というわけで、朝ごはんはカレーでした。
しかしこのキャッチコピー、正月とカレーの繋がりがなさすぎてパワープレー過ぎません?
丑の日だってスタミナを付けるとか、こじつけの理由があるのに。
『我は神鳥、ラーミア』
「おーっ……マジものだ」
あの世界で、様々な媒体で見た通りの姿。
全体としては白いが、ところどころ赤や緑の羽も混ざっている。
神々しいというよりは、けっこう生物って感じがする。
あと、生まれたてなのに自分が何者か理解してるんだな。
『汝、勇者の資格を持つ者よ。我が力を欲するか?』
「ああ。俺に力を貸して欲しい」
俺がそう言った瞬間。目の前の白い巨鳥の体が光に包まれた。
そして一瞬の閃光の後、そこに現れたのは一羽の小さな鳥だった。大きさはスズメくらいだろうか? その鳥がパタパタと羽ばたき、俺の肩にとまる。
『契約は成立だ。我が力は主と共にある』
「おっ、おう。よろしくな、ラーミア」
俺は新たな仲間となった白い鳥の頭を撫でる。鳥は気持ちよさそうに目を細めた。
なんか、こいつの前だと調子狂う。
「……あんた、大きさを変えられるのか?」
『うむ。神鳥である我は、厳密には実体を持っていない。故に、自分の体の大きさを自在に変えることができる』
「はえー……質量保存の法則を無視してらっしゃる」
たとえば、密閉した金属容器の中で巨大化したらどうなるんだろう。
核融合とかしてエネルギーが発生するんだろうか。
少なくともエントロピーは増加しそうだ。鳥のミンチ的な意味で。
「今が最小として、最大だとどれくらいの大きさになるんだ?」
『ふむ……試してみるか』
ラーミアがそう言うと、空に飛び上がって再び光に包まれる。
再び現れた姿はかなり巨大化していた。一軒家くらいありそうだ。
「これは凄い。自分の意思で大きさを変えられるのか」
『うむ。と言ってもあまり大きくするのは具合は良くないな。どうにもやはり、身体が重く感じられる』
2乗3乗の法則だろうか。
細かいことはさておいて、つまり小さな飛行機を飛ばすのは簡単だけど、ジャンボジェットを飛ばすのは難しいという法則だ。
飛行物体は大きければ大きいほど、翼に対して重くなり、飛ぶのが難しくなる。
たとえ神の鳥であっても、その法則からは逃れられないのだろう。
じゃあなんで飛行船は全長200メートルサイズなんて怪物を作れるんだ、と思うかもしれないけど、飛行船の場合は浮力=体積だ。
だから、飛行船や水上に浮かぶ船は際限なく大きくできる。もちろん限度はあるけど。
「実際のところ、何人くらい乗せて飛べそうなんだ?」
『さて、試したことがないからな』
そりゃ生まれたばっかりだしな。生後数分。
『しかし、あまり多くは無理だろう。4,5人といったところではないか』
「……そうか」
原作ゲームだと4人パーティーまでだけど、その理由を垣間見た気分だ。
さすがに大洋を渡れる船が、定員4人ってことはないだろうし。
「「伝説の不死鳥ラーミアは蘇りました」」
双子が満足気に語る。
「「ラーミアは神のしもべ。心正しきものだけがその背に乗ることが許されるのです」」
……なにをもってして、「心ただしき者」なのだろう。
「よし、アンヤ、キューレ」
「よしきた」
「正気か貴様」
学者肌で実験好きなアンヤが嬉々と、俺の呼びかけの意味を理解したキューレが恐々としつつ近づいてくる。
そして、ラーミアの背に乗った。
「……どうだ?」
『どうだ、と言われても困る。この者たちがどうかしたのか』
「なるほど」
魔族だからといって、「心ただしき者」じゃないという判定は受けないらしい。
続いて俺はシャキアを乗せた。
「なんだい、このでかい鳥は?」
『勇者よ、先程から何がしたいのだ』
女海賊のシャキアでも、「心ただしき者」判定オーケーなのか。
こいつ、人身売買とかやってたんだけど。
続いて盗賊のエイダちゃんを乗せてみたり、パーティーメンバーと言えるのか微妙な船長に乗ってみてもらったりしたが、それでも乗るのに不都合は生じなかった。
お前の「心ただしき者」判定ガバガバじゃねえか。
「あんまり深く考えるだけ無駄か」
『なんなのだ、いったい』
「いや、すまんかった。それじゃあ最後に俺もいっちょ遊覧飛行しようかな」
俺は満を持して、ラーミアの背に乗る。
『うわっ。きもっ! えんがちょ!えんがちょ!』
「のわーっ!?」
振り落とされた。
こいつ、焼き鳥にしてやる。
ドラクエ3のおもしろ要素として、ダーマ神殿には名前を変えられるキャラがいる。
なんでも、命名の神なんていう謎存在に使える神官らしい。
