文明が栄える旧大陸。
調査が難航し神秘と迷信が根強く残る暗黒大陸。
そして、人々は大洋の対岸に浮かぶ大陸をこう呼んだ。
新大陸と。
……地球人の知識と照らし合わせると、新大陸はいわゆる北アメリカ大陸と南アメリカ大陸だ。
俺の地理知識を前提とすると自明だが、この世界の人々はアメリカ大陸が南北に分かれていることなんて知らない。
だから、まとめて新大陸。
この新大陸の南端の岬は、古来より多くの船を飲み込んだ世界最悪級の航海の難所だ。
小さな島が無数に浮かぶここは、選ぶ進路次第では大幅なショートカットも可能な場所である。
しかしそれでも、航海術と船舶性能が向上した地球ですら航行を中止する場合があると聞けば、どれほど危険な場所かがわかるだろう。
だから、俺たちはこの岬を飛行船モードで飛び超えて、太平洋から大西洋へと出た。
必要とあらば大陸を飛び越えられるのは強い。なんでもありだ。
そして俺たちは、シャキアのホームである「海賊の家」に到着した。
「ここが海賊の家、ねえ」
俺たちはその地を空から一望する。
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具体的な文明の年代を20面サイコロで決定します。
13世紀
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町の状況をサイコロで決定します。
発展度合 9
治安の良さ 8
教育レベル 8
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「町っていうか、思った以上の大都市だな……」
海沿いの平地に広がる、広大な都市。
人々の営みに粗雑さはなく、かなり秩序だっているような印象を受ける。
ところどころに大きな建物も見える。ああいうのを作れるってことは投資の概念があり、それらを取り仕切る金融の概念もいるのだろう。
予想よりはるかに発展した町だ。原作ゲームで見たような「ちょっと大きな木造建築物」というレベルじゃない。
「おいおい、シャキアの話と違うじゃねえか」
サイモンも町を見下ろして呆れている。
たぶん、彼もシャキアのことを海の向こうの野蛮人、くらいに思っていたのだろう。
それもしょうがない。彼女は美女だが、発言は基本的にアホの子だ。
なにやら新大陸では大きな問題が生じているらしく、その対処こそがサイモンの目的、というか目標だった。
しかしその問題がなんぞや、とシャキアに聞き取りをしても、どうにもはっきりとしない。
というか、シャキアが考えなしすぎて問題を理解できていないっぽい。
人間を拉致しているという点から多少なり推理することもできるが、そんなものは思考実験の域を出ない。
それでも問題に対する対処法の野蛮さから、俺たちはこの地の文明レベルをそれなりに低く見積もっていた。
他所から人間連れてきて解決、なんてろくな文明じゃない。
ないはず、だった。
「とにかく町の……町長? 国王? なにかしら権力者がいるだろう、会いに行こうぜ」
「どこにいるんだよ。偉いなら偉いなりに、城とかに住んでほしいもんだ」
町を一望しても、わかりやすい城のような建物はない。
「さて、ここで勇者アルスの愚民掌握方法論の授業だ」
「どうしたいきなり」
世の中、コミニティを支配する方法は3つある。
暴力か、資金力か、権力かだ。
前者ほど個人の力で賄えるが、後者ほど支配できる規模が大きくなる。
王様となれば基本的に、権威なんていう曖昧でふわふわした力で国家を纏めている。
王とか貴族が偉そうにしているのは、別に偉ぶりたいというわけではなく。
偉そうにしていないと、権力という地盤が綻ぶからなのだ。
「けどこの町には、そういう権威の象徴がない。つまりこの町の支配者は、暴力か資金力で町を束ねているってことか?」
「いやあ……それはない、と思うがよ……」
サイモンも納得してなさげに眉をひそめて唸る。
効率的なやり方ではない。歴史を重ねた国家ならまずやらない手法だ。
例えば軍事力でまとまった軍事主義の国が生まれたとして、その国が数百年経過すると、軍隊そのものが権威となる。
つまり、将軍とかが将校が世代を重ねて貴族化する。
いちいち軍事力を行使して国をまとめるより、サクッと「俺は偉いんだぞ!」と主張したほうが早い。
国家が年月を経るというのはそういうことだ。
さて、目の前に広まる町とて、そういった権威を使って統一されているのは間違いないとは思うのだ。
めっちゃ繁栄してるし。めちゃくちゃ繁栄してるし。
つーか下手な西洋諸国よりずっと賑わってる。どうなってんだ。
「権威権威……なんかねーかな」
双眼鏡で町を見渡すサイモン。俺も同じように町を観察する。
人々が空に浮かぶ飛行船に気付いて慌てふためく様子が伺えるも、それ以上の情報は得られない。
と、ふと人々の様子が変わった。
「なんか喜んでない?」
「歓声をあげてるっぽいな」
人々は飛行船を見て、何やら喝采をあげていた。
その顔に浮かぶのは喜色。どうしたことだろう。
「あの、シャキアさんが勝手になにかやってますが……」
ルナリアの指摘に、俺たちはシャキアの方を見た。
シャキアは海賊旗を飛行船から掲げていた。
なにやってんの、この残念美人。
「あの、ホンマ困るんすけど。ウチらあんさんの海賊団の下についた覚えないんスけど」
「なんで急に西ジパング語になるんだ」
「え、あんたらってウチの海賊団の一員じゃないのかい?」
そういう認識だったらしい。
やべーぞこの女。
シャキアに案内されたのは港に近いお屋敷だった。
「ここがアタシの実家さ。これでもこの町じゃブイブイ言わせてる名士なんだよ」
「そういう情報は先に言えと……見ろよ勇者、ここにも海賊旗があるぜ」
サイモンの視線を追うと、そこにはしっかりした作りの、巨大な旗がはためいていた。
船じゃなくて屋敷に掲げられてるってのは、さてどういうことなんだろう。
「え? ああ、あれはうちの家紋だからね」
「ぶっちがいとしゃれこうべの家紋……?」
なんとも物騒な家紋である。
というかこの規模の名士の家の出ってことは……もしかしてこいつ、結構いいとこのお嬢様だったのか?
