ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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ルイーダの酒場

 

 

 

 旅立つ宣言をした以上は甘えられないという理屈を押し通し、アリアハンの宿屋にわざわざお金を払って泊まる。

 存在意義がわからないと評判のアリアハンの宿屋だが、案外俺みたいに実家に戻るまいというプレイスタイルでゲームをする人もいるのかもしれない。

 宿屋から出て、俺は老人に教えてもらったルイーダの酒場を目指す。

 そして、俺は戦慄の事実に気が付いた。

 

「文字が読めねえ……」

 

 この世界の識字率がどれほどかはわからない。

 だが勇者として育てられた少年が文字が読めないのはおかしい。

 会話では日本語にしか聞こえないが、ルビス印の翻訳魔法でもかかっているのだろうか。

 

「どこかで勉強しないと」

 

 俺は再び町の人に話しかけ、ルイーダの酒場を探すのであった。

 今更醜聞は気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

性別(6以上で女性)           6

年齢(あまりに不自然であればやり直し) 13

容姿(かっこよさ、かわいさ)       2

頭の良さ                 8

運動神経                 2

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 やたら「ここはアリアハンです」と主張してくるお姉さんに教えてもらい、俺は酒場に入る。

 まだ日も高い時間帯だが、ここは冒険者の交流所としての酒場。既にそれなりに客がいて、食事をしたり雑談に興じていた。

 

「ここはルイーダの店。旅人達が仲間を求めて集まる、出会いと別れの酒場よ。何をお望みかしら?」

 

「子供……?」

 

 そして俺を出迎えた酒場の店主、ルイーダは……可愛げのないガキだった。

 目付きが悪い。それに輪をかけて口が悪い。

 チンチクリンな背格好もあって、あんまりお近づきになりたくない少女だった。

 

「あっ? なんつった坊主、仲間紹介しねーぞコラ」

 

「かわいーこどもだなー」

 

「棒読みしてるんじゃねーよボケ」

 

 顔立ちは整っている。服装も小綺麗だ。

 でも、言動と態度が全てを台無しにしている。

 

「俺、てっきりルイーダって綺麗なお姉さんだと思ってたのに」

 

「5年待ちな、国一番の美女になるさね」

 

「へいへい。それでほら、あれだろ。この店で手すきの冒険者紹介してくれるんだろ。はよはよ」

 

「あんたみたいな無礼者に紹介する冒険者はいないよ」

 

「は? なに誠意見せろっていうの? 舐めるよ? 靴くらい舐めるよ?」

 

「あんた、勇者なのにプライドないのかい……」

 

 ルイーダがばさばさと紙を捌き、何枚か俺の前に差し出す。

 

「今紹介出来るのはこの3人だね」

 

「字が読めない。内容を教えてくれ」

 

「は? 勇者が字を読めない? 冗談でしょ?」

 

「冗談じゃないんだなこれが。ところであんたの感覚だと、文字読めない奴ってどれくらいの割合でいる?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

識字率                  4

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「半数くらいかね。まあ読めないやつなんてザラにいるけど……あんた勇者なんだよね? あたし記憶違いかい?」

 

「バカを言え、このイケメンを見て勇者かどうか疑う余地なんてないだろ」

 

「勇者が顔面偏差値に頼るんじゃないよ」

 

 俺はルイーダと絶対に仲良くなれないと思っていたが、なんか意外と相性がいい気がしてきた。

 ルイーダはめんどくさそうに、店内にいたうち3人を指差した。

 

「あいつとあいつと、あー、あいつ。名前は……」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

職業をサイコロで、名前を人工知能によるランダムで決定します。

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

商人 ヴェル

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

性別(6以上で女性)           1

年齢(あまりに不自然であればやり直し) 29

容姿(かっこよさ、かわいさ)       4

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

遊び人ドラゴ

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

性別(6以上で女性)           4

年齢(あまりに不自然であればやり直し) 21

容姿(かっこよさ、かわいさ)       2

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

僧侶 ルナリア

――――――――――――――――――――――――――――

ステータス外要素をサイコロで決定します。

性別(6以上で女性)          10

年齢(あまりに不自然であればやり直し) 18

容姿(かっこよさ、かわいさ)       9

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 右から順番に商人と遊び人の成人男性、そして僧侶の少女だった。

 

「とりあえず、遊び人は除外で」

 

「そうね。それは同意」

 

 深く考えるまでもなく、俺は遊び人を仲間から除外した。

 ドラクエ3の遊び人はやや特殊な立ち位置であり、上手く活用すれば物語中盤から活躍出来る。

 とはいえ、現実となってしまったこの世界でまともに戦わない遊び人と旅をする自信がない。

 というわけで商人男性と僧侶の少女が残ったわけだが……俺はどうしても僧侶の少女に目が行った。

 俺と同い年くらい……いやこの世界の俺は16歳だから、ちょっと年上か。

 彼女―――ルナリアは、かなりの美少女だった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

人工知能にルナリアの容姿を提案させます。

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 長いシルクのような艷やかな黒髪。深い紫色の瞳。

 透き通るような白い肌に、ほんのり桃色の頬。

 身長は平均的でスタイルはかなり良く、腰は細いのに胸は大きい。

 所作も美しく、聖なる蒼い装束を身にまとっていることもあって、誰もが彼女に注目していた。

 

