「本人の前で議論するの!?」
思わずツッコむ俺。
魔法オババはきょとんとした顔で俺に言う。
「何を言うか、大事なことじゃぞ」
「そうかもだけど! 面倒くさいヤツが来た感が凄いんだが!」
取り扱いが難しい客がきて、その対処を話し合う場を設けるのはいい。
なんでその場に客当人を呼んじゃうかね。
「適当に美女でもあてがっておけば機嫌が良くなる男であれば、楽なんじゃがのう」
「ここ学園都市だろ、女学生を客人にあてがうのかよ」
エロ漫画みたいに! 春画みたいに!
「阿呆、こんなガリ勉の町じゃが、当然色街もあるぞい。人気なのは当然、女学生の制服を着てのイメプレじゃ」
このオババ、なんで色街の流行を把握してるんだよ。
「それはやめておくべきです。勇者様はゆきずりの女性には手を出しません」
ルナリアが助け船を出してくれた。信じてたぜ愛してる。
アイシテルのサインとして5回ウインクをパチパチと打ち込んでやる。
ルナリアは俺のウインクをコバエのように鬱陶しそうに払った。
「勇者様は同性愛者です」
「ルナリアさん?」
俺は耳を疑った。ルナリアさん、いつどうしてそんな結論に達した?
「ほう」
魔法オババが興味深そうに言った。
「娘よ、なぜそう思ったのじゃ?」
「簡単な推理です(Elementary)」
急にシャーロキアン要素出してきた。
原作ではそのセリフ言っていないけどな。
「何年にも渡り、執念深くといっていいほどに念入りに死体の復元処理を行い、男性の仲間の蘇生を願い続けたのです。そこに愛がないはずがありません」
ルナリアはその美貌を、どこか恍惚とした色に染めて断言した。
「勇者様は―――エイダさんを、愛しています」
「いやあ、それはどうなんだろう……?」
別に同性愛者にどうこういうつもりはないけど、俺は異性愛者だと思う。
エイダちゃんは確かに美形だ。男だが、どう見ても美少女に見える。
けどそれでも、彼は男だ。男である以上「アレ」がない。
「おっぱい」
「勇者様は錯乱されていますが、きっと男色趣味を知られて困惑されているのでしょう」
「では勇者の歓待は男であるお主等にやってもらおうかのう」
「違う俺は同性愛者じゃない」
「正体見たり、やはりわしが目的か……」
魔法オババは慄いた様子で生唾を飲んだ。
このオババを誰か止めろ。
「誰かやってもいい、という者はおるかえ?」
「私は剣の鍛錬で忙しい」
「わしは空を飛ぶ研究で忙しい」
「俺は妹を蘇生させる研究で忙しい」
「にゃー」
全員が俺の世話を拒絶しやがった。
わかるよ、客人の歓待なんて面倒くさいの、すっごいわかるよ。
でも当人の前で落ち着け合うの、やめてくんねーかなぁ。
「言い出しっぺの法則か、こうなると勇者の世話をするのはわしかのう……はぁー」
魔法オババが溜息交じりにそう言った。
「待て、もう勘弁してくれ。あんたらに迷惑かけないから。俺は俺たちだけで勝手に見て回るから」
「ほう? ふむ、これで候補は出揃ったのう」
魔法オババはサイコロを取り出した。普通の6面サイコロだ。
「1がわし、2がキラマ、3がバクダ、4が猫、5がアンヤ、6が放置プレイじゃ。さて、勇者を歓待する栄誉を手にするのは誰か……!」
なにが栄誉だファックするぞババア。
――――――――――――――――――――――――――――
接待役をサイコロで決定します。 3(バクダ)
――――――――――――――――――――――――――――
「ほう、わしか。よかろう、わしの空を飛ぶ研究を見せてやろう」
バクダはにやりと笑った。