。まあこの地での偽名だがな。わけあって、魔王軍から離れこの地で研究を行っている」
俺はこっそりとため息をついた。
魔王軍の離反者、多くない?
賢者達はこの地方に出現するモンスターが元ネタ。
魔法オババ→同名の敵キャラから。
バクダ→祠にいるドワーフ。名前は爆弾岩から。
猫→ネコと和解せよ(New!)