「なあ、ルイーダ」

 

「なんだい、ヘボ勇者」

 

「あれ、聖女とかじゃないよな? 普通の初心者僧侶なんだよな?」

 

「そのはずだけど……まあ、人間見た目で判断出来ないもんさ。あれでとんでもないアバズレかもしんないし」

 

 あの容姿で性格悪かったら落ち込むなあ、と思いつつ、俺は決めた。

 

「とりあえず僧侶は必要だな。回復出来てアタッカーとしても優秀だから優良物件だ」

 

「あんた見た目で選んだだろ」

 

 ルイーダの無慈悲なツッコミを俺はスルーする。

 

「商人の男は連れて行こう。ちょっとピーキーな職業だけど、有用には違いない」

 

「あら、いいの?」

 

 ルイーダの意外そうな声に、俺は首を傾げた。

 

「なんか問題か?」

 

「年齢は一回り離れてるけど、それでも男だぞ? あの子とくっつくかもって思わないもんか?」

 

 俺は2人を改めて見る。

 三十路くらいの商人と、少しお姉さんな僧侶。

 年の差はあるが、男と女……何があるかわからない。

 

「よく考えるとあの歳でレベル1とか不良債権だよな。論外だ。やめておこう」

 

「レベルっていうのが何か判らないけど、アンタがどういう奴かは判った気がするよ」

 

 ルイーダの声はどこまでも呆れていた。

 俺はルナリアと2人旅をすると決めた。

 まあ、他の仲間はおいおい探そう。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

ゲーム中のランダム種配布により性格とステータスを決定します。

 

名前 ルナリア

年齢   18

職業   僧侶

性格 頭脳明晰

容姿   聖女

力     5

素早さ   8

体力    5

賢さ   15

運の良さ  4

HP    9

MP   13

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ルナリアー! アルスさんが、お呼びだぞー!」

 

 名を呼ばれ、美少女は驚いたように目を見開き、すぐに立ち上がった。

 こちらに小走りで駆け寄ってくる僧侶の少女。

 近くで見ると本当にかわいい。高校にこんな子がいれば、間違いなく騒ぎになるレベルだ。

 

「こんにちは、はじめまして。私はルナリアと申します。よろしくお願いします」

 

 ぴしりと腰を曲げて礼をするルナリア。座っている所作からも感じたが、きっちり教育された令嬢のような印象がある。

 

「ああ、はじめまして。結婚して下さい」

 

「はい?」

 

「すまん舌噛んだ。(一緒に魔王退治を)決行して下さい」

 

 ルナリアはじっと俺を見つめる。

 ったっはー、これだからイケメンは人生イージーだぜ!

 とか思ってたら、彼女はこんなことを訊ねてきた。

 

「確認したいのですが、貴方は今年勇者として旅立つアルス様ですか?」

 

「そうだよ。俺はアルス様だ」

 

 ルイーダが隣で「ひょっとして偽物かコイツ……?」と不信感を抱き始めたが、紛れもなく勇者である。肉体は。

 

「私は貴方に興味があります。貴方のお父様にもです。ぜひ、勇者オルテガ様のことを教えて頂けませんか?」

 

「あー、やめとけやめとけ。そいつアホだ。アホ勇者だ」

 

 ルイーダが手をひらひら振って否定する。

 こいつは俺の敵らしい。

 とはいえ俺が父親である勇者オルテガについて知らないのは確か。

 というか、主人公の父親である勇者オルテガが死んだのは10年前。主人公が6歳の時だ。

 

「すまん、覚えてない」

 

 俺が本物の勇者アルスだったとしても、原作でも覚えてるはずがない。

 

「そうですか、残念です。ではアルス様本人のお話を聞かせていただけませんか?」

 

 ルナリアはしっかりとした態度で頼んできた。彼女の熱意が伝わってくる。

 

「あんた等、仲間になろうっていうんだから親睦を深めるのはいいんだけどさ。立ち話してないで席座ってくんない? ここ私の仕事場なんだけど」

 

 ルイーダに指摘され、俺達はカウンター前を塞いでいることを思い出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「ルナリア・セレスティア・アルダインです。今年で18になります。今年の初めまでは町の教会で働いていました」

 

 丸いテーブル席についた俺達は、まずは自己紹介をすることにした。

 そして彼女から告げられた名前に、俺は戸惑う。

 

「その、凄い長い名前だな」

 

 すっげーバカみたいなリアクションをしてしまった。

 

