そして俺は、空を飛んでいた。
「空がきれいだなー」
俺は死んだ目で大陸の空を見上げる。
俺は高度200メートルほどで、紐に吊るされて宙ぶらりんになっていた。
頭上には不格好で巨大な布の袋。
つまるところ、原始的な気球である。
「上昇はメラの上昇気流頼り、下降はヒャドで出した氷のバラスト頼り……こんなの航空機じゃない」
筋力じゃなくて魔力だけど、むしろ琵琶湖でやってる人力飛行機に近いのかもしれない。
人力飛行機だって、法律上はちゃんと航空機だけど。
「見学のはずなのに、なんだって俺がテストパイロットやらされてるんだ……」
バクダ氏曰く、落下しても死ななそうだから。
メラとヒャドさえ使えれば乗れるこの熱気球だが、落ちたら死ぬ。
そこで(悪い意味で)目をつけられたのが俺だった。
「原作ゲームでも、地上世界から地下世界に落ちても無傷だしなぁ」
あれは魔王バラモス撃破したパーティー一行として考えたら、割と脳筋な理屈で無事だったのかもしれない。
いや、パンピーが地下世界に事故で落ちてる事例もあったか。アッサラームの踊り子とか、ジパングの夫婦が地下に迷い込んでいたはずだ。
彼らは数少ない生存者で、実は地下世界に落ちた大半は落下死してるって可能性もあるけど。
「あいたっ」
頭をなにかで打たれた。
見上げると、縄が一本千切れていた。
「おっ、おっ、おおおっ?」
気球のバランスが崩れ、落下感が全身を包む。
下半身がこう、チンフワッ!?
「あーっ!」
迫る地面。全身を打ち付ける衝撃。
ブッチ! ドンッ! 俺は死んだ。スイーツ(笑)
「おお勇者よ、死んでしまうとは情けないのじゃ」
「ギガデイるぞジジイ」
「あははははははっははははははしゃははははははははははははははっっはsh」
スケキヨスタイルで地面に植毛された俺を見て、仲間達(男性陣)は爆笑していた。
地面に頭から突っ込んだ俺。本来ならばトマトソースみたいになったのだろうが、生憎レベルマックスは伊達じゃない。
上半身が地面にめり込んだ状態で、俺はしばし仲間たちの救援を待った。
雪崩による死因の大半が窒息死らしい。俺も土に埋もれて息苦しかったのでモゾモゾしてたら、精霊さんが「こんにちは、なにかお手伝いしましょうか?」と声をかけてきてくれて、空気の道を通してくれた。
ありがとう精霊さん。
伏線もなく急に出てきた新キャラだけど許す。
でもせっかくなら掘り起こしてほしかった。
あと美少女がいいと主張したら美少女の姿になってくれた。
精霊は雌雄同体らしい。ナメクジ系美少女。
「精霊はおいといて、おいクソジジイ。なにがオルテガ様だ、その息子様を殺しかけやがって」
「父親は父親、息子は息子じゃ。お前も自分の功績が『オルテガ様の息子だから』で片付けられたらつまらんじゃろう?」
「じゃあアンタは知り合いの息子でもなんでもないヤツで人体実験したのかよ」
都合のいい時だけ縁を切ったり繋いだりするのやめてもらえませんかねえ。
「お主が乗らない場合、わしの研究所で一番の魔法少女であるタインちゃんが乗ることになるんじゃぞ」
「ふえええぇぇ」
ロリっ子が涙目になっている。
嘘だ、さすがにこんな未就学児を乗せるわけがない。
とはいえ周囲の「お前こんな子を犠牲にするの?」って圧に負けて、俺は気球に乘った。
大人として最悪の部類の脅迫だと思う。恥を知れ。
「お主のおかげで貴重なデータが取れた。わしは研究室に戻って資料にまとめるが、お主等はどうする?」
「ここでお役御免と放置したら、それこそアンタの評価が最底辺だぞ」
「最底辺は困るな。よし、わしの研究室に来るが良い。茶くらいは出してやる」
久々の更新です。
チマチマと書いていたのですが、キリがいい部分まで書いてしまおうと間延びして1ヶ月くらい放置してしまいました。ごめんち。