ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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自己肯定感の自給自足生活

 

 

 

 1ヶ月後。

 俺たちはアリア号をレイアムランド仕様の動力ソリに組み替えて、探索を行っていた。

 極地ではコンパスなんて役に立たない。凍りついて壊れそうな機械時計と太陽の位置から方角を割り出し、ひたすら大陸を横断する。

 そして一定距離を進むと、エイダちゃんの鷹の目で周囲を観察。周りになにかないかを確認するのである。

 船の人員のローテーションも考え、3交代で仕事をする。8時間労働とか現代的でちょっとやだ。

 戦力を分散させるためにルナリアとは別チームだ。だから、最近はめっきりルナリアと話していない。

 

「寂しいですかぁー?」

 

「べべべ、別に寂しくなんかないんだからねっ!」

 

「きんもーっ☆」

 

 代わりといっては本当になんだけど、ソニアと同じチームだ。

 彼女は武闘家として堅実に経験を積み、かなり強くなってきた。

 それでも細腕細身なのは、さすがにファンタジー。

 美少女がムキムキになったら困る。いや、そういう需要もあるんだろうけど。

 

「なんといいますかぁ、最初に思っていたのとは違う旅になってきましたぁ」

 

「というと?」

 

「わたしぃ、てっきり人々を救って、悪の魔王を倒してめでたしめでたしぃ、みたいな旅になるとおもっていたっていうかー」

 

 ソニア的な想定だと、それこそ古典的王道ファンタジーな感じで物語が進むと思っていたらしい。

 

「それがぁ、魔族が一緒になったりぃー、チカセカイ? に行こうってなったりぃー? もう、誰かを倒してカイケツって話じゃなくなってきたって言いますかぁー」

 

「それで解決することももちろんできるんだろうけどな。俺はいやだなって」

 

「そうですねぇー。そういう繊細さ、嫌いじゃないですよぉー」

 

「惚れるなよ?」

 

「惚れてますよぉー?」

 

 レイアムランドの魔物はなかなかに強い。俺たちレベルカンスト組はともかく、普通にレベルアップしている組はちょっとつらいかもしれない。

 エイダちゃんは般若の面を手放せなくなっている。マジキチ。

 そのエイダちゃんの負担が心配だ。他の仕事を免除しているが、定期的に起きて鷹の目を使わなければならないので、生活リズムがめちゃくちゃになっている。

 自律神経がアレなことにならなければいいけど。もし問題が生じたら、探索の効率を落としてでも夜の休憩を儲けるべきだろうな。

 

「まあ、夜、来ないけど」

 

 そういえば、南極隊では日が出続けることで不眠症になったりすることもあるんだとか。

 ……自律神経の危機、ひょっとしたらパーティー全員の問題かもしれない。

 

 

 

 

 

 更に1ヶ月後。

 

「……というわけで、勇者はうっかりお姫様を手篭めにしてしまったことで竜王退治に行かなきゃいけなくなったわけだ。めでたしめでたし」

 

「めでたいんですか、それぇー?」

 

 暇すぎて俺は、自分が知っている物語を仲間たちに語ったりしていた。

 

「結果的にお姫様と結ばれて子供ができたんだ、めでたいんだろう。子宝的な意味で」

 

「おめでたいですねぇー。頭的な意味で」

 

 ベギラマが最強魔法のへっぽこ勇者だ、そんなものだろう。

 本懐を果たしもせずに姫を宿に連れ込むような男だ。ちょっと職業倫理に乏しい気がしてならない。

 勇者として恥ずかしくない自覚をもってほしい。俺みたいに。

 プロ意識ってやつだ。勇者として……

 

「……そういえば、俺もはした金だけ持たされて旅立ったんだった」

 