「シャキアさん、お嬢様だったんですね」
「いや、アタシは別にお嬢様ってわけじゃないさ。名士ってのはあれだよ、ほら……代々海賊の船長やってるから」
「よくわからん」
いや、わからないってわけじゃないんだけど。
それがこの地のルール、秩序なのだろう。
つまるところ、この町は海賊を中心に成り立った国家なのだ。
「にしたってこんな立派なお屋敷の娘なんだ、もうちょっとお上品に育ったって良さそうだがなあ」
「なんだい、褒めるんじゃないよ」
サイモンの感想にシャキアは照れたように笑った。
たぶんサイモンは褒めたわけではない。
笑っていたシャキアであったが、しかしすぐに表情を引き締める。
「……面倒なやつが来た」
そう言って、シャキアが見つめる先。屋敷の玄関から、ひとりの老人が現れた。
老人は俺たちを一瞬睨み付けると、すぐに興味をなくしたように視線を外した。
「バカ娘め、やっとこさのお帰りか。ようやく腰を落ち着かせる気になったのか?」
「なってないね! アタシは死ぬまで海の女を貫くって決めてんだよ!」
「……シャキアさん、こちらは? お知り合いですか?」
ルナリアの言葉に、老人はあからさまに敵意を滲ませた視線で俺たちを睨み付ける。
老人に代わって執事らしき男が現れ、俺たちに頭を下げた。
「この方はお嬢様の父君であらせられます」
「ああ、これはご丁寧にどうも」
ちなみに執事といっても燕尾服ではなく、カジュアルな洋服だ。
街の人々がマントみたいなものを羽織っている中で彼だけ洋服なのはどういうことなのだろう。輸入品?
「略奪品では?」
小声でルナリアが訂正する。ごもっとも。
老人……シャキアパパンは俺たちを無視してシャキアに歩み寄った。
「いつまでそんな浮ついた考えでいるつもりだ! いい歳をして海賊など……我が家の娘としての自覚を持て!」
あれ、海賊に対して反対派なのか、この爺さん?
「略奪など若い連中に任せておけばいいのだ! お前には各界との人脈作りという大切な役割があるだろう!」
ああ、やっぱり海賊自体は家業なのね。知ってた。
「やれやれ……海に出ているうちに老衰で死んでくれてたら良かったのに」
シャキアがぼそりと酷いことを言っていた。
「黙れ! もうよい、貴様が船に乗ることはないと思え! この儂が直々に、貴様を再教育して立派な婦女子にしてくれるわ!」
このアバズレ娘をご令嬢にできるというのなら、それはちょっと見てみたい。
がんばれがんばれ。
「ほら、あんたらも言ってやりな! このアタシが、どれだけ立派に海賊をやってるかをね!」
お鉢がこっちに回ってきた。
俺はお鉢を右から左に受け流してサイモンに渡す。
「よしサイモン! このわからず屋のクソジジイにガツンと言ったれ言ったれ!」
「おいコラ勇者! 人んちの親父をクソジジイ呼ばわりするんじゃないよ!」
なぜかシャキアにクレームを入れられた。
「勇者、勇者じゃと……? お主、勇者なのか?」
「おうともさ! このオッサンこそ勇者サイモン、新進気鋭の自称っ子でい!」
俺は勇者としてサイモンの方を推薦した。このジジイの相手は面倒くさそうに思えたのだ。
「勇者、てんめぇ……」
サイモンは恨めしげに俺を睨む。
「結局どっちが勇者なのじゃ」
ジジイは困り顔になってしまった。やめろよそういう反応。俺が悪いことしてるみたいじゃん。
うろ覚えで書いていてミスったのですけど、作中の「海賊の家」は南アメリカ大陸の西海岸にある設定になっています。原作だとどっちかというとブラジルかアルゼンチンあたり。
シンプルにただの勘違いで書いてしまったのですが、大した問題ではないのでこのまま強行します。