お茶会パートその2。
俺のギャグで仲間たちが「ドッ」と爆笑したのち、俺はアンヤに訊ねる。
「アンヤ。キューレの様子はどうだ、生き返る前と別人か?」
「我本人の前でそれを訊くな」
「……別人という印象はない。いや、間違いなく本人だろう。兄への愛を感じる」
「我が言うのもなんだが、我から愛を感じるというなら我は偽物かもしれん……」
キューレは思い悩み始めた。
アンヤは深く頷く。
「この素直に兄への愛を伝えられない感じ、間違いない。やはりキューレだ」
キューレが嫌悪感丸出しの顔を一瞬見せた。
兄ってつらい。
「そういう貴様こそ、その小娘がエイダ当人であると確信はあるのか?」
「娘じゃねえよバカヤロウ。俺は男だ」
「そう言われると、もしかしたら別人かもしれない。エイダのやつ、自分が男だったと主張していてな……」
「記憶違いじゃねえよバカヤロウ。俺は男だ」
「結局どうなのだ。これは蘇生前と同一人物なのか?」
「これっていうな!」
この子、徹底的にツッコミ入れてて疲れないのだろうか。
「まあ、たぶん。同一人物だ」
この数日、じっくりとエイダちゃんを観察した。
身体的な異常が起きていないか観察するために、無理矢理にチャイナドレスを着せて。
ドレスの深いスリットからすらりと伸びたすね毛一つない足も、こころなしか膨らんでいる胸も、6年前のままだ。
……胸の膨らみはドレスの中に装備している神秘のビキニによるもの……のはずだけど、その割に違和感がないのが差異といえば差異だ。
以前より尻も丸くなった気がする。全体的な空気が、なんていうか、違う。
「一度、身体検査してみる必要があるかもしれない」
「おいおいおいおい、しっかりしてくれよっ。この身体、大丈夫なんだろうな!?」
慌てふためくエイダちゃん。自分の身体に異常があるかもしれないと言われれば、そりゃあ慌てる。
失われしロトの剣はいずこに。
「しかし、死者蘇生ってのは考えれば考えるほどややこしい話だな。ひょっとしたらエイダちゃんの魂はすでに成仏していて、今目の前にいるエイダちゃんの魂は生前の魂をコピーした複製品なのかもしれない」
「本人を前にこえーこと言うな!」
エイダちゃんが叫んだ。
「あるいは蘇ったように見えているだけかもしれんぞ。目の前で動き笑っているキューレは、もしかしたらそのように魔法の力で動いているだけの死体かもしれぬ」
「本人を前に怖いことを言うな!」
キューレが叫んだ。
ドラクエ3というゲームは『性格』というステータスが時々変化する。
生き返った人間はツッコミという性格になるのかもしれない。
「ですけどぉー、魔法の力で動いている死体なら、外から判断しようがないですよぉー?」
ソニアが言う。聞いたことがある、哲学ゾンビってやつだっけ。
当人に意識はないけど、見かけ上は普通の人間のように動いているせいで誰も当人の死亡に気付けない。
思考実験上の仮定の存在のように思えるが、推理小説ではままある状況だ。
死亡推定時刻を捏造すれば、サクッと哲学ゾンビの爆誕である。
あるいは、最近流行りの人工知能も哲学ゾンビといえるかもしれない。
死人はざらに近所を歩き回っているのだろう。ゾンビみたいに。
「あるいは俺たちももしかしたら小説の中の登場人物で、哲学ゾンビといえる存在なのおおっと?」
ルナリアに後ろから羽交い締めにされた。
「いけません勇者様、それはダメです。本当に駄目です」
ダメらしい。
ドッ。