おでんをおかずとして考えた場合、主食をなににすべきか…
肉系の具を入れてご飯を主食とすべきか、うどんを一緒に煮込んでしまうか。
洗い物が増えないので、最近はおでんうどんばっかり。
当初の予定では、レイアムランドの探索は順調にいって2ヶ月かかる予定だった。
エイダちゃんの『鷹の目』を一日2回、合計およそ100回使うという計算。
なにかしらスケジュールは遅れるものだから、多めに見積もって3ヶ月として、終了予定はお正月あたりになる。
とはいえこれは、レイアムランド全体をほぼ探索しつくすのに必要なスケジュール。
実際は途中で見つかるであろうことから、おそらくぼちぼちのタイミングで見つかるだろうと考えられていた。
なんなら、探索1日目で見つかる可能性だってあったのだ。
「まさか最後の1回で見つかるとは思わんじゃん」
連日の鷹の眼使用にぐったりしたエイダちゃん。仰向けで手足を投げ出して力なく横たわる姿が、妙に色っぽいのはなんなのだろうか。
いや、今や彼も彼女なのだから、色っぽいことは不思議ではないのだけれど。
「ひ、東に30キロくらい……なんか建物、あった」
そう言い残し、眠ってしまったエイダちゃん。
お疲れ様である。
沈まない夕日の中を疾走するアリア号。新開発されたガソリンエンジンは景気よくプロペラを回し、船は自動車より少し遅い程度の速さで移動する。
寒冷地のガソリンエンジンは始動こそ大変だが、一度動きだせば自分の熱で軽快に動き続けてくれる。
最近流行りの電気自動車はこの辺逆だ。始動はまあまあできるけど、すぐ電圧がヘタる。
問題といえばエンジンオイルも景気よく漏れてることくらい。なあに、漏れるのはオイルが入ってる証拠証拠。
雪原に黒いシミを残し、環境破壊しつつ進むソリ。
南極条約ファッキンである。
30キロメートルなど動力車両にとっては大した距離ではない。船はやがて、巨大な祠にたどり着いた。
「……なんだこれ。塔?」
しいていえば、石造りの灯台か。
フロアが階層構造になっているわけではなくて、そう、すごく足の長い高床式倉庫みたいな感じだ。
マヤのピラミッド、あれを縦に引き伸ばした感じかもしれない。
頂上の構造物、建物らしき部分まで長い階段が続いている。
神聖な場所ってのは、どうして長い階段の先にあるんだろうな。演出なのだろうか。
……この階段、凍りついててすっ転んだら大怪我だな。
俺たちが顔を見合わせ、頷く。
「「「どうぞどうぞどうぞ」」」
先頭を譲り合う俺たちであった。
「ぐーりーこ!」
「ちーよーこーれーいーと!」
「ぱ、ぱ、なんだっけ……パンツ!」
俺たちはレクリエーション感覚で階段を登っていた。
上の方で双子がじれったそうにこちらを覗き込んでいるが、俺たちはそんなこと気にしない。
「あの、パーはパイナ」
「おいルナリア、正解教えんなって。こいつバカだから文字数減ってるの気付いてねえし」
「聞こえてるぞ、ちょっと女子ぃー」
ところで俺は、かつてグーの場合「ぐりこのおまけ」で7歩進むというローカルルールがあることを聞いた。
それを友人に話したところ、嘘扱いされた。別に不正に使ったわけでもないのに。
あげく彼は、じゃあ俺は「ぐりこのおまけはうれしいなあはははは」でいくぜ、とかふざけたことをぬかして階段を駆け登っていた。ざけんな。
「はやく」
「はやく」
「のぼってきてください」
「のぼってきてください」
「「私たちは待っています」」
遂に頭上から催促がきた。
「パンツのオマケはうれしいなあははははは」
俺は階段を駆け登っていった。
「パンツのオマケってなんなのでしょう……?」
「そりゃあまあ、履いてる本人じゃねえか?」
「人間のほうがパンツのおまけなのですか?」
ドラクエ3を知っている人からすれば当然だが、この塔のてっぺんは天井がない屋外ふきっさらしだった。
俺たちを待っていたのは美しい双子の少女。彼女たちはユニゾンするように語りだす。
「わたしたちは」
「わたしたちは」
「ごめんちょっと寒い、コート出すわ」
俺は魔法の袋から追加のコートを取り出し、仲間たちにくばる。
レイアムランドの風はとても冷たい。さすがは人類生存不可能圏。
双子は俺の行動をじっと待っていた。
「よし、ちゃんと着込んだからいいぞ。続きお願いします」
「……わたしたちは」
「わたしたちは」
「卵を守っています」
「卵を守っています」
「あっ!」
エイダちゃんが声をあげた。
「どうした、エイダちゃん」
「い、いや、卵で思い出した。そういえばおでんの鍋を火にかけたまんまだった」
「危ないなあ。でも船員が残ってるし、誰かが消してるんじゃないか?」
「わかんねーだろ。おっかないし、ちょっと消してくるわ」
エイダちゃんはキメラの翼を取り出し、ぴゅーっと飛んでアリア号の元へ戻っていった。
「すまん、話の腰を折った。続けてくれ」
「……卵を守っています」
「おでん食べたい」
どうしよう、双子に不和が生じ始めた。
「……まじめにやって」
「おなかすいた。卵食べたい」
「不敬」
「別に神鳥の卵を食べたいわけじゃない」
「決まりを守るべき」
「勇者が来た時のセリフ、正直ダサい」
「ダサくない。がんばって考えた」
「もっとパリピにやるべき」
「ぱりぴ」
双子の片方が「ウェーイ」とか言い出した。
こんな辺鄙な地だ、きっと都会への憧れがあるんだろう。
おらさ東京行ってラーミアの卵孵すだー♪
「外は危険」
「ここも大概危険」
「ここは安全。強き者しか立ち入れない自然の結界の内」
「でも強力な魔物はたくさんいる。本末転倒」
「神の鳥を人の政に巻き込ませてはならない。ここには有象無象の弱兵は来られない。人の国の干渉を防げる」
「でも勇者たちは機械の船でここまで来た。山彦の笛なしでここを探し当てた。今の時代、ここはもう人の立ち入れない領域ではない」
「あなたはただ使命がいやになっただけ」
「あなたがイヤじゃないなら、あなただけで使命を果たせばいい」
「わたしだってイヤ」
「なんと奇遇な」
「どうする?」
「どうしよう」
「勇者に養ってもらう」
「勇者に寄生して世界を見て回る」
「そうしよう」
「そうなろう」
「君たち、ちょっと待ちなさい。なんか勝手に決めてないか?」
双子は姿勢を正し、俺に一礼する。
「「これから、よろしく」」
聞いちゃいねえ。
作中のグリコローカルルールのエピソードは作者の小学校時代の実話です。
その場のノリで書いてしまいましたが、数多あるドラクエ3でもこの双子が仲間入りするのは珍しいでしょう。
私もびっくり。