ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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秘境のラビリンス

 

 

「にゃー」

 

「にーにー」

 

「なー」

 

「にゃっ」

 

「ネコと和解せよ」

 

「にゃうー」

 

「なぁう」

 

 猫だ。

 猫パラダイスだ。

 たくさんの猫が、洞窟の中で気ままに過ごしていた。

 

「これはあれか、猫集会か」

 

 猫集会、それは近所の猫が人気のない場所に集まる謎の集会。

 なにかを語り合うこともなく、寄り添い合うこともなく。

 ただ一定の距離を開けて集まりあった彼らの真意は計り知れない。

 いや、集会といっても所詮は畜生。なにか議論をしているわけでもあるまいし、深く考えるだけバカバカしいのだろう。

 

「ようこそ、客人よ」

 

「猫が喋った!」

 

 なにか議論をしている可能性が急浮上した。

 やめてくんねーかな、こういう前提ひっくり返すやつ。

 

「なにを驚いているのです」

 

「いや、驚いたというか……お前、何者だ?」

 

「見ての通りのかわいい猫ですが。なにか?」

 

「いや、だからなんで猫が……」

 

「にゃあ」

 

「……とってつけたように鳴くなよ」

 

 まるでそんな疑問を抱くお前がおかしいとでも言いたげな表情で首を傾げる猫。

 いや、原作では喋る馬のエドとかもいたし、喋る猫がいても別に不思議じゃないんだけど……

 

「それより、どうです? せっかくです、我々の会に参加いたしますか?」

 

「いや……うん……」

 

 深く考えない方がいいことも世の中にはある。うん。

 俺は考えることを放棄した。

 

「参加します」

 

「勇者様?」

 

 後ろからついてきたルナリアが驚きの声を上げた。

 

「参加するのですか、猫の集会に?」

 

「ああ、参加する」

 

「猫ですよ? 我々がキャットフライを食べているのをお忘れですか?」

 

「人だって人を愛しつつも人を殺すんだ、そんなこともあるだろう」

 

「そ、そうですか……」

 

 なにか言いたげなルナリア。

 だが、俺は猫集会に参加する。

 

「では、こちらにどうぞ」

 

「承知したにゃ」

 

「語尾はけっこうです」

 

 俺は猫に誘われるまま洞窟の奥へ奥へと進んでいく。

 洞窟の奥に行くと、そこには……

 

「すごろく場?」

 

「はい、我々はこの遺跡を突破することを目的とした会なのです」

 

 猫集会は、すごろく場だった。

 なにいってんだと思われるだろうが、マジですごろく場だった。

 誰もが思い浮かべるすごろく、あれを人間が駒になるサイズで据えられていた。

 

「あれ。もっと神秘的っていうか、世界樹! って感じのキラキラ魔力な場面を想像していたんだけど……」

 

 精霊が飛び交ってたり、地面が光ってたりとか、そういうファンタジックな演出を期待していた。

 それが猫集会からのすごろく場。

 猫と和解したくなってきた。

 

「神代の暦より残されたいにしえの遺跡―――それがこのすごろく場なのです」

 

「すごろく場で神秘要素だされてもなぁ……」

 

 春画のようなシュールさを感じる。

 当時はただのエロ画像だったけど、現代人はかつての美術風俗資料として様々な価値を見出して有り難がている……みたいな。

 このすごろく場を作った神代の人々も、まさか今になって遺跡扱いされるとは思わないだろう。

 未来に文明が一度崩壊したら、日本中にある野球球場を「当時の神殿」とか思われるのかもしれない。

 

「では、これより第108回、すごろく攻略会議を始めます」

 

「「にゃー!」」

 

「歴史長いんだな……」

 

「不定期開催です。猫なので、時間間隔が曖昧なのです」

 

「ひょっとしたら毎日やってて3ヶ月の歴史って可能性もあるのか……」

 

 歴史、短いかもしれない。

 

「議題は当然すごろくです。すごろくのルールはご存知ですか?」

 

「そうだな、特別なものでなければご存知だ」

 

 ドラクエ3にはミニゲームにすごろくがあるが、それだってルール説明が必要ないくらいに簡単なものだ。

 すごろくのルールなんて日本人なら誰でも、というか似たゲームは世界中にあるから地球上の50億人くらいはご存知だろう。

 

「このすごろくに挑んでいただけませんか? どうやら魔法の力によって、人間以外は参加できないという成約が課されているようなのです」

 

「そりゃ、猫がプレイする前提ではないだろうな」

 

 本来は野生動物で誤作動しないようにするための仕組みなのかもしれない。

 

「参加するのですか? すごろくに」

 

 ルナリアが再び驚愕顔で訊ねてきた。

 

「ルナリア。今の俺が、さして深く考えず行動しているのは事実だ」

 

「はあ」

 

「穴の底にボスがいると覚悟していたからこそ、肩透かしを食らった感が強い。なにせ猫だ。どうにでもなれ」

 

「はあ……」

 

 ルナリアの二度目の「はあ」はため息だった。

 俺はすごろく場のスタート地点に登る。

 猫が俺の頭の上に乗ってきた。

 

「お前も行くのか?」

 

「あの扉の先に行かねばならないのです」

 

 猫はゴールマス、その先に続く大きな観音扉を見やる。

 なるほど、であれば行くしかあるまい。

 

「いくぞおおぉぉぉっ!!!」

 

 俺は気合を入れた。

 

 

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