ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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不審者を目の前で見過ごすゲームの門番の謎

 

 

 木の棒の導きのままに一旦ポルトガへ向かった俺達だが、当然ながら街道は封鎖されていた。

 だが、収穫がなかったわけじゃない。

 

「これよこれ! 食べてみたかった!」

 

 関所の元に自然発生した山奥の小さな町。

 現実でいうところのヨーロッパ大陸であるここでこう例えるのは奇妙だが、雰囲気はカウボーイ映画の西部劇の町っぽい。

 規模が小さく、メインストリートである街道の左右に店が点々と建っている。

 まあ似ているのは町並みだけで、町の中身を構成する文化はやっぱり欧州風なんだけど。

 

「やっぱり一般人は通行止めされていましたね」

 

 許可証を準備しつつ関所に並ぶ馬車の列を見つつ、ルナリアが感想を漏らす。

 幽霊船によって海が封じられている為、今この町は完全にキャパシティを超えた行商人を受け入れている。

 多くの人にとっては災難かもしれないが、あるいはこの関所町にとっては好景気の幸運だったのかもしれない。

 

「通れないって判ってたのに、なんで来るんだよ……」

 

「まあ、一応な」

 

 酒場のテーブルに集まり、3人で食事をとる。

 酒場の中も商人達で混み合っており、単品料理1つでなかなか注文が来なかった。

 ルナリアが髪をかきあげつつ食べるそれは、確か名をラクレットという。

 硬い黒パンの上にチーズを溶かした料理……料理? だ。

 アルプス山脈の少女が食べていたアレといえばわかるだろうか。

 俺の中で原作ゲームにおけるカザーブこそスイスであるという説があったので、もうちょっと北上しないと食べられないと思っていた。

 とはいえここは既に山岳部。平地が少ない場所だと畜産業が発達し、畜産業が発達すると乳製品が発達するのだ。

 

「見たまんまの味だが、ジャンキーさがたまらん。ロマリア料理はこのひと押しが足りなかった」

 

 ロマリア料理は素朴な雰囲気で、味も同様に素朴というかシンプルだった。

 濃厚で複雑なチーズの味をメインに据えたラクレット料理は、一言でいえば男の子の味。

 パンにも野菜にも合う。1つの調味料を万能扱いするのは好きじゃないけど、チーズは確かに万能だ。

 ただ、文句を強いていえば……

 

「じゃがいもが欲しい」

 

 このかた、この世界でじゃがいもを見たことがない。

 確かじゃがいもは南アメリカが原産だったはず。この世界が中世ならば、なくても不思議じゃない。

 

「サマンオサなら食べられてるのかな」

 

 別にじゃがいもが好きなわけじゃないけど、なければないで物足りない。

 とはいえ、目下何よりも足りていないのは米だけど。

 ジパングに行けば米が食べられるんだろうか。

 ドラクエ3には中国に該当する国はなかったけど、チャーハンや粥で妥協してもいい。米が食べたい。

 

「つかよ、こんだけ混み合ってるとなると、たぶんいるぜ」

 

「なにがだ? カンダタの子分が偵察に来てるとか?」

 

「それもありうると思うけど、そうじゃなくて密入国の仲介人だよ。通りたいってヤツは必ずいるだろうから、金さえあれば通る方法はあるはずだ」

 

 なるほど、いかにもありそうな話だ。

 この関所を突破しようと思えばどうするか。

 俺だったら、商人に一時的に雇われることで身内扱いしてもらって通過する。

 だが、対価を受け取るとしても、そんなリスクを商人だって背負いたくはない。

 引き受ける商人なんて、きっとろくでもないヤツだ。

 

「だからよ、表向きだけの全部ウソの商隊を作るんだよ。それで通過して、あとは煙に巻いて肩書を捨てちまう」

 

「部分的に嘘を吐くのではなく、全て嘘で固めるのですか。失う物がなければ大胆な行動もとりやすいのでしょうね」

 

「そしてその切り捨て前提の商隊を紹介するのか仲介人ってわけか。そりゃ本当に接触手段がなければ客も探せないわな」

 

 原作の勇者はどうしたっけ。そうだ、魔法の鍵で関所の扉を勝手に開けていたはずだ。

 ……あれ、原作主人公も密入国してる?

 

「関所は今、朝夜問わずに行商人を通過させてるフル稼働状態なんだよな」

 

「そりゃあな。タダでさえ詰まってるのに、夜は休みますとは言えねえんだろ」

 

「関所って正面の大きな扉だけじゃないよな?」

 

「一般的な作りであれば、兵士や作業員が通る為の小さな扉もあるはずですが」

 

 原作の主人公がここを密入国しようと思えばどうするか。

 正面の大きな扉は常に行き来があって人目がある。

 商隊の一員のフリをして真っ向から通過するか、あるいは……

 俺達は食後、関所の元まで行って、それらしい小さな扉を発見する。

 監視している兵士の注意の声に「あはは、いやすんませーん。とりあえず試してみようぜ的なー?」とかアホっぽい返答をしつつ、盗賊の鍵を差し込んでみる。

 ―――鍵は開かなかった。

 

「やはり重要施設ということで、厳重な鍵が使用されていますね」

 

 関所から離れつつ、俺達は相談する。

 関所の扉は盗賊の鍵で開かなかった。

 ならばどうするか、そんなこと、原作をプレイしたことがあれば判る。

 

「魔法の鍵……盗賊の鍵より高性能なマスターキーを入手して、勇者はここを突破したんだ」

 

「勇者? オルテガ様ですか?」

 

 首を傾げるルナリアを適当に誤魔化しつつ、俺は次の進路を決めた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

進行方向を12面サイコロで決定します。

          4(4時方向、南東東)

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ―――やっぱり、南へ向かうしかないな。

 

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