とある日。俺は旅装束を脱ぎ、アリアハンの街を歩く。
休日。ビバ休日。
こうしてみると平和なもんだ。
モンスター退治をすると金稼ぎも捗るし、貯金もけっこうたまりがち。
もう隠居したい。魔王倒しに行かなくていいんじゃないかな。
「冴えない町だと思ってたが、こうしてみると人の生活圏って華やかなもんだな」
大通りには屋台が並び、石畳の路地には冒険者や買い物客でごった返していた。
せっかくの休日。ルナリアも自分のやりたいことをしているので、俺もやりたいことをする。
「せっかく独り立ちしたんだ、俺は自由だ。よし、ここはいっちょ風俗でも……」
「おい、アホ勇者」
「ひえっ」
俺は声をかけられて飛び上がった。
「ル、ルイーダ?」
超目付きが悪い少女、酒場の主ルイーダがそこにいた。
「なにやってんだ、はよ魔王を倒しに行け」
「あ、いや。休暇中。戦士にも休暇は必要だろ」
「あんたそう言って、いつまでも行動起こさないタイプだろ」
俺の人生見透かしてるなコイツ……。さすが酒場の主やってるだけあるぜ。
「ま、それはいいとしてさ。今、風俗とか言ってなかったかい?」
ルイーダは俺の隣に立ちながら言う。なんだ? また説教か? 俺はうんざりした気分になる。
「勇者だって男だ。風俗行って何が悪い!」
「童貞が男を語ってるんじゃないよ」
「ど、童貞ちゃうわ」
「えっ、マジで?」
ルイーダは心底意外そうな表情で俺を見る。
いやその顔やめろ。なんか傷つくから。
童貞だけど。
「っていうかルイーダ、まさかあんた非処女じゃないだろうな」
確かこいつ13歳だ。これで非処女だったら、それはそれで倫理的に問題ありだろう
やばい。俺の守備範囲外だ。
「はん。あんたの未使用とあたしの未使用じゃ意味が違うんさ」
少女はあっけからんと白状した。
「あたしはまだ処女だよ。昔はともかく最近は法律的にさっぱりさ」
「あっそ」
こいつの性事情なんて心底どうでもいいわ。
「とにかく風俗はダメだ」
「なんでだよ」
「あんた勇者なんだよ。勇者が地元で風俗行ったなんて知られたら、魔王討伐する前に世界中から笑われるだろ」
「ぐぬぬ……」
ちびっ子でもさすが酒場の主。男のあしらいにもなれてるってことか。
しかし……この調子じゃいつまでも風俗にも行けないぞ!
「じゃあどうしろってんだよ……」
俺が尋ねると、ルイーダは顎に手をあてて考えはじめた。
「ま、あんたも男だしね。発散しないとそれはそれで問題か」
「だろ? 風俗行きたいんだよ」
「そういう秘密を守れる娼館ってのもある。貴族なんかが行く高級店なら、客の名前なんて絶対に漏らさない」
「マジか。紹介してくれ!」
俺はルイーダの手を握る。彼女は心底嫌そうに俺の手を振り払った。
「はあ、仕方がない、紹介状を書いてやるさ。その代わり、ちゃんと魔王討伐の旅に出るって約束しな」
「ええぇ……」
そりゃないよ。せめて風俗ぐらい使命抜きで行かせてくれよ。
抜くだけに。
「わかったよ、約束するから紹介状をくれ」
「あいよ。ほれ、これを店の門番に見せな」
そういうとルイーダは、俺の掌にコインを乗せる。これが紹介状になるらしい。
これで娼館に行ける。やったぜー!
旅立つ前に酒場で景気付けの宴会、みたいな流れを考えていたはずなのに、なぜか娼館に行く流れになったのホント不思議。