ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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6年目時点の勇者パーティーの覚え書き

アルス     勇者  22歳      レベル 99
ルナリア    聖女  23歳      レベル200
エイダ(死亡) 盗賊  16歳(死亡時) レベル  5
ソニア     武闘家 18歳      レベル 13
カンダタ    遊び人 31歳      レベル 14
シャキア    海賊  26歳      レベル未設定
ラハブ     船長  99歳      レベル未設定

                   ……+モブ船員多数


死者蘇生

 

 ドラクエ史上最大最悪のバグ技、キメラバグ。

 メーカー側が用意した正規の技ではなく想定外の挙動を利用したバグ技である為、なんならアイテム増殖以外のあらゆるデータ改造が可能な万能技だ。

 しかし所詮は想定外。ゲームデータを破損する可能性があることから、基本的に事前セーブは必須。

 やり直しができない現実世界ではあんまりやりたくはないキメラバグであるが、世界樹の葉を一枚複製するくらいであればつつがなく成功した。

 目の前には2枚の葉。俺はそれをそれぞれ両手に持ち、目に当てる。

 

「ウルトラ男」

 

「一枚寄越せ!」

 

 俺から世界樹の葉を一枚奪い取り、アンヤはそれをじろじろと眺める。

 

「制女、お前は死者蘇生の儀式が出来るのだな?」

 

「ニュアンスに敬意を感じなかったので使えません」

 

「ま、待て、悪かった。だから意地悪をするな。頼む」

 

 真っ直ぐに頭を下げるアンヤ。

 それにほだされたかのように、迷いの表情を浮かべるルナリア。

 こういう悪ぶってる奴が神妙な態度を取ると、ギャップで許してしまいたくなる気持ちはわかる。

 ましてイケメン。こいつは顔がいいのだ。

 人は外見ではない、なんて嘘だ。イケメン補正は確実に存在する。

 

「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪祝呪呪呪呪呪呪呪……」

 

「勇者様、闇落ちしないでくださぁい」

 

 ソニアがよしよししてくれる。

 気持ちは嬉しいが、ソニアもまた美少女だ。フツメンの気持ちなどわかるまい。

 

「イケメンなんて死滅すればいい」

 

「……勇者様だって世間的にイケメンでわぁー?」

 

 指摘され、思い出す。

 そうだ、俺はイケメンだった。少なくともこの世界では。

 俺の心は浄化されていった。気分は死に際に愛犬と教会の絵を見れた少年だ。

 

「アンヤ、前言撤回だ。死ななくていい、生きていいぞ」

 

「貴様の意向に関わらず死ぬ気などない。貴様が死ね」

 

「ああん? なんだテメー、イケメンパワーバトルすっかコラァ!」

 

「よくわからんが受けて立とう。イエメンパンダバトル? に応じてやる」

 

「喧嘩するようなら死者蘇生の儀式を行いませんよ」

 

 俺たちはルナリアの一喝に制女された。

 

 

 

 

 

 

 死者蘇生の儀式は、カサンが誇る学園の魔法実験場で行われることになった。

 アンヤの研究室でも準備が行われていたのだが、俺とアンヤの公平性という観点から……というわけではなく、部屋が汚すぎて無理ってことになった。

 目の前には2つの棺。

 片方には少女にしか見えない少年の亡骸。俺の執念ともいえる労力により、年単位で保存してみせたエイダちゃんの死体。

 魔法を駆使したことにより、肉体的にはかろうじてだが死亡直後の新鮮な状態を維持している。

 かたや、もう一つの棺に収まっているのは……粉? 灰か?

 

「おいアンヤ、あれってキューレの……粉?」

 

「粉というな」

 

「あの状態から本当に蘇生できるのか? お好み焼きになったりしないか?」

 

「我が妹を小麦粉扱いするな」

 

 ルナリアがこほんと咳払いをした。

 オッサンのウオッゴホン、カーッ、みたいなものとは違う、かわいい咳払いだ。

 美少女は咳払いまでかわいい。こほん。

 

「それでは、死者蘇生の儀式を始めます」

 

 ルナリアは部屋の中央に立つ。彼女は幼い頃から貴族らしく英才教育を受けているので、俺のような感覚派と違って色々と魔法の応用を習得しているのだ。

 フラスコに入った透明の液体を垂らしたり、怪しげな植物の根を配置したり。

 じつに魔法っぽい。しかも闇魔術とかそっち系。

 ……死者蘇生って神聖な魔法じゃないのか?

 

「それは?」

 

「聖水です、儀式用の」

 

「聖水に種類なんてあったのか。冒険中に使う、魔物が寄ってこなくなる聖水とは違うのか?」

 

「成分は同じです。ただ、込められた魔力が違います」

 

「魔力?」

 

「儀式用は魔力をたくさん込められているので、取り扱いが難しいのです。なんなら衝撃で破裂します」

 

「まじか、それはそれで魔物に投げつけて攻撃に使えそうだな」

 

 あんまり覚えがないけど、聖水ってアイテムは戦闘中にも使用できたと思う。

 値段の割に威力がしょっぱいともっぱらの評判のやつ。

 

「それができるなら、戦闘用と儀式用に区分などしません。危ないです」

 

「まあ、ニトログリセリンを投げつけるみたいなもんだしな」

 

 敵の元で爆発する前に手元で爆発するかもしれない。

 その辺の具合をマイルドに調節したのが、戦闘用の聖水なのだろう。

 とか考えていると、ソニアが俺の裾を引いた。

 

「勇者様、ルナちゃんの邪魔しちゃダメですよぉ」

 

 ソニアに叱られてしまった。

 確かにその通りだ。俺の知的好奇心を満たすのはあとでいい。

 

「すまん、ルナちゃん。儀式を進めてくれ」

 

「承知しました。……あの、最近ルナちゃんというあだ名が流行ってませんか?」

 

「気の所為だぞルナちゃん」

 

「気の所為ですよぉルナちゃん」

 

 むしろ年単位の付き合いなのに今更あだ名ってのはどうなんだろう。

 ルナリアが世界樹の葉を煎じて、エイダちゃんの亡骸の口に含ませる。キューレの粉にはふりかけた。

 部屋の中央に巨大な魔法陣が出現する。

 

「それでは始めます」

 

 俺とアンヤはゴクリと生唾を飲む。

 ルナリアが杖を振り下ろすと、陣から光が溢れる。

 そういえば彼女の装備は復活の杖だ。意味があるのかわからないが、この儀式にはうってつけの杖だろう。

 

「我命ず、彷徨える霊魂よ、汝の魂をいま一度肉体へ宿せ。―――ザオリク!」

 

 呪文と共に魔法陣が明滅する。

 傍目には俺たちにはただ光っているようにしか見えないが、ルナリアは真剣な眼差しで呪文を唱え続ける。

 魔法陣から光が溢れ、その光が部屋の中央に収束していく。

 

「おお……」

 

 俺は思わず感嘆の声を漏らした。

 光が収まり、そして―――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

エイダとキューレの蘇生の成功、失敗を10面サイコロで決定します。

1〜5  成功

6〜10 失敗

 

エイダ   3

キューレ  1

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……なんだ、ここ、どうなった?」

 

「……兄上? 我はどうして?」

 

 ―――そして、そこには2人の少女が不思議そうな表情で、身体を起こしていた。

 

 

 

 




やり直しナシの一回っきりというルールで、ドキドキしながらサイコロを振ったわけですが。
普通に二人とも生き返るとなると、それはそれでもにょります。
なんていうか、もっとこう悲劇というかドラマチックなアレが欲しかった。
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