ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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いざないの洞窟、攻略放置

 

 エイダは断食1日で降伏した。

 

「お願いします、何か食べ物をください……」

 

「はえーよ」

 

 鬼気迫った目で食料を求めるエイダ。

 俺は呆れた様子でそれを見るが、ルナリアの意見は違うらしい。

 

「勇者様、それは飢えたことがない者の理屈です」

 

 俺にはエイダの降参が早すぎるように思えたけど、よくよく考えればそれは地球での世界記録や仰天ニュースの情報を元にした感覚なのかもしれない。

 確かに俺は、冒険に出るのに際しても充分な食料を持っていく。

 味に不満を覚えることがあっても、量に不安を覚えることはなかった。

 

「よし、俺も断食してみよう」

 

 エイダちゃんに食事を与えつつ、俺は提案する。

 

「今日からヨーイドンで一斉に断食だ」

 

「それに何の意味が……?」

 

 訝しむルナリアに俺は説明する。

 

「理由は2つ。1つは単純に食料節約だ」

 

「それは理解出来ますが」

 

「2つ目の理由は、俺達が飢えた経験がないことだ。一度くらい食糧難の危機感を練習がてら知っておいたほうがいい」

 

 そうだ、結局のところ試してみなければこういうのは判断がつかない。

 飢えという苦しみを前に人はどれほど苦痛を覚えるのか、知識ではなく感情で知っておきたいのだ。

 

「なるほど、確かに一度経験しておくというのは悪くない考えです。私も参加してみます」

 

 前々から思っていたが、ルナリアは俺と思考が近い。

 昔から本の虫で知識欲が強いルナリアと、地球の価値観を持ち現実主義者な俺。

 異世界で別々に生まれ育った割に、俺達は近い考え方を持っている。

 魔法の袋に色々詰め込んで小屋を建てるとか、この世界の住人からすれば奇妙な行動であっても「合理的だから」とあっさり受け入れていたしな。

 今回もその流れなのだろう。飢えについて実感を覚えるために試してみる、実に合理的だ。

 

「よし、それじゃあ皆で断食スタートだ!」

 

 

 

 

 

 

「お腹すいたよぉ……ひもじいよぉ……」

 

「あの、早すぎやしませんか……?」

 

 俺は断食開始から丸1日も耐えきれず、腹の痛みに悶ていた。

 空腹は痛い。切ないとかじゃなくて、腹が痛む。

 俺は生まれて始めての飢餓というものを経験していた。

 

「空腹ってこんなにしんどいのか、ごめんねエイダちゃん。俺はこのつらさを知らずにきみに強いていた……」

 

「お、おう」

 

「どうしますか? 飢餓の苦しみを理解したというのなら、もう中断しても宜しいと思いますが」

 

 俺より平気そうなルナリアが提案する。

 女性は男性より飢えに強いという。単純に脂肪が多いからだ。

 女性らしい丸みを帯びた身体の持ち主であるルナリアも、普通に考えて俺より体脂肪率は高いはずだ。

 だがこれはそういう問題ではないと思う。

 単に俺は根性なしなだけだ。

 

「そうだな、これ以上の実験は無意味か。よし、飯にしよう」

 

「はい」

 

「そ、そうか。良かった」

 

 なぜか安堵した様子のエイダちゃん。

 ルナリアは不思議そうに彼女に言った。

 

「貴女様は引き続き絶食ですよ?」

 

「俺、降参って言ったよな!? 尋問しろよ! なんで無意味に苦しませるの続行するんだよ!?」

 

「俺達は飢える苦しみを知った。これはつらい。だから、そのつらさをきみに与えて情報を聞き出そうと思う」

 

「だから話すっつってんだろ! この人でなしどもめ!」

 

 俺とルナリアは顔を突き合わせ相談する。

 

「どうする?」

 

「とりあえず食事にしましょう。お腹が空きました」

 

「そうだな。まだ3人前くらい用意出来そうだし」

 

「いえ、腹を満たしてはまた反骨精神が出るかもしれません。聞き取りは飢えさせたままで行いましょう」

 

 女性に本当に厳しいのは女性である。

 容赦ないルナリアの様子に、俺はそんな格言を思い出していた。

 

 

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