「おお勇者よ、帰ってくるとは喜ばしいのじゃ! ……どした?」
「疲れた」
飛行船アリア号にてジパングに辿り着いた時、船長とラーミア以外の全員がグロッキー状態に陥っていた。
あれだ、せめてシートベルトが必要かもしれない。
失って初めて気付く大切さ。3点式シートベルト最高。
シートベルトの特許をフリーにした人は偉大。おかげで異世界でも法的に問題なく、心置きなくシートベルトをパクれる。
イシスで王様やってた頃に、色々地球のアイディアパクって改革やってたのは気にしてはいけない。
水車作るのは鉄板。「それくらいもうありますよ」と呆れられたのもいい思い出。
「うむ、鳥をゲットできたのはわかった。して、これからどうするのじゃ?」
「ああ、新大陸に行こうと思う」
俺は世界地図を広げた。
「せっかく飛行船が使えるようになったんだ、本格的にあそこらへんを探索したい」
「地下世界に行くのではなかったのか?」
「まあ、そういうのって急いだって仕方がないだろ?」
なにせ魔王軍の侵攻が始まったのが20年くらい前だ。
なにをするにしても今更すぎる、今焦ったって何かが変わるわけじゃない。
もちろん、それで明日戦場で死ぬ誰かの運命が変わる可能性もあるけど。
「サイモンやシャキアのリクエストに答えて、そろそろ南の新大陸に行こう」
カンダタ改めサイモンの死亡フラグになってしまう気もする。
けど、俺は思うのだ。
「オッサンの命とかどうでもいいかなって」
「待てやこら」
サイモンにアイアンクローされた。
やめて小顔がさらにちっちゃくなっちゃう。
「なんだい、散々後回しにされたから、もう忘れられてるかと思ってたよ」
シャキアに皮肉げに言われた。
行くぜ行くぜと言いつつ2年くらい放置していたのだから、怒られても仕方がない。
しゃーない、そろそろ行くぜ。
飛行船アリア号は東へ飛ぶ。目指すは新大陸だ。
レイアムランド脱出ほどの高速飛行はさせない。気候が安定しているタイミングを狙い、低速で飛ぶ。
それでも飛行船の速さは尋常ではなく、わずか1週間で大洋を横断してしまった。
とりあえず大きな陸地を発見した俺たちは、そこで飛行船を着陸させて、水素が詰まった気嚢袋を魔法の袋に詰め込んだ。
飛行船の弱点は地上待機中の脆弱さ。屋外で巨大なガス風船を管理するのだ、その難易度は半端ではない。
だが魔法の袋さえあれば、分割した気嚢を収めてしまうという解決法がとれる。こうなればゴンドラ部分はただの小屋だ。
船は海岸近くで着地し、不安定な飛行状態を解除して、安定して一息つける状態になった。
「うーん、飛行船で海賊家業をするのはやっぱり難しそうだねえ」
「こいつ、やっぱりそんなこと考えてたのか……」
現在地は地球でいうとチリのあたりだ。チリといっても上下に長いので気候はピンキリだが、俺たちが上陸した場所はかなり過ごしやすい気温に感じられる。
「というか飛行船で海賊やったら、それはもう空賊だな」
さまざまな作品に登場してもはや一般名詞化した空賊だが、地球の歴史にそのようなものが実在した例はない。
いや、反乱軍のことを賊軍と呼ぶことがあり、その兵力が航空戦力を持っていれば「空賊」に当てはまるのかもしれないが。
あるいは、海賊が空母を運用すれば空賊になるのかも。
国家でも維持が難しい空母は無理にしても、水上機母艦程度なら運用できるんじゃなかろうか。
「それはいけないね。アタシらは歴史ある由緒正しい海賊団さ。いまさら空賊なんて名乗れないよ」
「海賊が由緒正しいのか……」
この女と話していると自分がアホになったような感慨を抱いてしまう。
…………。
「ひょっとして、お前ら、国なのか?」
