ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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文通日和

 

 

 初夏。

 ロマリアに到着して1ヶ月。すぐに旅立つとか言っておきながら、俺達はこの町に居座っていた。

 

「あんたらいつになったら魔王討伐に出発するんだよ……」

 

「勇者にも休養は必要だからね、仕方がないね」

 

 俺は可愛いお洋服で美少女っぷりに磨きがかかったエイダちゃん(♂)とともに買い食いしている。

 人間の慣れとは恐ろしいもの。食べ歩きしているうちに気まぐれに虫食にも手を出してしまい、俺は遂に芋虫の串焼きを食べられるようになっていた。

 味はシチューというかクラムチャウダーというか、その辺の感じだ。

 ちょっと生臭いが、まあまあ美味いという事実が極めて釈然としない。

 このあたりにはキャタピラーという巨大芋虫のモンスターが出現するのだが、それはこの地域では立派にご馳走らしい。

 まるごと蒸し焼きにして、大皿にドンと盛り、背中をオムライスみたいに左右に切り開くのだ。

 ハーブで生臭さを中和し、オリーブオイルや魚醤をちょちょいとかけて食す。

 手をかけているだけあって臭みもほぼ消えており、無発酵パンとの相性も良い。

 

「……美味しいけど、芋虫の姿で出されるのが難点だな」

 

「これがいいんだろ、この国の感覚だと。っていうかサソリ食えるんだから虫くらい平気だろ」

 

「アリアハンに虫食の文化はないんだわ」

 

「ケッ。これだからお上品な王都様はよぉ」

 

 俺はなんちゃって王都民だが、生粋の王都生まれ王都暮らしであったルナリアは未だ昆虫食に慣れていないらしい。

 そんなルナリアはといえば、毎日図書館に行っている。いや、図書館というか図書店というか。

 コンビニ程度の店舗に本棚が幾つかあるだけの、小さな有料図書館だ。

 目算数百冊くらいしかないけど、さすがにまだ全読破は達成していないらしい。

 ……まさかするつもりなんだろうか。読破。

 俺は俺で、エイダちゃんと食べ歩きやモンスター格闘場で遊んでいる。

 節度ある金額で遊んでいるけど、基本は負け越している。

 金銭的に不安はない。貴金属をキメラバグで増やせば俺達に資金的不安はない。

最近は、俺もルナリアも奇妙な充実感がある。生活に余裕があるというか、やっぱ人間は急かされた生き方をするもんじゃないな。

 貯金残高の心配もなく少し遅めに起床して、俺とエイダちゃんは遊びに、ルナリアは図書館に行き。

 夕方になると適当な時間で合流して、ちょっと高い外食に舌鼓を打つ。

 屋敷に戻る際には、ロマリア名物の公衆浴場に入り。

 ふわふわな羽毛の布団に入って、幸せな夢を見る。

 

「俺達の旅は、きっとここを目指していたんだ」

 

「そうですね。私は今、とても幸せを感じております」

 

 そういって微笑み合う俺とルナリア。

 それにエイダちゃんが割って入る。

 

「いやなんで終わった気になってるんだよ! 魔王倒しに行くぞ!」

 

「「えーっ……」」

 

 渋っていると、兵士が部屋に来て紙を手渡してきた。

 何事かと3人でメモを読む。

 

「はよ旅立て ロマリア王」

 

 怒られた。

 

 

 

 

 

 

 忘れてた。

 俺はアリアハン王に手紙を書くことにした。

 この時代、国家間を行き来する手紙は半年くらいかかるのも珍しくはない。

 しかも料金もやばい。凄い雑な感覚だけど、手紙1枚で数万円かかる。

 それで、しかも届くとは限らない。まあまあの確率で紛失する。

 というわけで、アリアハンに手紙を書くとなると数枚同じ内容を用意しなくてはいけないのだが……

 

「もう無理だぁ、おしまいだぁ……」

 

「はい、駄目です。やり直し」

 

 俺は、何度も手紙を書いてはルナリアにダメ出しをされていた。

 文面を考えたのはルナリアだが、書くのは俺でなくてはならないらしい。

 こちらの文字に慣れていない俺は、何度書いても誤字があったり字が汚かったりと却下されていた。

 ルナリア厳しい。でも好き。

 そして手紙の内容はこんなものだ。

 

「バコタの娘が魔王討伐の褒美として父親の恩赦を願ってる、まあ功績考えたら無理ってことはないでしょ、考えといてね」

 

 みたいな。

 受理されるかはわからないが、送る分にはタダである。

 有料だけど。

 

「ルナリアは実家に手紙を書かないのか?」

 

「筆不精な貴方様と一緒にしないでくださいませ。定期的に手紙は送っております」

 

「そうなのか」

 

「貴方様のご実家にも手紙は送っています。お母様を心配させるものではありませんよ」

 

「よ、余計なことを……」

 

 つまり実家にいる母は、中身が変わって様子が変化した俺を間接的にだが知ってしまったのだ。

 いつか面倒なことにならなきゃいいが。

 

 

 

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