「撒いたか……まったく、なんだったんだ」
逃げ込んだ坑道は、アリの巣のように複雑な構造をしていた。
だからこそ追手を撒くことも出来たわけだが、俺達自身も現在位置が判らない。
「エイダちゃん、ここどこか判るか?」
松明の灯りを頼りに周囲を照らす。
周囲に存在するのは土壁と二人の女性だけ。
どうやらここは、鉱山内に作られた個室らしい。
「判るわけないだろ。私は鉱山になんか入らないし、アンタに担がれた状態だったから道順も覚えてないし」
エイダちゃんに聞いてもよく判らないらしく、そもそも彼女は炭鉱内を詳しく知る立場にないらしい。
そりゃそうか。労働者以外に聞いてもわかるわけがない。
「とりあえずこの小部屋で休憩しよう。出入り口がいい具合に隠れてるから、テントの帆で覆えば見つからないだろ」
「いつまで隠れるのです? 物資も限りがあります」
「うーん……遭難って1週間もたてば絶望的っていうし、そのくらい隠れていれば向こうも「少なくとも坑道内にはいないだろう」って判断してくれるんじゃないか?」
「7日ですか」
「うん。普通なら携帯食で1週間耐えるのは難しいかもしれないけど、俺達には魔法の袋があるからな。持久勝ち出来る」
敵は俺達が容量無限の袋を持っていることを知らない。1週間も潜っていれば、確実に餓死すると考えるはずだ。
「そのような理性的な判断に基づいて捜索をする方々ではないように見受けられましたが……」
「こらこら、人を見た目で判断するもんじゃないぞ」
えっ? 可愛いからって顔で旅の同行者を選んだヤツがいる? ふてーやろーだ!
「とにかく食料は大丈夫。袋に沢山保存食は詰め込んでる」
「そうですね。栄養バランスに不安がありますが、量だけでいえば充分でしょう」
俺が松明を持ち、ルナリアが袋を漁って残りの物資を確認する。
捕虜として連れて来たエイダちゃんの分を考慮しても、10日ほど持ちそうだった。
そう確信し、頷き合う俺達。
そんな様子を見て、エイダちゃんはケタケタ笑い始めた。
「あはは、はーはっは!」
「どうした、うんこ漏らしたか」
「漏らしてねえよ! あんた達が滑稽でね!」
にやりと笑うエイダちゃん。
「バカだね、ここはただの坑道じゃない。「いざないの洞窟」って呼ばれてる迷宮さ!」
「え? ここがいざないの洞窟なの?」
ゲーム中では意味不明な場所にある意味不明な洞窟というかトンネルだったけど、まさか町中に入り口があるとは完全に予想外。
「そうさ、古い遺跡から更に掘り進んで炭鉱になったのがこの洞窟だ。そんで―――」
「うんこ漏らしたか? 拭こうか?」
「漏らしてねえよ! いいかい、ここは、こここそが―――!」
エイダちゃんはそりゃあもうググっと溜めて、俺達に教えてくれた。
「この洞窟こそが、秘密結社のアジトなのさ!」
へー。
ふーん。
なるほどね。
「虎穴に自分から入っちゃったわけか」
悲報 いざないの洞窟、完全に敵のテリトリー。