 仕事と引き換えに金銭を受け取るのがプロだとすれば、俺は金銭貰ってないぞ。

 プロじゃねえわ。アマチュア勇者だわ俺。

 対竜王勇者にしても、旅立ちの資金ははした金だったはず。

 そりゃプロ意識なんて持てるはずがない。やりがい搾取ってやつだ。

 考えてみると、勇者家業はとんでもなくブラック労働である。

 24時間頑張っても誰も褒めてくれない。悲しい。

 

「よしよし♡ 勇者くんはいっつも頑張ってるよ♡ えらいえらい♡」

 

 自分を褒めてみた。

 ソニアが隣でドン引きしている。

 でも大切だと思うんだ、自分を褒めるのって。

 自己肯定感を育てるのが昨今のトレンド。

 OLがよくやってる。

 

「ざぁーこ♡ ざぁーこ♡ よわよわ♡ 気が付くとオッサンばっかりとつるんでる♡ 男の人ばっかりにモテモテ♡ 童貞の前に処女捨てちゃう♡」

 

「自己肯定感下げにかかるのやめてもらえませんかね、ソニアさん……」

 

「でもそんなあなたが好き♡」

 

 

 

 

 

 

 年越しだ。

 勇者パーティーは世界中の人間が集まっているだけあって、特定の文化に限定されない。

 というか一年の始まりというのは文化的な理由で定められたものであり、天文学的になにかしら根拠のある日ではない。

 よって、各人にとっての1年の始まりというのはバラバラだ。まあ文明圏出身者であればだいたい1月1日からだけど、魔族のアンヤやキューレ、異大陸出身のシャキアなどは別の暦を持っているっぽい。

 

「けどそんなの関係ねえ! 関係ねえ! はい、おっ……オッペンハイマー!」

 

 やばいやばい、著作権という暴力で全てを蹂躙されるところだった。軽率な発言をするものじゃないな。

 スクエニへの配慮? いやこれはドラクエ3という作品の広告になってるから。きっと今頃地球ではリメイク版が発売されてて大絶賛されてるから。

 きっと現代技術によって、ラーミアも飛空艇インビンシブル並に高速化しているに違いない。

 サラマンダーよりはやーい!

 俺は寸胴鍋で乾燥蕎麦を茹でる。

 メイドインジパング。長期保存が可能な乾麺の歴史は古く、この世界にもすでに存在する。

 なんなら、この手の乾燥食材は通貨の起源とすらいえる。人類史より歴史が古いのだ。

 物々交換社会が通貨経済社会に発展したのも、リソースを集中させることで国力を増強させるための投資事業を行えるようになったのも、すべては保存食の恩恵。

 赤道付近の国が発展しにくかったのは、食料が長期保存できなかったから……なんて説まであるのだ。

 とにかく乾燥麺は偉大。乾燥麺はイタリア軍を救う。ただし砂漠は勘弁な!

 

「よし、そろそろ茹で上がったな」

 

 蕎麦をザルに上げて、雪を溶かした水で締める。

 極地の氷をコップに入れると何万年前の空気がパチパチはじけるって話があるけど、実際に使ってみると思うことは一つ。

 自然の氷を食用に使うのって大丈夫なんかなぁ……。

 いちおう表面の雪は使わないようにしているけど、まあ、この中世世界であんまり衛生面について考えても仕方があるまい。

 不衛生? そんなの関係ねえ!

 

「はい、オッパッピー!」

 

 あーあ。

 仲間たちのキチガイを見る目は慣れたものである。

 

 

 




FFのやばい速さの飛空艇といえばインビンシブル。
……と思って一応検索してみたら、なんか勘違いしていたみたいです。ただしくはノーチラス。
たぶんチョコボレーシングの影響。
とりあえず作中では主人公も勘違いで覚えていた、ということで。
にしても、ドラクエ7のそらとぶ乗り物、飛空石はなんとかならなかったんでしょうか。穴が開いた大岩って。
使い所がなくなった主人公たちの自作船に飛行石を組み込んで飛空艇に…とかだとロマンだったんですけどね。
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