ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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ゲーム特有の「なんでそんなとこで営業してんの」って店

 

 

 アリアハン湾に流れ込む大河。

 それを渡る大橋を超え、俺達は海を左手に見ながら歩く。

 まだ街道は伸びていて、歩くのに支障はない。

 新装備を踏まえての戦闘は、一言でいって楽勝だった。

 目の前に現れた大鴉達。

 複数匹のモンスターを、刃のブーメランで一掃する。

 ルナリアがなにかするまでもなく、モンスターは全滅した。

 

「つえええっ」

 

「そうですね。これほど違うとは思いませんでした」

 

 大鴉の死体を集め、ナイフで解体していく。

 本を見て見様見真似なので下手だが、これは数をこなしていけば解決するだろう。

 勿論最初は躊躇があったが、意外とすぐ慣れた。

 むしろ、箱入り娘らしいルナリアのほうが戸惑っている印象がある。

 弱いモンスターばかりということもあり、俺達はモンスターを蹴散らしながら洞窟に到着した。

 

 

 

 

 

 

「松明がある。管理されてる洞窟なんだな」

 

「ナジミの塔は灯台ですから。むしろ、国が管理していない方がおかしいでしょう」

 

 最初のダンジョンということもあって、アリアハン西の洞窟はかなり歩きやすかった。

 灯りも設置されているし、道も整備されている。

 むしろ、なんでモンスターが出るのか不思議なくらいだ。

 

「おっ、一角ウサギだ!」

 

 ツノが生えたウサギをブーメランで切り伏せる。はい全滅。

 流れ作業だ。これって勇者のやることなんだろうか。

 俺もルナリアも攻撃魔法を使えない以上、物理で攻撃するしかないのだ。

 とんだ脳筋パーティである。

 

「道が分かれてる……ゲームと同じとはいかないな」

 

 とりあえず勘で進むと、元の場所に戻ってきた。

 バカにしてるんだろうか。

 選ばなかった道を進むと、次は建物の中だった。

 

「ここがナジミの塔か」

 

 自然物が多い地下トンネルから人工物である塔に侵入したことで、方向感覚が復活した。

 とりあえず外を目指す。塔の正面玄関を出ると、そこは大海原だった。

 

「はーっ」

 

 声を上げたのは俺ではなくルナリアだ。

 暗く湿っぽいトンネルは、彼女にとっても負担だったんだろう。

 まだ日は高いが、俺はここで一度休息を取ることにした。

 

「確かこの塔には宿泊施設があるはずだ。中に戻って、部屋を探すとしよう」

 

 

 

 

 

 

「おおっ。しばらくぶりのお客さんだ。嬉しいなあ」

 

 塔の一画を改装して作られた宿屋を発見した。

 宿は2部屋から成り立っていた。1部屋は受付兼調理場兼従業員休憩所兼倉庫だ。

 つまり宿の経営に必要な機能を全部ここで満たしている。

 そしてもう1部屋に泊まるらしく、最初の部屋の無茶っぷりからすれば随分と宿屋らしい体裁を整えられていた。

 それでも客室が1つしかないあたり、色々と無茶をしているんだろう。

 

「っていうかどうやって生計立ててるんですか?」

 

 荷物を下ろし、主人に訊ねる。

 意外と人が来るのかもしれない―――という推測は、主人の第一声からして破綻している。

 人が来なさそうな場所らしく、やっぱり人は来ないのだ。

 

「国から補助金を貰ってるんですよ。兵士さんや冒険者さんが時々来るので」

 

「ああ、なるほど」

 

 仕事としては成り立たないが、ないと困る。そういう仕事なんだろう。

 

「食事って出るんですか?」

 

「出せますよ。ただどうしても貧相になるので、自分で食材とか持ち込んで調理するって人も多いです。どうしますか? 宿代とは別料金で、しかも高くなりますが」

 

 正直に言うあたり、正直者というか商売っ気がないというか。

 最悪客が来なくても補助金でやっていけるという考えもあるのかもしれない。

 俺は荷解きをするルナリアとアイコンタクトで頷き合う。

 

「お願いします。2食分」

 

「かしこまりました」

 

 やがて届けられたのは、塩漬けの魚と乾燥野菜を炒めてパイで包んだ料理だった。

 

「美味え!」

 

「美味しいです……!」

 

 俺達は夢中で食べた。

 塩漬けされた青魚のしょっぱさが、しなびた野菜と分厚いパイ生地によく馴染んでいる。

 パイってお菓子ってイメージだった。ここまでしっかりした生地だと、食事として充分腹に貯まる。

 調和している。材料の質は保存前提で悪いのかもしれないが、各々の味が見事調和している……!

 

「料理ですね……!」

 

「ああ、料理だ!」

 

「そ、そんなに喜んで貰えるようなものですか……?」

 

 宿の主人が嬉しそうにしつつも困っていた。

 彼には分かるまい。俺達が旅の道中、どれだけ不味いものを食べてきたか。

 練習のつもりで作れば作るほど、出来るのは産業廃棄物。

 素人が誰に教わることもなく試行錯誤したところで、最適解は目指せない。

 

「仕事の範疇じゃないと思いますが、明日、お弁当をお願い出来ませんか?」

 

「そうですね。是非、お願いいたします」

 

 1食分だけでもまともな食べ物を得られるならそうしたい。

 俺達は頼み込み、料金を支払ってお弁当を2つ作ってもらう約束を取り付けたのだった。

 

 

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