ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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※ネタバレ 地下世界には繋がってません

 

 

 大穴の周辺は、不気味なほどに静まり返っていた。

 森は静寂に包まれ、生き物の気配はない。

 

「慎重にここまで来ましたが……近くまで来たのに、まるで穴があるようには見えませんね」

 

 ルナリアは大穴周辺を慎重に歩き、推論を語る。

 

「木々がカモフラージュとなって大穴を隠しています。もし偶然穴に辿り着いた者がいたとしても、落下して死亡してしまっていたのかもしれません」

 

「うへえ、転落死とかおっかな……魔法じゃなくて天然の落とし穴、ってオチだったわけか」

 

 もしうっかり落ちてたら……と思うとぞっとするな。

 穴の深さは暗くて見えないほどで、相当ありそうだ。

 ……いや、それでも落ちたところで、俺やルナリアは単純に身体の強度的に耐えられるのか?

 

「なんにせよ、なにかあるとしたら穴の底だろうな」

 

「はあーっ、深いですねえ」

 

 ソニアが四つん這いになって穴の奥底を覗こうとした。

 

「お、おいっ。落ちたらどうするんだ」

 

「落ちる前にカッコよく助けてくださーい」

 

 この向こう見ずっぷり、若いなぁ。

 とはいえ危ないので、俺はカッコよくグイっとソニアの脚を引っ張る。

 

「ひゃばっ!?」

 

 ソニアは顔を地面に強打し、悲鳴をあげた。

 

「乙女の脚を引っ張るなんてサイテーです。離してくださーい」

 

「お、おう。イケメンですまん」

 

 強打したこと自体はノーダメらしい。

 やっといてなんだけど、さすが武闘家。リアクションが頑丈だ。

 

 

 

 

 

 

 最初から大穴があることはわかっていたのだから、ちゃんと長いロープも持ってきていた。

 

「これで降りるぞ、じゃんけん負けた奴が先な」

 

「勇者なら勇気あるところ見せろやお前よお」

 

「おっ勇者サイモン氏が先行くってよ! みんな帽子振って見送ってやれ!」

 

「おい」

 

 なんだかんだでじゃんけんの結果、一番は結局サイモンになった。

 

「おーい」

 

「サイモンの! ちょっとイイとこ見てみたい! それっ落下! 落下!」

 

「てめーら……覚えとけよ」

 

 垂らされたロープをつたってサイモンが穴の中に降りる。

 大穴の壁面は岩場がむき出しの崖で、葉や枝がないのでひっかかる心配がないのはありがたい。

 

「よいしょーっと、っくらぁ」

 

 年寄りくさい声でサイモンがロープから飛び降りる。

 奥底で、ボッと松明の明かりが灯ったのが見えた。

 

「おーい、大丈夫そうかー? 底に毒ガスとか溜まってないかー? 松明の火で爆発しそうかー?」

 

「事後でサラッと怖いこと言うな!  そういう危険があるなら先に言え!」

 

「ラジオ体操第一ィー! 深呼吸ー!」

 

「するか! お前も降りて来い!」

 

「わかった、わかった」

 

 俺もロープをつたって大穴の中に降りる。

 穴底に辿り着いたタイミングで、焦れたらしいルナリアがロープなしで飛び込んでズドンと着地してきた。

 落石かと思った。

 舞い上がる土煙、片膝をついてすっくと立ち上がるルナリア。

 強そう(強い)。

 

「勇者様、あれは」

 

 ルナリアがおすまし顔で視線を向ける。

 数百メートルをフィジカルで飛び降りる系聖女様。

 それはともかくとして、ルナリアの視線を追うと穴の底には更に横穴があった。

 人間が通れるほどの、いかにもな洞窟。

 ……よし。

 

「おっ、なんだお前が行くのか?」

 

「まあたまにはな」

 

 俺は洞窟へ入る。

 先程はサイモンにまかせてしまったが、本当に危なそうな場所は俺が率先して行かねばなるまい。

 それこそ勇者だから、なんて理由じゃない。

 この旅は、結局は俺のわがままの旅だ。各々に目的があるとはいえ、俺の目標に向けて進路を決めている旅だ。

 だから、いい加減な部分はそれはそれでいいとして、リーダーとしての責任は手放したくない。

 

「さて、鬼が出てくるか、蛇が出てくるか……」

 

 洞窟の先に目を凝らす。そこには―――

 

「にゃー」

 

「猫が出てくるのか……」

 

 にゃんでやねん。

 

 

 




書き溜めはここで終わりです。
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