「世界樹の葉か。ある意味、納得がいく情報ではある」
「そうなのか?」
「地図に記されているとおり、この地は周囲より魔力が集まりやすい。そういう性質がある場所だ、とはさっき話した通りだ」
「話してないんだよなぁ」
地図を開きつつも、結局話が逸れたのだ。
「魔力がこの地に集まる霊脈、その流れは川に例えられることが多いが、地図上で見ると木の根に見えなくもないと思わないか?」
「まあ、放射状に広がってるしな」
「我等吸血鬼が生と死の間を彷徨うように、世界樹というのも純粋な魔力と植物という境を彷徨っている存在なのだろうさ」
俺はピンときた。
「ははあん。さては吸血鬼、クマムシみたいなもんだな?」
「熊? なんだそれは?」
「灼熱にも極寒の冷気にも耐え、あらゆる過酷な環境を生き延びることができる恐ろしい外見の生物だ」
「それは褒めているのか? 貶しているのか?」
「大絶賛だぞ。俺の故郷では大人気だぞ、クマムシ」
「そうか」
ふふん、と勝ち誇るアンヤ。
嬉しそうでなによりです。
「とにかくカサンは魔力が集まる地なのだ。しかしその魔力も、ある種のムラがある。そのムラが均された均一な場所があり、そこに木という形で何かが起きている」
「ふわっとしてるな」
「仮定に仮定を重ねている。ここから先はフィールドワークが必要だが、しかし……」
アンヤは考え込み、すぐに結論を出した。
「無理だな。それが見てわかるような物であれば、既に何かしら情報が得られているはずだ」
ここは学術都市カサン。周辺の調査という調査は既に行われているし、その上で何も認知されていないというのはおかしい。
見た目がなんの変哲もない木であるとすれば……さて、なにをどうやって見つけ出そうか。
「魔力の濃度を測る機械とかで測定できないのか?」
「できる。できるというか、そういう調査も既に行われている。だが見つかっていない」
「となると、物理的に入り込めない場所とかか?」
アンヤはポカンと目を丸くした。
「入り込めない場所、だと?」
「ああ、たとえば未発見の洞窟の奥底とか、前人未到の山の頂上とか」
「……その発想はなかった。そうか、物理的にか。魔力方面ばかりで見つからない理由ばかり考えていた」
「あるいはあれだ、精霊さんみたいな存在が隠してるとかもあるかも」
自然な現象ではなく、なにかしらの意図的な理由で隠されていたならばここまでヒントがないのも頷ける。
「精霊? あんなものが何をしようというのだ、あらゆる制約に縛られた無能な神だぞ」
未だに精霊ってのがふわっとした存在すぎてよくわからない。
「いやでも俺のこと助けてくれたし」
「精霊が人間を助けるだと? 勇者特有の能力、いや権限ということか?」
顕現じゃなくて権限なのか。
それが勇者特有のアレだというのなら、今一度試してみよう。
「精霊さん、カモン!」
美少女がボフンと出てきた。
「はい、いかがしましたか?」
「世界樹の葉の場所について教えてくれ」
「はい、世界樹の葉の場所について調べてみました!」
精霊さんニッコリと笑って回答する。
「調べた結果、よくわかりませんでした! いかがでしたか?」
「……うん、ありがとう」
ボフンと消える精霊。
「……なんだったんだ今の」
「さあ……?」
アンヤとちょっとだけ仲良くなった。