由緒正しいなんて言い方をするってことは、相応の歴史があるんだろう。
在野の海賊なんて存在は、基本的にカリスマ船長のもとで1代限りの組織になりがちだ。
むしろ、1代も保たない。野盗としての海賊とは、年単位でスライムのように増殖減少分裂併合を繰り返す、極めて流動的な勢力だ。
地球で有名な大海賊、黒ひげ。彼のリーダーとしての活動期間がわずか2年と聞けば、いかに海賊が新陳代謝の激しい業界かがわかるだろう。
それが数代、少なく見積もっても100年以上にわたって続くとなれば、可能性は一つ。
別の勢力からすれば海賊であっても、当人たちからすれば違う存在。
すなわち、蛮族―――別の文明圏の海軍なのではなかろうか。
海軍という公式の存在が海賊行為に勤しむことは、割と昔はよくあることだった。
現代の感覚、倫理観でいえばとんでもない話だが、当時の軍事組織なんて愚連隊に毛が生えたようなものだ。
他国は蛮族、悪魔の集団、略奪虐殺ヒャッハー、生贄の為に心臓抉ったれ、とかよくある話。
飼い主でありスポンサーである政府すら、彼らをろくに制御できやしない。
シビリアンコントロール? なにそれ美味しいの? みたいな。
むしろ軍隊側が政治に口出し、というか乗っ取りを図るなんてあるあるネタにすらならない。
そもそも軍隊と政治が切り離されたのが最近の話。彼ら中世の軍隊は野盗であり、外交官であり、国家の守護者であり、悪魔の討伐人であり、正義の味方……勇者だった。
管轄がフワッフワだけど、そもそも軍隊とはそういうもの。
「有事にしか役に立たない」という性質から、組織そのものがちょっと特殊で、独立性が高いものだ。
軍隊は全ての役割が存在し、全ての概念を内包する。
補給、交渉、教育、調査、兵站、そして戦闘。
あらゆる専門家の人員がいるからこそ、軍隊はもはや最小規模の国家といえる。
仮に全ての支援体制を失っても軍隊は活動ができる。
唯一持たないのは、税を徴収する対象―――平民階層くらいだ。
「結局何が言いたいんだいあんたは。話が長い男は嫌いだよ」
「つまり、ものの見方なんて方向から変わるって話だ。世界一周の偉業を成し遂げたマゼラン艦隊だって、現地人からすれば略奪や拉致をする異邦の地から来た海賊に過ぎない。あんたらだってそうだ、俺たちはあんたら海賊団を無法者だと思ってたけど、実はあんたらの背後には相応の組織があるんじゃないか?」
「ない、とは言えないのかねえ」
なんとも曖昧な返答だった。
「国ね。ああ、まあそうなのかもしんないねえ。うちらは自分たちを国だなんて思ってなかった、みんな好き勝手自分のために仕事をしてる奴らが寄り集まってるだけだ。けど、あれはひょっとした国ってやつなのかもしれないね」
国という概念に発展する前の、原始的な集団ということだろうか。
それでも傭兵のような形式で軍人の役割を果たす人間は生じるだろうし、全体の流れを考える王のような立場も生まれるのかもしれない。
なるほど、彼女たち海賊団にとって、海賊家業は文字通りの「家業」なのだ。
「で、結局あんたらはどういう集まりなんだ?」
「うーん、なんといったもんかねえ。普通の町だよ、町」
…………。
「え、説明終わり?」
「え、なんか言った方が良かったのかい?」
どうしよう、この人ほんと、どうしよう。
よし、決めた。
「このアッパラパーに聞いてもわかんねーわ! 直接見に行こう!」
「失礼だねえ、この勇者は」
Q ラーミアをゲットしたのになんで今さらサマンオサ編?
A 実機ゲームリプレイなので。
弱い仲間キャラのレベル上げとして実機でもサマンオサ攻略に向かいました。
あと、お遊びアイテムとして变化の杖がほしい。
ついでにエルフの里で、あの指輪を買いたい。