「アルダイン家はこの町の教会を代々守っている家系です。領地はありませんが、一応襲名を許された下級貴族です」

 

「なるほどな」

 

 それっぽく頷いてみせるが、貴族についての知識なんてない。

 とにかく、ルナリアは貴族の娘らしい。

 

「そんな貴族の娘が、なんで冒険者になろうっていうんだ?」

 

「大した理由ではありません。教会には書庫があります。書庫の本を読んでいるうち、世界を直接見たくなったのです」

 

 俺が夢の中での問答を思い出した。

 洞窟があれば入ってみたいかと問われ、俺は頷いたのだ。

 

「そうだな。世界を見て回るのも悪くない」

 

 ドラクエ3は自由度が高い。ドラクエシリーズとしては屈指の自由な旅が出来るナンバリングだ。

 行かなければならない場所も多いが、行かなくてもいい場所も沢山ある。

 まさに、旅をするのはプレイヤー自身なのだ。

 

「世界を見たい、か。でも、俺の旅の目標は大魔王の撃破だ。間違いなく、とんでもなく危険な旅になる」

 

 誘っておいてなんだが、俺は迷っていた。

 彼女はたまたま俺に目を付けられたせいで、大魔王なんて最上級に危険な存在に敵対せねばならなくなった。

 世界を見て回るだけなら、もっと普通の冒険者に着いて行けばいいのだ。

 そう言うと、ルナリアは首を横に振った。

 

「いえ、貴方様に誘って頂けたのはこちらとしても好都合です」

 

「好都合?」

 

「私の調べた限り、一般的な冒険者は限定的な地域や区間を行き来するのみです。山を超え海を超え、見果てぬ地平の先を目指すような旅はしません」

 

 それはそうだろう。

 冒険が危険であるのならば、当然未知のリスクは回避すべきだ。

 収入を得ることが目的ならば、儲けが出る仕事を確保して、それを日々繰り返すのが正しい。

 しかし、きっとそれは彼女の求める旅ではないのだろう。

 

「わかった。まあ旅の途中で無理だと思えばそこでリタイアすればいいんだ、今ここで結論を出す必要もないか」

 

「貴方様は私が旅についていけないとお考えなのですか?」

 

「違う。リタイアする可能性があるのは俺も一緒だ。無理だと思ったら俺も逃げる」

 

 ルナリアはきょとんと目を丸くして、俺を見つめた。

 

「大魔王を倒さなければ、人の世は終わるのですよね?」

 

「終わる。それは間違いない。敵はそういう相手だ」

 

「諦めるという選択肢があるのですか?」

 

「玉砕するって選択肢はないよ」

 

 ルナリアは俺の言葉を聞いて、なるほどと頷いた。

 

「確かにその通りです。無理だと判断したまま挑むのは勇敢ではなく無謀でしょう」

 

 高い教育を受けているらしい彼女は、そういう面でも合理的に考えているらしかった。

 脳筋思考で大魔王までゴーゴーってテンションだったら俺も困ってた。

 

「とはいえ、危険を恐れて何も経験せずに終わるのはつまらないだろう。俺はやれるだけはやってみたいと思っている」

 

 俺は彼女の目をしっかりと見つめながら言った。ルナリアも頷きを返す。

 

「当然の道理ですが至言でしょう。やれるだけはやってみる。私もそれを実践したいと思います」

 

 俺達は協力し、大魔王への旅に出ることを決めた。

 決意を新たにする俺達の元に、少女ルイーダが歩み寄る。

 そして、ルナリアに問い掛けた。

 

「ねえアンタ、この男は結局勇者だと思うんかい? あたしにはどうにも胡散臭いんだよねぇ……」

 

「あのさ、そういうのは俺の耳に届かない場所で相談してくんない?」

 

「私は貴方様が勇者であることを信じています」

 

 あっさりと俺を信じると答えたルナリア。

 

「なんでだい? 教養もない文字も読めない、こんなのをどうして勇者だって思えるんだい?」

 

「この方は、少なくとも現時点では魔王討伐を無謀ではなく勇敢だと思っていらっしゃいますから」

 

 ルナリアは微笑み答える。

 

「元より酔狂な旅です。まともな人間には出来ないのでしょう。勇者というくらいです、多少は破天荒な……」

 

 そこまで言って、ルナリアは固まった。

 

「……え? 文字が読めないのですか? 無教養な人はちょっと……」

 

 ルナリアは俺を軽蔑の目で見た。

 くそ、ルイーダはやっぱり俺の敵だ!

 




ほぼランダムで出力した仲間なのに、完璧超人すぎるヒロインになってしまいました。
せっかくのランダムなのでもっと素っ頓狂でトンチキな仲間が出現することを期待していたのですが。
とはいえやり直したらランダムの意味がないので、このまま強行です。
まあ変なキャラが仲間になろうとしても、主人公が拒絶するのですけど。
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