それでなぜ名前を変えられるのかもよくわからないが、もっと不可思議なのは彼が「ふくろ」の名前まで改名させられることだ。
そんなん、命名神とやらにことわり入れないでサクッと身内内で改名しろよ。
俺らだってアリア号に命名するとき神様にお伺いなんてしなかったぞ。
俺たちはまだダーマ神殿に行っていないから直接会ってないけど、本当に名前を変えられるというのなら。
「ラーミアをヤキトリに改名してやる」
『ぐちぐちとくどいぞ勇者よ。それ以上は器の小ささを露見させるぞ』
「露見ってことは、実のところ器が小さいのは確定なのか」
『ぴよぴよ』
ラーミアはカマトトぶって普通の鳥のフリをしつつ飛んでいってしまった。
なんだあいつ。ご飯までには帰ってきなさい。
ラーミアを仲間? にした俺たちだが、すぐにレイアムランドの祠から離れることはしなかった。
なにせここは大陸だ。しかも極寒の。
そんな場所から人間の住まう北へ向かうには、それ相応のしっかりとした計画が必要なのだ。
「―――我から一つ、提案がある」
祠は天井がないので、俺たちは船に戻って会議をしていた。
俺たちがゲーム通りの4人パーティーであれば、ラーミアに乗って大陸脱出もできただろう。
だが今の俺達は総勢二桁の、ちょっとしたキャラバン状態。空からの脱出は不可能である。
というわけで、ダルマストーブを囲んでの円座会議だ。
双子もちゃっかり参加してる。こいつら、本当についてくる気なのか。
数百年後、この祠が再発見された時、未知の文明の古代遺跡とか騒がれそう。
さて、そんな状況で「提案」とやらを発言するのはバクダ。
「ここで改めて、飛行船を投入してみようではないか」
「うーん」
実は、彼の研究の成果である飛行船は既に完成している。
一度は飛べたのだ。ガソリンエンジンに強化された今となっては、それなりにまともに飛べるようになった。
だが、あくまでジパングでの実験の範疇の話。どうにも安定性に欠けており、実際に使おうという気にはなれなかった。
そもそも、この問題については地球においても最後まで解決しなかった。
飛行船の安全性はおおよそ大丈夫なラインに達した。だからこそ、百年前にそれなりに世界中を飛んでいた。
しかしその巨体はどうしても風に弱く、更にいえば百年の間に発展し尽くした飛行機ほどの安全性には達しなかった。
速度も遅く、安全性も相対的には低い。
故に、飛行機の台頭を前に飛行船は廃れてしまった。
「天候の情報の出揃った地域ならばともかく、極地レイアムランドとなると飛行船の使用を見送るのは当然だ。実際この地に来て常に吹く風を見れば、とても飛行船を使用できる土地ではないと確信できる」
「なのに、今になってどうして飛行船を持ち出そうっていうんだ?」
「我々は、優秀な水先案内人を得たではないか」
そういって、バクダは祠を見上げた。
水先案内人とは、ラーミアのことを言っているのだろうか。
そいつ、さっきひよこのフリして旅に出たぜ。
『勇者よ、我が使命は本当にこれでいいのか……?』
ラーミアはスズメサイズとなってペンを咥え、天気図をカリカリと描いていた。
「ふはははははっ! いいぞいいぞ! 風を読み切った船乗りは最強だああっ!」
船長ノリノリである。
飛行船アリア号は、現在対地速度300キロでかっ飛んでいた。
完全に速度オーバー。狂気である。
「せ、船長! 大丈夫なのかこれ!? 飛行船の速度限界って100キロちょいって聞いたぞ!」
「でーじょーぶだ! 対気速度は150キロくらいだからな!」
それはつまり、現在アリア号は150キロのジェット気流のような風に乗って飛んでいるということである。
やっぱり狂気だった。
ラーミアの天気予報を得て、飛行船アリア号は遂に実用飛行に挑むこととなった。
目的地はジパング。再び卑弥呼のスネを齧って、一旦休息しようという算段である。
そしておそるおそる飛び立ったアリア号であったが、そこで船長が暴走し始めた。
「いいか坊主! 船乗りにとって一番嫌なのは、なんつったって読みきれねえ天候だ! それがクリアしたとあっちゃ、もう躊躇う理由はねえ! 逝くぜえええっ!!!」
逝くな。
どうしたものか。パーティーの責任者として止めるべきか。止められる気がしない。
航海図を覗くと、船はメチャクチャにジグザグと飛行していた。平面的に見るとおおよそ真っ直ぐだが、実際はかなり高度も変化しているらしい。
「俺は今、世界最速だあああっ!!!」
俺たちはレイアムランドからジパングに帰還した。
3日で。